第2章 萌える丘と蒼き海 \
「な…なんだよ、この人の数。」
船を取り囲む人々から少し距離をおいたところで、カイウスはその様子を眺めていた。宿をとりに行った彼だったが、そこの宿泊客らが「港に有名な海上ギルドが来ている」との話をしているのを聞き、気になってやってきたのだった。だが、その周りに集まる人の多さに驚き、困惑した表情を浮かべていた。
見物は無理そうだな。
そう思って、カイウスは宿に引き返そうとした。だがその時、前方にいた野次馬たちの様子が一変した。先ほどまでは、物珍しそうな好奇の目を船に向けていた。だが今は、怒りと不安の声が飛び交っていた。何が起きたのか気になり、カイウスは近くにいた野次馬の一人に声をかけようとした。だが、それは直後に起きた爆発音にかき消されてしまった。突然の事態に驚き、危険を感じた人々は町の中へ散り散りに逃げていった。その波にのまれそうになりながら、カイウスは爆発の起きた地点へと向かう。
すると、彼の目に信じがたい光景が映った。
全身から負のオーラを漂わせ、その瞳と顔に怒りを満たしているルビア。そんな彼女を落ち着かせようと必死になっているティマ。ルビアに武器を取られたロインは、ティマの身を案じながらも何もできずにいた。そして、ルビアの視線の先には、彼女の攻撃に恐怖し、逃げそびれた帽子を被った男と、マントを爆風で吹き飛ばされ、真紅の髪をなびかせる見慣れた顔の人物がいた。
ありえない。そんなはずはない。
カイウスは自分に言い聞かせるように、目の前の現実を否定した。
あいつのはずがない。だってあいつは、2年前に…
そんなことを考えているうちに、ルビアは再び詠唱を始めた。カイウスははっとし、急いで彼女の元に向かった。だが相手も、いつまでもやられるわけにはいかないという顔で、小刀を構えてルビア目掛けて疾走してくる。
「やめろーー!!」
その叫びと共に、キィンという音が響く。間一髪のところで、カイウスの剣が二人の間を隔てたのだった。相手は舌打ちをして、再びバックステップで距離を保つ。
「カ、カイウス!」
「何やってんだよ!お前らしくもない。」
「…」
カイウスが割り込んできたことで、ようやくルビアは理性を取り戻した。彼に一喝され、閉口するルビアだったが、その瞳はまだ目の前の人物を捕らえつづけていた。
「それより、なんでお前がココにいる!?ロミー!」
『ロミー』。それは、2年前にカイウスの父とルビアの両親を殺害した異端審問官の少女の名であった。真紅の髪と瞳をしており、その可愛らしい外見とは裏腹に、残虐な行為と破壊行動を好んでいた。だが、彼女はカイウスと彼の弟の手で葬られたはずだった。この世に、ましてやこんな辺境に存在していることなどありえない。しかし、彼らの目の前にいる人物は、身につけている物は違うが、そのロミーに瓜二つの姿の少女であった。
そんなことを知らないロインとティマは、ただその様子を傍観するだけだった。対する少女は、どこか呆れたようなイラついた表情でこちらを睨んでいた。
「あんたら、人違いしてんじゃない?」
しばらく続いた緊張状態を破り、その少女の声が響く。カイウスとルビアは、その声が耳に届いた瞬間表情を変えた。その声は、自分達の知っている者の声と異なっていたからだった。
「あたいは海上ギルド『女神の従者』の首領(ボス)、ラミー・オーバックだ!そこらへんのチンピラと一緒にすんじゃないよ。」
カイウスとルビアは、その言葉により戸惑いを見せた。見た目こそ華奢な少女であるが、その威勢はまさにギルドの首領の地位にふさわしいものがあった。
船を取り囲む人々から少し距離をおいたところで、カイウスはその様子を眺めていた。宿をとりに行った彼だったが、そこの宿泊客らが「港に有名な海上ギルドが来ている」との話をしているのを聞き、気になってやってきたのだった。だが、その周りに集まる人の多さに驚き、困惑した表情を浮かべていた。
見物は無理そうだな。
そう思って、カイウスは宿に引き返そうとした。だがその時、前方にいた野次馬たちの様子が一変した。先ほどまでは、物珍しそうな好奇の目を船に向けていた。だが今は、怒りと不安の声が飛び交っていた。何が起きたのか気になり、カイウスは近くにいた野次馬の一人に声をかけようとした。だが、それは直後に起きた爆発音にかき消されてしまった。突然の事態に驚き、危険を感じた人々は町の中へ散り散りに逃げていった。その波にのまれそうになりながら、カイウスは爆発の起きた地点へと向かう。
すると、彼の目に信じがたい光景が映った。
全身から負のオーラを漂わせ、その瞳と顔に怒りを満たしているルビア。そんな彼女を落ち着かせようと必死になっているティマ。ルビアに武器を取られたロインは、ティマの身を案じながらも何もできずにいた。そして、ルビアの視線の先には、彼女の攻撃に恐怖し、逃げそびれた帽子を被った男と、マントを爆風で吹き飛ばされ、真紅の髪をなびかせる見慣れた顔の人物がいた。
ありえない。そんなはずはない。
カイウスは自分に言い聞かせるように、目の前の現実を否定した。
あいつのはずがない。だってあいつは、2年前に…
そんなことを考えているうちに、ルビアは再び詠唱を始めた。カイウスははっとし、急いで彼女の元に向かった。だが相手も、いつまでもやられるわけにはいかないという顔で、小刀を構えてルビア目掛けて疾走してくる。
「やめろーー!!」
その叫びと共に、キィンという音が響く。間一髪のところで、カイウスの剣が二人の間を隔てたのだった。相手は舌打ちをして、再びバックステップで距離を保つ。
「カ、カイウス!」
「何やってんだよ!お前らしくもない。」
「…」
カイウスが割り込んできたことで、ようやくルビアは理性を取り戻した。彼に一喝され、閉口するルビアだったが、その瞳はまだ目の前の人物を捕らえつづけていた。
「それより、なんでお前がココにいる!?ロミー!」
『ロミー』。それは、2年前にカイウスの父とルビアの両親を殺害した異端審問官の少女の名であった。真紅の髪と瞳をしており、その可愛らしい外見とは裏腹に、残虐な行為と破壊行動を好んでいた。だが、彼女はカイウスと彼の弟の手で葬られたはずだった。この世に、ましてやこんな辺境に存在していることなどありえない。しかし、彼らの目の前にいる人物は、身につけている物は違うが、そのロミーに瓜二つの姿の少女であった。
そんなことを知らないロインとティマは、ただその様子を傍観するだけだった。対する少女は、どこか呆れたようなイラついた表情でこちらを睨んでいた。
「あんたら、人違いしてんじゃない?」
しばらく続いた緊張状態を破り、その少女の声が響く。カイウスとルビアは、その声が耳に届いた瞬間表情を変えた。その声は、自分達の知っている者の声と異なっていたからだった。
「あたいは海上ギルド『女神の従者』の首領(ボス)、ラミー・オーバックだ!そこらへんのチンピラと一緒にすんじゃないよ。」
カイウスとルビアは、その言葉により戸惑いを見せた。見た目こそ華奢な少女であるが、その威勢はまさにギルドの首領の地位にふさわしいものがあった。