第2章 萌える丘と蒼き海 V
ロインが意識を取り戻した時、すでに日は昇りかけていた。起き上がると、少し離れたところで、カイウスが木に寄りかかった状態で眠っていた。どうやらあの後、カイウスはロインを連れてあの場所から離れたようだ。負傷していた肩に手を当てると包帯で止血されていた。
余計な事を…。
ロインはそう思い、舌打ちをした。その直後、カイウスが欠伸をして目を覚ました。
「お、目が覚めたか。」
そう言って、カイウスは大きく伸びをしながらロインに近づく。だが、ロインは変わらず彼に背を向けるだけだった。またか。カイウスがそう思った瞬間だった。
「…何故助けた。」
カイウスに背を向けた状態でロインはそう口にした。その事態にカイウスは驚き、戸惑いと喜びの表情を見せた。旅に出てから、ロインから話し掛けられたのは、これが初めてだったからだ。
「おい、答えろ。なんでオレを助けた?」
口の悪さは変わっていなかった。それでも、カイウスにとっては十分だった。
「気絶させる前にも言っただろ?お前のケガをほっといたら、オレがしかられるんだよ。」
「違う。なんでオレと魔物が戦っていたところに来たのか、って聞いてるんだ。」
「あ〜、そっちか。」
それを尋ねられたカイウスは、どこかバツの悪そうな表情になった。
「お前がいなくなった後、三人で話をしてたんだ。そしたら、急にウルフの群れに襲われて…ティマの宝物が群れの一匹に奪われちまってさ、それを追っかけてきたんだ。」
「ティマの宝物…だと?」
「ああ。二人には先に丘を出てるように言ってある。オレがその奪われた物と、ロインを連れて後から追いかけるって。」
事の成り行きを聞いたロインが、カイウスの方を振り向いた。
「…もしオレがあのキャンプに戻ってたら、あの場で出会ってなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「それは問題ないぜ。ちゃんとメッセージを残してあるからな。」
「じゃああの場で出会えて良かったな。じゃなきゃ、一生お前らを信用しなかったぜ。」
皮肉めいた表情でロインは笑い、立ち上がった。その一言に、カイウスは複雑な心境になった。確かに、今の状態のロインがそのメッセージを見たところで、一人置いていかれたと思うのが先だろう。その点では、ウルフ達が向かった先にロインがいてくれたのは運が良かった。だからといって、彼の心が閉ざされた状態のままであるのに変わりはなかった。こんな状態のロインと二人でいることに、カイウスはどこか不安になった。その時、ロインがどこかへ向かって歩きだした。
「お、おい!どこに行くんだ、ロイン。」
慌てて引き止めるカイウス。ロインは振り向くことなく、彼に言葉を返した。
「ティマの宝物なら、もう回収した。あいつらに追いつく。」
「え?」
驚くカイウスに、ロインはズボンのポケットから何かを取り出した。見ると、そこには虹色の輝きを放つ貝殻のペンダントがあった。カイウスがティマから聞いていたのと同じ形のものであった。
「ロイン、お前いつの間に?」
カイウスは顔をあげてロインに尋ねた。
「肩に噛み付いてきた奴を切った時に落ちたんだ。お前が魔物の相手をしてる隙に拾った。」
ロインはそのペンダントを再びポケットにしまいこんでから答えた。ロインはそれ以上何も語らず、カイウスから目をそらしてしまった。だが、カイウスはロインの態度の変化に驚き、嬉しくなっていた。
昨日まで、こっちが何を話してもまともに返事をくれなかったのに…。
いつ、何が彼の態度を変えるきっかけを生んだのかは、カイウスにはわからなかった。それでも、先までの不安は消えていた。
余計な事を…。
ロインはそう思い、舌打ちをした。その直後、カイウスが欠伸をして目を覚ました。
「お、目が覚めたか。」
そう言って、カイウスは大きく伸びをしながらロインに近づく。だが、ロインは変わらず彼に背を向けるだけだった。またか。カイウスがそう思った瞬間だった。
「…何故助けた。」
カイウスに背を向けた状態でロインはそう口にした。その事態にカイウスは驚き、戸惑いと喜びの表情を見せた。旅に出てから、ロインから話し掛けられたのは、これが初めてだったからだ。
「おい、答えろ。なんでオレを助けた?」
口の悪さは変わっていなかった。それでも、カイウスにとっては十分だった。
「気絶させる前にも言っただろ?お前のケガをほっといたら、オレがしかられるんだよ。」
「違う。なんでオレと魔物が戦っていたところに来たのか、って聞いてるんだ。」
「あ〜、そっちか。」
それを尋ねられたカイウスは、どこかバツの悪そうな表情になった。
「お前がいなくなった後、三人で話をしてたんだ。そしたら、急にウルフの群れに襲われて…ティマの宝物が群れの一匹に奪われちまってさ、それを追っかけてきたんだ。」
「ティマの宝物…だと?」
「ああ。二人には先に丘を出てるように言ってある。オレがその奪われた物と、ロインを連れて後から追いかけるって。」
事の成り行きを聞いたロインが、カイウスの方を振り向いた。
「…もしオレがあのキャンプに戻ってたら、あの場で出会ってなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「それは問題ないぜ。ちゃんとメッセージを残してあるからな。」
「じゃああの場で出会えて良かったな。じゃなきゃ、一生お前らを信用しなかったぜ。」
皮肉めいた表情でロインは笑い、立ち上がった。その一言に、カイウスは複雑な心境になった。確かに、今の状態のロインがそのメッセージを見たところで、一人置いていかれたと思うのが先だろう。その点では、ウルフ達が向かった先にロインがいてくれたのは運が良かった。だからといって、彼の心が閉ざされた状態のままであるのに変わりはなかった。こんな状態のロインと二人でいることに、カイウスはどこか不安になった。その時、ロインがどこかへ向かって歩きだした。
「お、おい!どこに行くんだ、ロイン。」
慌てて引き止めるカイウス。ロインは振り向くことなく、彼に言葉を返した。
「ティマの宝物なら、もう回収した。あいつらに追いつく。」
「え?」
驚くカイウスに、ロインはズボンのポケットから何かを取り出した。見ると、そこには虹色の輝きを放つ貝殻のペンダントがあった。カイウスがティマから聞いていたのと同じ形のものであった。
「ロイン、お前いつの間に?」
カイウスは顔をあげてロインに尋ねた。
「肩に噛み付いてきた奴を切った時に落ちたんだ。お前が魔物の相手をしてる隙に拾った。」
ロインはそのペンダントを再びポケットにしまいこんでから答えた。ロインはそれ以上何も語らず、カイウスから目をそらしてしまった。だが、カイウスはロインの態度の変化に驚き、嬉しくなっていた。
昨日まで、こっちが何を話してもまともに返事をくれなかったのに…。
いつ、何が彼の態度を変えるきっかけを生んだのかは、カイウスにはわからなかった。それでも、先までの不安は消えていた。