第6章 兆し、赤眼が映すモノ ]T
その頃、ティマ達は白い光に包まれていた。
「な…何!?」
ティマは突然白い光を放ちだした貝殻のペンダントを目を細めて見つめる。あまりにも眩しく、目を開けていられない程の輝きだ。そして、ラミーのピアスの結晶からも同じ光が放たれている。ラミーと男たちは驚き、白い視界の中で動けずにいた。しばらくすると、光は現れた時と同じように突然ふっと消えた。辺りは再び洞窟の暗闇と赤い灯火の世界に戻った。だが突然の事に驚いているため、誰一人として動き出そうとしない。ドレスの冷たい殺気も感じない。代わりに聞こえてきた地響き。ドドドドドッという音をたて、しかも段々近づいている。かと思うと、いきなりバットの群れが一行の前に飛び出してきた。続いて現れたのはゲコゲコ、ベア、インプといった魔物たち。ドレスや男達は即座に攻撃目標を切り替える。ラミーはその隙に、ティマの杖と自分の銃と短剣を回収する。
「逃がすか!!」
ダンが再びラミーに剣を向ける。ラミーは冷静に取り戻した2丁の銃を向ける。
「お返しだよ!セッシブバレット!!」
ラミーの連射攻撃はダンの手から剣を奪い、そして彼の肩や腕から鮮血が散った。それを目撃したドレスや他の男衆の怒号が響き渡る。
「ダン!!小娘、よくも!!」
「ふん。ただでやられるラミー・オーバック様じゃねぇよ!」
ラミーはそう言うと横へ飛び退いた。直後、彼女がいた場所に魔物が突進してきた。ラミーは右手の武器を換え、襲い掛かってきた一体をファングエッジで仕留めた。
「ティマ!受け取れ!!」
ラミーはティマに杖を投げ渡した。ティマはそれを受け取るとすぐさま槍の構えをとり、マリーとチャーク目掛けてやってくる魔物を倒していく。自分達をさらった連中も今は魔物の掃討に気をとられている。
この隙に逃げ出せる!
ティマはそう思った。だが、すぐにそれは難しいと判断せざるを得なくなった。この空間に押し寄せてくる魔物が多すぎる。しかもまだ出入口から続々とやってくるのだ。非戦闘員であるマリーとチャークを連れて脱出するには、まず魔物の群れをどうにかしなければいけない。そしてラミーが3人からはぐれてしまっているのだ。しかも、ダンを負傷させた怒りを露にしている仲間が2人ほど、魔物と一緒になってラミーを集中攻撃しているのだ。まずはラミーを助け出し、合流しなければならない。
「アイスニードル!」
ティマは魔物の群れから2人を庇いながら詠唱を完了させた。放たれた氷の刃は男2人を直撃した。その瞬間、ラミーは低く構え、男達の足を狙って攻撃した。そして男達が体勢を崩されて倒れると、向かってくる魔物をかわしながらティマのもとへと舞い戻った。
「サンキュー!助かった。」
「どういたしまして。それより、どうやって逃げよう?」
ティマはいいながら目の前に突っ込んできたバットの群れを薙ぎ払う。ラミーは苦笑しながら銃口を同じくバットの群れにむける。
「ははっ。悪い。案無し!だから任せるわ。」
「ええ!?」
ティマはその発言に驚き、手が止まった。そんなティマに向かってくるバットをラミーが打ち落とす。攻撃を続けながら、またラミーは口を開いた。
「あたいが、とりあえず向かってくる魔物は倒すから、その隙に、なんとかして、ちょーだいっとお!!…って、こいつらいすぎでしょ!?」
ラミーは思わず絶叫した。そう。とにかく数が多い。川の流れのようにどんどん押し寄せてくるのだ。これだけの魔物がこの洞窟に生息していたのかと思うくらいだ。そして、何故突然これだけの魔物が押し寄せたのか不思議に思う。だがそれを考えているヒマは無い。ティマは必死にこの場を切り抜ける策を考える。一度に大量の魔物を片付けることができればなんとかなるかもしれない。だが、そうはいっても、ティマはそれだけの魔物を倒せるプリセプツは持っていなかった。
(…そうだ!図書館の魔法!!)
その時、ティマはケノンの図書館で見つけたあるプリセプツを思い出した。ケノンを出る前に立ち寄り、偶然目にした上級魔法。広範囲を攻撃できるプリセプツで、詠唱を書き写したものを持っている。ティマは急いでその紙切れを取り出す。今まで上級魔法を詠唱したことは無い。ティマは緊張し、ごくりと唾を飲んだ。そしてゆっくりと書かれている詠唱文を読み上げていく。
「ファングエッジ!次!チャージファング!」
その間、ラミーはひたすら襲い掛かる魔物を切り裂き、打ち抜いていく。額を伝う汗の量が増えていく。だが魔物の数は減っているように見えない。先ほどからティマが何かを詠唱しているのが聞こえる。その詠唱が完了するのを、今か今かと待ちながらひたすら攻撃を続ける。その時だった。
「静寂の森に眠りし氷姫よ、彼の者に手向けの抱擁を…!」
ティマの手にあるペンダントが、再び白く輝きだした。そして、ラミーのピアスの結晶も同じ光を放ち始める。
(また…!?)
ラミーは驚いてティマを見る。ティマは詠唱に集中しているせいか、再びペンダントが輝きだしたことなど気にとめていない。
「決まれ!!インブレイスエンド!!」
その言葉と共に、突然その場が冷気に包まれた。かと思うと、足元から一気に凍結していく。ダンとドレス一味もその氷の中に魔物と一緒に閉じ込められていく。悲鳴が木霊し、マリーとチャーク、ラミーはその美しくも圧倒的な光景に息を呑み、ただ呆然と見ていた。やがてキィンという高い音がし、巨大な氷のドームが完成した。
「……な…なんだよ、これ?」
そう呟くラミーの口から白い息が漏れた。ちらりとティマを見た。肩で息をし、やや疲れている様子だった。ラミーが声をかけようとしたその時だった。
「獅子千裂破!!くそっ!多すぎだろ、これ!?」
「カイウス、しゃべってないで手動かしなさいよ!」
「そういうルビアこそ!」
たったひとつの出入口から聞こえてくる聞きなれた声。そして魔物の断末魔。近づいてくる。四人の瞳に輝きが戻る。そして、剣を持った金髪の少年が現れた。
「ティマ!!」
「ロイン!!」
ティマは一目散に駆け出し、ロインの胸の中に飛び込んだ。ロインはその行動に慌てながらもなんとかティマを受け止めた。
「良かった。ケガはないか?」
「うん。ちょっと危なかったけど、でも大丈夫。」
それを聞くと、ロインは安心した表情を見せた。
「ふふ。なんだか『バオイの丘』で再会した時みたいね。」
そう言ったのはロインの背後から現れたルビア。隣にはカイウスが笑顔で立っていた。だが、その笑顔はすぐに衝撃へと変わった。
「な、なんだ!?この氷!?」
目の前にある巨大な氷の塊。しかも、中には魔物と人間がいる。
「お姉ちゃんが魔法で出したやつだよ。」
答えたのはチャーク。寒さのせいか、あるいは目にした光景を思い出したからか、その声は少し震えていた。そんな彼を、マリーが優しく肩を抱いている。
「…とにかく、ここを離れましょう。話は移動しながら聞くわ。」
ルビアがそう言い、カイウスの手をひいてもと来た道へ入っていった。その後をロインとティマ、マリーとチャークが追った。ラミーはしばらく氷の塊を見つめ続け、そして駆け足で一行の後ろについた。
「な…何!?」
ティマは突然白い光を放ちだした貝殻のペンダントを目を細めて見つめる。あまりにも眩しく、目を開けていられない程の輝きだ。そして、ラミーのピアスの結晶からも同じ光が放たれている。ラミーと男たちは驚き、白い視界の中で動けずにいた。しばらくすると、光は現れた時と同じように突然ふっと消えた。辺りは再び洞窟の暗闇と赤い灯火の世界に戻った。だが突然の事に驚いているため、誰一人として動き出そうとしない。ドレスの冷たい殺気も感じない。代わりに聞こえてきた地響き。ドドドドドッという音をたて、しかも段々近づいている。かと思うと、いきなりバットの群れが一行の前に飛び出してきた。続いて現れたのはゲコゲコ、ベア、インプといった魔物たち。ドレスや男達は即座に攻撃目標を切り替える。ラミーはその隙に、ティマの杖と自分の銃と短剣を回収する。
「逃がすか!!」
ダンが再びラミーに剣を向ける。ラミーは冷静に取り戻した2丁の銃を向ける。
「お返しだよ!セッシブバレット!!」
ラミーの連射攻撃はダンの手から剣を奪い、そして彼の肩や腕から鮮血が散った。それを目撃したドレスや他の男衆の怒号が響き渡る。
「ダン!!小娘、よくも!!」
「ふん。ただでやられるラミー・オーバック様じゃねぇよ!」
ラミーはそう言うと横へ飛び退いた。直後、彼女がいた場所に魔物が突進してきた。ラミーは右手の武器を換え、襲い掛かってきた一体をファングエッジで仕留めた。
「ティマ!受け取れ!!」
ラミーはティマに杖を投げ渡した。ティマはそれを受け取るとすぐさま槍の構えをとり、マリーとチャーク目掛けてやってくる魔物を倒していく。自分達をさらった連中も今は魔物の掃討に気をとられている。
この隙に逃げ出せる!
ティマはそう思った。だが、すぐにそれは難しいと判断せざるを得なくなった。この空間に押し寄せてくる魔物が多すぎる。しかもまだ出入口から続々とやってくるのだ。非戦闘員であるマリーとチャークを連れて脱出するには、まず魔物の群れをどうにかしなければいけない。そしてラミーが3人からはぐれてしまっているのだ。しかも、ダンを負傷させた怒りを露にしている仲間が2人ほど、魔物と一緒になってラミーを集中攻撃しているのだ。まずはラミーを助け出し、合流しなければならない。
「アイスニードル!」
ティマは魔物の群れから2人を庇いながら詠唱を完了させた。放たれた氷の刃は男2人を直撃した。その瞬間、ラミーは低く構え、男達の足を狙って攻撃した。そして男達が体勢を崩されて倒れると、向かってくる魔物をかわしながらティマのもとへと舞い戻った。
「サンキュー!助かった。」
「どういたしまして。それより、どうやって逃げよう?」
ティマはいいながら目の前に突っ込んできたバットの群れを薙ぎ払う。ラミーは苦笑しながら銃口を同じくバットの群れにむける。
「ははっ。悪い。案無し!だから任せるわ。」
「ええ!?」
ティマはその発言に驚き、手が止まった。そんなティマに向かってくるバットをラミーが打ち落とす。攻撃を続けながら、またラミーは口を開いた。
「あたいが、とりあえず向かってくる魔物は倒すから、その隙に、なんとかして、ちょーだいっとお!!…って、こいつらいすぎでしょ!?」
ラミーは思わず絶叫した。そう。とにかく数が多い。川の流れのようにどんどん押し寄せてくるのだ。これだけの魔物がこの洞窟に生息していたのかと思うくらいだ。そして、何故突然これだけの魔物が押し寄せたのか不思議に思う。だがそれを考えているヒマは無い。ティマは必死にこの場を切り抜ける策を考える。一度に大量の魔物を片付けることができればなんとかなるかもしれない。だが、そうはいっても、ティマはそれだけの魔物を倒せるプリセプツは持っていなかった。
(…そうだ!図書館の魔法!!)
その時、ティマはケノンの図書館で見つけたあるプリセプツを思い出した。ケノンを出る前に立ち寄り、偶然目にした上級魔法。広範囲を攻撃できるプリセプツで、詠唱を書き写したものを持っている。ティマは急いでその紙切れを取り出す。今まで上級魔法を詠唱したことは無い。ティマは緊張し、ごくりと唾を飲んだ。そしてゆっくりと書かれている詠唱文を読み上げていく。
「ファングエッジ!次!チャージファング!」
その間、ラミーはひたすら襲い掛かる魔物を切り裂き、打ち抜いていく。額を伝う汗の量が増えていく。だが魔物の数は減っているように見えない。先ほどからティマが何かを詠唱しているのが聞こえる。その詠唱が完了するのを、今か今かと待ちながらひたすら攻撃を続ける。その時だった。
「静寂の森に眠りし氷姫よ、彼の者に手向けの抱擁を…!」
ティマの手にあるペンダントが、再び白く輝きだした。そして、ラミーのピアスの結晶も同じ光を放ち始める。
(また…!?)
ラミーは驚いてティマを見る。ティマは詠唱に集中しているせいか、再びペンダントが輝きだしたことなど気にとめていない。
「決まれ!!インブレイスエンド!!」
その言葉と共に、突然その場が冷気に包まれた。かと思うと、足元から一気に凍結していく。ダンとドレス一味もその氷の中に魔物と一緒に閉じ込められていく。悲鳴が木霊し、マリーとチャーク、ラミーはその美しくも圧倒的な光景に息を呑み、ただ呆然と見ていた。やがてキィンという高い音がし、巨大な氷のドームが完成した。
「……な…なんだよ、これ?」
そう呟くラミーの口から白い息が漏れた。ちらりとティマを見た。肩で息をし、やや疲れている様子だった。ラミーが声をかけようとしたその時だった。
「獅子千裂破!!くそっ!多すぎだろ、これ!?」
「カイウス、しゃべってないで手動かしなさいよ!」
「そういうルビアこそ!」
たったひとつの出入口から聞こえてくる聞きなれた声。そして魔物の断末魔。近づいてくる。四人の瞳に輝きが戻る。そして、剣を持った金髪の少年が現れた。
「ティマ!!」
「ロイン!!」
ティマは一目散に駆け出し、ロインの胸の中に飛び込んだ。ロインはその行動に慌てながらもなんとかティマを受け止めた。
「良かった。ケガはないか?」
「うん。ちょっと危なかったけど、でも大丈夫。」
それを聞くと、ロインは安心した表情を見せた。
「ふふ。なんだか『バオイの丘』で再会した時みたいね。」
そう言ったのはロインの背後から現れたルビア。隣にはカイウスが笑顔で立っていた。だが、その笑顔はすぐに衝撃へと変わった。
「な、なんだ!?この氷!?」
目の前にある巨大な氷の塊。しかも、中には魔物と人間がいる。
「お姉ちゃんが魔法で出したやつだよ。」
答えたのはチャーク。寒さのせいか、あるいは目にした光景を思い出したからか、その声は少し震えていた。そんな彼を、マリーが優しく肩を抱いている。
「…とにかく、ここを離れましょう。話は移動しながら聞くわ。」
ルビアがそう言い、カイウスの手をひいてもと来た道へ入っていった。その後をロインとティマ、マリーとチャークが追った。ラミーはしばらく氷の塊を見つめ続け、そして駆け足で一行の後ろについた。