第5章 騎士と思い出 ]T
そう言ってトルドが指差した場所を見ると、周囲よりもさらに盛り上がっている大人達の様子が目に入った。と、同時になにやら聞き覚えのある声も聞こえてくる。その声にまさかと思い、カイウスとティマがその集団に近づいてみる。
「だ〜から、こうみえてもギルドの首領(ボス)なんだって。困ったことがあったら協力するよ?もちろん報酬は払ってもらうけど♪」
「わっははは!!こんな可愛いのに首領だなんてやるねぇ!嬢ちゃん!」
「おじさん、なめたら痛い目見るよ〜?あたい結構強いんだから〜。」
「そりゃ気をつけんとな!!がっははは!」
「「…ラミー?」」
大の大人とタメ口で語り合っている赤髪の少女。いつも身にまとっているマントは脱いでいて、赤を基調としたタンクトップ姿の彼女がそこにいた。
「おう!よく会うねぇ、あんた達。」
いつにも増してテンションの高いラミー。さらに近づくとなにやら臭う。同じ臭いが酒に酔った大人達からもする。
「ラミー、あなたもしかして飲んでる?」
「ん?そうだけど?」
「あなた、お酒なんて飲んでいいの!?いくつ!?」
「15。」
「私と同い年じゃないの!!」
「えー?別にいいだろ?」
そう言ってまた一口酒を口に運ぶ。悪びれた様子などこれっぽっちもない。周囲の大人たちも、酔って気分がいいせいかそれを咎めようとする気配はない。ティマ一人がそれを止めさせようとしていた。カイウスはそのうち騒ぎになるのではないか、と心配しつつラミーに質問した。
「ティマ、ほっとけって。それよりラミー、聞きたいことがある」
「な〜に?」
酒で頬を赤らめたラミーの顔がカイウスを見上げた。カイウスはじっと自分を見つめる赤い瞳にかつての仇を思い出し、その記憶をなんとか封じ込めて言葉を続ける。
「スディアナ事件について、一般に知られている以上の情報を持ってるかどうか聞きたい。」
「なんで〜?」
「スディアナ事件の犯人と行方不明の姫を探してるの。何か知らない?」
「さ〜ね。でも、手伝おうか?人探し。」
口まわりを手で拭いながらラミーが尋ねた。しかし、すぐに「断る」という声が聞こえた。カイウスが振り向くといつの間にかロインとルビアが後ろに立っていた。
「どーせまた報酬だとか言うんだろ?生憎、今何も渡せそうにないんでな。」
「じゃあまた暇潰し」
「「誰がやるか!!」」
ロインとカイウスが同時に叫んだ。よほど大変だったのだろう、全身から拒絶のオーラが出ていた。そしてもう話すことはない、とティマの手をひいてその場を去ろうとした。ラミーはその態度につまんなさそうな顔をし、前髪を払った。
「い〜のかな〜?あたい、結構良い情報持ってるんだけどな〜?」
挑発するような声が聞こえる。適当なことを言ってるんだろうと思い、ロイン達はそれを無視しようとした。だが、それはかなわないようだ。振り返りラミーの姿を見たルビアが、彼女の耳に光るものがあるのに気付いたからだ。普段は前髪に隠れて見えないが、よく見ると白い結晶のついたピアスをしている。そのことにルビアは初めて気がついた。そしてそれが何かわかった。
「カイウス!ラミーの耳!!」
「え…!?どういうことだ!」
突然大声をあげたルビアに驚き、カイウスが振り向いた。そしてルビア同様に顔色を変えた。ロインとティマもそれに気付いたようだ。ロイン達の反応にラミーはにやりと笑みを浮かべた。
「ふふ♪あたいに、『女神の従者(マリアのしもべ)』に仕事を依頼してくれるなら、話してもいいよ?報酬は…そうだね。犯人捕まえたら報奨金がもらえるだろ?それの7割…いや、8割をあたいらに支払う。これでどう?」
「それならいいわ。私、そんなのに興味ないもの。あなたたちにあげる。」
そのティマの発言にラミーはきょとんとした。が、すぐに噴出し、大声で笑い始めた。突然のことにロイン達は呆然となった。
「あははは!あんた、変なの!気に入ったよ!」
「え?ど、どうも…?」
ティマの肩をバシバシと叩きながらラミーはまだ笑っていた。
「おい、アインス!今の聞いてただろ?1週間以内に船をマウベロ港に運びな!」
「了解。」
ラミーから少し離れた場所にアインスはいた。彼の存在にたった今気がついたロイン達が驚いている間に、アインスは店を後にした。
「マウベロってここから北にある港町か。」
「そうさ。そこで船に乗って、連れてってやるよ。スディアナ事件の犯人がいるかもしれない場所に。」
「本当!?」
「ああ。だから今夜は飲もうぜ!!おっさん!酒の追加、頼むよー!」
「ちょ、ラミー!止めなさい!!」
再び酒に口をつけようとするラミーをティマは押さえにかかった。カイウスとルビアもそれに加わり、周囲の大人たちはそれを見て笑っている。ロインはというと、いつものように呆れて一人我関せずとしていた。そんな彼の横にリーサが立った。
「ふふ。楽しいお友達ね、ロイン君。」
「別に。そんなんじゃねぇよ。」
「でも、あの子達はそうは思ってないわよ、きっと。」
リーサは騒ぎ続ける集団をくすくすと笑いながら見ている。ロインははあ、と溜息をついた。そしてリーサを見ずに再び口を開く。
「…宿、空いてるか?」
「ええ。泊まる?」
「ああ。」
「じゃあ、部屋の準備してくるわね。」
リーサはそう言って店の奥へと姿を消した。その時、ようやく騒ぎを静めようとトルドが厨房から出てきた。
ラミー・オーバック。彼女がスディアナ事件に関して何かしら情報を持っているのは違いないだろう。だが、今そんなことを考える余裕はティマにはないらしい。ラミーがまだ酒を飲み続けるので頬を膨らましている。カイウスとルビアがそれをなだめている。
…また変な連れが増えた。
ロインは肩をすくめていた。だが、口元は僅かに微笑んでいた。
「だ〜から、こうみえてもギルドの首領(ボス)なんだって。困ったことがあったら協力するよ?もちろん報酬は払ってもらうけど♪」
「わっははは!!こんな可愛いのに首領だなんてやるねぇ!嬢ちゃん!」
「おじさん、なめたら痛い目見るよ〜?あたい結構強いんだから〜。」
「そりゃ気をつけんとな!!がっははは!」
「「…ラミー?」」
大の大人とタメ口で語り合っている赤髪の少女。いつも身にまとっているマントは脱いでいて、赤を基調としたタンクトップ姿の彼女がそこにいた。
「おう!よく会うねぇ、あんた達。」
いつにも増してテンションの高いラミー。さらに近づくとなにやら臭う。同じ臭いが酒に酔った大人達からもする。
「ラミー、あなたもしかして飲んでる?」
「ん?そうだけど?」
「あなた、お酒なんて飲んでいいの!?いくつ!?」
「15。」
「私と同い年じゃないの!!」
「えー?別にいいだろ?」
そう言ってまた一口酒を口に運ぶ。悪びれた様子などこれっぽっちもない。周囲の大人たちも、酔って気分がいいせいかそれを咎めようとする気配はない。ティマ一人がそれを止めさせようとしていた。カイウスはそのうち騒ぎになるのではないか、と心配しつつラミーに質問した。
「ティマ、ほっとけって。それよりラミー、聞きたいことがある」
「な〜に?」
酒で頬を赤らめたラミーの顔がカイウスを見上げた。カイウスはじっと自分を見つめる赤い瞳にかつての仇を思い出し、その記憶をなんとか封じ込めて言葉を続ける。
「スディアナ事件について、一般に知られている以上の情報を持ってるかどうか聞きたい。」
「なんで〜?」
「スディアナ事件の犯人と行方不明の姫を探してるの。何か知らない?」
「さ〜ね。でも、手伝おうか?人探し。」
口まわりを手で拭いながらラミーが尋ねた。しかし、すぐに「断る」という声が聞こえた。カイウスが振り向くといつの間にかロインとルビアが後ろに立っていた。
「どーせまた報酬だとか言うんだろ?生憎、今何も渡せそうにないんでな。」
「じゃあまた暇潰し」
「「誰がやるか!!」」
ロインとカイウスが同時に叫んだ。よほど大変だったのだろう、全身から拒絶のオーラが出ていた。そしてもう話すことはない、とティマの手をひいてその場を去ろうとした。ラミーはその態度につまんなさそうな顔をし、前髪を払った。
「い〜のかな〜?あたい、結構良い情報持ってるんだけどな〜?」
挑発するような声が聞こえる。適当なことを言ってるんだろうと思い、ロイン達はそれを無視しようとした。だが、それはかなわないようだ。振り返りラミーの姿を見たルビアが、彼女の耳に光るものがあるのに気付いたからだ。普段は前髪に隠れて見えないが、よく見ると白い結晶のついたピアスをしている。そのことにルビアは初めて気がついた。そしてそれが何かわかった。
「カイウス!ラミーの耳!!」
「え…!?どういうことだ!」
突然大声をあげたルビアに驚き、カイウスが振り向いた。そしてルビア同様に顔色を変えた。ロインとティマもそれに気付いたようだ。ロイン達の反応にラミーはにやりと笑みを浮かべた。
「ふふ♪あたいに、『女神の従者(マリアのしもべ)』に仕事を依頼してくれるなら、話してもいいよ?報酬は…そうだね。犯人捕まえたら報奨金がもらえるだろ?それの7割…いや、8割をあたいらに支払う。これでどう?」
「それならいいわ。私、そんなのに興味ないもの。あなたたちにあげる。」
そのティマの発言にラミーはきょとんとした。が、すぐに噴出し、大声で笑い始めた。突然のことにロイン達は呆然となった。
「あははは!あんた、変なの!気に入ったよ!」
「え?ど、どうも…?」
ティマの肩をバシバシと叩きながらラミーはまだ笑っていた。
「おい、アインス!今の聞いてただろ?1週間以内に船をマウベロ港に運びな!」
「了解。」
ラミーから少し離れた場所にアインスはいた。彼の存在にたった今気がついたロイン達が驚いている間に、アインスは店を後にした。
「マウベロってここから北にある港町か。」
「そうさ。そこで船に乗って、連れてってやるよ。スディアナ事件の犯人がいるかもしれない場所に。」
「本当!?」
「ああ。だから今夜は飲もうぜ!!おっさん!酒の追加、頼むよー!」
「ちょ、ラミー!止めなさい!!」
再び酒に口をつけようとするラミーをティマは押さえにかかった。カイウスとルビアもそれに加わり、周囲の大人たちはそれを見て笑っている。ロインはというと、いつものように呆れて一人我関せずとしていた。そんな彼の横にリーサが立った。
「ふふ。楽しいお友達ね、ロイン君。」
「別に。そんなんじゃねぇよ。」
「でも、あの子達はそうは思ってないわよ、きっと。」
リーサは騒ぎ続ける集団をくすくすと笑いながら見ている。ロインははあ、と溜息をついた。そしてリーサを見ずに再び口を開く。
「…宿、空いてるか?」
「ええ。泊まる?」
「ああ。」
「じゃあ、部屋の準備してくるわね。」
リーサはそう言って店の奥へと姿を消した。その時、ようやく騒ぎを静めようとトルドが厨房から出てきた。
ラミー・オーバック。彼女がスディアナ事件に関して何かしら情報を持っているのは違いないだろう。だが、今そんなことを考える余裕はティマにはないらしい。ラミーがまだ酒を飲み続けるので頬を膨らましている。カイウスとルビアがそれをなだめている。
…また変な連れが増えた。
ロインは肩をすくめていた。だが、口元は僅かに微笑んでいた。
■作者メッセージ
おまけスキット
【ラミーの目的】
ティマ「ラミー。何のためにケノンに来たの?」
ラミー「図書館で調べ物。あと、アハトが新しいレシピを欲しがっててね。」
ティマ「アハトさんって…あの料理係の?」
ラミー「そ。で、あとはここで飲んでだ。」
ティマ「だからお酒はダメー!!」
【ラミーの目的】
ティマ「ラミー。何のためにケノンに来たの?」
ラミー「図書館で調べ物。あと、アハトが新しいレシピを欲しがっててね。」
ティマ「アハトさんって…あの料理係の?」
ラミー「そ。で、あとはここで飲んでだ。」
ティマ「だからお酒はダメー!!」