第14章 はじまりの真実 U
スポット討伐にむけ、一同は静かに気合を入れ直した。その時、何かを考えついたフレアが皆を見回し、彼らの後方を指さして言った。
「この通路の突き当たりにある梯子を登れば、市街地に出られるはずです。皆さんはそちらへ。」
「あんたは?」
「私は今の通路に戻り、城に向かいます。」
「一人で行く気か?危険だ。」
ラミーの問いに答えたフレアに、フォレストは静かに警告を促した。だが、彼女は首を横に振った。
「スポットが現れたのは、城のある方角でした。私は陛下の無事を確認しに行かなければ。」
そう言って、フレアは首を振るだけだった。その意思は変わる気配を見せず、しかし現状で彼女を一人にするわけにもいかず、一行はどうするべきか戸惑いを見せた。
「私も行く。」
その時、ロイン達にとって思ってもいなかった声が耳に入り、彼らは驚き振り返った。その視線の先にいたティマは、自身の得物を手にとり、覚悟を決めた表情で彼らを見つめ返していた。
「私も王様が心配だもの。」
「マウディーラ王には近衛騎士がついてるはずだ。心配いらねぇよ。」
「けど…。」
その手にこもる力の強さを感じながら、ロインはティマを落ち着かせるかのように言った。彼の言う通り、仮に城内にスポットの軍勢が押し掛けていたとしても、よほどの事態に陥っていない限り王の身は安全だろう。そうとわかっていてもティマの不安が晴れないのは、自身の出生を知った今、そこにいるのが血を分けた実の両親だとわかっているからだ。その心の内を理解したのか、ロインは仕方がないというように溜息をひとつ吐いた。
「…なら、オレも行く。」
そして口にした内容に、再びカイウスらが、そしてティマも目を丸くした。しかしロインはそんなことなど気にせず、ティマを見つめながら言葉を続けた。
「今のお前一人でスポットをどうにかできるとは思ってねぇよ。」
それに、とロインは口角を上げた。
「ティマはオレから離れないんだろ?なら、ついてってやらないと城には行けないしな。」
「なっ!そ、そういう意味で言ったんじゃない!」
からかうような口調で言うロインに、ティマはみるみる顔を赤くしていった。そんな2人のやり取りに、一行からは思わずくすくすと笑いがこぼれていた。そして笑みを浮かべたまま、ベディーが一歩ティマに歩み寄った。
「僕も行くよ。君を無事城に連れて帰るのが、僕の目的なんだから。」
「なら、あたいもついていく!」
「やれやれ。この調子だと、全員で城に乗り込むことになりそうだ。」
次々と声を上げる仲間達の様子に、ティルキスは苦笑気味にそう言った。それからおおげさに腕を組んで考える動作をしながら少し間を空け、全員を見渡して言った。
「じゃあ、こうしよう。城内に詳しくない俺、フォレスト、アーリアは市街地に、他の者は城へ向かうんだ。フレアの言った通りスポットが城の方角から現れているなら、そっちを優先して叩くべきだからな。」
そうティルキスは提案した。だが、すぐにアーリアがそれに異を唱えた。
「ロインやカイウスはともかく、ベディーが城へ向かうのは危険じゃないの?」
「だが、ティマやラミーのことを考えると、これ以上戦力を減らす方が危険だ。それに、ベディーがレイモーンの民だとバレなければなんとかなるだろう。…騒ぎが一段落したら、城門の前に集合するんだ。いいな?」
ティルキスはアーリアをそう言って説得しながら、ちらりとベディーを盗み見た。彼と目が合うと、ベディーは了承の意をこめて頷く。それを確認してから最終確認にと声をあげると、今度は全員が首を縦に振った。そして、フレアが創りだした岩壁が地中へと消えると、ロイン達は一斉に走り出していった。
「…でも、ティルキス。」
その後ろ姿が見えなくなり、足音も遠のいていった頃、アーリアは再びティルキスに向かって声をかけた。その声と表情は、どこかティルキスを咎めるような、そして不安の混じったものだった。
「いくら島国とはいっても、ここは首都よ。人数が少なすぎるんじゃ…。」
仮にも一国の王子であり、その上しょっちゅう城下に出かけているティルキスがそのくらいのことに気がつかないはずはないとは思いながらも、そう問いかけずにはいられなかった。だがそんなアーリアの気持ちに気付いたのか、ティルキスはくくく、と小さく笑い声をあげた。
「あの船員達も街に向かうと言っていただろう?人数なら、こっちの方が多いよ。」
そしてティルキスはそう答え、にやりと笑みを浮かべていた。
地下水道をしばらく進み続け、フレアに案内された梯子を上ると、武器庫らしい場所に出た。そこから一歩外に出れば、美しさと平穏な雰囲気に満ちていたスディアナの城内があるはずだった。しかし血と死体の臭い、そして混乱で溢れた光景からは、その影はもはやわずかにしか見当たらない。広く長い廊下の至る所でスポットと戦った痕が見つかり、しかし地下で見かけた時よりも多くのスポットが尚も蠢いていた。
「ひどい…。」
「昨日今日のあり様じゃねぇぞ、こりゃ…。」
息絶えてから、おそらく数日は経っていると思われる兵士の遺体、そして漂う腐臭に少女たちは顔をしかめる。少年たちも険しい顔つきになったが、瞳はまっすぐ現状を見つめていた。
「フレア、王様の居場所わかるか?」
カイウスがそう尋ねると、フレアは静かに頷いた。
「近衛騎士が王家の守護にあたる際、敵の襲撃を最も受けにくく、かつ戦闘の行いやすい場所に移動するの。」
「要するにどこに行けばいい?」
「あの広間か!」
「ベディーさん、どこ行くの?」
フレアの話を聞いた直後、ロインとベディーの声が重なった。苛立ちを見せるロインとは対照的に、ベディーは思い当たることがあったのか、言い終わるか終わらないかの瞬間にはすでに駆けだしていた。慌ててティマが先頭となって追いかけていく中、フレアは瞳を細め、その背を見つめていた。
「…覚えていたのね。」
「どういうこと?」
その呟きを耳にしたルビアが怪訝な顔で尋ねる。すると、フレアはちらりと彼女を視野に入れた後、ベディーの背を見つめながら答えた。
「15年前のスディアナ事件の時、彼がウルノアさんと対峙した場所―――城内の中央にある大広間。陛下はそこに居られるはずです。」
それだけの言葉で、ルビアは全てを察した。そして閉口すると、仲間が目指す先に向かって走る事に集中した。途中、行く手を塞ぐスポット達は斬り捨てていくが、あくまでも目的地に向かう事を優先して進む。だが目的地に進むごとに、その数は相乗するように増していく。嫌な予感が募る中、やがて窓のない広間へと出た。そこはロイン達の予想通り、一面黒い影に覆われており、中央には淡い緑の鎧の騎士たちと国王らがいた。
「陛下!」
その姿を目にした途端、フレアは剣を抜きながら一目散に駆けだしていた。ロインたちも彼女に少し遅れて加勢するが、彼らが通って来た方向、そして反対側からも湧いて出てくるスポットとスポットゾンビに対応しきれていなかった。フレアは詠唱で一気に数を減らそうと考えたが、数が多すぎて術を唱える隙がない。おそらく近衛騎士たちが苦戦を強いられていたのも、敵の多さに守りで手いっぱいなせいだろう。
「ルビア!」
「このままじゃ無理よ!逃げるので、精一杯!」
カイウスが乱暴に声をあげるが、それに負けないくらいの勢いでルビアからも声が返ってくる。その言葉通り、後衛の彼女はティマにかばわれながらも、スポットゾンビらの攻撃を避けるのに必死になっていた。その上、スポットらからは魔術も繰り出され、こちらはますます防戦に徹するしか術がなくなる。
「ぐあぁっ!」
「大丈夫か…くっ!?」
「しっかりしろ!」
爆発。剣と剣がぶつかり合う音。悲鳴。処理しきれないほどの音が聞こえ続ける。
「くそっ…ウルノア様がいれば……」
その中で、誰かがそうこぼしたのが耳に入った。それはおそらく、ロインの母グレシアを指した言葉だろうと思った。その声の主が誰かはわからないが、それを聞きとったラミーは、苛立たしげにちっと舌打ちをした。
「くそっ…一か八かだ!」
自慢の俊敏さで敵の攻撃をかわしながら、部屋の中心へと向かっていく。そして王を守る陣の前に躍り出た時、その幼さには似遣わない鋭さを赤い瞳に宿していた。
「ラミー!?」
そんな体で何をするつもりだ!?そうロイン達が問い質す前に、彼女はすでに飛び出していた。両手に構えた短剣で一閃、二閃と一気に影をなぎ倒し、男のスポットゾンビが振り下ろした剣を跳躍でかわすと同時に、華奢な体をひねって強烈な足技を食らわす。そして着地と同時に一斉に飛びかかって来た影たちに、ラミーは自身を中心に四方に床を走る衝撃波を放った。
「みせてやるよ、地獄という名の絶景を!」
語りかけるように、しかし強烈な闘志を宿して口にしたラミーの手に握られていたはずの短剣は、いつのまにか銃へと変わっていた。そして息つく間もなく宙へと身を翻しながら、彼女は両銃の引き金に手をかけた。
「女神の厳罰(クロス・オブ・マリア)!」
そして放たれた弾丸は眩い光をまといながらスポットらの中心に落ち、そこから巨大な十字架を象った光の衝撃波が放たれた。光の十字架の直撃を受けたものはもちろん、その余波を食らったものですら断末魔の悲鳴をあげて消滅していくほどの威力。大広間を埋め尽くすほどいたスポットたちの姿は一気に減り、ようやく近衛騎士達に反撃の機会が訪れた。それと同時に、少女は意識を手放し、その場に崩れ落ちていった。
「この通路の突き当たりにある梯子を登れば、市街地に出られるはずです。皆さんはそちらへ。」
「あんたは?」
「私は今の通路に戻り、城に向かいます。」
「一人で行く気か?危険だ。」
ラミーの問いに答えたフレアに、フォレストは静かに警告を促した。だが、彼女は首を横に振った。
「スポットが現れたのは、城のある方角でした。私は陛下の無事を確認しに行かなければ。」
そう言って、フレアは首を振るだけだった。その意思は変わる気配を見せず、しかし現状で彼女を一人にするわけにもいかず、一行はどうするべきか戸惑いを見せた。
「私も行く。」
その時、ロイン達にとって思ってもいなかった声が耳に入り、彼らは驚き振り返った。その視線の先にいたティマは、自身の得物を手にとり、覚悟を決めた表情で彼らを見つめ返していた。
「私も王様が心配だもの。」
「マウディーラ王には近衛騎士がついてるはずだ。心配いらねぇよ。」
「けど…。」
その手にこもる力の強さを感じながら、ロインはティマを落ち着かせるかのように言った。彼の言う通り、仮に城内にスポットの軍勢が押し掛けていたとしても、よほどの事態に陥っていない限り王の身は安全だろう。そうとわかっていてもティマの不安が晴れないのは、自身の出生を知った今、そこにいるのが血を分けた実の両親だとわかっているからだ。その心の内を理解したのか、ロインは仕方がないというように溜息をひとつ吐いた。
「…なら、オレも行く。」
そして口にした内容に、再びカイウスらが、そしてティマも目を丸くした。しかしロインはそんなことなど気にせず、ティマを見つめながら言葉を続けた。
「今のお前一人でスポットをどうにかできるとは思ってねぇよ。」
それに、とロインは口角を上げた。
「ティマはオレから離れないんだろ?なら、ついてってやらないと城には行けないしな。」
「なっ!そ、そういう意味で言ったんじゃない!」
からかうような口調で言うロインに、ティマはみるみる顔を赤くしていった。そんな2人のやり取りに、一行からは思わずくすくすと笑いがこぼれていた。そして笑みを浮かべたまま、ベディーが一歩ティマに歩み寄った。
「僕も行くよ。君を無事城に連れて帰るのが、僕の目的なんだから。」
「なら、あたいもついていく!」
「やれやれ。この調子だと、全員で城に乗り込むことになりそうだ。」
次々と声を上げる仲間達の様子に、ティルキスは苦笑気味にそう言った。それからおおげさに腕を組んで考える動作をしながら少し間を空け、全員を見渡して言った。
「じゃあ、こうしよう。城内に詳しくない俺、フォレスト、アーリアは市街地に、他の者は城へ向かうんだ。フレアの言った通りスポットが城の方角から現れているなら、そっちを優先して叩くべきだからな。」
そうティルキスは提案した。だが、すぐにアーリアがそれに異を唱えた。
「ロインやカイウスはともかく、ベディーが城へ向かうのは危険じゃないの?」
「だが、ティマやラミーのことを考えると、これ以上戦力を減らす方が危険だ。それに、ベディーがレイモーンの民だとバレなければなんとかなるだろう。…騒ぎが一段落したら、城門の前に集合するんだ。いいな?」
ティルキスはアーリアをそう言って説得しながら、ちらりとベディーを盗み見た。彼と目が合うと、ベディーは了承の意をこめて頷く。それを確認してから最終確認にと声をあげると、今度は全員が首を縦に振った。そして、フレアが創りだした岩壁が地中へと消えると、ロイン達は一斉に走り出していった。
「…でも、ティルキス。」
その後ろ姿が見えなくなり、足音も遠のいていった頃、アーリアは再びティルキスに向かって声をかけた。その声と表情は、どこかティルキスを咎めるような、そして不安の混じったものだった。
「いくら島国とはいっても、ここは首都よ。人数が少なすぎるんじゃ…。」
仮にも一国の王子であり、その上しょっちゅう城下に出かけているティルキスがそのくらいのことに気がつかないはずはないとは思いながらも、そう問いかけずにはいられなかった。だがそんなアーリアの気持ちに気付いたのか、ティルキスはくくく、と小さく笑い声をあげた。
「あの船員達も街に向かうと言っていただろう?人数なら、こっちの方が多いよ。」
そしてティルキスはそう答え、にやりと笑みを浮かべていた。
地下水道をしばらく進み続け、フレアに案内された梯子を上ると、武器庫らしい場所に出た。そこから一歩外に出れば、美しさと平穏な雰囲気に満ちていたスディアナの城内があるはずだった。しかし血と死体の臭い、そして混乱で溢れた光景からは、その影はもはやわずかにしか見当たらない。広く長い廊下の至る所でスポットと戦った痕が見つかり、しかし地下で見かけた時よりも多くのスポットが尚も蠢いていた。
「ひどい…。」
「昨日今日のあり様じゃねぇぞ、こりゃ…。」
息絶えてから、おそらく数日は経っていると思われる兵士の遺体、そして漂う腐臭に少女たちは顔をしかめる。少年たちも険しい顔つきになったが、瞳はまっすぐ現状を見つめていた。
「フレア、王様の居場所わかるか?」
カイウスがそう尋ねると、フレアは静かに頷いた。
「近衛騎士が王家の守護にあたる際、敵の襲撃を最も受けにくく、かつ戦闘の行いやすい場所に移動するの。」
「要するにどこに行けばいい?」
「あの広間か!」
「ベディーさん、どこ行くの?」
フレアの話を聞いた直後、ロインとベディーの声が重なった。苛立ちを見せるロインとは対照的に、ベディーは思い当たることがあったのか、言い終わるか終わらないかの瞬間にはすでに駆けだしていた。慌ててティマが先頭となって追いかけていく中、フレアは瞳を細め、その背を見つめていた。
「…覚えていたのね。」
「どういうこと?」
その呟きを耳にしたルビアが怪訝な顔で尋ねる。すると、フレアはちらりと彼女を視野に入れた後、ベディーの背を見つめながら答えた。
「15年前のスディアナ事件の時、彼がウルノアさんと対峙した場所―――城内の中央にある大広間。陛下はそこに居られるはずです。」
それだけの言葉で、ルビアは全てを察した。そして閉口すると、仲間が目指す先に向かって走る事に集中した。途中、行く手を塞ぐスポット達は斬り捨てていくが、あくまでも目的地に向かう事を優先して進む。だが目的地に進むごとに、その数は相乗するように増していく。嫌な予感が募る中、やがて窓のない広間へと出た。そこはロイン達の予想通り、一面黒い影に覆われており、中央には淡い緑の鎧の騎士たちと国王らがいた。
「陛下!」
その姿を目にした途端、フレアは剣を抜きながら一目散に駆けだしていた。ロインたちも彼女に少し遅れて加勢するが、彼らが通って来た方向、そして反対側からも湧いて出てくるスポットとスポットゾンビに対応しきれていなかった。フレアは詠唱で一気に数を減らそうと考えたが、数が多すぎて術を唱える隙がない。おそらく近衛騎士たちが苦戦を強いられていたのも、敵の多さに守りで手いっぱいなせいだろう。
「ルビア!」
「このままじゃ無理よ!逃げるので、精一杯!」
カイウスが乱暴に声をあげるが、それに負けないくらいの勢いでルビアからも声が返ってくる。その言葉通り、後衛の彼女はティマにかばわれながらも、スポットゾンビらの攻撃を避けるのに必死になっていた。その上、スポットらからは魔術も繰り出され、こちらはますます防戦に徹するしか術がなくなる。
「ぐあぁっ!」
「大丈夫か…くっ!?」
「しっかりしろ!」
爆発。剣と剣がぶつかり合う音。悲鳴。処理しきれないほどの音が聞こえ続ける。
「くそっ…ウルノア様がいれば……」
その中で、誰かがそうこぼしたのが耳に入った。それはおそらく、ロインの母グレシアを指した言葉だろうと思った。その声の主が誰かはわからないが、それを聞きとったラミーは、苛立たしげにちっと舌打ちをした。
「くそっ…一か八かだ!」
自慢の俊敏さで敵の攻撃をかわしながら、部屋の中心へと向かっていく。そして王を守る陣の前に躍り出た時、その幼さには似遣わない鋭さを赤い瞳に宿していた。
「ラミー!?」
そんな体で何をするつもりだ!?そうロイン達が問い質す前に、彼女はすでに飛び出していた。両手に構えた短剣で一閃、二閃と一気に影をなぎ倒し、男のスポットゾンビが振り下ろした剣を跳躍でかわすと同時に、華奢な体をひねって強烈な足技を食らわす。そして着地と同時に一斉に飛びかかって来た影たちに、ラミーは自身を中心に四方に床を走る衝撃波を放った。
「みせてやるよ、地獄という名の絶景を!」
語りかけるように、しかし強烈な闘志を宿して口にしたラミーの手に握られていたはずの短剣は、いつのまにか銃へと変わっていた。そして息つく間もなく宙へと身を翻しながら、彼女は両銃の引き金に手をかけた。
「女神の厳罰(クロス・オブ・マリア)!」
そして放たれた弾丸は眩い光をまといながらスポットらの中心に落ち、そこから巨大な十字架を象った光の衝撃波が放たれた。光の十字架の直撃を受けたものはもちろん、その余波を食らったものですら断末魔の悲鳴をあげて消滅していくほどの威力。大広間を埋め尽くすほどいたスポットたちの姿は一気に減り、ようやく近衛騎士達に反撃の機会が訪れた。それと同時に、少女は意識を手放し、その場に崩れ落ちていった。