第7章 トガビト T
辿り着いた港町『マウベロ』。ロイン、ティマ、カイウス、ルビアの四人は宿屋にいた。ラミーはマリーとチャークの家族を探すため、この町の行商を仕切るギルドの元へ足を運んでいた。ついでに仕事があれば仕入れてくるつもりらしく、宿屋で待つように言われたのだ。
「あ〜!疲れたよ〜!」
ティマはふかふかのベッドに倒れながら大声をあげる。確かにいろんなことがあり、皆疲れを感じていた。それでもティマに比べると、カイウスやルビアは疲れているという表情を見せていない。旅に慣れているためだろう。そのまままぶたが重くなり、もう少しでティマが眠りについてしまうだろうと思われた刹那、部屋の扉が勢いよく開き、ラミーが上機嫌で入ってきた。
「戻ったよー。チャーク達の家族は無事に見つかったよ。」
「本当!?」
それを聞いたティマは飛び起き、瞳を輝かせた。ラミーは頷くと「さて」とカイウス達に視線を向けた。
「出発は明日の朝。そこからしばらくは船旅を楽しんでもらうよ。」
「遠いのか?」
「そんなこと無いさ。ただ、これから行く先はちょっと訳ありでね。わざと遠回りして、あんたらに場所が把握できないように進む。いいね?」
その言葉に四人は頷いた。それを見ると、ラミーは満足げに笑顔を見せ踵を返した。
「よし!それじゃ出かけてくるな。」
「え?何処行くの?」
目を丸くしてティマが聞くと、ラミーは部屋を出てすぐところで振り返って答えた。
「船に戻って整備とかしないとね。ギルドの首領(ボス)ってのはいろいろやることがあるんだよ。じゃな!」
ラミーはそれだけ言って、部屋の戸を閉めていった。残された四人は、ただ呆然としているだけだった。
「…台風みたいな奴だな。」
ロインが思わず呟き、三人は首を振って同意した。
翌朝になり、四人は宿屋を後にした。結局、あの後ラミーは戻ってこなかった。きっと船に残っているのだろう、と思い、港に向かってみた。そこには予想通り『女神の従者(マリアのしもべ)』の船があり、ラミーの仲間が四人を待ち構えていた。
「お待ちしてました。さあ、乗ってください。」
ロインらを見て、一人の女性船員が手招きした。その案内に従い、彼らが船に乗り込もうとした時だった。
「待ってー!」
後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、全速力で走ってくるチャークの姿があった。その後ろからマリーと壮年の男性、そしてチャークより少し年上の少女の姿が見えた。チャークは四人のもとに辿り着くと少し息を整え、そして手にしていた小さな巾着袋を差し出した。
「これ、お姉ちゃん達にあげる。」
ティマがその袋を受け取り、中身を見てみる。そこにはアップルやオレンジなどの様々なグミが詰められていた。
「これって…」
「妻と息子を助けていただいた、そのお礼です。」
ティマ達が袋の中身に驚いていると、チャークの父がそう添えた。四人が彼を見ると、チャークの父は軽く頭を下げた。
「カトル・ザレットです。こっちは娘のノエル。その件は、どうもありがとうございました。このくらいしか出来ませんが、受け取ってください。」
「そんな…。ありがとうございます。助かります。」
ティマが代表して礼を述べると、チャークが笑顔でティマに言った。
「遠くに行くんでしょ?気を付けてね。」
「うん。ありがとう、チャーク。」
チャークが別れを述べると、カトル達はもう一度軽く頭を下げた。四人も挨拶を返し、ラミーの船へと乗り込んだ。数分後、船は動き出し、港ではザレット一家が彼らを見送っていた。ティマ、カイウス、ルビア、ラミーは彼らに手を振って別れを告げ、ロインはひとりマストにもたれかかって四人の背を見ていた。やがて彼らの姿が小さくなり、マウベロ港から大分離れると、ラミーが「さてと」と手を腰に当てて口を開いた。
「昨日も言ったけど、2・3日はずっと海の上だよ。寝室は前と同じ部屋を使いな。目的地に着くまでの間、いろいろと仕事を手伝ってもらうけど、いいね?」
ラミーの威勢のいい声が船上に響く。三人は首を縦に振って了解した。
「目的地は『アルミネの里』!いいな、おまえ達!!」
「「「「アイ・マム!!」」」」
ラミーの言葉に、『女神の従者』の仲間達は威勢のいい返事をした。それに満足そうな笑みを見せるラミーに、アインスが近寄った。
「…久々の里帰りになりますね。」
「そうなるな。」
そう言うラミーの顔はどこか暗い。アインスはそれ以上何も言わず、ラミーは気を取り直すように仲間達の見回りに出た。
「あ〜!疲れたよ〜!」
ティマはふかふかのベッドに倒れながら大声をあげる。確かにいろんなことがあり、皆疲れを感じていた。それでもティマに比べると、カイウスやルビアは疲れているという表情を見せていない。旅に慣れているためだろう。そのまままぶたが重くなり、もう少しでティマが眠りについてしまうだろうと思われた刹那、部屋の扉が勢いよく開き、ラミーが上機嫌で入ってきた。
「戻ったよー。チャーク達の家族は無事に見つかったよ。」
「本当!?」
それを聞いたティマは飛び起き、瞳を輝かせた。ラミーは頷くと「さて」とカイウス達に視線を向けた。
「出発は明日の朝。そこからしばらくは船旅を楽しんでもらうよ。」
「遠いのか?」
「そんなこと無いさ。ただ、これから行く先はちょっと訳ありでね。わざと遠回りして、あんたらに場所が把握できないように進む。いいね?」
その言葉に四人は頷いた。それを見ると、ラミーは満足げに笑顔を見せ踵を返した。
「よし!それじゃ出かけてくるな。」
「え?何処行くの?」
目を丸くしてティマが聞くと、ラミーは部屋を出てすぐところで振り返って答えた。
「船に戻って整備とかしないとね。ギルドの首領(ボス)ってのはいろいろやることがあるんだよ。じゃな!」
ラミーはそれだけ言って、部屋の戸を閉めていった。残された四人は、ただ呆然としているだけだった。
「…台風みたいな奴だな。」
ロインが思わず呟き、三人は首を振って同意した。
翌朝になり、四人は宿屋を後にした。結局、あの後ラミーは戻ってこなかった。きっと船に残っているのだろう、と思い、港に向かってみた。そこには予想通り『女神の従者(マリアのしもべ)』の船があり、ラミーの仲間が四人を待ち構えていた。
「お待ちしてました。さあ、乗ってください。」
ロインらを見て、一人の女性船員が手招きした。その案内に従い、彼らが船に乗り込もうとした時だった。
「待ってー!」
後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、全速力で走ってくるチャークの姿があった。その後ろからマリーと壮年の男性、そしてチャークより少し年上の少女の姿が見えた。チャークは四人のもとに辿り着くと少し息を整え、そして手にしていた小さな巾着袋を差し出した。
「これ、お姉ちゃん達にあげる。」
ティマがその袋を受け取り、中身を見てみる。そこにはアップルやオレンジなどの様々なグミが詰められていた。
「これって…」
「妻と息子を助けていただいた、そのお礼です。」
ティマ達が袋の中身に驚いていると、チャークの父がそう添えた。四人が彼を見ると、チャークの父は軽く頭を下げた。
「カトル・ザレットです。こっちは娘のノエル。その件は、どうもありがとうございました。このくらいしか出来ませんが、受け取ってください。」
「そんな…。ありがとうございます。助かります。」
ティマが代表して礼を述べると、チャークが笑顔でティマに言った。
「遠くに行くんでしょ?気を付けてね。」
「うん。ありがとう、チャーク。」
チャークが別れを述べると、カトル達はもう一度軽く頭を下げた。四人も挨拶を返し、ラミーの船へと乗り込んだ。数分後、船は動き出し、港ではザレット一家が彼らを見送っていた。ティマ、カイウス、ルビア、ラミーは彼らに手を振って別れを告げ、ロインはひとりマストにもたれかかって四人の背を見ていた。やがて彼らの姿が小さくなり、マウベロ港から大分離れると、ラミーが「さてと」と手を腰に当てて口を開いた。
「昨日も言ったけど、2・3日はずっと海の上だよ。寝室は前と同じ部屋を使いな。目的地に着くまでの間、いろいろと仕事を手伝ってもらうけど、いいね?」
ラミーの威勢のいい声が船上に響く。三人は首を縦に振って了解した。
「目的地は『アルミネの里』!いいな、おまえ達!!」
「「「「アイ・マム!!」」」」
ラミーの言葉に、『女神の従者』の仲間達は威勢のいい返事をした。それに満足そうな笑みを見せるラミーに、アインスが近寄った。
「…久々の里帰りになりますね。」
「そうなるな。」
そう言うラミーの顔はどこか暗い。アインスはそれ以上何も言わず、ラミーは気を取り直すように仲間達の見回りに出た。