第6章 兆し、赤眼が映すモノ V
一方の倒される側としては、目の前の現実に驚愕としていた。
自分達は戦闘訓令を受けた一軍人。それがなぜ、こんな子供相手にやられているのだ。特にこの白いマフラーの少年。俊敏な動きに加えて急所或いは手足を確実に狙って次々と仲間を戦闘不能にしていく。それに赤髪の銃使いも相当な手練れだ。
(あいつは…!)
その時、一人の兵士がその少女の姿をとらえた途端に隊列を飛び出した。
後衛の2人を狙って四方八方からむかってくる兵士達。ラミーは依然その2人を守りながら戦い続けている。そんな彼女に急接近する者が一人。別の方向から来る相手に気を取られていたせいか、ラミーは反応が遅れた。
「獅子戦吼!」
「あぁっ!」
叩きつけられた闘気。ラミーは防ぐ間もなく、数メートル飛ばされた。だがすぐに受身を取り、接近戦に持ち込まれるであろうことを予想して右手の銃を短剣に持ち替えた。その予想はあたり、吹き飛んだラミーを追ってすぐに相手の剣が振り下ろされた。ラミーは地面を転がりそれをかわす。攻撃をかわされた相手はすぐに追撃しようとはせず、クククと笑い声を上げてラミーを見ている。その顔を見た途端、ラミーは表情を変えた。
「てめぇ、『エルナの森』の!」
「覚えていたか、ガキ。あの時の借りを返させてもらうぜ!」
セイルはそう言い、端整な顔を歪ませてラミーと対峙する。ラミーも面倒だとでも言うように舌打ちをし武器を構える。
「剛・魔神剣!」
大きな衝撃波を発生させロインを攻撃するガルザ。ロインはそれをもろに受けてしまった。だが、先ほどルビアがかけてくれた治癒術のおかげで、まだ立ちあがることはできる。すかさずガルザに反撃を仕掛ける。何度かロインの剣はガルザを切り裂いた。しかし、大したダメージは負わせていない。それに対しロインは何度もガルザの技を受けてしまっている。ルビアのサポートがなければとっくに力尽きてしまっていたかもしれない。だが、ロインには腑に落ちない点が一つあった。
「…おい。なんで殺りにこない?」
ロインはガルザに問いかけた。今までのガルザの攻撃は、ロインに致命傷を与えるような強力なものではなかった。ガルザは手加減している。そうとしか思えない戦い方なのにロインは気がついた。それでもロインが押されているというのは、それだけの力の差があるということなのだろう。しかし、ガルザは何も答えない。黙って剣をロインに向け続けている。ロインも黙って剣を構える。その時だった。
「きゃああっ!!」
ロインの背後から悲鳴が上がった。思わず振り向くと、ラミーの守りから離されてしまったルビアとティマが数名の兵の攻撃を受けていた。しかも攻撃を受けてしまったのか、ルビアは地面に倒れて動かない。ティマがルビアを庇いながら一人応戦しているのが目に入った。
「ティマ!!」
ロインはティマのもとに駆け寄ろうとした。しかし、それよりも速く二人の元に駆けつけ、兵を薙倒すカイウスの姿が目に入った。それを見たロインは再びガルザへと目を向けた。ティマが気がかりなのは変わらない。だがカイウスがいる。少なくとも先程よりは平気なはずだ。それにこのような状況になってしまった今、私情抜きにしても目の前のガルザから目を離せない。少なくとも、彼が仕掛けてくるようなことがあれば自分が相手になるしかない。そうしなければ他の仲間達への負担が大きくなり、結果自分達の命に危険が及ぶ。ロインは剣を強く握りなおした。
自分達は戦闘訓令を受けた一軍人。それがなぜ、こんな子供相手にやられているのだ。特にこの白いマフラーの少年。俊敏な動きに加えて急所或いは手足を確実に狙って次々と仲間を戦闘不能にしていく。それに赤髪の銃使いも相当な手練れだ。
(あいつは…!)
その時、一人の兵士がその少女の姿をとらえた途端に隊列を飛び出した。
後衛の2人を狙って四方八方からむかってくる兵士達。ラミーは依然その2人を守りながら戦い続けている。そんな彼女に急接近する者が一人。別の方向から来る相手に気を取られていたせいか、ラミーは反応が遅れた。
「獅子戦吼!」
「あぁっ!」
叩きつけられた闘気。ラミーは防ぐ間もなく、数メートル飛ばされた。だがすぐに受身を取り、接近戦に持ち込まれるであろうことを予想して右手の銃を短剣に持ち替えた。その予想はあたり、吹き飛んだラミーを追ってすぐに相手の剣が振り下ろされた。ラミーは地面を転がりそれをかわす。攻撃をかわされた相手はすぐに追撃しようとはせず、クククと笑い声を上げてラミーを見ている。その顔を見た途端、ラミーは表情を変えた。
「てめぇ、『エルナの森』の!」
「覚えていたか、ガキ。あの時の借りを返させてもらうぜ!」
セイルはそう言い、端整な顔を歪ませてラミーと対峙する。ラミーも面倒だとでも言うように舌打ちをし武器を構える。
「剛・魔神剣!」
大きな衝撃波を発生させロインを攻撃するガルザ。ロインはそれをもろに受けてしまった。だが、先ほどルビアがかけてくれた治癒術のおかげで、まだ立ちあがることはできる。すかさずガルザに反撃を仕掛ける。何度かロインの剣はガルザを切り裂いた。しかし、大したダメージは負わせていない。それに対しロインは何度もガルザの技を受けてしまっている。ルビアのサポートがなければとっくに力尽きてしまっていたかもしれない。だが、ロインには腑に落ちない点が一つあった。
「…おい。なんで殺りにこない?」
ロインはガルザに問いかけた。今までのガルザの攻撃は、ロインに致命傷を与えるような強力なものではなかった。ガルザは手加減している。そうとしか思えない戦い方なのにロインは気がついた。それでもロインが押されているというのは、それだけの力の差があるということなのだろう。しかし、ガルザは何も答えない。黙って剣をロインに向け続けている。ロインも黙って剣を構える。その時だった。
「きゃああっ!!」
ロインの背後から悲鳴が上がった。思わず振り向くと、ラミーの守りから離されてしまったルビアとティマが数名の兵の攻撃を受けていた。しかも攻撃を受けてしまったのか、ルビアは地面に倒れて動かない。ティマがルビアを庇いながら一人応戦しているのが目に入った。
「ティマ!!」
ロインはティマのもとに駆け寄ろうとした。しかし、それよりも速く二人の元に駆けつけ、兵を薙倒すカイウスの姿が目に入った。それを見たロインは再びガルザへと目を向けた。ティマが気がかりなのは変わらない。だがカイウスがいる。少なくとも先程よりは平気なはずだ。それにこのような状況になってしまった今、私情抜きにしても目の前のガルザから目を離せない。少なくとも、彼が仕掛けてくるようなことがあれば自分が相手になるしかない。そうしなければ他の仲間達への負担が大きくなり、結果自分達の命に危険が及ぶ。ロインは剣を強く握りなおした。