第3章 首都の過去 U
「貰ってきたぜ、マウディーラ島の地図。」
バーリの宿の一室で、彼らは休んでいた。カイウスは宿の主からこの島の地図を貰い、三人の前に広げた。諸島からなる国『マウディーラ』の中心といえるこの島は、東西に長くのびたような形をしていた。
「オレらが今いる町はここ。で、首都はここだな。」
そう言って、海沿いの町を指す。首都は現在地より東に位置していた。そして、この二つをつなぐ道をなぞりながら、カイウスが言葉を続ける。
「大人の足なら、一週間歩けば着くらしいぜ。」
「あら、案外近いのね。」
「ど、どこが?」
余裕の表情を浮かべるルビアに対し、ティマは苦い表情をしていた。イーバオからセビアに向かう時に、一番疲れを見せていたのは彼女であった。一週間も歩きつづけるなど、彼女には地獄以外の何物でもなかったのだ。
「安心しろって。この町には、首都に一番近い港ってことで、馬車が出てるらしい。それに乗れば、3・4日で着くってさ。」
ティマをなだめるように、カイウスは言った。その言葉にほっとするティマだったが、次の瞬間、その表情が消えた。
「その馬車は週1でしか出ないぜ。次の馬車は6日後。歩いた方が早いと思うぞ。」
ティマの後ろからそういうのが聞こえ、思わず振り向く。そこには、ラミーとの戦いの疲れがとれないのか、ぐったりとした様子で、ロインがベッドに横たわっていた。そんな彼の言葉に、三人は驚いた表情を見せた。
「どうしてロインがこの辺の事情を知ってるのよ。」
「っていうか、大丈夫?」
「ああ。なんでもない。」
心配の言葉を向けるティマに素っ気無く返答するロインだったが、その声の調子からも疲労が見えていた。この三日間、彼が一番ラミーと手合わせをしていたのだ。しかし、波で揺れる船の中では、ゆっくりと休むことができなかったのだろう。船内に彼が心を許さない対象が多くいたのであるから、なおさらである。そんな具合に、三人はロインの体調を心配していたが、当の本人はいつの間にか寝息をたてていた。ルビアがこっそりとその表情を覗きこむと、ロインの安らかな寝顔に安堵の表情を浮かべた。
「…で、どうするんだ?」
「仕方がないわよ。明日の朝、歩いて首都に向かいましょ。」
「わ、わかった…。」
二人の会話に溜息をつきながらも、ティマは歩いて首都へ向かうことに納得した。
翌朝、誰よりも早くロインは目を覚ました。隣のベッドを見ると、ティマの寝顔が目に入った。ベッドから起きて部屋の窓に近づき、外の風景を眺める。すると、すでに目を覚ましている町の人々の姿と、首都へと続く街道の一部が見えた。その遠くの風景を、ロインはどこか懐かしそうに眺めた。
朝食を終え、宿を後にした四人。町の外へ出ると、ロインとティマの住む島とは違う自然の風景が広がる。そんな中、首都に繋がる道を歩きながら、ティマが溜息をついていた。そんな彼女を気にかけて、ロインが言葉をかけた。
「ティマ、どうした?」
「うん。長い距離を歩くの、まだ慣れないから。ロインは平気なの?」
「まぁな。」
そう言いながら、ロインはティマの背中を強く叩いた。
「しっかりしろよ。あの威勢良く決闘申し込んできたティマ・コレンドはどこいったんだ。」
「それ、小さい頃の話でしょ?」
「そうか?今と大して変わりないけど。」
「何それ!?ひっどーい!!」
怒ったティマから逃げるようにロインが走り出すと、ティマも、さっきまでの溜息は何処へいったのか、全力疾走でロインを追いかけて行った。そんな二人を、カイウスとルビアは遠くから眺めていた。
「すごいな。一瞬で元気になったぞ(汗)」
「それより…『決闘』ってなんだろう?ティマとロインが仲良くなったきっかけなのかしら。」
「決闘なんかで仲良くなれるか?」
「さあね。つまらない事言ってないで、二人を追いかけるわよ。」
「って、お前がふった話題だろ!?」
そうツッコミをいれるカイウスを他所に、ルビアは二人を追いかけていた。そんなルビアに、カイウスは何か言いたげであったが、それを飲み込み、三人の後を追って走り出した。
その後、体力のなくなったティマが疲れ果てて倒れたのは言うまでもない。
バーリの宿の一室で、彼らは休んでいた。カイウスは宿の主からこの島の地図を貰い、三人の前に広げた。諸島からなる国『マウディーラ』の中心といえるこの島は、東西に長くのびたような形をしていた。
「オレらが今いる町はここ。で、首都はここだな。」
そう言って、海沿いの町を指す。首都は現在地より東に位置していた。そして、この二つをつなぐ道をなぞりながら、カイウスが言葉を続ける。
「大人の足なら、一週間歩けば着くらしいぜ。」
「あら、案外近いのね。」
「ど、どこが?」
余裕の表情を浮かべるルビアに対し、ティマは苦い表情をしていた。イーバオからセビアに向かう時に、一番疲れを見せていたのは彼女であった。一週間も歩きつづけるなど、彼女には地獄以外の何物でもなかったのだ。
「安心しろって。この町には、首都に一番近い港ってことで、馬車が出てるらしい。それに乗れば、3・4日で着くってさ。」
ティマをなだめるように、カイウスは言った。その言葉にほっとするティマだったが、次の瞬間、その表情が消えた。
「その馬車は週1でしか出ないぜ。次の馬車は6日後。歩いた方が早いと思うぞ。」
ティマの後ろからそういうのが聞こえ、思わず振り向く。そこには、ラミーとの戦いの疲れがとれないのか、ぐったりとした様子で、ロインがベッドに横たわっていた。そんな彼の言葉に、三人は驚いた表情を見せた。
「どうしてロインがこの辺の事情を知ってるのよ。」
「っていうか、大丈夫?」
「ああ。なんでもない。」
心配の言葉を向けるティマに素っ気無く返答するロインだったが、その声の調子からも疲労が見えていた。この三日間、彼が一番ラミーと手合わせをしていたのだ。しかし、波で揺れる船の中では、ゆっくりと休むことができなかったのだろう。船内に彼が心を許さない対象が多くいたのであるから、なおさらである。そんな具合に、三人はロインの体調を心配していたが、当の本人はいつの間にか寝息をたてていた。ルビアがこっそりとその表情を覗きこむと、ロインの安らかな寝顔に安堵の表情を浮かべた。
「…で、どうするんだ?」
「仕方がないわよ。明日の朝、歩いて首都に向かいましょ。」
「わ、わかった…。」
二人の会話に溜息をつきながらも、ティマは歩いて首都へ向かうことに納得した。
翌朝、誰よりも早くロインは目を覚ました。隣のベッドを見ると、ティマの寝顔が目に入った。ベッドから起きて部屋の窓に近づき、外の風景を眺める。すると、すでに目を覚ましている町の人々の姿と、首都へと続く街道の一部が見えた。その遠くの風景を、ロインはどこか懐かしそうに眺めた。
朝食を終え、宿を後にした四人。町の外へ出ると、ロインとティマの住む島とは違う自然の風景が広がる。そんな中、首都に繋がる道を歩きながら、ティマが溜息をついていた。そんな彼女を気にかけて、ロインが言葉をかけた。
「ティマ、どうした?」
「うん。長い距離を歩くの、まだ慣れないから。ロインは平気なの?」
「まぁな。」
そう言いながら、ロインはティマの背中を強く叩いた。
「しっかりしろよ。あの威勢良く決闘申し込んできたティマ・コレンドはどこいったんだ。」
「それ、小さい頃の話でしょ?」
「そうか?今と大して変わりないけど。」
「何それ!?ひっどーい!!」
怒ったティマから逃げるようにロインが走り出すと、ティマも、さっきまでの溜息は何処へいったのか、全力疾走でロインを追いかけて行った。そんな二人を、カイウスとルビアは遠くから眺めていた。
「すごいな。一瞬で元気になったぞ(汗)」
「それより…『決闘』ってなんだろう?ティマとロインが仲良くなったきっかけなのかしら。」
「決闘なんかで仲良くなれるか?」
「さあね。つまらない事言ってないで、二人を追いかけるわよ。」
「って、お前がふった話題だろ!?」
そうツッコミをいれるカイウスを他所に、ルビアは二人を追いかけていた。そんなルビアに、カイウスは何か言いたげであったが、それを飲み込み、三人の後を追って走り出した。
その後、体力のなくなったティマが疲れ果てて倒れたのは言うまでもない。