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Tales of the Tempest もう一つの魔法

ちよ

INDEX

  • あらすじ
  • 01 第1章 影と少年 T
  • 02 第1章 影と少年 U
  • 03 第1章 影と少年 V
  • 04 第1章 影と少年 W
  • 05 第1章 影と少年 X
  • 06 第1章 影と少年 Y
  • 07 第1章 影と少年 Z
  • 08 第1章 影と少年 [
  • 09 第2章 萌える丘と蒼き海 T
  • 10 第2章 萌える丘と蒼き海 U
  • 11 第2章 萌える丘と蒼き海 V
  • 12 第2章 萌える丘と蒼き海 W
  • 13 第2章 萌える丘と蒼き海 X
  • 14 第2章 萌える丘と蒼き海 Y
  • 15 第2章 萌える丘と蒼き海 Z
  • 16 第2章 萌える丘と蒼き海 [
  • 17 第2章 萌える丘と蒼き海 \
  • 18 第2章 萌える丘と蒼き海 ]
  • 19 第2章 萌える丘と蒼き海 ]T
  • 20 第3章 首都の過去 T
  • 21 第3章 首都の過去 U
  • 22 第3章 首都の過去 V
  • 23 第3章 首都の過去 W
  • 24 第3章 首都の過去 X
  • 25 第3章 首都の過去 Y
  • 26 第3章 首都の過去 Z
  • 27 第3章 首都の過去 [
  • 28 第4章 復讐の闇 T
  • 29 第4章 復讐の闇 U
  • 30 第4章 復讐の闇 V
  • 31 第4章 復讐の闇 W
  • 32 第4章 復讐の闇 X
  • 33 第4章 復讐の闇 Y
  • 34 第4章 復讐の闇 Z
  • 35 第4章 復讐の闇 [
  • 36 第4章 復讐の闇 \
  • 37 第4章 復讐の闇 ]
  • 38 第5章 騎士と思い出 T
  • 39 第5章 騎士と思い出 U
  • 40 第5章 騎士と思い出 V
  • 41 第5章 騎士と思い出 W
  • 42 第5章 騎士と思い出 X
  • 43 第5章 騎士と思い出 Y
  • 44 第5章 騎士と思い出 Z
  • 45 第5章 騎士と思い出 [
  • 46 第5章 騎士と思い出 \
  • 47 第5章 騎士と思い出 ]
  • 48 第5章 騎士と思い出 ]T
  • 49 外伝1 「ママ」が「おばさん」になった日 T
  • 50 外伝1 「ママ」が「おばさん」になった日 U
  • 51 外伝1 「ママ」が「おばさん」になった日 V
  • 52 第6章 兆し、赤眼が映すモノ T
  • 53 第6章 兆し、赤眼が映すモノ U
  • 54 第6章 兆し、赤眼が映すモノ V
  • 55 第6章 兆し、赤眼が映すモノ W
  • 56 第6章 兆し、赤眼が映すモノ X
  • 57 第6章 兆し、赤眼が映すモノ Y
  • 58 第6章 兆し、赤眼が映すモノ Z
  • 59 第6章 兆し、赤眼が映すモノ [
  • 60 第6章 兆し、赤眼が映すモノ \
  • 61 第6章 兆し、赤眼が映すモノ ]
  • 62 第6章 兆し、赤眼が映すモノ ]T
  • 63 第6章 兆し、赤眼が映すモノ ]U
  • 64 第7章 トガビト T
  • 65 第7章 トガビト U
  • 66 第7章 トガビト V
  • 67 第7章 トガビト W
  • 68 第7章 トガビト X
  • 69 第7章 トガビト Y
  • 70 第7章 トガビト Z
  • 71 第7章 トガビト [
  • 72 第7章 トガビト \
  • 73 第7章 トガビト ]
  • 74 第7章 トガビト ]T
  • 75 第7章 トガビト ]U
  • 76 第7章 トガビト ]V
  • 77 外伝2 募る想い実らん… T
  • 78 外伝2 募る想い実らん… U
  • 79 第8章 閑話〜過去から今と戦いへ〜 T
  • 80 第8章 閑話〜過去から今と戦いへ〜 U
  • 81 第9章 影と真と T
  • 82 第9章 影と真と U
  • 83 第9章 影と真と V
  • 84 第9章 影と真と W
  • 85 第9章 影と真と X
  • 86 第9章 影と真と Y
  • 87 第9章 影と真と Z
  • 88 第9章 影と真と [
  • 89 第9章 影と真と \
  • 90 第9章 影と真と ]
  • 91 第9章 影と真と ]T
  • 92 外伝3 暗夜の雲 T
  • 93 外伝3 暗夜の雲 U
  • 94 第10章 異変… T
  • 95 第10章 異変… U
  • 96 第10章 異変… V
  • 97 第10章 異変… W
  • 98 第10章 異変… X
  • 99 第10章 異変… Y
  • 100 第10章 異変… Z
  • 101 第10章 異変… [
  • 102 第11章 懐かしき人と悲しき別れ T
  • 103 第11章 懐かしき人と悲しき別れ U
  • 104 第11章 懐かしき人と悲しき別れ V
  • 105 第11章 懐かしき人と悲しき別れ W
  • 106 第11章 懐かしき人と悲しき別れ X
  • 107 第11章 懐かしき人と悲しき別れ Y
  • 108 第11章 懐かしき人と悲しき別れ Z
  • 109 第11章 懐かしき人と悲しき別れ [
  • 110 第11章 懐かしき人と悲しき別れ \
  • 111 第12章 砂漠の亡霊 T
  • 112 第12章 砂漠の亡霊 U
  • 113 第12章 砂漠の亡霊 V
  • 114 第12章 砂漠の亡霊 W
  • 115 第12章 砂漠の亡霊 X
  • 116 第12章 砂漠の亡霊 Y
  • 117 第12章 砂漠の亡霊 Z
  • 118 第12章 砂漠の亡霊 [
  • 119 第12章 砂漠の亡霊 \
  • 120 第12章 砂漠の亡霊 ]
  • 121 第13章 しらせ T
  • 122 第13章 しらせ U
  • 123 第13章 しらせ V
  • 124 第13章 しらせ W
  • 125 第13章 しらせ X
  • 126 第13章 しらせ Y
  • 127 第13章 しらせ Z
  • 128 第13章 しらせ [
  • 129 第13章 しらせ \
  • 130 第14章 はじまりの真実 T
  • 131 第14章 はじまりの真実 U
  • 132 第14章 はじまりの真実 V
  • 133 第14章 はじまりの真実 W
  • 134 第14章 はじまりの真実 X
  • 135 第14章 はじまりの真実 Y
  • 136 第14章 はじまりの真実 Z
  • 137 第14章 はじまりの真実 [
  • 138 第14章 はじまりの真実 \
  • 139 第14章 はじまりの真実 ]
  • 140 第14章 はじまりの真実 ]T
  • 141 第14章 はじまりの真実 ]U
  • 142 外伝4 出会いの剣 T
  • 143 外伝4 出会いの剣 U
  • 144 外伝4 出会いの剣 V
  • 145 第15章 継がれゆく灯火 T
  • 146 第15章 継がれゆく灯火 U
  • 147 第15章 継がれゆく灯火 V
  • 148 第15章 継がれゆく灯火 W
  • 149 第15章 継がれゆく灯火 X
  • 150 第15章 継がれゆく灯火 Y
  • 151 第15章 継がれゆく灯火 Z
  • 152 第15章 継がれゆく灯火 [
  • 153 第15章 継がれゆく灯火 \
  • 154 第15章 継がれゆく灯火 ]
  • 155 第15章 継がれゆく灯火 ]T
  • 156 第15章 継がれゆく灯火 ]U
  • 157 第16章 引き潮の彼方で T
  • 158 第16章 引き潮の彼方で U
  • 159 第16章 引き潮の彼方で V
  • 160 第16章 引き潮の彼方で W
  • 161 第16章 引き潮の彼方で X
  • 162 第16章 引き潮の彼方で Y
  • 163 第16章 引き潮の彼方で Z
  • 164 第16章 引き潮の彼方で [
  • 165 第16章 引き潮の彼方で \
  • 166 第16章 引き潮の彼方で ]
  • 167 第17章 約束の場所の誓い T
  • 168 第17章 約束の場所の誓い U
  • 169 第17章 約束の場所の誓い V
  • 170 第17章 約束の場所の誓い W
  • 171 第17章 約束の場所の誓い X
  • 172 第17章 約束の場所の誓い Y
  • 173 第17章 約束の場所の誓い Z
  • 174 第17章 約束の場所の誓い [
  • 175 第17章 約束の場所の誓い \
  • 176 外伝5 朝焼けの手記 T
  • 177 外伝5 朝焼けの手記 U
  • 178 第18章 そして影は消え…… T
  • 179 第18章 そして影は消え…… U
  • 180 第18章 そして影は消え…… V
  • 181 第18章 そして影は消え…… W
  • 182 第18章 そして影は消え…… X
  • 183 第18章 そして影は消え…… Y
  • 184 第18章 そして影は消え…… Z
  • 185 外伝6 いつか紡ぐ明日へ T
  • 186 外伝6 いつか紡ぐ明日へ U
  • 187 第19章 光と少年 
  • 第10章 異変… T

    目を覚ますと、そこは木造の建物の中だった。フカフカとは言い難いが、ある程度整えられたベッドの上にロインは横たわっていた。

    「ここは?」

    見覚えのない風景に、ロインは少し混乱していた。起きたばかりだからだろう、まだ意識ははっきりしない。霞がかった頭で、ゆっくりと記憶を探る。

    確か、アール山であの老司祭と戦っていたはずだ。そして…

    「ガルザ!」

    はっと重要なことを思い出し、ベッドから飛び起き上がった。しかし、次の瞬間、彼の全身を激しい痛みが襲った。顔をしかめ、再びベッドの上に横たわると、特に激しい痛みを感じる部位へそっと手を伸ばした。そこは、ガルザとの戦いで深く斬られていた右脇腹。包帯による手当てがなされていた。そこでロインはふと気が付いた。上着は身にまとっておらず、他の負傷した箇所全てに手当てがされていた。

    「おっ!気が付いたみたいだな。」

    その時、聞き覚えのある声と共にいい匂いが漂ってきた。ロインがそちらを向くと、2人分の食事を手にしたカイウスが現れた。彼は気が付いたロインに嬉しそうな顔を見せ、傍にある椅子を引き寄せて座った。それから、また起き上がろうとするロインを手で制し、話しかけた。

    「気分はどうだ?」
    「…まあまあだな。それより、カイウス。ここは?あれから何があった?」
    「まぁ、落ち着けって。食べられるか?」

    焦りを見せるロインをなだめるように、カイウスは運んできた器を手渡した。中には、でき立て熱々のお粥が入っていた。「それどころじゃない」と怒鳴り声を上げそうになったロインだが、カイウスを睨み付けたのとほぼ同時に、腹の虫が鳴き声をあげた。それを聞き、カイウスは笑い声をあげ、ロインは赤面する。

    「わ、笑うな!!」
    「ははっ!悪い悪い。けど、仕方ねぇよ。2日は眠ってたんだから。」

    その言葉を聞いた途端、ロインは目を丸くした。

    「2日…だって?」
    「ああ。それだけ怪我もひどかった、ってことだろう。」

    カイウスはそう言って、もう一度ロインに器を渡した。ロインは何か物言いたげだったが、それを堪え、ぎこちなく頷くとカイウスの手から器を受け取った。一口それを口に運ぶと、体は次々とその温もりを受け入れていく。さすがに眠り続けたせいだろうか、いつの間にか空腹を満たすために懸命になっていた。そんなロインの姿を見て、カイウスは微笑を浮かべる。そして自分もお粥を頬張り、静かに口を開いた。

    「ここはフェルン村。オレとルビアの故郷だ。」
    「『フェルン』?アレウーラか?」

    少しだけ手を休め、ロインはカイウスを向いた。カイウスはまたお粥を口に運び、それからひとつ頷いた。

    「ああ。大陸の南にある小さな村さ。転移の魔法(プリセプツ)で、オレ達はフェルンのはずれに飛ばされたんだ。」

    順を追って話そう。カイウスはそう言って、静かに口を開いた。



    時刻は夜明け前。ふと意識を取り戻したカイウスは、周囲を見回した。生い茂る木々に囲まれた場所で、他の仲間たちと共に倒れ伏していた。その中でもう1人、幼馴染のルビアがカイウス同様目を覚ました。

    「ルビア、大丈夫か?」
    「うん。けど、あたしより皆の方が…」

    そう言ってルビアは、他の4人に目を向けた。彼女の一番そばで倒れているのは、左半身の怪我が酷いラミーだ。顔色は青ざめ、すぐになんらかの処置を行わなければ危険な状態。ルビアは立ち上がり、彼女に治癒術を施そうとした。だが、その体はふらつき安定しない。すぐに地面に手をついてしまう。カイウスらに比べ、ルビアは一番外傷が少ない。しかし、先の戦いで魔力を消費しすぎた。その疲労が、彼女の動きを鈍らせる。

    「無理するなよ。それより、ここはどこだ?」

    再び周囲を見回す。暗いせいで、いまいち現在地を把握できない。しかし感じる、妙な懐かしさ。今までに訪れたことのある場所だとすれば、その感覚に納得がいく。暗闇を照らすのは、沈みかけている星星や月、そして昇りかけている太陽だ。だが、それらに照らされていても、自分達を見下ろす巨山は目に入らない。どうやらアール山からは離れることができているらしい。それを理解し、ひとまずほっと息をつく。あのまま戦い続けるのは、さすがに拙かった。

    「…っ!誰だ!!」

    がさっと草を踏む音がした。カイウスは瞬時にそちらを向き、傷ついた身体で身構えた。すると、カイウスの声に驚いた小さい悲鳴が返ってきて、木の陰から、誰かが恐る恐る姿を覗かせた。その人物を見た途端、ルビアの目が大きく開いた。

    「もしかして、スカーレット?」
    「あなた達、カイウスにルビアね!」

    ルビアが呼んだスカーレットという女性は、その声を聞くと、驚きと喜びの声を上げて彼らに駆け寄った。そして、顔色を変え、慌てた声をあげた。

    「どうしたの!?酷く傷ついているじゃない。歩ける?こっちよ!」

    彼女はすぐさま手を差し伸べ、カイウスとルビアをゆっくり立たせ、気を失っているロイン達を背負って歩き出した。その時、ベディーも意識を取り戻し、自分の足で彼らのあとを歩き出した。そして5分もかからないうちに見えた複数の灯火。そして最も近くに現れた建物に、ルビアは息を呑んだ。

    「ここ…あたしの家だ…」

    夢を見ているようなルビアの声。だが、高い屋根の教会は、間違いなく彼女がずっと暮らしてきた場所だった。そのそばには、2年前に亡くなった彼女の両親の墓がある。

    「さあ、早く中へ。手当てをしてあげるから。」
    「け、けど…」

    スカーレットの誘いに、なぜかカイウスは渋った。その表情を感じ取ったルビアの顔も、途端に曇りだす。しかし、スカーレットはそんなカイウスをお構いなしに、その傷ついた腕を引っ張って教会の中へ連れて行こうとする。

    「あなたの“事情”なら、気にすることないわ。さ、ルビア達も。」

    スカーレットはそう言い、ルビアやベディーは多少戸惑いつつも、彼女の言葉に従い、教会の奥へと足を踏み入れた。



    「…それじゃ、ここはフェルンの教会の中?」

    キョロキョロと部屋の中を見回しながら、ロインは尋ねた。カイウスは「まあな」と答えた。

    「女子は別の部屋で休んでる。ベディーは外出してるけどな。」
    「! そうだ、ティマ!あいつは無事…っ!」

    突然激しく動いたロインは、再び怪我の痛みに襲われた。それを、カイウスが慌てて落ち着けた。

    「お、おい!まだ無理するなって。オレだって、まだ治りきってないんだから。」

    そう言って、カイウスは自分の服を途中までめくりあげた。ロイン同様、傷口は包帯などで手当されている。その白い包帯が、一部赤く染まっていた。それは、バキラのあの黒い触手のようなものに貫かれたところだった。まだ塞がりきれていないのだろう。じわりと赤が広がっていく。

    「なっ!?カイウス、お前大丈夫なのかよ!」
    「まあな。痛えけど、だいぶマシになった方だ。」

    心配の様子を見せるロインにニカッと笑ってみせ、カイウスは服を元に戻した。言葉通り、苦痛の表情は見えない。自分の眠っている間に、だいぶ回復できたようだった。

    「それと、ティマにはルビアがついてる。あいつがいれば、なんとかなるさ。」

    カイウスは心から、大丈夫だとロインに笑みをみせた。



    赤茶の瞳はまだ開かない。ティマは、彼らと再会してからずっと眠り続けていた。その隣で思わず耳を覆いたくなるほどの絶叫が聞こえていても、その目は閉じられたままだ。

    「痛い痛い痛い痛いいっ!!」
    「もう、それくらい我慢しなさいよ。」

    ルビアはため息を吐きながら、ベッドで上半身を起こしているラミーの左腕に包帯を巻いていた。2人とも、普段は結い上げている赤髪を下ろし、上着やマントは羽織っていない。

    「もう少し優しくできないのかよ?」
    「残念だけど、あたしはお医者様じゃないもの。それより、そんなに大きな声を出さないで。ティマが起きちゃうわ。」
    「むしろ、いい加減起こせよ!いつまで寝かしとくつもり…げほ、げほっ!」

    きつく巻かれていく包帯に涙目になるラミー。その威勢は変わらずだが、ルビアの言葉に反抗しようとした時、突然咳き込んでしまった。ルビアはその背を優しくさする。

    「大丈夫?」
    「あ、ああ…平気さ。」

    息を整え、ラミーはもう一度ティマを見た。その目にあるのは、眠り続けている彼女への不安だった。ラミーが目覚めたのは、フェルンにたどり着いた日の日没後だった。ロインも目を覚まし、あとはティマだけ。ルビアも不安に思えど、どうすることもできなかった。どういうわけか、今のティマに癒しの術は効かなかった。外傷の処置は無事に終えた。あとは彼女次第。今のルビア達にできるのは、神に祈り、ティマが無事に目覚めるその時を待つことだけだった。

    「……るび、あ…らみぃ……いるの…?」

    その時、久々に聞く声が2人を呼んだ。はっと横を見ると、虚ろな赤茶色の瞳がこちらを見ていた。

    12/07/02 19:47 ちよ   

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