第三章:旅立ちの序曲X(前編)
一方そのころ。
「もう!!サクヤも戻ってこない!!いったい何をしてるのよ!!」
入り江に一人残っていたカイリは、一向に戻ってこない友人3人にとうとう痺れを切らして捜しに来た。
ソラやリクはともかく、サクヤまでサボってしまっては、できることもまともにできない。
カイリがぷりぷりおこりながら歩いていると、少し前をティーダとワッカが走っていくのが見えた。
その後をセルフィーが追いかける。
彼らならソラたちがどこにいるかわかるかもしれない。
そう思ったカイリは、後ろを走っていたセルフィーを呼び止めた。
「あ、カイリ姉ちゃん!」
「セルフィー。ちょっと聞きたいんだけど・・・」
「ごめん。今それどころじゃないんや!大変なことが起こってるみたいやで!」
セルフィーにしては珍しい焦ったような表情と声色に、カイリも顔色を変える。
何があったか問い詰めると、セルフィーは少しつっかえながらもリクがチャンバラをしていると話した。
それを聞くと、カイリは胸に手を当てて安心したように息を吐く。
それと同時に、いつもの事であることは彼女も知っているはずなのに、と疑問も抱いた。
「それが違うんや!戦っている相手やで、相手!」
「相手って・・・ソラじゃないの?」
「ちゃうねんで!リクと戦っているのは、サクヤなんや!」
この言葉に、さすがのカイリも飛び上がりそうなほど驚いた。
あのサクヤがリクと?どう考えても、納得のいく答えに行きつかない。
「とにかくカイリ姉ちゃんも早く来て!」
そう言ってセルフィーはカイリの手を掴んで走り出した。
彼女に半ば引きずられるようにしてついていくと、そこでは。
リクとサクヤによる、チャンバラとは思えないような凄まじい殺陣が繰り広げられていた。
互いの木剣がぶつかる音と、砂を蹴る乾いた音。
そのリズムの速さが、二人の戦いの激しさを物語っている。
普段なら声をあげて応援するはずのギャラリーも、その迫力に声を出すことを忘れさせていた。
まるで、踊っているような二人の戦い。
いつまでも続きそうな予感さえする、一歩も引かない二人。
だが、その瞬間は突然やってきた。
リクの振り降ろした木剣と、サクヤの振り上げた木剣が互いをうがった時。
「あっ!!」
2本の木剣は放物線を描いて砂浜に突き刺さった。
それと同時にリクは座り込み、サクヤはそのままうつぶせに倒れた。
ひと時の沈黙が辺りを包み、ようやく皆が勝負の結末を理解した。
引き分け。どちらも勝たず、どちらも負けなかった。
「リク!サクヤ!!」
そんな二人に真っ先に駆け寄ったのはソラだった。
サクヤはゆっくりと体を起こし、小さくごめんなさいとつぶやいた。
「わたし、勝てなかった。ソラの敵、取れなかった」
「そんなことないよ。それより、リクとあそこまでやり合えるなんてすごいじゃないか!!俺だってリクにはなかなか勝てないんだぜ」
そんな彼の言葉にサクヤは驚いたように顔を上げた。
ソラの顔には満面の笑みが浮かんでいる。
ふわっ、とサクヤの胸が温かくなったような気がした。
が、それを確かめる前にそばで声が響く。
「サクヤ!次は俺と勝負っス!!」
「おいおい、少しは休ませてやれよ」
「あーずるい!うちも勝負したい」
いつの間にかサクヤの周りには人が集まり、ソラとリクはそんな様子を苦笑いしながら見ていた。
怒鳴り声が、頭から降ってくるまでは。
「こらーーーー!!!みんな何やってるのーーー!」
全員が振り返ると、カイリが腰に手を当ててこちらをにらんでいた。
「やべ!みんな逃げろ!!」
ソラの号令でみんなは、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げた。
日は、だいぶ傾き始めていた。
「もう!!サクヤも戻ってこない!!いったい何をしてるのよ!!」
入り江に一人残っていたカイリは、一向に戻ってこない友人3人にとうとう痺れを切らして捜しに来た。
ソラやリクはともかく、サクヤまでサボってしまっては、できることもまともにできない。
カイリがぷりぷりおこりながら歩いていると、少し前をティーダとワッカが走っていくのが見えた。
その後をセルフィーが追いかける。
彼らならソラたちがどこにいるかわかるかもしれない。
そう思ったカイリは、後ろを走っていたセルフィーを呼び止めた。
「あ、カイリ姉ちゃん!」
「セルフィー。ちょっと聞きたいんだけど・・・」
「ごめん。今それどころじゃないんや!大変なことが起こってるみたいやで!」
セルフィーにしては珍しい焦ったような表情と声色に、カイリも顔色を変える。
何があったか問い詰めると、セルフィーは少しつっかえながらもリクがチャンバラをしていると話した。
それを聞くと、カイリは胸に手を当てて安心したように息を吐く。
それと同時に、いつもの事であることは彼女も知っているはずなのに、と疑問も抱いた。
「それが違うんや!戦っている相手やで、相手!」
「相手って・・・ソラじゃないの?」
「ちゃうねんで!リクと戦っているのは、サクヤなんや!」
この言葉に、さすがのカイリも飛び上がりそうなほど驚いた。
あのサクヤがリクと?どう考えても、納得のいく答えに行きつかない。
「とにかくカイリ姉ちゃんも早く来て!」
そう言ってセルフィーはカイリの手を掴んで走り出した。
彼女に半ば引きずられるようにしてついていくと、そこでは。
リクとサクヤによる、チャンバラとは思えないような凄まじい殺陣が繰り広げられていた。
互いの木剣がぶつかる音と、砂を蹴る乾いた音。
そのリズムの速さが、二人の戦いの激しさを物語っている。
普段なら声をあげて応援するはずのギャラリーも、その迫力に声を出すことを忘れさせていた。
まるで、踊っているような二人の戦い。
いつまでも続きそうな予感さえする、一歩も引かない二人。
だが、その瞬間は突然やってきた。
リクの振り降ろした木剣と、サクヤの振り上げた木剣が互いをうがった時。
「あっ!!」
2本の木剣は放物線を描いて砂浜に突き刺さった。
それと同時にリクは座り込み、サクヤはそのままうつぶせに倒れた。
ひと時の沈黙が辺りを包み、ようやく皆が勝負の結末を理解した。
引き分け。どちらも勝たず、どちらも負けなかった。
「リク!サクヤ!!」
そんな二人に真っ先に駆け寄ったのはソラだった。
サクヤはゆっくりと体を起こし、小さくごめんなさいとつぶやいた。
「わたし、勝てなかった。ソラの敵、取れなかった」
「そんなことないよ。それより、リクとあそこまでやり合えるなんてすごいじゃないか!!俺だってリクにはなかなか勝てないんだぜ」
そんな彼の言葉にサクヤは驚いたように顔を上げた。
ソラの顔には満面の笑みが浮かんでいる。
ふわっ、とサクヤの胸が温かくなったような気がした。
が、それを確かめる前にそばで声が響く。
「サクヤ!次は俺と勝負っス!!」
「おいおい、少しは休ませてやれよ」
「あーずるい!うちも勝負したい」
いつの間にかサクヤの周りには人が集まり、ソラとリクはそんな様子を苦笑いしながら見ていた。
怒鳴り声が、頭から降ってくるまでは。
「こらーーーー!!!みんな何やってるのーーー!」
全員が振り返ると、カイリが腰に手を当ててこちらをにらんでいた。
「やべ!みんな逃げろ!!」
ソラの号令でみんなは、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げた。
日は、だいぶ傾き始めていた。