第12章 砂漠の亡霊 ]
呻き声を上げるミュラー兄弟の赤い双眸から、闘志は消えていなかった。だが、アーリアの放った上級プリセプツによるダメージは大きい。立ち上がることはできても、戦闘を続けることは難しいだろう。一方、今のプリセプツの反動か、アーリアの呼吸も少し荒くなっていた。だがこちらの余力はまだあるようで、揺らぐことのない瞳でアルバートを見据えていた。
「今の、一体…?」
今まで見たことのない現象に、思わずカイウスはぽつりと言葉を溢した。その呟きを拾ったルビアは、アルバートとバージェスを交互に見ながら口を開いた。
「たぶん、ひとつのプリセプツを同時に複数発動させる仕組みのプリセプツを展開させていたのよ。でも…あんなプリセプツ、初めて見た。」
おそらく、アーリアが独自に組み上げた術式なのだろう。この2年で少しは追いついたと思っていた背中が、まだまだ遠くにあるように感じられた。しかし同時に、ルビアはアーリアへの尊敬から胸を高鳴らせていた。そしてロインとティルキス、獣人化を解いたフォレストとベディーがそれぞれ、今の隙にアルバートとバージェスに止めをさそうと動いた。
「アッハハハ!」
その時だった。風に乗って、甲高い笑い声が響き渡った。瞬時に、彼らの注意はその声へと向けられた。だが、周囲に変化はない。突然現れた声の主はどこにいるのか、その場にいる全員が警戒しながら探した。
「上だ!」
そして、ラミーの声に皆が上空を見上げた。地上から十数メートル離れた場所に、その人物はいた。外見はアーリアと同じくらいの年齢の女性。短い黒髪に、腕や腹部を露出した服装をしており、特に意識している様子はなくとも凛とした佇まいを見せ、その姿には妖艶に似た美しさを思わせる。だが右腕と左足は黒い魔物のそれで、ただの人間でないことがわかる。そしてその目。禍々しい赤色をしている。
「スポットか!?」
そう口にしたカイウスは、ひどい悪寒を感じていた。新たに現れた敵。それもタダものでないことは、その気品漂う身のこなしと、意識せずとも溢れ出る巨大で禍々しいオーラから理解できる。だが女性はロインらに目をくれず、ミュラー兄弟を高みから嘲笑していた。
「滑稽なことよ。ワラワら同胞の力を持ってしても、己が欲を果たせぬとは。のう?」
「何だと、貴様!」
発せられた言葉は、ロイン達ではなくミュラー兄弟に向けられたもの。アルバートは女性を睨みつけ、傷ついた身体を起こした。彼の言動。どうやら、対面するのはロイン達だけでなく、彼ら兄弟も初めてのようだ。スポット特有の禍々しい気配から彼らにとって敵ではないと認識しているに違いないが、その物言いが少なからず癪に障ったのか、苛立った面持ちをしている。
「頭が高いぞ。」
だが、今度は女性の方が彼らの様に不満を抱いたようだ。地の底から響くようなおぞましい声。その声と同じくらい冷めきった眼差しがミュラーの2人を捉えた刹那、彼らを重圧が襲った。ダメージとは関係なく、その身体は砂漠の上に這いつくばることになった。
「ぐっ!?」
「何故だ。身体が勝手に…!」
「それは内に宿る同胞の血が覚えておるからよ。ワラワの偉大さを。」
突然の現象に理解できず、彼らは重圧の中、それに抗い面を上げた。その様を彼女は気味良さそうに、また嘲笑っている。そしてその時、2人の前でつむじ風が起きた。巻き上げられる砂ぼこりに目を細めながらも、ロインたちはそこに現れた人物に驚愕した。
「バキラ!」
その名を叫び、ロインらは剣に手をかえて構えた。ティルキスやフォレスト、アーリアは初めて見る老人の姿をまじまじと見つめながら、ロイン達同様警戒し、身構える。だがバキラはロインらにちらと視線を向けただけで、再びつむじ風と共に砂漠から姿を消してしまった。そしてアルバートとバージェスの姿も、老人と共に消えていた。
「ほう?ヌシらか。父が世話になったのは。」
そして残った彼女は、舐めるような視線でロイン達を捉えた。彼女はゆっくりと降下し、地上から僅かに足元を浮かせたところで留まった。ロインらの警戒は、一瞬で消えたバキラから彼女に移っていた。そんな彼らを嘲笑いながら、彼女はゆったりと口を開いた。
「ワラワはアーレス・ガーナー。この世界の新たな支配者となる者よ。」
「なん、だと…!?」
彼女の発言に驚愕したのは、カイウスやティルキスたち5人だった。アーレス・『ガーナー』。その名は、2年前にカイウス達が対峙したアレウーラ王に憑いたスポットの名、ウォールス・『ガーナー』と同じだった。そして先ほどの「父」という言葉。つまり、彼女はスポット界の姫であり、スポットらを統べる者ということにある。ロインたちも、『ガーナー』の名を知らずとも、バキラの存在によりその事実を感じ取ったらしい。彼らに戦慄が走る一方で、アーレスはくすくすと笑みを浮かべている。
「さて。邪魔が失せたところで目的を果たすとしよう。…ワラワがヌシらにこうして会いに来たのは、挨拶のためじゃ。」
「挨拶、だと?」
アーレスは先ほどまでミュラー兄弟がいた場所を一瞥しながら言った。そして警戒を解かぬまま、カイウスはアーレスに聞き返す。その隣では、ルビアとアーリアが何やら視線でコンタクトをとっている。アーレスはそれを気に留めることなく、カイウスの言葉に返答した。
「そう。これより、ワラワの同胞がこちらの世界の住人となる。ヌシらにはその挨拶に来た。」
「ふざけるな!」
その言葉と共に、ロインは駆けた。そしてアーレスに向かい、剣撃をお見舞いした。だが、その剣は空を切った。瞬間移動。彼女の父も持ち、そしてかつての戦いでカイウスたちを苦しませたテレポート能力。それを使い、アーレスは彼らの遥か上空で高らかに笑っていた。だが
「逃がすもんですか!荒れ狂う古の風よ、我に立ち塞がる邪の者を滅ぼせ!テンペスト!」
「我らが糧たる定明の光よ、ここに集いて邪の者を滅ぼせ!セイクリッドシャイン!」
アーリアとルビア。2人同時に、プリセプツを発動させた。それは古代レイモーンの時代より受け継がれし、史上最強を誇る2つのプリセプツ。嵐のテンペストと、光のセイクリッドシャイン。あのウォールスですら、その2つのプリセプツの前では塵と消えたのだ。いくらアーレスでも、同時に襲いかかるこの攻撃に耐えられるはずがない。
「フフッ。慌てるな。ヌシらには、この世界が新たな時代に入る瞬間を見届けてもらう。ヌシらを葬るのは、その後じゃ。」
だが、彼らのそんな考えをあっさりと砕き、アーレスは彼らの真後ろに姿を現したのだ。その瞬間、最も近くにいたラミーが驚きながらも引き金をひく。しかし、アーレスはそれを軽々とかわしてみせ、その上怯むラミーの頬をすっと撫でながらそう言ったのだ。そして自分目がけ飛び込んでくるベディーを視線で嘲笑し、ふっ、と空中へ上っていった。
「大いに絶望せよ。そうしてワラワを楽しませてみよ。アッハハハ…!」
そして現れた時と同じように甲高い笑い声を残し、アーレスは一瞬にして姿を消した。あたりに残されたのは不気味な静寂。そしてロインらの胸の内に、複雑に蠢く思いが生まれていた。
「どうやら、バキラ以上に厄介なのが現れちまったみたいだな。」
「ああ。アーレスとかいうヤツ。この世界を支配するだなんて、とんでもないことを…!」
静寂を破り、ティルキスとカイウスが呟くように声を発した。
「カイウス。これからどうする?」
そして彼らに続くように、ロインがカイウスに尋ねた。アーレスらを止めるにしても、今の彼らに最良の手段は思いつかない。切り札だと思っていたルビアとアーリアのプリセプツも、易々かわされてしまうようでは意味がない。途方にくれるようにアーレスが消えた場所を見つめるようにして空を仰げば、夜の闇にまぎれて鳥の影があることに気付いた。
「トクナガ。」
それは、『女神の従者』が伝書用に飼っている鷹の姿。ラミーは羽織っているマントを左腕に軽く巻きつけ、腕を高く持ち上げた。そこを目指し、トクナガは華麗に舞い降りた。そしてその脚に巻きつけられている文を取り外すと、ラミーは目を細めた。
「…イーバオから、連絡が入った。」
彼女はそう言った。イーバオから。ティマを無事に送り届けたという報告だろうか。ロインはそう思った。が、そうではないらしいことが、続いて出たラミーの一言で理解できた。
「ラウルスに『女神の従者』が向かってる。」
「なんで?」
「何かあったのか?」
「わかんない。詳しいことは船で説明するって。どうする?」
わざわざこちらに向かっているということは、何やら早急な用があるのだろう。ルビアとフォレストはラミーに尋ねるが、トクナガが運んだ手紙にそれ以上の内容はなかったようだ。ラウルスに向かうしか、その意図を知る手段はない。
「行きましょう。」
そう言ったのはアーリア。彼女は皆を見て、そして続けた。
「アーレスの言葉は無視できないわ。ルキウスにも話して、何か策を考える必要があると思うの。そのためには、ジャンナに行かないと。」
「そうね。」
それに、とルビアはにやりと微笑んだ。
「ティマを呼びに行かないと、ロインの機嫌治らないし。」
「なっ…!」
その発言に、ロインは顔をすこし赤くしてルビアを睨みつけた。だが、彼女はくすくすと笑い、全く気にしていないようだった。そんな2人の様子にカイウスやラミーらも次々に笑い声を上げ、ロインは「勝手にしろ」と言わんばかりにそっぽを向いてしまった。
「日が昇ったら発とう。いいな?みんな。」
ルキウスに話をするにも、ティマに会いに行くにしても、どの道船が必要になる。そのためにも、ラウルスに行かなければならない。彼らの行先は決まった。そしてティルキスの言葉に、皆は頷いた。
そして、砂漠の夜は明けた。
「今の、一体…?」
今まで見たことのない現象に、思わずカイウスはぽつりと言葉を溢した。その呟きを拾ったルビアは、アルバートとバージェスを交互に見ながら口を開いた。
「たぶん、ひとつのプリセプツを同時に複数発動させる仕組みのプリセプツを展開させていたのよ。でも…あんなプリセプツ、初めて見た。」
おそらく、アーリアが独自に組み上げた術式なのだろう。この2年で少しは追いついたと思っていた背中が、まだまだ遠くにあるように感じられた。しかし同時に、ルビアはアーリアへの尊敬から胸を高鳴らせていた。そしてロインとティルキス、獣人化を解いたフォレストとベディーがそれぞれ、今の隙にアルバートとバージェスに止めをさそうと動いた。
「アッハハハ!」
その時だった。風に乗って、甲高い笑い声が響き渡った。瞬時に、彼らの注意はその声へと向けられた。だが、周囲に変化はない。突然現れた声の主はどこにいるのか、その場にいる全員が警戒しながら探した。
「上だ!」
そして、ラミーの声に皆が上空を見上げた。地上から十数メートル離れた場所に、その人物はいた。外見はアーリアと同じくらいの年齢の女性。短い黒髪に、腕や腹部を露出した服装をしており、特に意識している様子はなくとも凛とした佇まいを見せ、その姿には妖艶に似た美しさを思わせる。だが右腕と左足は黒い魔物のそれで、ただの人間でないことがわかる。そしてその目。禍々しい赤色をしている。
「スポットか!?」
そう口にしたカイウスは、ひどい悪寒を感じていた。新たに現れた敵。それもタダものでないことは、その気品漂う身のこなしと、意識せずとも溢れ出る巨大で禍々しいオーラから理解できる。だが女性はロインらに目をくれず、ミュラー兄弟を高みから嘲笑していた。
「滑稽なことよ。ワラワら同胞の力を持ってしても、己が欲を果たせぬとは。のう?」
「何だと、貴様!」
発せられた言葉は、ロイン達ではなくミュラー兄弟に向けられたもの。アルバートは女性を睨みつけ、傷ついた身体を起こした。彼の言動。どうやら、対面するのはロイン達だけでなく、彼ら兄弟も初めてのようだ。スポット特有の禍々しい気配から彼らにとって敵ではないと認識しているに違いないが、その物言いが少なからず癪に障ったのか、苛立った面持ちをしている。
「頭が高いぞ。」
だが、今度は女性の方が彼らの様に不満を抱いたようだ。地の底から響くようなおぞましい声。その声と同じくらい冷めきった眼差しがミュラーの2人を捉えた刹那、彼らを重圧が襲った。ダメージとは関係なく、その身体は砂漠の上に這いつくばることになった。
「ぐっ!?」
「何故だ。身体が勝手に…!」
「それは内に宿る同胞の血が覚えておるからよ。ワラワの偉大さを。」
突然の現象に理解できず、彼らは重圧の中、それに抗い面を上げた。その様を彼女は気味良さそうに、また嘲笑っている。そしてその時、2人の前でつむじ風が起きた。巻き上げられる砂ぼこりに目を細めながらも、ロインたちはそこに現れた人物に驚愕した。
「バキラ!」
その名を叫び、ロインらは剣に手をかえて構えた。ティルキスやフォレスト、アーリアは初めて見る老人の姿をまじまじと見つめながら、ロイン達同様警戒し、身構える。だがバキラはロインらにちらと視線を向けただけで、再びつむじ風と共に砂漠から姿を消してしまった。そしてアルバートとバージェスの姿も、老人と共に消えていた。
「ほう?ヌシらか。父が世話になったのは。」
そして残った彼女は、舐めるような視線でロイン達を捉えた。彼女はゆっくりと降下し、地上から僅かに足元を浮かせたところで留まった。ロインらの警戒は、一瞬で消えたバキラから彼女に移っていた。そんな彼らを嘲笑いながら、彼女はゆったりと口を開いた。
「ワラワはアーレス・ガーナー。この世界の新たな支配者となる者よ。」
「なん、だと…!?」
彼女の発言に驚愕したのは、カイウスやティルキスたち5人だった。アーレス・『ガーナー』。その名は、2年前にカイウス達が対峙したアレウーラ王に憑いたスポットの名、ウォールス・『ガーナー』と同じだった。そして先ほどの「父」という言葉。つまり、彼女はスポット界の姫であり、スポットらを統べる者ということにある。ロインたちも、『ガーナー』の名を知らずとも、バキラの存在によりその事実を感じ取ったらしい。彼らに戦慄が走る一方で、アーレスはくすくすと笑みを浮かべている。
「さて。邪魔が失せたところで目的を果たすとしよう。…ワラワがヌシらにこうして会いに来たのは、挨拶のためじゃ。」
「挨拶、だと?」
アーレスは先ほどまでミュラー兄弟がいた場所を一瞥しながら言った。そして警戒を解かぬまま、カイウスはアーレスに聞き返す。その隣では、ルビアとアーリアが何やら視線でコンタクトをとっている。アーレスはそれを気に留めることなく、カイウスの言葉に返答した。
「そう。これより、ワラワの同胞がこちらの世界の住人となる。ヌシらにはその挨拶に来た。」
「ふざけるな!」
その言葉と共に、ロインは駆けた。そしてアーレスに向かい、剣撃をお見舞いした。だが、その剣は空を切った。瞬間移動。彼女の父も持ち、そしてかつての戦いでカイウスたちを苦しませたテレポート能力。それを使い、アーレスは彼らの遥か上空で高らかに笑っていた。だが
「逃がすもんですか!荒れ狂う古の風よ、我に立ち塞がる邪の者を滅ぼせ!テンペスト!」
「我らが糧たる定明の光よ、ここに集いて邪の者を滅ぼせ!セイクリッドシャイン!」
アーリアとルビア。2人同時に、プリセプツを発動させた。それは古代レイモーンの時代より受け継がれし、史上最強を誇る2つのプリセプツ。嵐のテンペストと、光のセイクリッドシャイン。あのウォールスですら、その2つのプリセプツの前では塵と消えたのだ。いくらアーレスでも、同時に襲いかかるこの攻撃に耐えられるはずがない。
「フフッ。慌てるな。ヌシらには、この世界が新たな時代に入る瞬間を見届けてもらう。ヌシらを葬るのは、その後じゃ。」
だが、彼らのそんな考えをあっさりと砕き、アーレスは彼らの真後ろに姿を現したのだ。その瞬間、最も近くにいたラミーが驚きながらも引き金をひく。しかし、アーレスはそれを軽々とかわしてみせ、その上怯むラミーの頬をすっと撫でながらそう言ったのだ。そして自分目がけ飛び込んでくるベディーを視線で嘲笑し、ふっ、と空中へ上っていった。
「大いに絶望せよ。そうしてワラワを楽しませてみよ。アッハハハ…!」
そして現れた時と同じように甲高い笑い声を残し、アーレスは一瞬にして姿を消した。あたりに残されたのは不気味な静寂。そしてロインらの胸の内に、複雑に蠢く思いが生まれていた。
「どうやら、バキラ以上に厄介なのが現れちまったみたいだな。」
「ああ。アーレスとかいうヤツ。この世界を支配するだなんて、とんでもないことを…!」
静寂を破り、ティルキスとカイウスが呟くように声を発した。
「カイウス。これからどうする?」
そして彼らに続くように、ロインがカイウスに尋ねた。アーレスらを止めるにしても、今の彼らに最良の手段は思いつかない。切り札だと思っていたルビアとアーリアのプリセプツも、易々かわされてしまうようでは意味がない。途方にくれるようにアーレスが消えた場所を見つめるようにして空を仰げば、夜の闇にまぎれて鳥の影があることに気付いた。
「トクナガ。」
それは、『女神の従者』が伝書用に飼っている鷹の姿。ラミーは羽織っているマントを左腕に軽く巻きつけ、腕を高く持ち上げた。そこを目指し、トクナガは華麗に舞い降りた。そしてその脚に巻きつけられている文を取り外すと、ラミーは目を細めた。
「…イーバオから、連絡が入った。」
彼女はそう言った。イーバオから。ティマを無事に送り届けたという報告だろうか。ロインはそう思った。が、そうではないらしいことが、続いて出たラミーの一言で理解できた。
「ラウルスに『女神の従者』が向かってる。」
「なんで?」
「何かあったのか?」
「わかんない。詳しいことは船で説明するって。どうする?」
わざわざこちらに向かっているということは、何やら早急な用があるのだろう。ルビアとフォレストはラミーに尋ねるが、トクナガが運んだ手紙にそれ以上の内容はなかったようだ。ラウルスに向かうしか、その意図を知る手段はない。
「行きましょう。」
そう言ったのはアーリア。彼女は皆を見て、そして続けた。
「アーレスの言葉は無視できないわ。ルキウスにも話して、何か策を考える必要があると思うの。そのためには、ジャンナに行かないと。」
「そうね。」
それに、とルビアはにやりと微笑んだ。
「ティマを呼びに行かないと、ロインの機嫌治らないし。」
「なっ…!」
その発言に、ロインは顔をすこし赤くしてルビアを睨みつけた。だが、彼女はくすくすと笑い、全く気にしていないようだった。そんな2人の様子にカイウスやラミーらも次々に笑い声を上げ、ロインは「勝手にしろ」と言わんばかりにそっぽを向いてしまった。
「日が昇ったら発とう。いいな?みんな。」
ルキウスに話をするにも、ティマに会いに行くにしても、どの道船が必要になる。そのためにも、ラウルスに行かなければならない。彼らの行先は決まった。そしてティルキスの言葉に、皆は頷いた。
そして、砂漠の夜は明けた。
■作者メッセージ
おまけスキット
【本音】
ルビア「ねぇ、ロイン。さっきの戦いだけど。」
ロイン「なんだ?」
ルビア「あなた、アーリアが動くまで、お兄様の加勢をしなかったわよね?何か意味でもあったの?」
ロイン「別に。オレはただ、自分の戦うべき相手と戦おうとしないヤツに加勢する義理はないと思っただけだ。」
ルビア「つまり、アーリアの態度が気に入らなかっただけってこと?」
ロイン「それ以外に理由があってほしかったか?」
ルビア「…いいえ、結構よ…。」
【アーリアの腕】
カイウス「アーリア。さっきのプリセプツ、すごかったな!」
アーリア「ああ、あれ?実は、冥府の法をもとに作り上げたの。」
ラミー「冥府の法だって?」
アーリア「ええ。バキラが同時に複数のプリセプツを発動させた、あの現象をヒントに構築したの。ただ、同じ魔法を2つ発動する時に使う魔力と威力をそれぞれ100とするなら、あのプリセプツでは発動消費魔力を20%ほど抑えられたけど、攻撃の威力も85%ほどしか出せなかったわ。それに扱いが難しいし、まだまだ未完成ってところね。あの時、上手くいってくれて良かったわ。」
カイウス「あれで、未完成!?」
ラミー「マジかよ!アーリア、あんたすごいな。プリセプツを構築するその頭も、使い手としての腕も!」
アーリア「ふふ。ありがとう。」
【本音】
ルビア「ねぇ、ロイン。さっきの戦いだけど。」
ロイン「なんだ?」
ルビア「あなた、アーリアが動くまで、お兄様の加勢をしなかったわよね?何か意味でもあったの?」
ロイン「別に。オレはただ、自分の戦うべき相手と戦おうとしないヤツに加勢する義理はないと思っただけだ。」
ルビア「つまり、アーリアの態度が気に入らなかっただけってこと?」
ロイン「それ以外に理由があってほしかったか?」
ルビア「…いいえ、結構よ…。」
【アーリアの腕】
カイウス「アーリア。さっきのプリセプツ、すごかったな!」
アーリア「ああ、あれ?実は、冥府の法をもとに作り上げたの。」
ラミー「冥府の法だって?」
アーリア「ええ。バキラが同時に複数のプリセプツを発動させた、あの現象をヒントに構築したの。ただ、同じ魔法を2つ発動する時に使う魔力と威力をそれぞれ100とするなら、あのプリセプツでは発動消費魔力を20%ほど抑えられたけど、攻撃の威力も85%ほどしか出せなかったわ。それに扱いが難しいし、まだまだ未完成ってところね。あの時、上手くいってくれて良かったわ。」
カイウス「あれで、未完成!?」
ラミー「マジかよ!アーリア、あんたすごいな。プリセプツを構築するその頭も、使い手としての腕も!」
アーリア「ふふ。ありがとう。」