第15章 継がれゆく灯火 T
翌朝。ティマと合流した一行は、フレアや『女神の従者(マリアのしもべ)』の仲間らと別れを告げ、ケノンに向け旅立った。ヴァニアスは『女神の従者』に残りバキラやスポットらの情報を集めると言って、ロインらと別行動をとることになったとラミーから告げられた。そして道中、初めてエルナの森を通ることになるベディーやティルキス、アーリア、フォレスト、ルキウスの5人に、ティマとカイウスがその土地の特徴を話していた。
「それで、途中に陽の差す広場みたいなところがあって…」
「ティマ?」
楽しげに話していたティマだが、ふいに視線をそらし、言葉を途切らせ黙ってしまった。その不自然さに気づいてカイウスが首を傾げると、気づいた他の仲間たちも次々と倣うように彼女へと視線を向けていった。
「ティマリア、どうした?」
「な、なんでもない、です…。」
ベディーが声をかけると、彼女は明らかに動揺を含んだ返事をした。そのことで、何やらベディー絡みでティマが挙動不振なのが皆には理解できた。
「おい。何を悩んでんだ。白状しろ。」
「うっ…。」
しかし、当の本人は隠しているつもりらしく、そっぽを向き続けていた。呆れてロインが問い質せば、今度は気まずそうに黙り込んでしまう始末だった。
「…ベディーさんに謝らなきゃ、って思ってて。」
「僕に?」
そのままロインがじぃっと半目で視線を送り続けると、ようやく観念したらしく、ぼそぼそと口にし始めた。しかし、当のべディーには謝られる覚えはないようで、きょとんと首を傾げていた。すると、ティマは視線を正面へと戻し、気まずそうにぼそぼそと言葉を続けた。
「えっと、ほら?私、勝手に自分の素性明かしちゃったじゃない。…ほんとは、ベディーさんの口から言うべきだったのに、って…。」
ベディーはこの15年、自らの手で約束を果たすことを目的に生きてきた。それなのに、ティマはあの時、自分の口から素性を明かしてしまった。そのことは少なからず、ベディーの意思にそぐわないものだったに違いないと彼女は考えていた。だから、本来ベディーが告げるべきだったことを自分の口から出してしまっていいのかと躊躇い、そして状況が状況なだけに下した決断とはいえ、ティマはずっと気に病んでいた。
「なんだ。そのことか。」
「えっ?」
だが、そのベディーから返ってきた言葉は、ティマの予想とは180度も違うものだった。その上、可笑しそうに彼女のことを微笑んでいた。
「まぁ、確かに予定は多少狂ったけれど、気にしていないよ。結果的に僕の望みは叶ったのだし。それにきみのおかげで、こうして自由な時間を与えられたんだ。むしろ感謝しなければ、と思っていたところだよ。」
「ベディーさん…。」
優しい青年の言葉に、ティマの顔にも笑みが戻っていった。それと同時に、やる気もふつふつと湧き上がってきたようだ。
「よぉし!エルナの森だろうとホッポ遺跡だろうとガンガン行っちゃうんだから!」
「そうか。じゃあお化けが出てきても頑張れよ。」
「…お化け?」
元気に拳を空へと突き上げ、声を張るティマ。その様子を横目に、ロインはフッと鼻で笑いながらそう言った。すると、お化けという単語に反応してティマが不自然な動きで振り向き、ロインはそれを見てさらに意地の悪い笑みを浮かべた。
「前に言わなかったか?ホッポ遺跡にはアンデット系のモンスターがうじゃうじゃいるって。」
その言葉を聞くと、ティマはサーっという効果音が聞こえるほど見るからに顔を青ざめていった。そして妙な間を空けた後、ばたんと後ろに倒れてしまった。
「うわぁ!ティマ!?」
「ちょっ、それくらいで倒れてんじゃないよ!」
「なんか、先が思いやられるわ…。」
仲間たちが次々と目を回している少女の顔を覗き込んでは「あーあ」とため息を漏らしていく。その中でただ一人、ロインがくくく、と笑いを噛み殺していたことに気づいたのはカイウスくらいだった。
「ん…んん……。」
意識を取り戻すと、視界は暗かった。ティマは数回瞬きをして、何が起きているのかを理解しようと懸命に頭を動かした。
「ティマ、起きたの?」
「ルビア?」
声と共にガサッと布が擦れる音がし、一人分の影が動いたのが見えた。その情報で、ティマは自分が野営用のテントの中にいるのだと知った。
「ここ、どこ?」
「エルナの森の手前よ。ほら、前にも野宿したことあったでしょ。」
尋ねるとルビアが答えてくれた。
いつの間にそんな場所まで…。
気を失う前後の記憶がどこか曖昧なティマは、覚醒しきっていない頭でぐるぐると抜けた記憶を探した。そして思い出した途端にハッとした顔になり、徐々に顔を赤くしていった。
「そうだ、ロイン!ルビア!ロインは!?」
「え…。まだ外にいるけど」
「ローイーンー!!」
ルビアの言葉を最後まで聞かないうちにテントを飛び出していった。その剣幕から察するに、いや、そうでなくとも彼に対し怒り心頭であることは一目瞭然だった。そして予想通り焚き火の前で激しくまくし立てるティマの声が聞こえ、ルビアはやれやれと肩をすくめた。
「まぁまぁ、落ち着けって。」
「ティルキスは黙ってて!もう!あれだけイヤだからやめてって言ってたのに!ロインのバカ!」
「はいはい。悪かったな…くくっ。」
「ちょっと!絶対反省してないでしょ!最低ッ!」
ティマは苦笑いしながらもなだめようとしたティルキスを一蹴してロインを怒鳴りつけるも、当の本人はどこ吹く風のようで。ルビアはそんな騒動の横を通り過ぎ、双子の少年たちの隣に腰を下ろした。
「まったく、よくやるわね。」
「ははっ、そうだね。まるで兄さんとルビアみたいだ。」
「どこがだよ!それより、ルビアも明日に向けて準備をしっかりしておけよ。」
楽しそうに笑うルキウスにカイウスは反論するも、すぐに真剣な顔になってルビアに言った。すると、珍しくルビアは彼の言葉に意地になって声をあげることなく、素直に頷いたのだった。彼らの脳裏にあるのは、初めて森を訪れた際に集団で出迎えた魔物のこと。今回も同様の歓迎を受けないとは限らないと思うと、普段よりも慎重にならざるをえない。
「カイウス、そのことで少しいいか?」
「こら、ロイン!逃げてんじゃないわよ!」
その時、未だに喚き続けるティマをおまけに付けながら、ロインが歩み寄って来た。
「エルナの森は、確かに凶暴な魔物が多い。だが、あんなに大群で一斉に襲われたのは今までに見たことがない。」
「えっ?」
「本当か!?」
「ああ。オレが知る限り、ガルザが撒き餌を使った時を除けば、あんなのはあの時が初めてだ。」
「あたいも何度かあの森通ってるけど、そんな話聞かないぜ?」
そして告げられた内容に、思わずティマも表情を変えて静かになった。カイウスも一瞬腰を浮かせ、そしてロインとラミーの言葉に目を見開いた。
「どういうこと?」
話を耳にしていたアーリアらも首を傾げた。2人の話が事実なら、ガルザのようにこちらが相手をひきつけない限り滅多に起こりえない出来事に彼らはなぜか遭遇したことになる。
「まさかと思うけど…ティマリア?」
「推測だけどな。」
ベディーが言えば、ロインはこくりと頷いた。しかし、まだ一部の仲間たちは首を傾げ続けていた。
「『白晶の耳飾』を持っていたラミーが同じ目に遭っていないんだとしたら、考えられるのは白き星の民の能力じゃないかと思うんだ。例えば、無意識のうちの欠片の力を引き出してしまったことで、魔物を引きつける作用も増幅した、とか。」
そんな彼らに、ベディーは自身の推測を話した。ティマに自分たちにはない能力があるとわかった今、これまでの旅で遭遇したいくつかの不自然な現象は、彼女と彼女が持っていた『白晶の首飾』が作用した結果だと考えるのが妥当だろう。それに、どちらの力に関しても、わかっていることはおそらく氷山の一角に過ぎないはず。彼らに予想すらできないことが起こったとしても、不思議はないのかもしれない。
(『白晶の首飾』、か…。)
ベディーの話に仲間たちが納得する中、ロインは失った母の形見の品を思い出していた。
『ロイン…!』
そして脳裏をよぎったのは、アール山で聞いた、聞こえるはずのない声。あの現象の理由についてロインは思考を巡らせるものの、結局答えは見つからないまま夜は更けていった。
「それで、途中に陽の差す広場みたいなところがあって…」
「ティマ?」
楽しげに話していたティマだが、ふいに視線をそらし、言葉を途切らせ黙ってしまった。その不自然さに気づいてカイウスが首を傾げると、気づいた他の仲間たちも次々と倣うように彼女へと視線を向けていった。
「ティマリア、どうした?」
「な、なんでもない、です…。」
ベディーが声をかけると、彼女は明らかに動揺を含んだ返事をした。そのことで、何やらベディー絡みでティマが挙動不振なのが皆には理解できた。
「おい。何を悩んでんだ。白状しろ。」
「うっ…。」
しかし、当の本人は隠しているつもりらしく、そっぽを向き続けていた。呆れてロインが問い質せば、今度は気まずそうに黙り込んでしまう始末だった。
「…ベディーさんに謝らなきゃ、って思ってて。」
「僕に?」
そのままロインがじぃっと半目で視線を送り続けると、ようやく観念したらしく、ぼそぼそと口にし始めた。しかし、当のべディーには謝られる覚えはないようで、きょとんと首を傾げていた。すると、ティマは視線を正面へと戻し、気まずそうにぼそぼそと言葉を続けた。
「えっと、ほら?私、勝手に自分の素性明かしちゃったじゃない。…ほんとは、ベディーさんの口から言うべきだったのに、って…。」
ベディーはこの15年、自らの手で約束を果たすことを目的に生きてきた。それなのに、ティマはあの時、自分の口から素性を明かしてしまった。そのことは少なからず、ベディーの意思にそぐわないものだったに違いないと彼女は考えていた。だから、本来ベディーが告げるべきだったことを自分の口から出してしまっていいのかと躊躇い、そして状況が状況なだけに下した決断とはいえ、ティマはずっと気に病んでいた。
「なんだ。そのことか。」
「えっ?」
だが、そのベディーから返ってきた言葉は、ティマの予想とは180度も違うものだった。その上、可笑しそうに彼女のことを微笑んでいた。
「まぁ、確かに予定は多少狂ったけれど、気にしていないよ。結果的に僕の望みは叶ったのだし。それにきみのおかげで、こうして自由な時間を与えられたんだ。むしろ感謝しなければ、と思っていたところだよ。」
「ベディーさん…。」
優しい青年の言葉に、ティマの顔にも笑みが戻っていった。それと同時に、やる気もふつふつと湧き上がってきたようだ。
「よぉし!エルナの森だろうとホッポ遺跡だろうとガンガン行っちゃうんだから!」
「そうか。じゃあお化けが出てきても頑張れよ。」
「…お化け?」
元気に拳を空へと突き上げ、声を張るティマ。その様子を横目に、ロインはフッと鼻で笑いながらそう言った。すると、お化けという単語に反応してティマが不自然な動きで振り向き、ロインはそれを見てさらに意地の悪い笑みを浮かべた。
「前に言わなかったか?ホッポ遺跡にはアンデット系のモンスターがうじゃうじゃいるって。」
その言葉を聞くと、ティマはサーっという効果音が聞こえるほど見るからに顔を青ざめていった。そして妙な間を空けた後、ばたんと後ろに倒れてしまった。
「うわぁ!ティマ!?」
「ちょっ、それくらいで倒れてんじゃないよ!」
「なんか、先が思いやられるわ…。」
仲間たちが次々と目を回している少女の顔を覗き込んでは「あーあ」とため息を漏らしていく。その中でただ一人、ロインがくくく、と笑いを噛み殺していたことに気づいたのはカイウスくらいだった。
「ん…んん……。」
意識を取り戻すと、視界は暗かった。ティマは数回瞬きをして、何が起きているのかを理解しようと懸命に頭を動かした。
「ティマ、起きたの?」
「ルビア?」
声と共にガサッと布が擦れる音がし、一人分の影が動いたのが見えた。その情報で、ティマは自分が野営用のテントの中にいるのだと知った。
「ここ、どこ?」
「エルナの森の手前よ。ほら、前にも野宿したことあったでしょ。」
尋ねるとルビアが答えてくれた。
いつの間にそんな場所まで…。
気を失う前後の記憶がどこか曖昧なティマは、覚醒しきっていない頭でぐるぐると抜けた記憶を探した。そして思い出した途端にハッとした顔になり、徐々に顔を赤くしていった。
「そうだ、ロイン!ルビア!ロインは!?」
「え…。まだ外にいるけど」
「ローイーンー!!」
ルビアの言葉を最後まで聞かないうちにテントを飛び出していった。その剣幕から察するに、いや、そうでなくとも彼に対し怒り心頭であることは一目瞭然だった。そして予想通り焚き火の前で激しくまくし立てるティマの声が聞こえ、ルビアはやれやれと肩をすくめた。
「まぁまぁ、落ち着けって。」
「ティルキスは黙ってて!もう!あれだけイヤだからやめてって言ってたのに!ロインのバカ!」
「はいはい。悪かったな…くくっ。」
「ちょっと!絶対反省してないでしょ!最低ッ!」
ティマは苦笑いしながらもなだめようとしたティルキスを一蹴してロインを怒鳴りつけるも、当の本人はどこ吹く風のようで。ルビアはそんな騒動の横を通り過ぎ、双子の少年たちの隣に腰を下ろした。
「まったく、よくやるわね。」
「ははっ、そうだね。まるで兄さんとルビアみたいだ。」
「どこがだよ!それより、ルビアも明日に向けて準備をしっかりしておけよ。」
楽しそうに笑うルキウスにカイウスは反論するも、すぐに真剣な顔になってルビアに言った。すると、珍しくルビアは彼の言葉に意地になって声をあげることなく、素直に頷いたのだった。彼らの脳裏にあるのは、初めて森を訪れた際に集団で出迎えた魔物のこと。今回も同様の歓迎を受けないとは限らないと思うと、普段よりも慎重にならざるをえない。
「カイウス、そのことで少しいいか?」
「こら、ロイン!逃げてんじゃないわよ!」
その時、未だに喚き続けるティマをおまけに付けながら、ロインが歩み寄って来た。
「エルナの森は、確かに凶暴な魔物が多い。だが、あんなに大群で一斉に襲われたのは今までに見たことがない。」
「えっ?」
「本当か!?」
「ああ。オレが知る限り、ガルザが撒き餌を使った時を除けば、あんなのはあの時が初めてだ。」
「あたいも何度かあの森通ってるけど、そんな話聞かないぜ?」
そして告げられた内容に、思わずティマも表情を変えて静かになった。カイウスも一瞬腰を浮かせ、そしてロインとラミーの言葉に目を見開いた。
「どういうこと?」
話を耳にしていたアーリアらも首を傾げた。2人の話が事実なら、ガルザのようにこちらが相手をひきつけない限り滅多に起こりえない出来事に彼らはなぜか遭遇したことになる。
「まさかと思うけど…ティマリア?」
「推測だけどな。」
ベディーが言えば、ロインはこくりと頷いた。しかし、まだ一部の仲間たちは首を傾げ続けていた。
「『白晶の耳飾』を持っていたラミーが同じ目に遭っていないんだとしたら、考えられるのは白き星の民の能力じゃないかと思うんだ。例えば、無意識のうちの欠片の力を引き出してしまったことで、魔物を引きつける作用も増幅した、とか。」
そんな彼らに、ベディーは自身の推測を話した。ティマに自分たちにはない能力があるとわかった今、これまでの旅で遭遇したいくつかの不自然な現象は、彼女と彼女が持っていた『白晶の首飾』が作用した結果だと考えるのが妥当だろう。それに、どちらの力に関しても、わかっていることはおそらく氷山の一角に過ぎないはず。彼らに予想すらできないことが起こったとしても、不思議はないのかもしれない。
(『白晶の首飾』、か…。)
ベディーの話に仲間たちが納得する中、ロインは失った母の形見の品を思い出していた。
『ロイン…!』
そして脳裏をよぎったのは、アール山で聞いた、聞こえるはずのない声。あの現象の理由についてロインは思考を巡らせるものの、結局答えは見つからないまま夜は更けていった。
■作者メッセージ
おまけスキット
【旅の楽しみ】
ルキウス「ふふっ…。」
ラミー「なんだよ、ルキウス。突然笑い出して?」
ルキウス「ああ、ごめん。こうして仲間と旅をすることってなかったから、いいもんだなぁって思ってさ。」
カイウス「そうか?でもルキウスだって教会の仕事でアレウーラ中巡ってたんだろ?」
アーリア「それでも、やっぱり違うわよ。仕事中だってだけで、やっぱりどこか気を張ってしまうし。」
ルキウス「うん。こんなふうに楽しいのは初めてだよ。」
カイウス「そっか。よかったな、ルキウス!」
【ふたりの関係】
ティマ「そういえば、いつの間にか戻っちゃったね。」
ルビア「何が?」
ティマ「ベディーさんの私の呼び方。みんなと同じ『ティマ』でいいって言ってたのに。」
ベディー「ああ、すまない。特別意識してるつもりはないんだけれど、ずっとそう呼んでいたから、いつの間にか…。すまない、気をつけるよ。」
ティマ「ううん、もういいです。なんか自然にそう呼ばれるから、私も違和感ないし、そのままで。」
ルビア「呼び方といえば、ティマもベディーのことはさん付けよね?あたしやカイウスたちは呼び捨てなのに。」
ティマ「そういえば…。だけど、ベディーさんっておばさんの弟なんでしょ?そう思うと、なんか呼び捨てにしにくくて。」
べディー「僕は今のままでも構わないよ。」
ルビア「ふーん。でもそう考えたら、ティマにとってマリワナさんはお母さんみたいな人だし、その弟のベディーは、ティマにとって叔父さんってことになるわよね?」
ティマ「ベディーおじさん……ぷふっ!」
ベディー「わ、笑わうなよ!…ったく、ルビア!」
ルビア「あはは、ごめんなさい。」
【旅の楽しみ】
ルキウス「ふふっ…。」
ラミー「なんだよ、ルキウス。突然笑い出して?」
ルキウス「ああ、ごめん。こうして仲間と旅をすることってなかったから、いいもんだなぁって思ってさ。」
カイウス「そうか?でもルキウスだって教会の仕事でアレウーラ中巡ってたんだろ?」
アーリア「それでも、やっぱり違うわよ。仕事中だってだけで、やっぱりどこか気を張ってしまうし。」
ルキウス「うん。こんなふうに楽しいのは初めてだよ。」
カイウス「そっか。よかったな、ルキウス!」
【ふたりの関係】
ティマ「そういえば、いつの間にか戻っちゃったね。」
ルビア「何が?」
ティマ「ベディーさんの私の呼び方。みんなと同じ『ティマ』でいいって言ってたのに。」
ベディー「ああ、すまない。特別意識してるつもりはないんだけれど、ずっとそう呼んでいたから、いつの間にか…。すまない、気をつけるよ。」
ティマ「ううん、もういいです。なんか自然にそう呼ばれるから、私も違和感ないし、そのままで。」
ルビア「呼び方といえば、ティマもベディーのことはさん付けよね?あたしやカイウスたちは呼び捨てなのに。」
ティマ「そういえば…。だけど、ベディーさんっておばさんの弟なんでしょ?そう思うと、なんか呼び捨てにしにくくて。」
べディー「僕は今のままでも構わないよ。」
ルビア「ふーん。でもそう考えたら、ティマにとってマリワナさんはお母さんみたいな人だし、その弟のベディーは、ティマにとって叔父さんってことになるわよね?」
ティマ「ベディーおじさん……ぷふっ!」
ベディー「わ、笑わうなよ!…ったく、ルビア!」
ルビア「あはは、ごめんなさい。」