第2章 萌える丘と蒼き海 W
ロインとカイウスの二人は再び歩き始めようとした。…突然二人の腹の虫が鳴き出すまでは。
「まずいな。食料とかはルビア達が持っていったんだ。」
突然魔物に襲撃されたカイウスが所持していたのは、彼の武器である剣、そして自らとロインの荷物だけであった。その中に、彼らのぶんの食料は含まれていない。頭を抱え、焦りを見せるカイウス。その様子を見たロインは溜息を一つつき、自分の荷物を背負い出した。
「お、おい…。」
「…じっとしてて食い物が手に入るなら、苦労しねぇ。」
ロインはそう吐き捨てるように言い、歩き出した。そんな彼の後を追うようにして、カイウスも歩き出す。
ロインのその強さは、長年一人暮らしをしていたことから生まれたものだろうか。
カイウスは、ふと、そんなことを考えた。旅は初めてらしいロインだが、アレウーラ大陸から離れ、2年間各地を旅したカイウスとほぼ変わらぬ落ち着きを保っている。そばにいるのが心を閉ざしている対象であるにしても、それは容易なことではないはずだった。
しばらく歩いたところに、二人は実のなっている木々を見つけた。そこにはちょうど熟した果物があった。
「助かった!これなら、少しの間は食べ物に困らないぜ。」
喜んで木々に近づいていくカイウス。そんな彼の様子に呆れながら、ロインも木々に近寄ろうとした。だがその時、大きな揺れが起き、彼らの歩みを阻止させた。驚いてしばらく様子を窺うと、彼らの背後から巨大な魔物が数頭、迫り来るのが見えた。その影を見たカイウスの表情は、一瞬で凍りついた。
「サイノッサスの群れだ。隠れるぞ!!」
そう言って、ロインの腕を強引に引っ張り、近くの茂みへと姿を隠した。その直後、巨大なサイのような姿をした魔物の群れが、二人の目の前をものすごい勢いで駆け抜けって行った。あのまま立ち呆けていれば、いとも簡単に踏み潰されてしまっていただろう。まさに間一髪であった。
「…あんな魔物もいるのか?」
「たぶん、バオイの丘にいる中じゃ一番強いぜ。『主』ってやつだろうな。」
群れが通り過ぎた後を見送りながら、カイウスはそう話した。
「ティマ達が、あんなのと出会ってなきゃいいんだがな。」
呟くようにカイウスは言った。だが、その心配そうな表情はすぐ消えた。
「ま、ルビアがいるなら問題ねぇか。それより、今は食料だ!」
幸いにも、果物は無事だった。彼らはそのうちのいくつかを食べ、非常用にいくつかをカバンに詰めた。食事と補給を終え、ティマ達と合流しようとロインが歩きだそうとしたときだった。カイウスが彼の肩に手をかけ、声をかけた。
「ロイン、先に言っておく。さっきの魔物は、今の実力じゃ適わない相手だ。見かけたら逃げるぞ。いいな?」
ロインは、ちらっとカイウスをみただけで、頷きはしなかった。その手を振り解くと、再び一人で歩き出した。その背中を見て、カイウスはどこか哀しくなった気がした。
自分はまだ、ロインに認められたわけではない。
それだけが、今の彼にはっきりと理解できた。
「まずいな。食料とかはルビア達が持っていったんだ。」
突然魔物に襲撃されたカイウスが所持していたのは、彼の武器である剣、そして自らとロインの荷物だけであった。その中に、彼らのぶんの食料は含まれていない。頭を抱え、焦りを見せるカイウス。その様子を見たロインは溜息を一つつき、自分の荷物を背負い出した。
「お、おい…。」
「…じっとしてて食い物が手に入るなら、苦労しねぇ。」
ロインはそう吐き捨てるように言い、歩き出した。そんな彼の後を追うようにして、カイウスも歩き出す。
ロインのその強さは、長年一人暮らしをしていたことから生まれたものだろうか。
カイウスは、ふと、そんなことを考えた。旅は初めてらしいロインだが、アレウーラ大陸から離れ、2年間各地を旅したカイウスとほぼ変わらぬ落ち着きを保っている。そばにいるのが心を閉ざしている対象であるにしても、それは容易なことではないはずだった。
しばらく歩いたところに、二人は実のなっている木々を見つけた。そこにはちょうど熟した果物があった。
「助かった!これなら、少しの間は食べ物に困らないぜ。」
喜んで木々に近づいていくカイウス。そんな彼の様子に呆れながら、ロインも木々に近寄ろうとした。だがその時、大きな揺れが起き、彼らの歩みを阻止させた。驚いてしばらく様子を窺うと、彼らの背後から巨大な魔物が数頭、迫り来るのが見えた。その影を見たカイウスの表情は、一瞬で凍りついた。
「サイノッサスの群れだ。隠れるぞ!!」
そう言って、ロインの腕を強引に引っ張り、近くの茂みへと姿を隠した。その直後、巨大なサイのような姿をした魔物の群れが、二人の目の前をものすごい勢いで駆け抜けって行った。あのまま立ち呆けていれば、いとも簡単に踏み潰されてしまっていただろう。まさに間一髪であった。
「…あんな魔物もいるのか?」
「たぶん、バオイの丘にいる中じゃ一番強いぜ。『主』ってやつだろうな。」
群れが通り過ぎた後を見送りながら、カイウスはそう話した。
「ティマ達が、あんなのと出会ってなきゃいいんだがな。」
呟くようにカイウスは言った。だが、その心配そうな表情はすぐ消えた。
「ま、ルビアがいるなら問題ねぇか。それより、今は食料だ!」
幸いにも、果物は無事だった。彼らはそのうちのいくつかを食べ、非常用にいくつかをカバンに詰めた。食事と補給を終え、ティマ達と合流しようとロインが歩きだそうとしたときだった。カイウスが彼の肩に手をかけ、声をかけた。
「ロイン、先に言っておく。さっきの魔物は、今の実力じゃ適わない相手だ。見かけたら逃げるぞ。いいな?」
ロインは、ちらっとカイウスをみただけで、頷きはしなかった。その手を振り解くと、再び一人で歩き出した。その背中を見て、カイウスはどこか哀しくなった気がした。
自分はまだ、ロインに認められたわけではない。
それだけが、今の彼にはっきりと理解できた。