第三章:旅立ちの序曲T(前編)
澄み渡る青空に雲はなく、空に上る太陽は休みなく日差しを地上へ送る。
砂浜に打ち付ける波の音は、飛び回る海鳥の声と共にハーモニーを奏でる。
そんな自然の合奏を、サクヤは浜辺に座ってぼんやりと聴いていた。
時折潮風が吹き、時折潮風が吹くと、紫色の髪が揺れ、胸元に光るクローバーのペンダントがきらりと光る。
その穏やかな時間は、やがて彼女を眠りの世界へ誘おうとしていた。
が、突如頭に感じた打撃にサクヤは顔を上げた。
「何サボっているんだ、サクヤ」
声の主の銀髪の少年、リクが悪戯っぽく笑うと、サクヤは少し目を細めて言った。
「サボってない」
「いや、今サボってただろ思いっきり」
「サボってない。材料はもう集めた」
そう言ってサクヤは、木陰のあたりを指差した。
そこには何本かの丸太と木の板が積み上がって小さな山になっていた。
よく見ると、サクヤの服には少しだが汚れがついている。
だが、いくらなんでも多すぎだ。
「あのな。確かにイカダの材料を集めろって言ったけどな。これじゃイカダじゃなくて小屋が建つぞ」
「ダメ?使えそうだよ、きのこ」
「いや、イカダの材料・・・はあ・・・。まあ、無いよりはましか」
リクはため息を吐くと、あたりを見回していった。
「ところで、ソラとカイリはどうした?姿が見えないが・・・」
「ソラは知らない。カイリはソラを捜しに行って、まだ帰ってこない」
「・・・またか」
サクヤの返事に、リクは呆れたように言った。
「大方二人ともサボっているんだろうな。まったく」
そういってリクは二人を呼びに行こうと歩き出す。
サクヤも立ち上がり、彼の後を追って歩き出した。
浜辺に行くと、案の定ソラとカイリは一緒にいて何か話している。
耳を澄ませてみると、
「この世界以外にも世界があるのなら、死ぬまでには絶対見たい」
ソラの歯切れの良い声が聞こえると、カイリも「じゃあ一緒に行こうね」と答えた。
「おいおい。俺たちは仲間はずれかよ。しかも、真面目にイカダを作ってるのは俺たちだけ、だ」
すかさずリクが割り込み、ソラに丸太を投げ渡す。
その後ろを、サクヤもとことことついてきた。
「サクヤなんか、小屋が建つくらいの材料を集めてたぞ」
「え、小屋って、どういうことだよ」
「とにかく、二人とも見習えってことだよ」
「あはは、そうだね。じゃあ、早く仕上げちゃおうか。じゃあ、向こうまで競争ね!」
そう言ってカイリは真っ先に走り始め、その後をサクヤも走っていく。
「わ、わ。二人ともずるいぞ!」
「遅れるなよソラ。カイリはともかく、サクヤは意外と素早いぞ」
そういってリクはソラを抜いて一気に加速し、彼も慌ててその後ろに続く。
子供たちの笑い声が、浜辺にこだました。
あの夜の後。
サクヤが正式にソラの家に迎えられたのち、その証として部屋とペンダントを与えられた。
そして2年の歳月が過ぎ、ソラとリクは身長も伸びたくましくなり、カイリも年頃の少女らしく成長した。
それは、彼らと共に過ごしてきたティーダ達も同じだ。
だが、ただ一人。
サクヤだけは、2年前に出会ったころから殆ど姿が変わらなかった。
あらぬ憶測で同情する者もいれば、気味悪がる者もいた。
しかし、ソラたちはそんなことは全く気にしなかった。
たとえどんな姿でも、サクヤはサクヤである。
それに何の問題もない。それだけだった。
砂浜に打ち付ける波の音は、飛び回る海鳥の声と共にハーモニーを奏でる。
そんな自然の合奏を、サクヤは浜辺に座ってぼんやりと聴いていた。
時折潮風が吹き、時折潮風が吹くと、紫色の髪が揺れ、胸元に光るクローバーのペンダントがきらりと光る。
その穏やかな時間は、やがて彼女を眠りの世界へ誘おうとしていた。
が、突如頭に感じた打撃にサクヤは顔を上げた。
「何サボっているんだ、サクヤ」
声の主の銀髪の少年、リクが悪戯っぽく笑うと、サクヤは少し目を細めて言った。
「サボってない」
「いや、今サボってただろ思いっきり」
「サボってない。材料はもう集めた」
そう言ってサクヤは、木陰のあたりを指差した。
そこには何本かの丸太と木の板が積み上がって小さな山になっていた。
よく見ると、サクヤの服には少しだが汚れがついている。
だが、いくらなんでも多すぎだ。
「あのな。確かにイカダの材料を集めろって言ったけどな。これじゃイカダじゃなくて小屋が建つぞ」
「ダメ?使えそうだよ、きのこ」
「いや、イカダの材料・・・はあ・・・。まあ、無いよりはましか」
リクはため息を吐くと、あたりを見回していった。
「ところで、ソラとカイリはどうした?姿が見えないが・・・」
「ソラは知らない。カイリはソラを捜しに行って、まだ帰ってこない」
「・・・またか」
サクヤの返事に、リクは呆れたように言った。
「大方二人ともサボっているんだろうな。まったく」
そういってリクは二人を呼びに行こうと歩き出す。
サクヤも立ち上がり、彼の後を追って歩き出した。
浜辺に行くと、案の定ソラとカイリは一緒にいて何か話している。
耳を澄ませてみると、
「この世界以外にも世界があるのなら、死ぬまでには絶対見たい」
ソラの歯切れの良い声が聞こえると、カイリも「じゃあ一緒に行こうね」と答えた。
「おいおい。俺たちは仲間はずれかよ。しかも、真面目にイカダを作ってるのは俺たちだけ、だ」
すかさずリクが割り込み、ソラに丸太を投げ渡す。
その後ろを、サクヤもとことことついてきた。
「サクヤなんか、小屋が建つくらいの材料を集めてたぞ」
「え、小屋って、どういうことだよ」
「とにかく、二人とも見習えってことだよ」
「あはは、そうだね。じゃあ、早く仕上げちゃおうか。じゃあ、向こうまで競争ね!」
そう言ってカイリは真っ先に走り始め、その後をサクヤも走っていく。
「わ、わ。二人ともずるいぞ!」
「遅れるなよソラ。カイリはともかく、サクヤは意外と素早いぞ」
そういってリクはソラを抜いて一気に加速し、彼も慌ててその後ろに続く。
子供たちの笑い声が、浜辺にこだました。
あの夜の後。
サクヤが正式にソラの家に迎えられたのち、その証として部屋とペンダントを与えられた。
そして2年の歳月が過ぎ、ソラとリクは身長も伸びたくましくなり、カイリも年頃の少女らしく成長した。
それは、彼らと共に過ごしてきたティーダ達も同じだ。
だが、ただ一人。
サクヤだけは、2年前に出会ったころから殆ど姿が変わらなかった。
あらぬ憶測で同情する者もいれば、気味悪がる者もいた。
しかし、ソラたちはそんなことは全く気にしなかった。
たとえどんな姿でも、サクヤはサクヤである。
それに何の問題もない。それだけだった。