CROSS CAPTURE10 「言葉の意味」
少しでも心の痛みを癒す為に、この城の何処かにいるクウを探すレイア、キサラ、紗那、ヴァイ。
これまで夫婦であるディアウスとプリティマ、親友であるレギオンとサーヴァンに出会い話を聞くが、目撃談は得られなかった。
それでも気を取り直して通路を歩いていると、奥の方でゼツ、シェルリア、ラクラ、アナザ、フィフェル、フェンデルがチェルと何かを話していた。
「あれ? 皆どうしたの?」
「おう、お前ら。ん? その子は?」
紗那の声にすぐにゼツが振り返ると、レイアを見て首を傾げる。
他の人も注目するので、レイアは一歩前に出てお辞儀をした。
「は、初めまして…レイアと言います」
誰かと会う度に必ずする自己紹介をし終えると、シェルリアはキサラを見た。
「もしかして、この子が別の世界から来たって人?」
「ええ。ねえ、あなた達は黒い髪と黒い服を着た男の人見てない?」
キサラは頷くなり、ゼツ達に質問をぶつける。
すると、ラクラは困ったように頭を掻いた。
「俺達は城門から来たが、見かけてないな」
「そうね。チェルは見かけた?」
同意するようにフェンデルも頷くと、隣にいるチェルを見る。
しかし、チェルは険しい表情を浮かべてレイアを睨んでいた。更に言えば、ゼツの隣にいるアナザもレイアを不審な目で見ている。
「チェルさん?」
「母様、どうかされました?」
「あの、何か…?」
様子のおかしい二人にヴァイとフィフェルが声をかけるが、反応を返さない。
この反応にレイアも不安げになっていると、アナザが口を開いた。
「あなた…《ノーバディ》ね?」
『『『っ!?』』』
アナザから放たれた言葉に、チェル以外の全員が息を呑みレイアに注目する。
一方のレイアも、身体を強張らせて固まってしまう。
何処か緊迫した状況の中、チェルが探るような目で見ながら腕を組む。
「気配を隠せるのは、その服のおかげか。見た所、お前からは敵意は感じられないが…あまり信用は出来ないな」
「それで、あなたは一体何をしているのかしら?」
チェルに続く様にアナザからも厳しい言葉を投げつけられる。
この二人に、レイアは顔を青くして思わず一歩後ずさる。
それでも拳を握り締めて湧き上がる恐怖を抑えつけ、ゆっくりと口を開いた。
「ある人を探しているんです…私の大事な人で、誰よりも傷ついて、自分を見失っていますから…私は少しでも傍にいて助けたいんです」
自分の中にある偽りの無い言葉をレイアは伝えるが、二人は納得せず逆に訝しげに見られてしまう。
「【その人の傍にいて助けたい】か…ノーバディならばその思い、お前自身が作り出したまやかしじゃないのか?」
「それでも、あなたはその人の所に行くの? 《心なんて無い》って理由で拒まれるかもしれないわよ?」
「チェルさん!?」
「アナザ…お前…!」
幾らノーバディでも傷つくのではないかと思われる言葉を投げつける二人に、さすがのヴァイとゼツも口を挟もうとする。
しかし、レイアはあえて二人の言葉を受け止めて胸に手を当てる。
《心が無い》。それはノーバディである彼女自身が、誰よりも痛感している事だから。
「確かに、私はノーバディです。私が作る感情に心が篭ってないと言われても仕方ありません。それに…あの人には、恋人がいます。今は仮面を付けられて捕らわれてますけど…」
ここで言葉を切ると、顔を上げてチェルとアナザを見つめ返す。
その青い目に宿るのは、確かな強い意思。
「でも、クウさんが私にくれた優しさは紛れもなく本物ですから…――クウさんから貰った優しさをそのまま返します。その優しさで、私は私でいられましたから…」
ノーバディとして生まれ、共に旅をしてきたクウとの記憶。その中でも鮮明に残るのは彼の優しさに触れた瞬間。
この空っぽの胸にあるのは、彼がくれた本物の優しさ。そして、彼に触れて生まれた淡くて小さな恋心。これらは全て心を持つクウがくれた感情だから…誰が何と言おうと、信じられる。
そうして真っ直ぐに意見を述べたレイアに、意外にも二人はあっさりと引いた。
「…そこまで意思が固いのなら、もう私は何も言わないわ。後悔の無いよう、行動しなさい」
「少なくとも、敵ではないのは分かった。それが分かれば俺は満足だ」
「ありがとうございます…アナザさん、チェルさん」
いろいろあったが自分を信頼してくれたアナザとチェルに一礼してお礼を言うと、レイアはキサラと共に先に進む。
この一部始終に、紗那は何処か感心したようにレイアの背中を見ながら呟いた。
「…何か、分かった気がする」
「紗那さん?」
「周りから言われて決めたんじゃ、何時かきっと自分の中で揺らいで歩みを止める。でも、自分の意思で決めたのなら揺らぐ事なく進む事が出来る。あの時、私達が神月と戦おうと決意した時みたいに」
「うん、そうだね」
心を持たないノーバディでも自分の意思を貫くレイアを、『Sin化』した神月と戦うと決意した出来事を通して、ビラコチャが言った言葉の意味を二人は理解する。
自分で答えを見つける。それは自分の思い描く道を進む為に必要な事。そして、その人の答えが見つからないのなら、キサラが言ったように隣に居て支えればいい。
二人の半神が提示した言葉に納得しながら、紗那とヴァイも二人の後を追いかけた。
「アナザ、何であんな事…」
四人が去るのを見送るなり、ゼツが若干咎めるようにアナザを睨む。
すると、アナザは悪びれも無く小さく笑った。
「私も元・ノーバディだから。それより、チェルにも怒るべきじゃないの?」
「俺にだって理由はある。教えてはやるが、今は待て」
「そうね。あの子、それ以上に気になる言葉を言ってたもの」
何処か居心地が悪そうにチェルも顔を逸らす中、フェンデルが腕を組む。
これを聞き、肯定するようにラクラも頷いて呟いた。
「“仮面”、か…」
レイアが話してくれた会話から導き出す答えは一つ。
別の世界から来た彼らも、カルマと関わっている。
「ねえ、オルガ。『探すか!』って言ったものの…具体的にどうする気?」
「問題はそれなんだよな…まあ、地道に聞き込みだな」
「他人任せ、ですか…」
「ペルセさん、相変わらず痛い所を付くね…」
「あはは…」
上からアーファ、オルガ、ペルセ、シャオ、イオンが他愛もない会話をしながら、通路を歩いている。
出会ってからそんなに経っていないはずなのに、今では長年の友達のように完全に打ち解けている。そんな五人の後ろから、声がかけられた。
「どうしたんだ、お前ら?」
振り返ると赤い髪の男―――イザヴェルがいた。その隣には、黒髪に緑の瞳をした青年―――アダムもいる。
「へえ。君が別の世界から来た少年?」
「うん。シャオって言うんだ、よろしく!」
アダムがシャオに声をかけると、元気よく返事を返す。
そんなシャオに、イザヴェルも何処か嬉しそうに笑った。
「よろしくな、シャオ。お前らで城の案内か?」
「それもあるけど、聞きたい事があってさ」
そう言うなり、オルガは応接間での会話を二人に伝える。
シャオから聞いた旅の内容からお守りの事まで全て話し終えると、シャオはお守りを取り出して二人に見せつけた。
「『思い』、ですか…」
「見た限り、何処にでも売ってそうなキーホルダーにしか見えねえな…」
じっくりとお守りを見るアダムに対し、イザヴェルは率直に感想を述べる。
さすがにすぐには分からないかと、五人は半ば分かってた事に肩を竦める。
だが、ここで思わぬ情報がアダムの口から飛び出した。
「そうですね…ここはキルレストやベルフェゴルに話を聞いて見てはどうでしょうか? 彼らは『物』に精通してるから、何か得られるかもしれません」
五人のこれから先の道が見え始め、オルガは嬉しさのあまり拳を握った。
「なるほど! で、その二人は何処にいるんだ?」
「多分、上の階層にでもいるんじゃないか? 半神達が使ってるからな」
「半神?」
イザヴェルが上を指しながら教えると、シャオは頭に疑問符を浮かべる。
当然と言えば当然の行為に、ペルセは苦笑しながら言った。
「歩きながら説明してあげる」
「二人とも、ありがとね!」
最後にアーファがお礼を言うと、五人は上の階層を目指して歩いて行った。
城の内側に高く聳え建つ、塔の頂上。
長い階段を上り切り、頂の入口から現れたのは全体に包帯を巻いたクウだった。
「俺…なんで、ここに来たんだろ…?」
誰にも会いたくなくて、触れて欲しくなくて城の中を彷徨っていた際にこの塔を見つけ、まるで導かれるかのように頂上へと上っていた。
一歩一歩引き摺る様に塔の端へと重い足を運ぶと、そこから広がる絶景とも呼べる風景をその瞳に映す。
そうして眺めると、クウはゆっくりと目を閉じていつも通りに力を湧き上がらせ、イメージを作る…――が、何も起きない。
いや、理由は痛い程に分かっている。
「そっか…もう、闇は使えないんだっけ…」
自身の力で作り上げる翼は現れず、目を閉じたまま自傷気味に笑う。
闇を操る力を失ったのは、エンのハッタリでは無かったようだ。
やがて目を開けると、破れてしまった手袋を嵌めた掌を見つめる。
「翼が無ければ、何も出来ないのかよ…俺…」
闇の力が使えなければ、翼や羽根はもちろん魔法を使う事も出来ない。
格闘術があるにしろ、拳を守る手袋はボロボロの状態。足技だけで戦うなんて無謀過ぎる。
今の自分はまさに、翼の折れた鳥だ。
「スピカ…レイア…ウィド…」
目の前で何も出来ず傷つけられ、自分の手で傷付けた。
そんな自分と彼女達を思い浮かべながら、クウは力無くその場に座り込む。
「ソラ…シルビア…」
身代わりとなって助けてくれた二人を思い浮かべると、高所による強い風が寒気を伴ってクウに吹きつける。
服を着ていても突き刺さるような寒さなのに、とても心地いい。このまま、何もかも冷え切って凍ってしまえばいい。
何も出来ない身体も、内にある心も…この命も全て。
「何で、だよ…!! 何で、俺がここにいるんだよ…!!」
目覚めてから何度も自問自答を繰り返して来た言葉と共に、黒い瞳から一粒の涙を流す。
(結局、貴様は誰も救えない。その身に宿る闇が、貴様の周りをすべてを壊す)
不意に、エンの言葉が脳裏を駆け廻る。
異世界とは言え、彼は自分から生まれたノーバディであり…その闇で全てを失った過去を持っている。
今の自分のように。
「――ちくしょおぉ!!!」
どうする事も出来ない自分に無性に腹が立ち、拳を思いっきり床に打ち付けた。
これまで夫婦であるディアウスとプリティマ、親友であるレギオンとサーヴァンに出会い話を聞くが、目撃談は得られなかった。
それでも気を取り直して通路を歩いていると、奥の方でゼツ、シェルリア、ラクラ、アナザ、フィフェル、フェンデルがチェルと何かを話していた。
「あれ? 皆どうしたの?」
「おう、お前ら。ん? その子は?」
紗那の声にすぐにゼツが振り返ると、レイアを見て首を傾げる。
他の人も注目するので、レイアは一歩前に出てお辞儀をした。
「は、初めまして…レイアと言います」
誰かと会う度に必ずする自己紹介をし終えると、シェルリアはキサラを見た。
「もしかして、この子が別の世界から来たって人?」
「ええ。ねえ、あなた達は黒い髪と黒い服を着た男の人見てない?」
キサラは頷くなり、ゼツ達に質問をぶつける。
すると、ラクラは困ったように頭を掻いた。
「俺達は城門から来たが、見かけてないな」
「そうね。チェルは見かけた?」
同意するようにフェンデルも頷くと、隣にいるチェルを見る。
しかし、チェルは険しい表情を浮かべてレイアを睨んでいた。更に言えば、ゼツの隣にいるアナザもレイアを不審な目で見ている。
「チェルさん?」
「母様、どうかされました?」
「あの、何か…?」
様子のおかしい二人にヴァイとフィフェルが声をかけるが、反応を返さない。
この反応にレイアも不安げになっていると、アナザが口を開いた。
「あなた…《ノーバディ》ね?」
『『『っ!?』』』
アナザから放たれた言葉に、チェル以外の全員が息を呑みレイアに注目する。
一方のレイアも、身体を強張らせて固まってしまう。
何処か緊迫した状況の中、チェルが探るような目で見ながら腕を組む。
「気配を隠せるのは、その服のおかげか。見た所、お前からは敵意は感じられないが…あまり信用は出来ないな」
「それで、あなたは一体何をしているのかしら?」
チェルに続く様にアナザからも厳しい言葉を投げつけられる。
この二人に、レイアは顔を青くして思わず一歩後ずさる。
それでも拳を握り締めて湧き上がる恐怖を抑えつけ、ゆっくりと口を開いた。
「ある人を探しているんです…私の大事な人で、誰よりも傷ついて、自分を見失っていますから…私は少しでも傍にいて助けたいんです」
自分の中にある偽りの無い言葉をレイアは伝えるが、二人は納得せず逆に訝しげに見られてしまう。
「【その人の傍にいて助けたい】か…ノーバディならばその思い、お前自身が作り出したまやかしじゃないのか?」
「それでも、あなたはその人の所に行くの? 《心なんて無い》って理由で拒まれるかもしれないわよ?」
「チェルさん!?」
「アナザ…お前…!」
幾らノーバディでも傷つくのではないかと思われる言葉を投げつける二人に、さすがのヴァイとゼツも口を挟もうとする。
しかし、レイアはあえて二人の言葉を受け止めて胸に手を当てる。
《心が無い》。それはノーバディである彼女自身が、誰よりも痛感している事だから。
「確かに、私はノーバディです。私が作る感情に心が篭ってないと言われても仕方ありません。それに…あの人には、恋人がいます。今は仮面を付けられて捕らわれてますけど…」
ここで言葉を切ると、顔を上げてチェルとアナザを見つめ返す。
その青い目に宿るのは、確かな強い意思。
「でも、クウさんが私にくれた優しさは紛れもなく本物ですから…――クウさんから貰った優しさをそのまま返します。その優しさで、私は私でいられましたから…」
ノーバディとして生まれ、共に旅をしてきたクウとの記憶。その中でも鮮明に残るのは彼の優しさに触れた瞬間。
この空っぽの胸にあるのは、彼がくれた本物の優しさ。そして、彼に触れて生まれた淡くて小さな恋心。これらは全て心を持つクウがくれた感情だから…誰が何と言おうと、信じられる。
そうして真っ直ぐに意見を述べたレイアに、意外にも二人はあっさりと引いた。
「…そこまで意思が固いのなら、もう私は何も言わないわ。後悔の無いよう、行動しなさい」
「少なくとも、敵ではないのは分かった。それが分かれば俺は満足だ」
「ありがとうございます…アナザさん、チェルさん」
いろいろあったが自分を信頼してくれたアナザとチェルに一礼してお礼を言うと、レイアはキサラと共に先に進む。
この一部始終に、紗那は何処か感心したようにレイアの背中を見ながら呟いた。
「…何か、分かった気がする」
「紗那さん?」
「周りから言われて決めたんじゃ、何時かきっと自分の中で揺らいで歩みを止める。でも、自分の意思で決めたのなら揺らぐ事なく進む事が出来る。あの時、私達が神月と戦おうと決意した時みたいに」
「うん、そうだね」
心を持たないノーバディでも自分の意思を貫くレイアを、『Sin化』した神月と戦うと決意した出来事を通して、ビラコチャが言った言葉の意味を二人は理解する。
自分で答えを見つける。それは自分の思い描く道を進む為に必要な事。そして、その人の答えが見つからないのなら、キサラが言ったように隣に居て支えればいい。
二人の半神が提示した言葉に納得しながら、紗那とヴァイも二人の後を追いかけた。
「アナザ、何であんな事…」
四人が去るのを見送るなり、ゼツが若干咎めるようにアナザを睨む。
すると、アナザは悪びれも無く小さく笑った。
「私も元・ノーバディだから。それより、チェルにも怒るべきじゃないの?」
「俺にだって理由はある。教えてはやるが、今は待て」
「そうね。あの子、それ以上に気になる言葉を言ってたもの」
何処か居心地が悪そうにチェルも顔を逸らす中、フェンデルが腕を組む。
これを聞き、肯定するようにラクラも頷いて呟いた。
「“仮面”、か…」
レイアが話してくれた会話から導き出す答えは一つ。
別の世界から来た彼らも、カルマと関わっている。
「ねえ、オルガ。『探すか!』って言ったものの…具体的にどうする気?」
「問題はそれなんだよな…まあ、地道に聞き込みだな」
「他人任せ、ですか…」
「ペルセさん、相変わらず痛い所を付くね…」
「あはは…」
上からアーファ、オルガ、ペルセ、シャオ、イオンが他愛もない会話をしながら、通路を歩いている。
出会ってからそんなに経っていないはずなのに、今では長年の友達のように完全に打ち解けている。そんな五人の後ろから、声がかけられた。
「どうしたんだ、お前ら?」
振り返ると赤い髪の男―――イザヴェルがいた。その隣には、黒髪に緑の瞳をした青年―――アダムもいる。
「へえ。君が別の世界から来た少年?」
「うん。シャオって言うんだ、よろしく!」
アダムがシャオに声をかけると、元気よく返事を返す。
そんなシャオに、イザヴェルも何処か嬉しそうに笑った。
「よろしくな、シャオ。お前らで城の案内か?」
「それもあるけど、聞きたい事があってさ」
そう言うなり、オルガは応接間での会話を二人に伝える。
シャオから聞いた旅の内容からお守りの事まで全て話し終えると、シャオはお守りを取り出して二人に見せつけた。
「『思い』、ですか…」
「見た限り、何処にでも売ってそうなキーホルダーにしか見えねえな…」
じっくりとお守りを見るアダムに対し、イザヴェルは率直に感想を述べる。
さすがにすぐには分からないかと、五人は半ば分かってた事に肩を竦める。
だが、ここで思わぬ情報がアダムの口から飛び出した。
「そうですね…ここはキルレストやベルフェゴルに話を聞いて見てはどうでしょうか? 彼らは『物』に精通してるから、何か得られるかもしれません」
五人のこれから先の道が見え始め、オルガは嬉しさのあまり拳を握った。
「なるほど! で、その二人は何処にいるんだ?」
「多分、上の階層にでもいるんじゃないか? 半神達が使ってるからな」
「半神?」
イザヴェルが上を指しながら教えると、シャオは頭に疑問符を浮かべる。
当然と言えば当然の行為に、ペルセは苦笑しながら言った。
「歩きながら説明してあげる」
「二人とも、ありがとね!」
最後にアーファがお礼を言うと、五人は上の階層を目指して歩いて行った。
城の内側に高く聳え建つ、塔の頂上。
長い階段を上り切り、頂の入口から現れたのは全体に包帯を巻いたクウだった。
「俺…なんで、ここに来たんだろ…?」
誰にも会いたくなくて、触れて欲しくなくて城の中を彷徨っていた際にこの塔を見つけ、まるで導かれるかのように頂上へと上っていた。
一歩一歩引き摺る様に塔の端へと重い足を運ぶと、そこから広がる絶景とも呼べる風景をその瞳に映す。
そうして眺めると、クウはゆっくりと目を閉じていつも通りに力を湧き上がらせ、イメージを作る…――が、何も起きない。
いや、理由は痛い程に分かっている。
「そっか…もう、闇は使えないんだっけ…」
自身の力で作り上げる翼は現れず、目を閉じたまま自傷気味に笑う。
闇を操る力を失ったのは、エンのハッタリでは無かったようだ。
やがて目を開けると、破れてしまった手袋を嵌めた掌を見つめる。
「翼が無ければ、何も出来ないのかよ…俺…」
闇の力が使えなければ、翼や羽根はもちろん魔法を使う事も出来ない。
格闘術があるにしろ、拳を守る手袋はボロボロの状態。足技だけで戦うなんて無謀過ぎる。
今の自分はまさに、翼の折れた鳥だ。
「スピカ…レイア…ウィド…」
目の前で何も出来ず傷つけられ、自分の手で傷付けた。
そんな自分と彼女達を思い浮かべながら、クウは力無くその場に座り込む。
「ソラ…シルビア…」
身代わりとなって助けてくれた二人を思い浮かべると、高所による強い風が寒気を伴ってクウに吹きつける。
服を着ていても突き刺さるような寒さなのに、とても心地いい。このまま、何もかも冷え切って凍ってしまえばいい。
何も出来ない身体も、内にある心も…この命も全て。
「何で、だよ…!! 何で、俺がここにいるんだよ…!!」
目覚めてから何度も自問自答を繰り返して来た言葉と共に、黒い瞳から一粒の涙を流す。
(結局、貴様は誰も救えない。その身に宿る闇が、貴様の周りをすべてを壊す)
不意に、エンの言葉が脳裏を駆け廻る。
異世界とは言え、彼は自分から生まれたノーバディであり…その闇で全てを失った過去を持っている。
今の自分のように。
「――ちくしょおぉ!!!」
どうする事も出来ない自分に無性に腹が立ち、拳を思いっきり床に打ち付けた。
■作者メッセージ
ソラ「いよいよこの時が来たな…」
リク「ああ、あれから8年だ…」
カイリ「本当に長かったね…」
KHキャラ全員『KH3発売発表おめでとーっ!!!』
ウィド「と、言う訳で。ナンバリングタイトルがようやく発表と言う事で、今回特別にこちらのあとがきを使って軽くトークをしたいと思います。実況は私、ウィドと――」
クウ「ちょっと待てぇぇぇ!!?」
ウィド「何です、いきなり大声で叫んで?」
クウ「叫びたくもなるだろっ!! そりゃあ、【KH3】の情報が出たのはファンにしてみれば喜ぶ話なのは認める。長い間続いたソラ達の話の一部が完結するって言うから、いろんなキャラが登場して助かる機会があるだろうから喜ぶのも分かる。機種はPS4だが、それに見合わせたハイスペックな画像も約束されるだろうからそれもいい。だが…何でよりにもよって暗い話の中でこんなおめでたい話を実況しなきゃいけねーんだよぉ!!? 明らかに人選ミスだろおぉぉぉ!!?」
ウィド「仕方ないでしょう。例の番外編でこんな話しても、見る人が限られる可能性が高い。それならばここで話題に出しておいた方が、ついでにーな感覚で見る人がいるだろう。そんな考えで、夢旅人に許可も無く書き上げたと言う訳です」
クウ「許可貰ってねーのかよ、あの作者ぁ!!? どんだけ軽い気持ちで書き上げたんだよ!!?」
ウィド「別に軽い気持ちでここで書こうとは思ってませんよ。今から2年前…『KH BbsFM』が発売された年にこのゲーノベで夢旅人との合同小説を開始した…までは良かったんですがねー。1年後に続編である『3D』の影響で一部矛盾点が生まれたのをキッカケに、読者から批判が届いて。まあ、二次創作だから仕方ない事ですし? 結果的に上手く辻褄合わせ出来たからいいですけど? この先も起きないとは限らないから、こうして保険を――」
クウ「分かった。いろいろと文句を言った俺が悪かった。だからこれ以上この作品と作者の傷を抉る発言は止めてくれぇ!!! この作品の存亡に関わるから!! 俺自分追い詰めた状態で消えたくねーからぁ!!!」
ウィド「分かればいいんですよ。さて…話が大分逸れましたが、ここで喜びを露わにするKHキャラ達の様子を見ましょうか」(カメラを回す)
ソラ「それにしても、楽しみだなー!! ちょこっとしか出なかったけど、アクア(正確にはエラクゥス)のキーブレード握って…!! ようやく俺もキーブレードマスターとか!?」
リク「おいおい。確かに、お前は成長しているって話だが見た限りでは何も変わってなかったぞ?」
ソラ「えー、分かんねーぞ? 壁とか大量のシャドウの上に乗ったりで華麗なアクションしてるし、服とかかっこよく変わるかもしれないし!」
カイリ「それよりも、リク(の中の人)はKHをモチーフに作る【FF13ヴェルサス】…じゃなかった。【FF15】に出演でしょ? アクア(FF10-2・パイン役)もリマスター版で登場するし、凄い活躍じゃない!!」
リク「そ、そうか…?」(照れる)
ソラ「でもさー、発表からとっくに7年も経ってるから待たせ過ぎで誰からも忘れ去らぐえぇ!?」(殴られる)
アクア「私がマスターから譲り受けたキーブレードがあの島に…どうなるのか楽しみね!」
ヴェン「俺も! ようやく目が覚めて、沢山活躍出来たらいいなー! あ、あと新しいFFキャラとかも出てくるといいよなー!」
カイリ「私も『3D』のシークレットムービーでキーブレード使いになったんだし、仲間とかで参加出来たらなー。あ、どうせならテーマ曲で新曲とか入れたり!!」
リク「さ、さすがにそれは無理じゃないのか? その歌手は活動を休止してるし…」
カイリ「分かんないよ! だって、あのエ○ァン○リオンの映画で新しく歌を作ってくれたんだし、誰もが待ち望んだ【KH3】なんだし、もしかしたら…!」
クウ「何て言うか…もはやお祭り騒ぎだな」
ウィド「さて、ではこの喧噪から少し離れた場所を映しましょうか」(カメラを動かす)
クウ「へ?」
ナミネ&シオン((どうか、復活してロクサスのヒロインになれますように…!))(手を合わせて賽銭箱にお参り)
テラ「『3D』では、アクセルとカイリがキーブレードを持っていた…そう考えれば、俺はゼアノートとなってアクアに倒される運命に…ハハハ…」(明らかに落ち込んでいる)
ルキル「頼む…!! どうか、どうかゼアノートとなる運命を回避出来ますように…!! そうじゃなかったら、完全に不憫な扱いにぃぃぃ…!!!」(神棚に頼んでいる)
リリィ「『KH3』か〜。きっと、リクはキーブレードマスターで活躍するんだろうな〜」
オパール「そうねー。それでシオンやナミネも復活フラグ立ってるし…きっとどっちかがリクのヒロインになるかもねー。そうなったらリリィも終わりよね♪」(黒笑)
リリィ「何で嬉しそうに言うのかな?」(青筋を立てる)
オパール「えー? 別にリクと結ばれないからって、公式に頼ってリリィを引き摺り落とそうとか考えてないよー? あたし恋人に選ばれなかったから【KH3】の話に頼って振られるフラグ立てて一緒の枠に入れさせるとか、そんなの微塵にも思ってないからー?」(黒いオーラ)
リリス(リリィ)「黙れこのツンデレキャラがぁぁぁ!!!」(豹変)
オパール「あんだとこの裏切りキャラがぁぁぁ!!!」(激怒)
ウィド「いやー。こうして見ると本当にお祭りのようですねー」
クウ「駄目だ…! 俺もう限界…こんなのツッコミきれねぇ…!」
と、本編には関係ないようなオマケ話を書きましたが、何がともあれ続編発表おめでとうございます。
今回で私も書く事は書いてしまいましたが、次はどちらが書くかは今の所未定です。
リク「ああ、あれから8年だ…」
カイリ「本当に長かったね…」
KHキャラ全員『KH3発売発表おめでとーっ!!!』
ウィド「と、言う訳で。ナンバリングタイトルがようやく発表と言う事で、今回特別にこちらのあとがきを使って軽くトークをしたいと思います。実況は私、ウィドと――」
クウ「ちょっと待てぇぇぇ!!?」
ウィド「何です、いきなり大声で叫んで?」
クウ「叫びたくもなるだろっ!! そりゃあ、【KH3】の情報が出たのはファンにしてみれば喜ぶ話なのは認める。長い間続いたソラ達の話の一部が完結するって言うから、いろんなキャラが登場して助かる機会があるだろうから喜ぶのも分かる。機種はPS4だが、それに見合わせたハイスペックな画像も約束されるだろうからそれもいい。だが…何でよりにもよって暗い話の中でこんなおめでたい話を実況しなきゃいけねーんだよぉ!!? 明らかに人選ミスだろおぉぉぉ!!?」
ウィド「仕方ないでしょう。例の番外編でこんな話しても、見る人が限られる可能性が高い。それならばここで話題に出しておいた方が、ついでにーな感覚で見る人がいるだろう。そんな考えで、夢旅人に許可も無く書き上げたと言う訳です」
クウ「許可貰ってねーのかよ、あの作者ぁ!!? どんだけ軽い気持ちで書き上げたんだよ!!?」
ウィド「別に軽い気持ちでここで書こうとは思ってませんよ。今から2年前…『KH BbsFM』が発売された年にこのゲーノベで夢旅人との合同小説を開始した…までは良かったんですがねー。1年後に続編である『3D』の影響で一部矛盾点が生まれたのをキッカケに、読者から批判が届いて。まあ、二次創作だから仕方ない事ですし? 結果的に上手く辻褄合わせ出来たからいいですけど? この先も起きないとは限らないから、こうして保険を――」
クウ「分かった。いろいろと文句を言った俺が悪かった。だからこれ以上この作品と作者の傷を抉る発言は止めてくれぇ!!! この作品の存亡に関わるから!! 俺自分追い詰めた状態で消えたくねーからぁ!!!」
ウィド「分かればいいんですよ。さて…話が大分逸れましたが、ここで喜びを露わにするKHキャラ達の様子を見ましょうか」(カメラを回す)
ソラ「それにしても、楽しみだなー!! ちょこっとしか出なかったけど、アクア(正確にはエラクゥス)のキーブレード握って…!! ようやく俺もキーブレードマスターとか!?」
リク「おいおい。確かに、お前は成長しているって話だが見た限りでは何も変わってなかったぞ?」
ソラ「えー、分かんねーぞ? 壁とか大量のシャドウの上に乗ったりで華麗なアクションしてるし、服とかかっこよく変わるかもしれないし!」
カイリ「それよりも、リク(の中の人)はKHをモチーフに作る【FF13ヴェルサス】…じゃなかった。【FF15】に出演でしょ? アクア(FF10-2・パイン役)もリマスター版で登場するし、凄い活躍じゃない!!」
リク「そ、そうか…?」(照れる)
ソラ「でもさー、発表からとっくに7年も経ってるから待たせ過ぎで誰からも忘れ去らぐえぇ!?」(殴られる)
アクア「私がマスターから譲り受けたキーブレードがあの島に…どうなるのか楽しみね!」
ヴェン「俺も! ようやく目が覚めて、沢山活躍出来たらいいなー! あ、あと新しいFFキャラとかも出てくるといいよなー!」
カイリ「私も『3D』のシークレットムービーでキーブレード使いになったんだし、仲間とかで参加出来たらなー。あ、どうせならテーマ曲で新曲とか入れたり!!」
リク「さ、さすがにそれは無理じゃないのか? その歌手は活動を休止してるし…」
カイリ「分かんないよ! だって、あのエ○ァン○リオンの映画で新しく歌を作ってくれたんだし、誰もが待ち望んだ【KH3】なんだし、もしかしたら…!」
クウ「何て言うか…もはやお祭り騒ぎだな」
ウィド「さて、ではこの喧噪から少し離れた場所を映しましょうか」(カメラを動かす)
クウ「へ?」
ナミネ&シオン((どうか、復活してロクサスのヒロインになれますように…!))(手を合わせて賽銭箱にお参り)
テラ「『3D』では、アクセルとカイリがキーブレードを持っていた…そう考えれば、俺はゼアノートとなってアクアに倒される運命に…ハハハ…」(明らかに落ち込んでいる)
ルキル「頼む…!! どうか、どうかゼアノートとなる運命を回避出来ますように…!! そうじゃなかったら、完全に不憫な扱いにぃぃぃ…!!!」(神棚に頼んでいる)
リリィ「『KH3』か〜。きっと、リクはキーブレードマスターで活躍するんだろうな〜」
オパール「そうねー。それでシオンやナミネも復活フラグ立ってるし…きっとどっちかがリクのヒロインになるかもねー。そうなったらリリィも終わりよね♪」(黒笑)
リリィ「何で嬉しそうに言うのかな?」(青筋を立てる)
オパール「えー? 別にリクと結ばれないからって、公式に頼ってリリィを引き摺り落とそうとか考えてないよー? あたし恋人に選ばれなかったから【KH3】の話に頼って振られるフラグ立てて一緒の枠に入れさせるとか、そんなの微塵にも思ってないからー?」(黒いオーラ)
リリス(リリィ)「黙れこのツンデレキャラがぁぁぁ!!!」(豹変)
オパール「あんだとこの裏切りキャラがぁぁぁ!!!」(激怒)
ウィド「いやー。こうして見ると本当にお祭りのようですねー」
クウ「駄目だ…! 俺もう限界…こんなのツッコミきれねぇ…!」
と、本編には関係ないようなオマケ話を書きましたが、何がともあれ続編発表おめでとうございます。
今回で私も書く事は書いてしまいましたが、次はどちらが書くかは今の所未定です。