第12章 砂漠の亡霊 W
彼は少しの苦笑の後、観念したのか笑みを消し、静かに話し始めた。
「…悪かったよ、心配かけて。でも、君を巻き込みたくなかったんだ。」
そう言って、彼は懐から何かを取り出し、アーリアの前に差しだして見せた。彼女は突然目の前に出されたそれを、まじまじと見つめては首を傾げた。
「パナシーアボトル?これが何?」
「フォレストさん。あれ。」
アーリアがわけがわからないと言うように呟く隣で、その時ベディーはあるものを見つけた。ベディーはフォレストにしらせ、彼と共にその見つけたものへと歩み寄って行った。そこにあったのは、空になったいくつものボトルだった。そのうちのひとつを手に取り、フォレストは中身を嗅いだ。
「薬…パナシーアボトルか?それも、こんなにたくさん。」
「ティルキス。ここで一体、何をしていたんだ?」
カイウスは肩膝を突き、ティルキスと同じ目線に立って尋ねた。ティルキスは彼の瞳を見つめ返し、苦笑に似た微笑みと一緒に答えた。
「実験さ。」
「実験?」
「ああ。スポットにとり憑かれた死者と戦ったやつが、いつの間にか食らわされていた毒。その正体をつかむためにな。」
彼がその言葉を発すると、その場にいた皆が驚きに染まった。
「なっ!?なんてバカなことを!」
「そうだよ!こんなところで一人で…万一の事があったらどうするんだよ!」
「っていうか、それだけのためになんでこんな場所に来てんだよ、この人は!」
「昔から行動の読めぬ方だったが…」
「ベディーといい勝負じゃないのか?その度胸は。」
「ロイン、何感心してるの!」
「ははははっ。」
「ティルキス、笑い事じゃないでしょ!もう!カイウスやラミーの言う通りよ。どうして、わざわざこんなところに?」
ベディー、カイウス、ラミー、フォレスト、ロイン、ルビアは呆れ、何とも言えぬ叫び呟きを次々とこぼしていく。そんな彼らが変にあたふたする様が可笑しかったのか、ティルキスは声をあげて笑っていた。アーリアに怒られても、彼はまだ笑いを止められなかった。
「危険だからこそ、一人でこんなところに来たんだよ。万が一暴れることになったって、誰にも迷惑をかけない。…と、思ったところで、だ。」
苦笑に似た笑みを浮かべながら、ティルキスは言った。その途中で急に声色と表情が変わり、それまでの冗談じみた雰囲気が消えた。
「センシビアと同じだ。ここにもあいつらが、スポットに憑かれた死者達が居座ってた。」
「やっぱり…!」
嫌な予感は当たっていた。カイウスは苦い顔をして呟く。
「カイウス。お前達も遭っていたのか?」
「ああ。」
カイウスはルビアと一緒に、アーリア達と同じように、これまでの旅の事を話して聞かせた。特にアール山での出来事を話した時、ティルキスの表情は驚愕と怒りに満ちていた。
「なるほどな。ところで、そのティマって子は一緒じゃないのか?」
2人からあらかた事情を聞き終えたところで、ティルキスはふと気がついた。今彼の目の前にいるそれらしい女子はラミーしかいない。当然このレイモーンにも一緒に来ているだろうと思った彼は、彼女の行方に首を傾げた。
「お前に関係ない。それより、ここにもスポットゾンビはいたんだろう?この死都のどこにも、そんな気配はなかったぞ。」
そのティマを旅から外した張本人であるロインに、それは禁句に近いものがあったようだ。一気に不機嫌になった彼は、きつい口調でティルキスに言葉を叩きつけた。カイウス達はそんな彼の様子に肝を冷やしつつ、確かに、とティルキスに視線を集めた。ティルキスはロインの様子の変化に首を傾げたものの、すぐに頭を切り替えその問いに答えた。
「ああ。ここの“門”はもう閉じたようなんだが、面倒な事に、やつら砂漠に姿を消したらしい。たぶん、まだそこらへんをうろついていると思うぜ。…ま、そのおかげで例の毒が調べやすくもあったわけだけどな。」
彼はそう言うと、一呼吸置いて続きを述べた。
「生身の人間のスポット化。その原因は、スポットゾンビの血液だ。」
その言葉に、皆が目を大きくした。
「ティルキス様、それは本当ですか?」
「ああ。何度か戦ったからな。ほぼ間違いない。」
ティルキスはフォレストにそう言い切った。その横で、アーリアはセンシビアでの戦いを思い出していた。そう言えば、スポット化した仲間達は、接近戦で返り血を浴びていた者たちだった。ティルキスも、その血を浴びていた一人だ。そして、スポット化しなかった仲間達は、遠距離から攻撃をしていた者たちだった。アーリアやその仲間達には、スポットゾンビの血は降りかからなかったのだ。
「おかしいだろう。オレ達だってやつらと戦って、返り血だって少なからず浴びてんだ。それなのに、なんでオレ達はスポット化しない?」
だが、彼の言う事に素直に頷かない者もいた。実際に戦ったのは、ティルキスやアーリアだけではない。ロインやカイウス、そしてラミー達もだった。だが、誰もスポットのように凶悪な性格に変化はしなかった。ロインの言う事も最もである。
「血液がただ皮膚に付着した程度じゃ、スポット化はそう起きない。あれは毒というより一種の病原菌に近いらしくてな、早めに拭い取れば毒は体内に入り込まないみたいだし、スポット化しない。ただし、傷口から入り込んだ場合は別だ。即効性じゃないが、例え微量でも、解毒しない限り確実にスポット化が起こる。それと幸運なことに、毒によってスポット化した奴の血液には、同じような効果はないらしい。だから毒を食らった奴を変に隔離する必要はない、ってことだ。」
ティルキスはロインにそう返した。その内容に驚いたのは、またもロインだけではなかった。
「あんた、どうやってそこまで調べた?1回や2回戦ったくらいじゃ、普通そこまでわかんないだろ。」
「ま、戦利品でいろいろと…な。」
ラミーの言葉に、ティルキスはそう濁して笑うだけだった。その返答に彼女は首を傾げるだけだったが、一方でフォレストは静かに重い溜息をついていた。自分の知らないところでまた無茶をしていたのだろうと、彼は心配を通り越して呆れていたのだ。
「それと、これは俺の身を持って調べた結果なんだが」
そんな元家臣の様子に気付いているのかいないのか、ティルキスは冗談を言うような言葉で続けたが、口調は真剣だった。
「この毒に耐性がつくことはなさそうだから、解毒処置は絶対に必要だ。じゃなきゃ、そんなに空のボトルが転がってなんかいないだろう?」
ロイン達は、彼が言いながら指した空のボトルの山へと目を向けた。彼の言うことはつまり、スポットゾンビと相見える時は、治癒の用意は必ず要るということだ。パナシーアボトルのような薬がない場合は、治癒術を会得しているルビアらを必ず同行させた方がいいだろう。
「そしてもうひとつ。」
皆がそう認識をした直後、ティルキスが再び口を開いた。
「スポットと同じで、あの毒も負というやつを好むらしくてな。そういう感情を抱いてる時はスポット化が起きるのがはやくなる。アーリア、覚えているだろう?あの時一斉にスポット化が始まったのは、みんな疑心暗鬼になっていたからさ。」
「あっ…!」
アーリアはショックを受けたように両手で口を覆った。あの時、1人の仲間がスポット化したことで、誰かが同じように襲いだすのではないかという疑念が生まれた。それが、毒を受けた周囲の者のスポット化を促してしまっていたのだ。
「なあ、ティルキス。そこまで調べられていたのなら、オレ達がスポットの影響を受けていないことくらい、すぐにわかっただろう?」
その時、カイウスはあることに気がつき、ティルキスに問うた。その疑問に他の者も気がつき、彼へと注目した。すると、彼の口から出てきた答えは、思いもよらないものだった。
「ははっ。まあな。けど、お前がどれくらい腕を上げたのか気になって、な。ちょっと試させてもらったよ。」
相変わらずの軽い口調で返されたその内容に、全員が思わず間抜けな顔になった。
「お兄様、そんな理由で剣なんか抜いたの!?」
「ルビア、そう怒るなよ。」
「怒るわよ!もう、お兄様なんて嫌いよ!」
「あ〜、俺が悪かった。だからそんなこと言うなって。」
当然ルビアは怒り呆れ、ぷいと顔を背けてしまった。慌ててティルキスが顔の前で両手を合わせても、その機嫌は簡単に直りそうもない。カイウスやフォレストは苦笑気味に肩をすくめ、アーリアは頭が痛いというように顔を手で覆っていた。そんな5人のやりとりを前に、ロインは呆れ顔で立っていた。
「あんた、それでオレらに殺されてたらどうするつもりだったんだ?」
ロインのその言葉に、ティルキスはルビアから目をそらし、フッと息を吐きながら答えた。
「さあな。」
「さあな、って!?」
「けど」
思わず出た、彼の言葉に対する反感。ティルキスはそれを遮り、これまでとは違う、真っ直ぐ相手を見つめた笑みを見せた。
「仲間がスポットの影響を受けているかもしれない。そう疑い続けていたら、いつか自分がスポットに飲み込まれ、自分自身を失ってしまうだろう。そんなことになるよりは、よっぽどマシだよ。…こんなところで死ぬ気もなかったしな。」
そう言ってティルキスは立ち上がり、ロイン、アーリア、そしてカイウスへと視線を向けた。
「カイウス。奴らと戦うんだろう?」
「ああ。」
「なら、仲間を信じ抜くんだな。そうすれば、毒なんかにやられはしない。」
それは彼が見つけた、もう一つの毒に対抗する方法なのだろう。力強い言葉とまなざしを向けられ、カイウスもまた、力強く頷いた。そしてその目を一度彼からそらし、ロインへと向けた。力強くも柔らかく微笑むカイウスの表情を見て、ロインは小さな微笑と共に、何かの肯定を表すように肩をすくめた。
「ティルキス。また、力を貸してくれないか?」
カイウスは右手を差し出しながら、ティルキスの顔を真っ直ぐ見て聞いた。すると、ティルキスは答えるよりも早く、自身の右手を出し、固く握手をかわしたのだった。
「ああ。お安いご用さ。」
2年前に初めて会った時と変わらぬ、心強い兄のような存在。それは変わらない笑顔と共に、カイウス、そしてロインの力となることを約束してくれた。
「…悪かったよ、心配かけて。でも、君を巻き込みたくなかったんだ。」
そう言って、彼は懐から何かを取り出し、アーリアの前に差しだして見せた。彼女は突然目の前に出されたそれを、まじまじと見つめては首を傾げた。
「パナシーアボトル?これが何?」
「フォレストさん。あれ。」
アーリアがわけがわからないと言うように呟く隣で、その時ベディーはあるものを見つけた。ベディーはフォレストにしらせ、彼と共にその見つけたものへと歩み寄って行った。そこにあったのは、空になったいくつものボトルだった。そのうちのひとつを手に取り、フォレストは中身を嗅いだ。
「薬…パナシーアボトルか?それも、こんなにたくさん。」
「ティルキス。ここで一体、何をしていたんだ?」
カイウスは肩膝を突き、ティルキスと同じ目線に立って尋ねた。ティルキスは彼の瞳を見つめ返し、苦笑に似た微笑みと一緒に答えた。
「実験さ。」
「実験?」
「ああ。スポットにとり憑かれた死者と戦ったやつが、いつの間にか食らわされていた毒。その正体をつかむためにな。」
彼がその言葉を発すると、その場にいた皆が驚きに染まった。
「なっ!?なんてバカなことを!」
「そうだよ!こんなところで一人で…万一の事があったらどうするんだよ!」
「っていうか、それだけのためになんでこんな場所に来てんだよ、この人は!」
「昔から行動の読めぬ方だったが…」
「ベディーといい勝負じゃないのか?その度胸は。」
「ロイン、何感心してるの!」
「ははははっ。」
「ティルキス、笑い事じゃないでしょ!もう!カイウスやラミーの言う通りよ。どうして、わざわざこんなところに?」
ベディー、カイウス、ラミー、フォレスト、ロイン、ルビアは呆れ、何とも言えぬ叫び呟きを次々とこぼしていく。そんな彼らが変にあたふたする様が可笑しかったのか、ティルキスは声をあげて笑っていた。アーリアに怒られても、彼はまだ笑いを止められなかった。
「危険だからこそ、一人でこんなところに来たんだよ。万が一暴れることになったって、誰にも迷惑をかけない。…と、思ったところで、だ。」
苦笑に似た笑みを浮かべながら、ティルキスは言った。その途中で急に声色と表情が変わり、それまでの冗談じみた雰囲気が消えた。
「センシビアと同じだ。ここにもあいつらが、スポットに憑かれた死者達が居座ってた。」
「やっぱり…!」
嫌な予感は当たっていた。カイウスは苦い顔をして呟く。
「カイウス。お前達も遭っていたのか?」
「ああ。」
カイウスはルビアと一緒に、アーリア達と同じように、これまでの旅の事を話して聞かせた。特にアール山での出来事を話した時、ティルキスの表情は驚愕と怒りに満ちていた。
「なるほどな。ところで、そのティマって子は一緒じゃないのか?」
2人からあらかた事情を聞き終えたところで、ティルキスはふと気がついた。今彼の目の前にいるそれらしい女子はラミーしかいない。当然このレイモーンにも一緒に来ているだろうと思った彼は、彼女の行方に首を傾げた。
「お前に関係ない。それより、ここにもスポットゾンビはいたんだろう?この死都のどこにも、そんな気配はなかったぞ。」
そのティマを旅から外した張本人であるロインに、それは禁句に近いものがあったようだ。一気に不機嫌になった彼は、きつい口調でティルキスに言葉を叩きつけた。カイウス達はそんな彼の様子に肝を冷やしつつ、確かに、とティルキスに視線を集めた。ティルキスはロインの様子の変化に首を傾げたものの、すぐに頭を切り替えその問いに答えた。
「ああ。ここの“門”はもう閉じたようなんだが、面倒な事に、やつら砂漠に姿を消したらしい。たぶん、まだそこらへんをうろついていると思うぜ。…ま、そのおかげで例の毒が調べやすくもあったわけだけどな。」
彼はそう言うと、一呼吸置いて続きを述べた。
「生身の人間のスポット化。その原因は、スポットゾンビの血液だ。」
その言葉に、皆が目を大きくした。
「ティルキス様、それは本当ですか?」
「ああ。何度か戦ったからな。ほぼ間違いない。」
ティルキスはフォレストにそう言い切った。その横で、アーリアはセンシビアでの戦いを思い出していた。そう言えば、スポット化した仲間達は、接近戦で返り血を浴びていた者たちだった。ティルキスも、その血を浴びていた一人だ。そして、スポット化しなかった仲間達は、遠距離から攻撃をしていた者たちだった。アーリアやその仲間達には、スポットゾンビの血は降りかからなかったのだ。
「おかしいだろう。オレ達だってやつらと戦って、返り血だって少なからず浴びてんだ。それなのに、なんでオレ達はスポット化しない?」
だが、彼の言う事に素直に頷かない者もいた。実際に戦ったのは、ティルキスやアーリアだけではない。ロインやカイウス、そしてラミー達もだった。だが、誰もスポットのように凶悪な性格に変化はしなかった。ロインの言う事も最もである。
「血液がただ皮膚に付着した程度じゃ、スポット化はそう起きない。あれは毒というより一種の病原菌に近いらしくてな、早めに拭い取れば毒は体内に入り込まないみたいだし、スポット化しない。ただし、傷口から入り込んだ場合は別だ。即効性じゃないが、例え微量でも、解毒しない限り確実にスポット化が起こる。それと幸運なことに、毒によってスポット化した奴の血液には、同じような効果はないらしい。だから毒を食らった奴を変に隔離する必要はない、ってことだ。」
ティルキスはロインにそう返した。その内容に驚いたのは、またもロインだけではなかった。
「あんた、どうやってそこまで調べた?1回や2回戦ったくらいじゃ、普通そこまでわかんないだろ。」
「ま、戦利品でいろいろと…な。」
ラミーの言葉に、ティルキスはそう濁して笑うだけだった。その返答に彼女は首を傾げるだけだったが、一方でフォレストは静かに重い溜息をついていた。自分の知らないところでまた無茶をしていたのだろうと、彼は心配を通り越して呆れていたのだ。
「それと、これは俺の身を持って調べた結果なんだが」
そんな元家臣の様子に気付いているのかいないのか、ティルキスは冗談を言うような言葉で続けたが、口調は真剣だった。
「この毒に耐性がつくことはなさそうだから、解毒処置は絶対に必要だ。じゃなきゃ、そんなに空のボトルが転がってなんかいないだろう?」
ロイン達は、彼が言いながら指した空のボトルの山へと目を向けた。彼の言うことはつまり、スポットゾンビと相見える時は、治癒の用意は必ず要るということだ。パナシーアボトルのような薬がない場合は、治癒術を会得しているルビアらを必ず同行させた方がいいだろう。
「そしてもうひとつ。」
皆がそう認識をした直後、ティルキスが再び口を開いた。
「スポットと同じで、あの毒も負というやつを好むらしくてな。そういう感情を抱いてる時はスポット化が起きるのがはやくなる。アーリア、覚えているだろう?あの時一斉にスポット化が始まったのは、みんな疑心暗鬼になっていたからさ。」
「あっ…!」
アーリアはショックを受けたように両手で口を覆った。あの時、1人の仲間がスポット化したことで、誰かが同じように襲いだすのではないかという疑念が生まれた。それが、毒を受けた周囲の者のスポット化を促してしまっていたのだ。
「なあ、ティルキス。そこまで調べられていたのなら、オレ達がスポットの影響を受けていないことくらい、すぐにわかっただろう?」
その時、カイウスはあることに気がつき、ティルキスに問うた。その疑問に他の者も気がつき、彼へと注目した。すると、彼の口から出てきた答えは、思いもよらないものだった。
「ははっ。まあな。けど、お前がどれくらい腕を上げたのか気になって、な。ちょっと試させてもらったよ。」
相変わらずの軽い口調で返されたその内容に、全員が思わず間抜けな顔になった。
「お兄様、そんな理由で剣なんか抜いたの!?」
「ルビア、そう怒るなよ。」
「怒るわよ!もう、お兄様なんて嫌いよ!」
「あ〜、俺が悪かった。だからそんなこと言うなって。」
当然ルビアは怒り呆れ、ぷいと顔を背けてしまった。慌ててティルキスが顔の前で両手を合わせても、その機嫌は簡単に直りそうもない。カイウスやフォレストは苦笑気味に肩をすくめ、アーリアは頭が痛いというように顔を手で覆っていた。そんな5人のやりとりを前に、ロインは呆れ顔で立っていた。
「あんた、それでオレらに殺されてたらどうするつもりだったんだ?」
ロインのその言葉に、ティルキスはルビアから目をそらし、フッと息を吐きながら答えた。
「さあな。」
「さあな、って!?」
「けど」
思わず出た、彼の言葉に対する反感。ティルキスはそれを遮り、これまでとは違う、真っ直ぐ相手を見つめた笑みを見せた。
「仲間がスポットの影響を受けているかもしれない。そう疑い続けていたら、いつか自分がスポットに飲み込まれ、自分自身を失ってしまうだろう。そんなことになるよりは、よっぽどマシだよ。…こんなところで死ぬ気もなかったしな。」
そう言ってティルキスは立ち上がり、ロイン、アーリア、そしてカイウスへと視線を向けた。
「カイウス。奴らと戦うんだろう?」
「ああ。」
「なら、仲間を信じ抜くんだな。そうすれば、毒なんかにやられはしない。」
それは彼が見つけた、もう一つの毒に対抗する方法なのだろう。力強い言葉とまなざしを向けられ、カイウスもまた、力強く頷いた。そしてその目を一度彼からそらし、ロインへと向けた。力強くも柔らかく微笑むカイウスの表情を見て、ロインは小さな微笑と共に、何かの肯定を表すように肩をすくめた。
「ティルキス。また、力を貸してくれないか?」
カイウスは右手を差し出しながら、ティルキスの顔を真っ直ぐ見て聞いた。すると、ティルキスは答えるよりも早く、自身の右手を出し、固く握手をかわしたのだった。
「ああ。お安いご用さ。」
2年前に初めて会った時と変わらぬ、心強い兄のような存在。それは変わらない笑顔と共に、カイウス、そしてロインの力となることを約束してくれた。
■作者メッセージ
おまけスキット
【かつての仲間】
カイウス「へへっ。なんか懐かしいな。」
ルビア「そうね。こうしてみんながそろったの、いつぶりだったかしら?」
ティルキス「カイウスとルビアとは以前センシビアで会っていたけど、その時はフォレストがいなかったしな。」
フォレスト「私もレイモーン評議会でティルキス様とはお会いしていたが、カイウス達とは会う機会がなかったな。」
アーリア「またスポットと戦うことになるとは思っていなかったけど、みんなと一緒なら心強いわ。」
カイウス「ああ。みんな、またよろしくな!」
【かつての仲間】
カイウス「へへっ。なんか懐かしいな。」
ルビア「そうね。こうしてみんながそろったの、いつぶりだったかしら?」
ティルキス「カイウスとルビアとは以前センシビアで会っていたけど、その時はフォレストがいなかったしな。」
フォレスト「私もレイモーン評議会でティルキス様とはお会いしていたが、カイウス達とは会う機会がなかったな。」
アーリア「またスポットと戦うことになるとは思っていなかったけど、みんなと一緒なら心強いわ。」
カイウス「ああ。みんな、またよろしくな!」