第14章 はじまりの真実 X
一方、ロインとカイウスは城の西側をひたすら走っていた。
「瞬迅剣!」
「獅子戦吼!くそっ、数が多い!」
だがその足は何度となくスポットらの群れに止められ、その度に体力を消耗し、小さいが、傷も増えていった。
「けど、これだけ数がいるってことはッ!」
「ッ!…スポットの出所はこの先ってわけか!」
わらわらと湧くように彼らの前に立ち塞がり続けているスポット達。思うように先に進めない苛立ちを感じる一方で、少年たちはその先に待っている確かなものに気がつく。そしてカイウスが目の前のスポットゾンビを討ち、ロインがスポットの攻撃を跳ねのけたそのタイミングで、2人は同時に動いた。
「カイウス、突っ切るぞ!」
「おう!」
叫び、同時に地を蹴った。腕を振りおろそうとしているスポットの脇を抜け、剣を払うスポットゾンビは宙に飛んでやり過ごす。放たれたプリセプツは別々の方向に避け、だがひたすら同じ方角に向かって駆け続けた。手に剣は握ったままだが、それは道を切り開くための最低限にしか振るわれなかった。2人はそうして、流れるスポットの川を遡るように走り続ける。やがて、彼らの足は城内から離れにある小さな宮殿へと辿りついた。
「あった!」
その宮殿の中でカイウスが見つけたのは、アール山で見たのと同じ光景―――恐ろしく深い闇とを繋ぐ“門”だった。穴はあまり大きくないものの、目の前でゴボリと一体、また一体とスポットがこちらの世界にこぼれ落ちていた。だが、問題はここからだった。
「けど、これからどうする?」
ロインもカイウスも魔法は使えない。一度仲間の元に戻ってルビアやフレアの手を借りればどうにかなるかもしれない。だが、彼女たちに“門”を閉じることができるかどうかはまた別の問題だ。そしてこうして思案している間にも、“門”からは次々とスポットらがあふれ出てきている。
「…とりあえず」
「こいつらを抑えるのが先、か。」
そう言って、2人は今しがた現れたスポットらに剣を向けた。スディアナ中に溢れているスポットは、すべてここから出現しているようだ。ここを抑えることができれば、他のスポットを片付けた仲間達が応戦に来てくれるはずだ。そう考えた2人はひとつ深呼吸を置き、覚悟を決めた瞳をスポットらに向けた。
「行くぞ!魔神剣・双牙!」
そして、先にロインが動き出した。彼の放った技は今しがた“門”を通って来たばかりのスポットに命中し、それに気付いた他のスポットらは、一斉に彼に飛びかかった。周囲にいた何十という個体数にロインは舌を打つものの、表情は変えず、的確に一体一体斬り捨てていき、無駄のない動きで確実にその数を削っていった。一方で彼には目を向けず、宮殿の外に進もうとするスポットらもいる。
「逃がすかよ!」
だがその手前にはカイウスが立ち塞がっていた。しかし、スポットらはたかが一人とでも思ったのか、あるいは眼中にないのか、勢いをそのままに突撃を止めない。
「魔神連牙斬!」
だがそれに対し、カイウスは挑戦的な笑みを浮かべていた。決して油断や慢心があるわけではない。それはスポットらへ向けた挑戦状。これ以上一体たりとも自分の後ろへは進ませないという強い意志の具現。その考えに気付き挑発されたのか、それともそんなことなど知らずに本能に任せるままなのか、スポット達は禍々しい赤をぎらつかせながらカイウスへと迫った。そんなスポットに向けて放たれる斬撃。それを受け、短い断末魔の悲鳴をあげて影達は倒れていく。しかし、いくらカイウスでもこれだけの数相手に無傷ではいられなかった。巨腕を誇るスポットの打撃を避けるために跳んだ先で、いつ手に入れていたのか、スポットゾンビの持つ斧や両刃剣で頬や腕に浅く斬り傷を負わされた。それは“門”をくぐり抜けたばかりで動きの鈍いスポットらを相手にしていたロインですら同様らしく、出血は浅くとも疲労は増していくばかりで、集中を保つのに気力を使い始めた。その時だ。
「カイウス!!」
カイウスが“それ”に気付いたのは、ロインの声が聞こえた刹那だった。2人の剣が届かない場所で、数体のスポットが詠唱を行い、完成させていた。一斉に襲いかかる無数の氷柱を、カイウスはかろうじて跳んで避けた。だがその先ではスポットの巨腕が待ち構えていて、それをかわすには床を転がり、体勢を崩すしかなかった。ちぃ、とカイウスが舌を打った直後、ロインが再び彼の名を叫ぶのが聞こえた。
―――しまった!
カイウスがそう思った時にはすでに、氷柱の第2撃が目前に迫っていた。
「絢爛たる光、魔の手より彼の者を救え!アンチマジック!」
カイウスが思わず目をつむってしまった瞬間、彼でも、ロインでもない声が宮殿に響き、氷柱は突如現れた光の壁に触れた途端、水へと変わり果てた。
「これは…。」
驚きながらも、ロインはバッと周囲に目を向けた。そして黒に埋め尽くされた中で、白に覆われた人影を見つけた時だ。
「兄さん!」
その白い人から、再び声がした。体勢を立て直したカイウスがそれに驚いて振り返れば、そこには黒い整った髪をした、彼と瓜二つの顔の持ち主がいた。純白の教皇の羽織をまとったルキウスだ。
「ル、ルキウス!?一体なんで」
「話はあとだ、兄さん!」
ルキウスはカイウスの問いに答えながらも無詠唱で強力な術を放ち、周囲のスポットを一蹴してみせた。そして右手を前に突き出すと同時に、魔力を高め始めた。
「何をするつもりだ?」
「ジャンナでやったのと同じことだよ。応急処置みたいなものだけど、あの門の入り口を塞ぐ!」
眉をひそめたロインの問いに答え終わると同時に、ルキウスの目の前に術式が浮かび上がった。それは今までに目にしたことのある術式と比べ、何重にも術式が展開されており、そこに浮かび上がる文字の羅列も複雑な様式をとっていた。見るからに複雑なプリセプツだとわかる。だが教皇の肩書を背負っているとはいえ、17歳の少年一人がそのプリセプツを完成させるまでにはかなりの時間がかかるだろうと思われた。そして当然のように、スポット達はプリセプツに集中するルキウスに狙いを定め、攻撃を仕掛けてくる。
「援護するぞ!ロイン!」
「言われなくても…獅子戦吼!」
しかし、それを黙って見過す2人ではなかった。ルキウスと影達の間に踊り込むと、強烈な一撃を叩きこみ、先陣をドミノ倒しにして奴らの隙を生んだ。そして相手が立て直す前にカイウスは魔神連牙斬を放ち、向かって来たものから葬っていった。ロインも詠唱を続けるルキウスの傍らに立ち、近付くスポットを一掃していく。その間も術を構築し続ける少年の額には、一筋の汗が流れていた。
「……を紡ぎ………血に従い…其の………道を示す……」
顔をゆがめながらもひたすらにプリセプツの構築を続けていく中、突如術式が眩い金色の光を放ち始めた。その光にスポットらだけでなく、ロインとカイウスも目を細めて動きを止めた。その一瞬だった。
「これで、終わりだ!」
ルキウスの力強い声が放たれると同時に、術式は一気に光と化し、弾けた。そしてその光は、なおもスポットを生みだし続ける“門”にまとわりつくように集合すると、バンッと凄まじい音を立てて一気に圧縮された。ロイン達がそのことに怯んだ一瞬。たった一秒にも満たないその間に、宙に開いた“門”はジャンナ同様封じられていた。
「カイウス!」
「ああ!」
“門”が閉じられた。それを理解すると、再びロイン達は地を蹴った。
「くたばれ!閃空双破斬!」
「これで終わりだ!天翔連牙撃!!」
そして最大限の威力を込めて放った技で、残ったスポットを文字通り一掃してみせた。醜い断末魔のあとに残されたのは、黄泉から連れ出された亡骸と少年たちの呼吸を整える音だった。
「ふ、ぅ…。」
「! おい、ルキウス!?」
その荒い呼吸が収まってきた頃、大きくひとつ溜息をつきながら、突如ルキウスは膝を折った。驚いたカイウスが慌てて駆け寄るが、彼は苦笑いを浮かべながらも穏やかな口調で返した。
「大丈夫。ちょっと、疲れただけだから。」
「そうか?ならいいけど…。」
「それよりお前、なんでここにいるんだ?ジャンナを離れても平気なのかよ。」
まだ心配そうなカイウスとは対照的に、ロインは淡々とルキウスに先ほども投げかけた質問をした。だが、ルキウスはそんなロインの態度を気にしないというように静かに立ち上がり、涼しげな微笑を浮かべてそれに答えた。
「アーリアから連絡をもらって、居ても立ってもいられなくなったんだ。ボクにも、何かできることがあると思ってね。」
「そんなこと言ったって、ロインの言う通り、ジャンナは大丈夫なのか?」
「パルナミスさんとトールスさんに任せてきた。教会も信頼できる仲間に任せてきたから、安心して。」
なんてことはないと微笑みながら言うルキウスに、カイウスは思わず失笑した。その隣で、ロインは呆れたように溜息を吐いた。
「カイウスより賢い奴かと思ってたが、バカなところは一緒か。」
「なっ!?なんだと、ロイン!」
そしてポツリと呟かれた言葉にカイウスはむかっとして、ロインに噛みつこうとした。だがロインはそれを見事にスルーにしてみせ、困ったように笑うルキウスの横を素通り、何事もなかったように彼らに振り向いた。
「戻るぞ。ちゃんと他の奴らが生きてるか確認しねぇと。」
そしてその口から出た言葉に、双子は瞬時に頭を切り替え、ロインを先頭に大広間へ続く回廊を進みだした。
「瞬迅剣!」
「獅子戦吼!くそっ、数が多い!」
だがその足は何度となくスポットらの群れに止められ、その度に体力を消耗し、小さいが、傷も増えていった。
「けど、これだけ数がいるってことはッ!」
「ッ!…スポットの出所はこの先ってわけか!」
わらわらと湧くように彼らの前に立ち塞がり続けているスポット達。思うように先に進めない苛立ちを感じる一方で、少年たちはその先に待っている確かなものに気がつく。そしてカイウスが目の前のスポットゾンビを討ち、ロインがスポットの攻撃を跳ねのけたそのタイミングで、2人は同時に動いた。
「カイウス、突っ切るぞ!」
「おう!」
叫び、同時に地を蹴った。腕を振りおろそうとしているスポットの脇を抜け、剣を払うスポットゾンビは宙に飛んでやり過ごす。放たれたプリセプツは別々の方向に避け、だがひたすら同じ方角に向かって駆け続けた。手に剣は握ったままだが、それは道を切り開くための最低限にしか振るわれなかった。2人はそうして、流れるスポットの川を遡るように走り続ける。やがて、彼らの足は城内から離れにある小さな宮殿へと辿りついた。
「あった!」
その宮殿の中でカイウスが見つけたのは、アール山で見たのと同じ光景―――恐ろしく深い闇とを繋ぐ“門”だった。穴はあまり大きくないものの、目の前でゴボリと一体、また一体とスポットがこちらの世界にこぼれ落ちていた。だが、問題はここからだった。
「けど、これからどうする?」
ロインもカイウスも魔法は使えない。一度仲間の元に戻ってルビアやフレアの手を借りればどうにかなるかもしれない。だが、彼女たちに“門”を閉じることができるかどうかはまた別の問題だ。そしてこうして思案している間にも、“門”からは次々とスポットらがあふれ出てきている。
「…とりあえず」
「こいつらを抑えるのが先、か。」
そう言って、2人は今しがた現れたスポットらに剣を向けた。スディアナ中に溢れているスポットは、すべてここから出現しているようだ。ここを抑えることができれば、他のスポットを片付けた仲間達が応戦に来てくれるはずだ。そう考えた2人はひとつ深呼吸を置き、覚悟を決めた瞳をスポットらに向けた。
「行くぞ!魔神剣・双牙!」
そして、先にロインが動き出した。彼の放った技は今しがた“門”を通って来たばかりのスポットに命中し、それに気付いた他のスポットらは、一斉に彼に飛びかかった。周囲にいた何十という個体数にロインは舌を打つものの、表情は変えず、的確に一体一体斬り捨てていき、無駄のない動きで確実にその数を削っていった。一方で彼には目を向けず、宮殿の外に進もうとするスポットらもいる。
「逃がすかよ!」
だがその手前にはカイウスが立ち塞がっていた。しかし、スポットらはたかが一人とでも思ったのか、あるいは眼中にないのか、勢いをそのままに突撃を止めない。
「魔神連牙斬!」
だがそれに対し、カイウスは挑戦的な笑みを浮かべていた。決して油断や慢心があるわけではない。それはスポットらへ向けた挑戦状。これ以上一体たりとも自分の後ろへは進ませないという強い意志の具現。その考えに気付き挑発されたのか、それともそんなことなど知らずに本能に任せるままなのか、スポット達は禍々しい赤をぎらつかせながらカイウスへと迫った。そんなスポットに向けて放たれる斬撃。それを受け、短い断末魔の悲鳴をあげて影達は倒れていく。しかし、いくらカイウスでもこれだけの数相手に無傷ではいられなかった。巨腕を誇るスポットの打撃を避けるために跳んだ先で、いつ手に入れていたのか、スポットゾンビの持つ斧や両刃剣で頬や腕に浅く斬り傷を負わされた。それは“門”をくぐり抜けたばかりで動きの鈍いスポットらを相手にしていたロインですら同様らしく、出血は浅くとも疲労は増していくばかりで、集中を保つのに気力を使い始めた。その時だ。
「カイウス!!」
カイウスが“それ”に気付いたのは、ロインの声が聞こえた刹那だった。2人の剣が届かない場所で、数体のスポットが詠唱を行い、完成させていた。一斉に襲いかかる無数の氷柱を、カイウスはかろうじて跳んで避けた。だがその先ではスポットの巨腕が待ち構えていて、それをかわすには床を転がり、体勢を崩すしかなかった。ちぃ、とカイウスが舌を打った直後、ロインが再び彼の名を叫ぶのが聞こえた。
―――しまった!
カイウスがそう思った時にはすでに、氷柱の第2撃が目前に迫っていた。
「絢爛たる光、魔の手より彼の者を救え!アンチマジック!」
カイウスが思わず目をつむってしまった瞬間、彼でも、ロインでもない声が宮殿に響き、氷柱は突如現れた光の壁に触れた途端、水へと変わり果てた。
「これは…。」
驚きながらも、ロインはバッと周囲に目を向けた。そして黒に埋め尽くされた中で、白に覆われた人影を見つけた時だ。
「兄さん!」
その白い人から、再び声がした。体勢を立て直したカイウスがそれに驚いて振り返れば、そこには黒い整った髪をした、彼と瓜二つの顔の持ち主がいた。純白の教皇の羽織をまとったルキウスだ。
「ル、ルキウス!?一体なんで」
「話はあとだ、兄さん!」
ルキウスはカイウスの問いに答えながらも無詠唱で強力な術を放ち、周囲のスポットを一蹴してみせた。そして右手を前に突き出すと同時に、魔力を高め始めた。
「何をするつもりだ?」
「ジャンナでやったのと同じことだよ。応急処置みたいなものだけど、あの門の入り口を塞ぐ!」
眉をひそめたロインの問いに答え終わると同時に、ルキウスの目の前に術式が浮かび上がった。それは今までに目にしたことのある術式と比べ、何重にも術式が展開されており、そこに浮かび上がる文字の羅列も複雑な様式をとっていた。見るからに複雑なプリセプツだとわかる。だが教皇の肩書を背負っているとはいえ、17歳の少年一人がそのプリセプツを完成させるまでにはかなりの時間がかかるだろうと思われた。そして当然のように、スポット達はプリセプツに集中するルキウスに狙いを定め、攻撃を仕掛けてくる。
「援護するぞ!ロイン!」
「言われなくても…獅子戦吼!」
しかし、それを黙って見過す2人ではなかった。ルキウスと影達の間に踊り込むと、強烈な一撃を叩きこみ、先陣をドミノ倒しにして奴らの隙を生んだ。そして相手が立て直す前にカイウスは魔神連牙斬を放ち、向かって来たものから葬っていった。ロインも詠唱を続けるルキウスの傍らに立ち、近付くスポットを一掃していく。その間も術を構築し続ける少年の額には、一筋の汗が流れていた。
「……を紡ぎ………血に従い…其の………道を示す……」
顔をゆがめながらもひたすらにプリセプツの構築を続けていく中、突如術式が眩い金色の光を放ち始めた。その光にスポットらだけでなく、ロインとカイウスも目を細めて動きを止めた。その一瞬だった。
「これで、終わりだ!」
ルキウスの力強い声が放たれると同時に、術式は一気に光と化し、弾けた。そしてその光は、なおもスポットを生みだし続ける“門”にまとわりつくように集合すると、バンッと凄まじい音を立てて一気に圧縮された。ロイン達がそのことに怯んだ一瞬。たった一秒にも満たないその間に、宙に開いた“門”はジャンナ同様封じられていた。
「カイウス!」
「ああ!」
“門”が閉じられた。それを理解すると、再びロイン達は地を蹴った。
「くたばれ!閃空双破斬!」
「これで終わりだ!天翔連牙撃!!」
そして最大限の威力を込めて放った技で、残ったスポットを文字通り一掃してみせた。醜い断末魔のあとに残されたのは、黄泉から連れ出された亡骸と少年たちの呼吸を整える音だった。
「ふ、ぅ…。」
「! おい、ルキウス!?」
その荒い呼吸が収まってきた頃、大きくひとつ溜息をつきながら、突如ルキウスは膝を折った。驚いたカイウスが慌てて駆け寄るが、彼は苦笑いを浮かべながらも穏やかな口調で返した。
「大丈夫。ちょっと、疲れただけだから。」
「そうか?ならいいけど…。」
「それよりお前、なんでここにいるんだ?ジャンナを離れても平気なのかよ。」
まだ心配そうなカイウスとは対照的に、ロインは淡々とルキウスに先ほども投げかけた質問をした。だが、ルキウスはそんなロインの態度を気にしないというように静かに立ち上がり、涼しげな微笑を浮かべてそれに答えた。
「アーリアから連絡をもらって、居ても立ってもいられなくなったんだ。ボクにも、何かできることがあると思ってね。」
「そんなこと言ったって、ロインの言う通り、ジャンナは大丈夫なのか?」
「パルナミスさんとトールスさんに任せてきた。教会も信頼できる仲間に任せてきたから、安心して。」
なんてことはないと微笑みながら言うルキウスに、カイウスは思わず失笑した。その隣で、ロインは呆れたように溜息を吐いた。
「カイウスより賢い奴かと思ってたが、バカなところは一緒か。」
「なっ!?なんだと、ロイン!」
そしてポツリと呟かれた言葉にカイウスはむかっとして、ロインに噛みつこうとした。だがロインはそれを見事にスルーにしてみせ、困ったように笑うルキウスの横を素通り、何事もなかったように彼らに振り向いた。
「戻るぞ。ちゃんと他の奴らが生きてるか確認しねぇと。」
そしてその口から出た言葉に、双子は瞬時に頭を切り替え、ロインを先頭に大広間へ続く回廊を進みだした。
■作者メッセージ
おまけスキット
【まだまだ】
ルキウス「兄さん、どうかした?顔がにやついてるけど。」
カイウス「ん?ああ、まあな。ロインの奴が可笑しくて。」
ルキウス「どういうこと?」
カイウス「ほら。あいつ、ついこの前まで他人の心配なんかするような奴じゃなかったからさ。『生きてるか確認しねぇと』なんて言ってさ。素直に『心配だ』って言えばいいのに、って思って。」
ルキウス「そっか。でも兄さん、笑うのはよそうよ。彼なりに精いっぱいの言い方なんだろうからさ。」
カイウス「そうかもしれないけど、素直じゃないなって思ったら…くくっ!」
ロイン「…おい。何笑ってやがる。」
カイウス「へ?お、おい、なんで剣抜いてんだよ、ロイ…」
ロイン「うるせえ!!」
カイウス「うぉおおっ!?ちょ、本気でくるなって!うわっ!?」
ルキウス「あーあ。だから言ったのに…。」
【まだまだ】
ルキウス「兄さん、どうかした?顔がにやついてるけど。」
カイウス「ん?ああ、まあな。ロインの奴が可笑しくて。」
ルキウス「どういうこと?」
カイウス「ほら。あいつ、ついこの前まで他人の心配なんかするような奴じゃなかったからさ。『生きてるか確認しねぇと』なんて言ってさ。素直に『心配だ』って言えばいいのに、って思って。」
ルキウス「そっか。でも兄さん、笑うのはよそうよ。彼なりに精いっぱいの言い方なんだろうからさ。」
カイウス「そうかもしれないけど、素直じゃないなって思ったら…くくっ!」
ロイン「…おい。何笑ってやがる。」
カイウス「へ?お、おい、なんで剣抜いてんだよ、ロイ…」
ロイン「うるせえ!!」
カイウス「うぉおおっ!?ちょ、本気でくるなって!うわっ!?」
ルキウス「あーあ。だから言ったのに…。」