第4章 復讐の闇 X
ロインの目の前に現れた人物。それは、彼の幼き日の記憶を鮮明に呼び起こした。そして、共に胸の奥からこみ上げてくる様々な感情。ロインはそれを抑えようとはせず、ただ己の感情に任せて剣を抜き、相手に向けて構えた。その異様な殺気に気づいた相手は、足を止め、彼をじっと見ていた。そして、何かを思い出したようにはっとした表情を見せると、ゆっくりと口を開いた。
「…まさか、ロイン・エイバスか?」
ロインの名を知る低い声を聞き、ロインは更に険しい目つきで相手を見た。
「やっぱり、てめぇだったか。ガルザ!!」
荒々しい声が響くとほぼ同時に風が吹き、木々がざわつき、わずかに日の光が相手を照らし、そして、青い鎧を着た男の顔がはっきりと見えた。紫に近い黒髪に赤い瞳をした30歳ほどの男。ガルザはその赤い瞳を細め、懐かしそうに笑みを浮かべた。
「最後に会ったのは、そう、7年前のあの日以来だったな。ずいぶんと成長したな。」
「…。」
「どうした。懐かしくて声も出ないのか?」
「あんなことしておいて、よくもそんな口が利けたもんだな。」
突き放すようなロインの返事に、ガルザは笑い声を上げた。それに苛立ったロインは、瞬時に間合いをつめ、彼に剣を振り下ろした。だが、その剣はガルザを斬ることはなく、彼と共にいた別の兵士の剣に防がれてしまった。剣をはじかれたロインは、舌打ちをし、剣を構えながら距離をとった。
「何がおかしい?」
「ああ、すまない。ずいぶんと嫌われたものだな、と思ってな。」
仲間に守られながら、彼はまだ笑っていた。そして、笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「昔はよく慕ってくれていたからね。あの日、君の母親が死ななければ、今も」
「その母親を死なせたのはてめぇだろ!!」
ガルザの言葉を遮って、ロインは怒りに身を任せて叫んだ。胸と眼の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じながら、剣を強く握り締める。その様子を見たガルザから笑いが消え、真剣な眼差しでロインを見た。
「ふん。まあいい。それより、お前には用があったんだ。話をしようじゃないか。」
自分を守る仲間に退くよう指示を出しながら、先程までとは違う、威圧的な口調でガルザは言った。だが、ロインはそれに応じようとせず、剣をガルザに向け続けていた。その態度に呆れたような表情を浮かべながら、ガルザは口を開いた。
「お前の母親が持っていた首飾り、『白晶の首飾(クリスタル・ペンダント)』を渡して欲しい。」
『白晶の首飾』。その単語が出てきた瞬間、彼は目を見開き、再び憎悪に満ちた表情になった。
「てめぇ、まだそれを狙っていたのか。」
「当たり前だ。あの女もそれを素直に渡していれば死なずにすんだものを…!」
その言葉が終わるか終わらないかの瞬間、剣同士がぶつかり合う音がした。斬りかかってきたロインの剣をガルザは冷静に受け止め、軽々と地に突き飛ばした。圧倒的な力の差に為す術もなく、ロインはただ地面を転げまわり、再び立ち上がろうとした時、首筋に剣を突きつけられてしまった。
「もう一度言う。『白晶の首飾』を渡せ。」
ガルザの言葉に、ロインは冷や汗が頬を伝うのを感じた。
ガルザの要求を拒めば、確実に死ぬ。
あの日、母がそうなったように。
だが、自分にはまだやることがある。
再び心を許せるようになった仲間との約束がある。
だが、今この場から逃れる術はない。
そんな考えが頭の中を行き来した末、ロインは決断した。彼はふっと笑みを浮かべながら、ガルザを見上げた。
「…悪いが、今オレの手にはないぜ。それに、家族を殺した奴の言う事なんか聞くもんかよ。」
それがロインの答えであった。ガルザはその返事に何一つ表情を変えず、ただ静かに息を吐いた。
「残念だよ、ロイン。まさか親子そろって、この手で葬ることになるとはな。」
ガルザはそう言いながら剣を振り上げ、ロインに向かって勢いよく振り下ろした。
「…まさか、ロイン・エイバスか?」
ロインの名を知る低い声を聞き、ロインは更に険しい目つきで相手を見た。
「やっぱり、てめぇだったか。ガルザ!!」
荒々しい声が響くとほぼ同時に風が吹き、木々がざわつき、わずかに日の光が相手を照らし、そして、青い鎧を着た男の顔がはっきりと見えた。紫に近い黒髪に赤い瞳をした30歳ほどの男。ガルザはその赤い瞳を細め、懐かしそうに笑みを浮かべた。
「最後に会ったのは、そう、7年前のあの日以来だったな。ずいぶんと成長したな。」
「…。」
「どうした。懐かしくて声も出ないのか?」
「あんなことしておいて、よくもそんな口が利けたもんだな。」
突き放すようなロインの返事に、ガルザは笑い声を上げた。それに苛立ったロインは、瞬時に間合いをつめ、彼に剣を振り下ろした。だが、その剣はガルザを斬ることはなく、彼と共にいた別の兵士の剣に防がれてしまった。剣をはじかれたロインは、舌打ちをし、剣を構えながら距離をとった。
「何がおかしい?」
「ああ、すまない。ずいぶんと嫌われたものだな、と思ってな。」
仲間に守られながら、彼はまだ笑っていた。そして、笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「昔はよく慕ってくれていたからね。あの日、君の母親が死ななければ、今も」
「その母親を死なせたのはてめぇだろ!!」
ガルザの言葉を遮って、ロインは怒りに身を任せて叫んだ。胸と眼の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じながら、剣を強く握り締める。その様子を見たガルザから笑いが消え、真剣な眼差しでロインを見た。
「ふん。まあいい。それより、お前には用があったんだ。話をしようじゃないか。」
自分を守る仲間に退くよう指示を出しながら、先程までとは違う、威圧的な口調でガルザは言った。だが、ロインはそれに応じようとせず、剣をガルザに向け続けていた。その態度に呆れたような表情を浮かべながら、ガルザは口を開いた。
「お前の母親が持っていた首飾り、『白晶の首飾(クリスタル・ペンダント)』を渡して欲しい。」
『白晶の首飾』。その単語が出てきた瞬間、彼は目を見開き、再び憎悪に満ちた表情になった。
「てめぇ、まだそれを狙っていたのか。」
「当たり前だ。あの女もそれを素直に渡していれば死なずにすんだものを…!」
その言葉が終わるか終わらないかの瞬間、剣同士がぶつかり合う音がした。斬りかかってきたロインの剣をガルザは冷静に受け止め、軽々と地に突き飛ばした。圧倒的な力の差に為す術もなく、ロインはただ地面を転げまわり、再び立ち上がろうとした時、首筋に剣を突きつけられてしまった。
「もう一度言う。『白晶の首飾』を渡せ。」
ガルザの言葉に、ロインは冷や汗が頬を伝うのを感じた。
ガルザの要求を拒めば、確実に死ぬ。
あの日、母がそうなったように。
だが、自分にはまだやることがある。
再び心を許せるようになった仲間との約束がある。
だが、今この場から逃れる術はない。
そんな考えが頭の中を行き来した末、ロインは決断した。彼はふっと笑みを浮かべながら、ガルザを見上げた。
「…悪いが、今オレの手にはないぜ。それに、家族を殺した奴の言う事なんか聞くもんかよ。」
それがロインの答えであった。ガルザはその返事に何一つ表情を変えず、ただ静かに息を吐いた。
「残念だよ、ロイン。まさか親子そろって、この手で葬ることになるとはな。」
ガルザはそう言いながら剣を振り上げ、ロインに向かって勢いよく振り下ろした。