第5章 騎士と思い出 X
「あれ?母さんとガルザは?」
夕食を終えたロインは二人の姿が見えないことに気がついた。
「確か、ガルザ君が話があるからと言って、グレシアさんを裏庭の方に呼び出していたと思いますよ。」
ドーチェは夕食の後片付けをしながら答えた。それを聞いたロインは、窓から裏庭をのぞいてみた。だが、それらしい人影は全く見えない。不審に思い、灯りを持って外に出てみるが、そこに誰もいなかった。
「二人ともドコにいったんだろう?」
首をかしげながら玄関に戻ると、訪問者がいることに気がついた。近所に住むリーサという女性だった。
「リーサおばさん!」
「あら、ロイン君。何してたの?」
「お母さんとガルザのこと探したんだ。でもいなくって…。」
しょんぼりとした顔でロインは言った。すると、リーサは首をかしげて言った。
「あら?さっきグレシアさんが町の外に歩いていったのを見たけど、何も聞いてなかったの?」
「…そうでした!たしか、外で剣の稽古をするとか言ってました。」
「え?父さん、さっきはそんなこと…!」
「すみません、ロイン君。忘れていました。」
ドーチェがそう言うと、リーサは安心したような表情を見せた。
「それじゃドーチェ、さっきの話、グレシアさんに伝えておいてね。」
リーサはそう言うと、ロインに手を振って家に帰っていった。その姿が見えなくなると、ロインはドーチェに尋ねた。
「さっきの話って?」
「リーサさんの酒場でいいお酒が入ったそうだから、今度飲みにおいで、と誘われたんですよ。」
ロインはそれを聞くと、ふ〜んと納得した表情を見せた。そして、何か思いついたような顔をして、急いで家に戻っていった。かと思うと、自身の剣を持って勢いよく外へ飛び出していった。
「ロイン君、どこに行くんですか!?」
ドーチェは驚き、思わず叫んだ。ロインはそんなドーチェに笑顔で叫んだ。
「母さんに今の話してくる!」
それを聞いたドーチェは顔色を変えた。そして、必死にロインを呼び戻そうとするが、その声はすでにロインの耳に届かなくなっていた。
「はぁ…口は禍の元とは本当ですね。」
ドーチェは顔に手を当てて溜息をついた。本当は彼も、グレシア達が何処に行ったのかは知らなかった。ただ、リーサやロインに余計な心配をかけまいとして嘘を言ってしまった。だが、今はそんなことを考えている場合ではない。エルナの森は、夜になると凶暴な魔物で溢れていると聞く。そんなところにロインを一人で行かせるわけにはいかない。だが、ドーチェは戦う術をもっていない。
「…あの人に頼みますか。」
ドーチェは家に戻ると、支度を始めた。
「うわっ暗いなぁ…」
エルナの森に入ってすぐ、ロインはそう声を漏らした。昼間にも戦闘訓練のため足を踏み入れていたが、やはり夜のほうが暗く、一人だと言う事もあってやや心細い。とりあえず、剣をすぐに構えられるようにし、灯りをつけた。これで周囲がよく見える。ロインが先へ進もうとした時だった。近くの茂みがガサガサと音を立てた。
「? なんだろう。」
ロインがその方向に灯りを向けた瞬間だった。突然赤い瞳をギラつかせた何かが、ロイン目掛けて突っ込んできた。うわぁと悲鳴をあげて飛び退き、灯りを放り投げてしまった。相手はその灯りに飛びつき、ロインを一瞥するとどこかへ消えてしまった。その瞳に、ロインは見覚えがあった。
たしか、ウルフという動きの素早い魔物だ。
今のロインでは相手に出来ないと判断したグレシアは、ロインにウルフの相手はさせなかった。それを思い出したロインは身震いした。そして理解した。この森では、灯りが自分の位置を魔物達に知らせる目印となることを。魔物との接触を最低限に抑えるために、ロインは灯りを灯す事を止め、出来る限り気配を消して先へ進んだ。
夕食を終えたロインは二人の姿が見えないことに気がついた。
「確か、ガルザ君が話があるからと言って、グレシアさんを裏庭の方に呼び出していたと思いますよ。」
ドーチェは夕食の後片付けをしながら答えた。それを聞いたロインは、窓から裏庭をのぞいてみた。だが、それらしい人影は全く見えない。不審に思い、灯りを持って外に出てみるが、そこに誰もいなかった。
「二人ともドコにいったんだろう?」
首をかしげながら玄関に戻ると、訪問者がいることに気がついた。近所に住むリーサという女性だった。
「リーサおばさん!」
「あら、ロイン君。何してたの?」
「お母さんとガルザのこと探したんだ。でもいなくって…。」
しょんぼりとした顔でロインは言った。すると、リーサは首をかしげて言った。
「あら?さっきグレシアさんが町の外に歩いていったのを見たけど、何も聞いてなかったの?」
「…そうでした!たしか、外で剣の稽古をするとか言ってました。」
「え?父さん、さっきはそんなこと…!」
「すみません、ロイン君。忘れていました。」
ドーチェがそう言うと、リーサは安心したような表情を見せた。
「それじゃドーチェ、さっきの話、グレシアさんに伝えておいてね。」
リーサはそう言うと、ロインに手を振って家に帰っていった。その姿が見えなくなると、ロインはドーチェに尋ねた。
「さっきの話って?」
「リーサさんの酒場でいいお酒が入ったそうだから、今度飲みにおいで、と誘われたんですよ。」
ロインはそれを聞くと、ふ〜んと納得した表情を見せた。そして、何か思いついたような顔をして、急いで家に戻っていった。かと思うと、自身の剣を持って勢いよく外へ飛び出していった。
「ロイン君、どこに行くんですか!?」
ドーチェは驚き、思わず叫んだ。ロインはそんなドーチェに笑顔で叫んだ。
「母さんに今の話してくる!」
それを聞いたドーチェは顔色を変えた。そして、必死にロインを呼び戻そうとするが、その声はすでにロインの耳に届かなくなっていた。
「はぁ…口は禍の元とは本当ですね。」
ドーチェは顔に手を当てて溜息をついた。本当は彼も、グレシア達が何処に行ったのかは知らなかった。ただ、リーサやロインに余計な心配をかけまいとして嘘を言ってしまった。だが、今はそんなことを考えている場合ではない。エルナの森は、夜になると凶暴な魔物で溢れていると聞く。そんなところにロインを一人で行かせるわけにはいかない。だが、ドーチェは戦う術をもっていない。
「…あの人に頼みますか。」
ドーチェは家に戻ると、支度を始めた。
「うわっ暗いなぁ…」
エルナの森に入ってすぐ、ロインはそう声を漏らした。昼間にも戦闘訓練のため足を踏み入れていたが、やはり夜のほうが暗く、一人だと言う事もあってやや心細い。とりあえず、剣をすぐに構えられるようにし、灯りをつけた。これで周囲がよく見える。ロインが先へ進もうとした時だった。近くの茂みがガサガサと音を立てた。
「? なんだろう。」
ロインがその方向に灯りを向けた瞬間だった。突然赤い瞳をギラつかせた何かが、ロイン目掛けて突っ込んできた。うわぁと悲鳴をあげて飛び退き、灯りを放り投げてしまった。相手はその灯りに飛びつき、ロインを一瞥するとどこかへ消えてしまった。その瞳に、ロインは見覚えがあった。
たしか、ウルフという動きの素早い魔物だ。
今のロインでは相手に出来ないと判断したグレシアは、ロインにウルフの相手はさせなかった。それを思い出したロインは身震いした。そして理解した。この森では、灯りが自分の位置を魔物達に知らせる目印となることを。魔物との接触を最低限に抑えるために、ロインは灯りを灯す事を止め、出来る限り気配を消して先へ進んだ。
■作者メッセージ
2012年、あけましておめでとうございます!
ポケモンをやりながら年越しをしたちよです(笑
この小説を書き始めてから約3年。私ももうすぐ成人式を迎えますが、まだまだ完結せず…。当時は思ってもいなかったくらいの長編小説になりました(笑
のんびりと、ではありますが、これからも執筆を続けていこうと思っています。
今後も、どうぞよろしくお願いいたします(*^_^*)