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モンスターハンター 無法者が行く旅路

からん

INDEX

  • あらすじ
  • 01 旅立ち ―プロローグ―
  • 02 Ro.01 ―無法者の狩人―
  • 03 Ro.02 ―謎の乱入者―
  • 04 Ro.03 ―旧友―
  • 05 Ro.04 ―初クエスト―
  • 06 Ro.05 ―遭遇―
  • 07 Ro.06 ―交戦―
  • 08 Ro.07 ―夕暮れ時―
  • Ro.02 ―謎の乱入者―

    一目で最悪な状況であると分かった。
    周囲を取り囲む観衆は皆動かず、殺気溢れる若者は眼前の相手に襲いかかろうと背を丸め、彼の同行者達は成行きを見守っている。

    そしてなによりも極めつけは、この騒動の中心人物である黒尽くめの男にさほど困った様子がないということか。
    腰回りには赤い片手剣、青い片刃剣、紫の細剣、水色の鉈の計四本の剣を帯びており、その背には紫をより暗く黒く染めたような色をした巨大な鎌が背負われている。

    複数の武器の所持はギルドでは推奨されていないはずだが、いやだからこそ彼は無法者などと呼ばれているのだろう。
    ともかく素人ハンターの目から見てもヤバそうな武器(大鎌)をもっていることは確かだ。あれ(大鎌)が振り回されれば大変なことになる。

    いや、既に大変な状況なのだろうか? いやいや、まだこれは口喧嘩の粋を出ていないはずだ。
    とても物騒だけど(大鎌が)、すごく怖いけどっ(大鎌が)、殺気を帯びた若者がいるけれどッ(大鎌>若者)。

    止めなければならない。どうやって、何て言えばいいのか、まだ自分は無関係だ、人を呼ぶべきか、自分が出ていけばいいのか、止められるのか、あの鎌怖い。
    一人グルグル若干混乱した思考で考え過ぎて、そこで直感的にと言うべきかむしろカッコよく言うと運命を感じたというべきか。

    「ちょ、ちょっと待ったー!!」

    思わず飛び出してしまった。

    Ro.2 ―謎の乱入者―

    「え?」

    「あぁ?」

    突然現れた人物に思わず視線がいく。殺気立ったハンター達の間に入ろうとする人間なんてそれこそ巨漢か熱血属性のハンターぐらいだろう。
    しかし実際はこげ茶のフードを頭に被った小さな人(声の感じからして少女)が両手を振り上げた状態で二人の間で止まっていた。文字通り硬直している。

    「……なんだ、お前?」

    「……へ? あ、その……ッ!!」

    場に漂う変な空気を打破するように、アモスが声をかけるとこげ茶フードの少女が反応する。
    今更ながら自分がかなり注目されていることに気付いたのか、今度はせわしなく手や体を揺らし始める。

    「えっと」とか「あの」など細々とした声で何かを言っているような気がするが、アモスにはよく聞き取れなかった。
    それよりも突然割りこまれた側からすれば苛立ちもつのるだろう、ラインハルトの表情がさらに険しくなっている。

    殺気を放ってまでではないようだが、しかし確実にこげ茶フードの乱入者に対し苛立ちの混じった視線が向けられている。
    アモスからすれば殺気立った状況から解放されたわけなので、まあさほど感謝はしないが目の前で挙動不審な動作をとられても気に留めないくらいにはありがたく思うことにした。

    顔は見えないが恐らく混乱しているだろうなー、とアモスはじっと目の前の少女を見つめていたが、直後ピッと指を突きつけられる。
    指を指したのは少女である。何か覚悟を決めたのか、堂々と観衆とハンターの注目を浴びながらも毅然とした態度で、彼女は言った。

    「何処に行ってたんですか!! 集合時間はとっくに過ぎてますよ!!」

    その言葉に、アモスは一瞬思考が停止した。

    「……集合?」

    「そう、集合」

    何かが満足にいったかのように少女は頷いている。一方アモスは止まっていた思考を急発進させていた。
    集合? なんで? 誰が、オレが? 何処に? ギルドか? こいつハンターなのか? 何がどうなっている?

    いや、そもそも待ち合わせなんてしていないじゃないか。
    その答えに辿り着いた時には既に腕を引かれていた。もちろん謎のフード少女によって。

    「お、おい! 何処に行く!?」

    「……待ち合わせをしたのを忘れていた、らしい」

    「はあっ!?」

    ずるずる腕を引っ張られながらラインハルトに向かって言う。訳のわからないといった風に叫ばれた。
    オレだって訳がわからねぇんだよ!! そうアモスは叫びたいのをぐっと堪え、ただ少女に引っ張られていった。


    少女から腕が解放されたのはしばらく歩いてからだった。正直相手の目的が分からず以上、あまり長く一緒に居たくは無い。
    途中、そっと道を曲がって少女と別れようとしたのだが、気付けば自分の若干後ろ隣りを歩いていて少し驚いた。

    アモスはソロのハンターで、無法者と呼ばれるような男である。先程のラインハルトのような者か、あるいはガラの悪い連中でもない限り自分の周りに人が寄ってくることなど全くない。

    なので、このようなこげ茶のフードで顔を隠した少女が自分に近寄ってくるなんて、あり得ないとしか言いようがない。
    まずは向こうの目的を知ることが先決だ。長い葛藤の末ようやく腹を括ったアモスは、不意に思い出したといった装いで話しかけた。

    「で? なんでオレを助けた?」

    「あ、助けられたって自覚はあるんだ」

    拳を振り上げる鎌を背負った黒尽くめの男とこげ茶フードを被った怯える少女の図。

    「じょ、冗談だよ? 冗談だからその拳をしまおう、ね?」

    「ちっ」

    渋々拳を降ろすアモス。さすがに彼とて本気で殴ろうと思っていたわけでないが、相手になめられるのは嫌なのだ。
    それを見てホッとした様子の少女であったが、アモスの言葉を思い出したのかそれとも視線を感じたのか、不意に足を止める。

    つられるようにアモスも足を止めて少女の方を見れば、ごそごそと腰に提げたポーチを漁っている。
    ほんの数秒の間をおき、ポーチから引っこ抜くようにして少女が取り出したのは小さな封筒であった。

    「はい、どうぞ」

    差し出された封筒を受け取る。宛名も差出人の名前も書かれていない無地の封筒だ。
    とりあえずその場で封筒を開くと中に入っていたのは手紙だった。何だか開けてはいけないものを開けているような感覚がアモスはした。

    二度折り曲げられた手紙を開くと、そこには懐かしい筆跡があった。否、二度と見たくなかった筆跡であった。
    読みたくない。読みたくないが、既に開けてしまったしこれを読まなければこの少女の目的が分からない。

    ほんの、ほんの少しだけ呼吸を整えて手紙を読む。はたして鬼が出るか蛇がでるか。
    そして、アモスが手紙を読み終えて呆然として混乱に陥るのに十数分かかった。

    (どういうことだぁぁぁ!!??)

    手紙に書かれていたことをまとめて要約すると、以下のようになる。
    その一、少女は数年前に拾った子である。その二、少女はハンターの才能がある。その三、なのでお前の弟子にしろ。その四、育ての親に逆らう奴は吊るす。

    アモスは、ゆっくりと少女の方に顔を向けた。彼女も手紙を読み終わったのに気がついたのか、露店へ向けていた身体をこちらへ向けた。
    顔を向けただけで何も言えないでいるアモスだったが、こげ茶フードの少女は頭を掻きながら、

    「えっと、お世話になります……?」

    そう困ったように言ったのだった。

    12/08/05 19:51 からん   

    ■作者メッセージ
    Q.狩りのシーンはまだなのか? A.次々回くらい?
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