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Re:開闢の宴 SPIRAL TALE/Chronice Key

NANA&夢旅人

INDEX

  • あらすじ
  • 01 CROSS CAPTURE1 「各々の暇」
  • 02 CROSS CAPTURE2 「飛来するもの」
  • 03 CROSS CAPTURE3 「廻りあうものたち」
  • 04 CROSS CAPTURE4 「目覚めた思い」
  • 05 CROSS CAPTURE5 「謁える意思を」
  • 06 CROSS CAPTURE6  「絶望が齎す傷跡」
  • 07 CROSS CAPTURE7 「思わぬ出会い」
  • 08 CROSS CAPTURE8 「曙ける想い」
  • 09 CROSS CAPTURE9 「空白の記録 変わらぬ優しさ」
  • 10 CROSS CAPTURE10 「言葉の意味」
  • 11 CROSS CAPTURE11 「信頼と不穏」
  • 12 CROSS CAPTURE12 「見据える先」
  • 13 CROSS CAPTURE13 「惑う心」
  • 14 CROSS CAPTURE14 「安堵する心」
  • 15 CROSS CAPTURE15 「動き出す意思」
  • 16 CROSS CAPTURE16 「託すと言う事」
  • 17 CROSS CAPTURE17 「無轟の布告」
  • 18 CROSS CAPTURE18 「選択」
  • 19 CROSS CAPTURE19 「選択の先」
  • 20 CROSS CAPTURE20 「新たな力」
  • 21 CROSS CAPTURE21 「Epic Man」
  • 22 CROSS CAPTURE22 「戦いの末に」
  • 23 CROSS CAPTURE23 「休息−1」
  • 24 CROSS CAPTURE24 「休息−2」
  • 25 CROSS CAPTURE25 「休息−3」
  • 26 CROSS CAPTURE26 「晩餐の語らい」
  • 27 CROSS CAPTURE27 「刻印」
  • 28 CROSS CAPTURE28 「神の助言」
  • 29 CROSS CAPTURE29 「黒と白が起こす災厄」
  • 30 CROSS CAPTURE30 「急接近/チェルの苦悩」
  • 31 CROSS CAPTURE31 「始まりの予兆」
  • 32 CROSS CAPTURE32 「器師・伽藍」
  • 33 CROSS CAPTURE33 「互いの経緯」
  • 34 CROSS CAPTURE34 「アスラ・ロッテの工房」
  • 35 CROSS CAPTURE35 「僅かな一幕 その2」
  • 36 CROSS CAPTURE36 「僅かな一幕 その3」
  • 37 CROSS CAPTURE37 「僅かな一幕 その4」
  • 38 CROSS CAPTURE38 「生まれる希望」
  • 39 CROSS CAPTURE39 「混沌世界へ」
  • 40 CROSS CAPTURE40 「混沌世界へその2/それぞれの動静」
  • 41 CROSS CAPTURE41 「混沌の深淵」
  • 42 CROSS CAPTURE42 「混沌女神」
  • 43 CROSS CAPTURE43 「アルヴァ」
  • 44 CROSS CAPTURE44 「復讐の陶酔 1」
  • 45 CROSS CAPTURE45 「復讐の陶酔 2」
  • 46 CROSS CAPTURE46 「三剣解説 1」
  • 47 CROSS CAPTURE47 「三剣解説 2」
  • 48 CROSS CAPTURE48 「芽生える渇望」
  • 49 CROSS CAPTURE49 「思いがけぬ同行者」
  • 50 CROSS CAPTURE50  「それぞれの歩み」
  • 51 CROSS CAPTURE51 「帰郷」
  • 52 CROSS CAPTURE52 「浸透する闇」
  • 53 CROSS CAPTURE53 「奪った心とKR」
  • 54 CROSS CAPTURE54 「暇と鍛錬」
  • 55 CROSS CAPTURE55 「意思を持て歩き出せ」
  • 56 CROSS CAPTURE56 「思わぬ衝突」
  • 57  CROSS CAPTURE57 「思わぬ衝突・2」
  • 58  CROSS CAPTURE58 「和解への追いかけっこ」
  • 59 CROSS CAPTURE59 「和解の菓子」
  • 60 CROSS CAPTURE60 「リクへの感情と因縁」
  • 61 CROSS CAPTURE61 「崩壊の目覚め」
  • 62 CROSS CAPTURE62 「優しさ、勇気、決意」
  • 63 CROSS CAPTURE63 「衝突・1」
  • 64 CROSS CAPTURE64 「衝突・2」
  • 65 CROSS CAPTURE65 「新たな目標と仲間」
  • 66 CROSS CAPTURE66 「占いの予言」
  • 67 CROSS CAPTURE67 「煌王・凛那」
  • 68 CROSS CAPTURE68 「一合一剣」
  • 69 CROSS CAPTURE69 「夢の世界へ、純粋な影」
  • 70 メモリー編1 「記憶の歪み」
  • 71 メモリー編2 「名前に込めた思い」
  • 72 メモリー編3 「残酷な親友の姿」
  • 73 CROSS CAPTURE70 「素材探索」
  • 74 メモリー編4 「師、クロトスラル」
  • 75 メモリー編5 「偽の記憶、絶望の記憶」
  • 76 メモリー編6 「パンドラの箱」
  • 77 蒼湖編第一話「ツェーラス湖」 / 霊窟編第一話「カムラン霊窟」
  • 78 メモリー編7 「もう一つのセカイについて・1」
  • 79 メモリー編8 「物語の始まり・前編」
  • 80  蒼湖編第二話「水面の女」
  • 81 霊窟編第二話「至鋼の少女」
  • 82 メモリー編9 「物語の始まり・後編」
  • 83 メモリー編10 「揺らぐ闇」
  • 84 メモリー編11 「“終わり”と“始まり”の記憶」
  • 85 メモリー編12 「明かされる事実」
  • 86 メモリー編13 「信じる強さ」
  • 87 蒼湖編 第三話「イリシアの覚悟」
  • 88 蒼湖編 第四話「イリシアの逆撃」
  • 89 霊窟編 第三話「キルレストの覚悟」
  • 90 メモリー編14 「流れる記憶」
  • 91 心剣世界編 第一話「アルカナの提案」
  • 92 心剣世界編 第二話「鏡の深謀」
  • 93 メモリー編15 「14番目の記憶・1」
  • 94 メモリー編16 「14番目の記憶・2」
  • 95 メモリー編17 「もう一つのセカイについて・2」
  • 96 CROSS FRAGMENT1 「闇に染まりし勇者」
  • 97 CROSS FRAGMENT2 「闇祓いし者達」
  • 98 心剣世界編 第三話「対鏡贋物(ミラーレプリカ)・1」
  • 99 蒼湖編 第四話「イリシア覚醒」
  • 100 メモリー編18 「善か悪か」
  • 101 メモリー編19 「14番目の記憶・3」
  • 102 メモリー編20 「もう一つのセカイについて・3」
  • 103 霊窟編 第四話「日を臨むもの」
  • 104 心剣世界編 第四話「対鏡贋物・2」
  • 105 メモリー編21 「もう一つのセカイについて・4」
  • 106 CROSS CAPTURE71 「素材探索、帰還」
  • 107 メモリー編22 「科せられた負荷」
  • 108 メモリー編23 「理なき存在」
  • 109 メモリー編24 「シャオの正体」
  • 110 メモリー編25 「決断と決裂」
  • 111 メモリー編26 「消えた存在、響く声」
  • 112 CROSS CAPTURE72 「3日目夕餉・1」
  • 113 CROSS CAPTURE73 「3日目夕餉・2」
  • 114 CROSS CAPTURE74 「無垢なる剣」
  • 115 CROSS CAPTURE75 「粋な運命」
  • 116 メモリー編27 「愁傷する心」
  • 117 メモリー編28 「ソラの人形(レプリカ)」
  • 118 メモリー編29 「SPHILIA」
  • 119 メモリー編30 「痛みに捧ぐ光と祈り」
  • 120 メモリー編31 「双龍の指輪」
  • 121 メモリー編32 「スピカの助言」
  • 122 メモリー編33 「夢の理」
  • 123 メモリー編34 「憎悪に隠した本心」
  • 124 メモリー編35 「兄妹の絆」
  • 125 メモリー編36 「夢の目覚め」
  • 126 CROSS FRAGMENT3 「襲撃の火種」
  • 127 CROSS CAPTURE76 「ありのままに」
  • 128 CROSS CAPTURE77 「現実への帰還」
  • 129 CROSS CAPTURE78 「恋人と弟の対話」
  • 130 CROSS CAPTURE79 「張り詰める緊張」
  • 131 CROSS CAPTURE80 「差し伸べる言葉」
  • 132 CROSS CAPTURE81 「始まりの烽火」
  • 133 CROSS CAPTURE82 「心器」
  • 134 CROSS CAPTURE83 「因縁の襲来・1」
  • 135 CROSS CAPTURE84 「アル・セカンド防衛戦・1」
  • 136 CROSS CAPTURE85 「因縁の襲来・2」
  • 137 CROSS CAPTURE86 「因縁の襲来・3」
  • 138 CROSS CAPTURE87 「アル・セカンド防衛戦・2」
  • 139 CROSS CAPTURE88 「アル・サード防衛戦・1」
  • 140 CROSS CAPTURE89 「アル・サード防衛戦・2」
  • 141 CROSS CAPTURE90 「アル・ファースト防衛戦・1」
  • 142 CROSS CAPTURE91「許されぬ本心、密かな策」
  • 143 CROSS CAPTURE92 「囚われた者達の叫び」
  • 144 CROSS CAPTURE93 「アル・ファースト防衛戦・2」
  • 145 CROSS CAPTURE94 「因縁の襲来・4」
  • 146 CROSS CAPTURE95 「本領発揮」
  • 147 CROSS CAPTURE96 「ミラー・モード」
  • 148 CROSS CAPTURE97 「開花する力」
  • 149 CROSS CAPTURE98 「エクスカリバー」
  • 150 CROSS CAPTURE99 「クリムゾンブリッツ」
  • 151 CROSS CAPTURE100 「犠牲を糧に」
  • 152 CROSS CAPTURE101 「黒翼」
  • 153 CROSS CAPTURE102 「光の絆」
  • 154 CROSS CAPTURE103 「翼(ツバサ)」
  • 155 CROSS CAPTURE104 「最後の足掻き」
  • 156 CROSS CAPTURE105 「敗北、そして…」
  • CROSS CAPTURE10 「言葉の意味」

     少しでも心の痛みを癒す為に、この城の何処かにいるクウを探すレイア、キサラ、紗那、ヴァイ。
     これまで夫婦であるディアウスとプリティマ、親友であるレギオンとサーヴァンに出会い話を聞くが、目撃談は得られなかった。
     それでも気を取り直して通路を歩いていると、奥の方でゼツ、シェルリア、ラクラ、アナザ、フィフェル、フェンデルがチェルと何かを話していた。

    「あれ? 皆どうしたの?」

    「おう、お前ら。ん? その子は?」

     紗那の声にすぐにゼツが振り返ると、レイアを見て首を傾げる。
     他の人も注目するので、レイアは一歩前に出てお辞儀をした。

    「は、初めまして…レイアと言います」

     誰かと会う度に必ずする自己紹介をし終えると、シェルリアはキサラを見た。

    「もしかして、この子が別の世界から来たって人?」

    「ええ。ねえ、あなた達は黒い髪と黒い服を着た男の人見てない?」

     キサラは頷くなり、ゼツ達に質問をぶつける。
     すると、ラクラは困ったように頭を掻いた。

    「俺達は城門から来たが、見かけてないな」

    「そうね。チェルは見かけた?」

     同意するようにフェンデルも頷くと、隣にいるチェルを見る。
     しかし、チェルは険しい表情を浮かべてレイアを睨んでいた。更に言えば、ゼツの隣にいるアナザもレイアを不審な目で見ている。

    「チェルさん?」

    「母様、どうかされました?」

    「あの、何か…?」

     様子のおかしい二人にヴァイとフィフェルが声をかけるが、反応を返さない。
     この反応にレイアも不安げになっていると、アナザが口を開いた。

    「あなた…《ノーバディ》ね?」

    『『『っ!?』』』

     アナザから放たれた言葉に、チェル以外の全員が息を呑みレイアに注目する。
     一方のレイアも、身体を強張らせて固まってしまう。
     何処か緊迫した状況の中、チェルが探るような目で見ながら腕を組む。

    「気配を隠せるのは、その服のおかげか。見た所、お前からは敵意は感じられないが…あまり信用は出来ないな」

    「それで、あなたは一体何をしているのかしら?」

     チェルに続く様にアナザからも厳しい言葉を投げつけられる。
     この二人に、レイアは顔を青くして思わず一歩後ずさる。
     それでも拳を握り締めて湧き上がる恐怖を抑えつけ、ゆっくりと口を開いた。

    「ある人を探しているんです…私の大事な人で、誰よりも傷ついて、自分を見失っていますから…私は少しでも傍にいて助けたいんです」

     自分の中にある偽りの無い言葉をレイアは伝えるが、二人は納得せず逆に訝しげに見られてしまう。

    「【その人の傍にいて助けたい】か…ノーバディならばその思い、お前自身が作り出したまやかしじゃないのか?」

    「それでも、あなたはその人の所に行くの? 《心なんて無い》って理由で拒まれるかもしれないわよ?」

    「チェルさん!?」

    「アナザ…お前…!」

     幾らノーバディでも傷つくのではないかと思われる言葉を投げつける二人に、さすがのヴァイとゼツも口を挟もうとする。
     しかし、レイアはあえて二人の言葉を受け止めて胸に手を当てる。
     《心が無い》。それはノーバディである彼女自身が、誰よりも痛感している事だから。

    「確かに、私はノーバディです。私が作る感情に心が篭ってないと言われても仕方ありません。それに…あの人には、恋人がいます。今は仮面を付けられて捕らわれてますけど…」

     ここで言葉を切ると、顔を上げてチェルとアナザを見つめ返す。
     その青い目に宿るのは、確かな強い意思。

    「でも、クウさんが私にくれた優しさは紛れもなく本物ですから…――クウさんから貰った優しさをそのまま返します。その優しさで、私は私でいられましたから…」

     ノーバディとして生まれ、共に旅をしてきたクウとの記憶。その中でも鮮明に残るのは彼の優しさに触れた瞬間。
     この空っぽの胸にあるのは、彼がくれた本物の優しさ。そして、彼に触れて生まれた淡くて小さな恋心。これらは全て心を持つクウがくれた感情だから…誰が何と言おうと、信じられる。
     そうして真っ直ぐに意見を述べたレイアに、意外にも二人はあっさりと引いた。

    「…そこまで意思が固いのなら、もう私は何も言わないわ。後悔の無いよう、行動しなさい」

    「少なくとも、敵ではないのは分かった。それが分かれば俺は満足だ」

    「ありがとうございます…アナザさん、チェルさん」

     いろいろあったが自分を信頼してくれたアナザとチェルに一礼してお礼を言うと、レイアはキサラと共に先に進む。
     この一部始終に、紗那は何処か感心したようにレイアの背中を見ながら呟いた。

    「…何か、分かった気がする」

    「紗那さん?」

    「周りから言われて決めたんじゃ、何時かきっと自分の中で揺らいで歩みを止める。でも、自分の意思で決めたのなら揺らぐ事なく進む事が出来る。あの時、私達が神月と戦おうと決意した時みたいに」

    「うん、そうだね」

     心を持たないノーバディでも自分の意思を貫くレイアを、『Sin化』した神月と戦うと決意した出来事を通して、ビラコチャが言った言葉の意味を二人は理解する。
     自分で答えを見つける。それは自分の思い描く道を進む為に必要な事。そして、その人の答えが見つからないのなら、キサラが言ったように隣に居て支えればいい。
     二人の半神が提示した言葉に納得しながら、紗那とヴァイも二人の後を追いかけた。

    「アナザ、何であんな事…」

     四人が去るのを見送るなり、ゼツが若干咎めるようにアナザを睨む。
     すると、アナザは悪びれも無く小さく笑った。

    「私も元・ノーバディだから。それより、チェルにも怒るべきじゃないの?」

    「俺にだって理由はある。教えてはやるが、今は待て」

    「そうね。あの子、それ以上に気になる言葉を言ってたもの」

     何処か居心地が悪そうにチェルも顔を逸らす中、フェンデルが腕を組む。
     これを聞き、肯定するようにラクラも頷いて呟いた。

    「“仮面”、か…」

     レイアが話してくれた会話から導き出す答えは一つ。
     別の世界から来た彼らも、カルマと関わっている。



    「ねえ、オルガ。『探すか!』って言ったものの…具体的にどうする気?」

    「問題はそれなんだよな…まあ、地道に聞き込みだな」

    「他人任せ、ですか…」

    「ペルセさん、相変わらず痛い所を付くね…」

    「あはは…」

     上からアーファ、オルガ、ペルセ、シャオ、イオンが他愛もない会話をしながら、通路を歩いている。
     出会ってからそんなに経っていないはずなのに、今では長年の友達のように完全に打ち解けている。そんな五人の後ろから、声がかけられた。

    「どうしたんだ、お前ら?」

     振り返ると赤い髪の男―――イザヴェルがいた。その隣には、黒髪に緑の瞳をした青年―――アダムもいる。

    「へえ。君が別の世界から来た少年?」

    「うん。シャオって言うんだ、よろしく!」

     アダムがシャオに声をかけると、元気よく返事を返す。
     そんなシャオに、イザヴェルも何処か嬉しそうに笑った。

    「よろしくな、シャオ。お前らで城の案内か?」

    「それもあるけど、聞きたい事があってさ」

     そう言うなり、オルガは応接間での会話を二人に伝える。
     シャオから聞いた旅の内容からお守りの事まで全て話し終えると、シャオはお守りを取り出して二人に見せつけた。

    「『思い』、ですか…」

    「見た限り、何処にでも売ってそうなキーホルダーにしか見えねえな…」

     じっくりとお守りを見るアダムに対し、イザヴェルは率直に感想を述べる。
     さすがにすぐには分からないかと、五人は半ば分かってた事に肩を竦める。
     だが、ここで思わぬ情報がアダムの口から飛び出した。

    「そうですね…ここはキルレストやベルフェゴルに話を聞いて見てはどうでしょうか? 彼らは『物』に精通してるから、何か得られるかもしれません」

     五人のこれから先の道が見え始め、オルガは嬉しさのあまり拳を握った。

    「なるほど! で、その二人は何処にいるんだ?」

    「多分、上の階層にでもいるんじゃないか? 半神達が使ってるからな」

    「半神?」

     イザヴェルが上を指しながら教えると、シャオは頭に疑問符を浮かべる。
     当然と言えば当然の行為に、ペルセは苦笑しながら言った。

    「歩きながら説明してあげる」

    「二人とも、ありがとね!」

     最後にアーファがお礼を言うと、五人は上の階層を目指して歩いて行った。



     城の内側に高く聳え建つ、塔の頂上。
     長い階段を上り切り、頂の入口から現れたのは全体に包帯を巻いたクウだった。

    「俺…なんで、ここに来たんだろ…?」

     誰にも会いたくなくて、触れて欲しくなくて城の中を彷徨っていた際にこの塔を見つけ、まるで導かれるかのように頂上へと上っていた。
     一歩一歩引き摺る様に塔の端へと重い足を運ぶと、そこから広がる絶景とも呼べる風景をその瞳に映す。
     そうして眺めると、クウはゆっくりと目を閉じていつも通りに力を湧き上がらせ、イメージを作る…――が、何も起きない。
     いや、理由は痛い程に分かっている。

    「そっか…もう、闇は使えないんだっけ…」

     自身の力で作り上げる翼は現れず、目を閉じたまま自傷気味に笑う。
     闇を操る力を失ったのは、エンのハッタリでは無かったようだ。
     やがて目を開けると、破れてしまった手袋を嵌めた掌を見つめる。

    「翼が無ければ、何も出来ないのかよ…俺…」

     闇の力が使えなければ、翼や羽根はもちろん魔法を使う事も出来ない。
     格闘術があるにしろ、拳を守る手袋はボロボロの状態。足技だけで戦うなんて無謀過ぎる。
     今の自分はまさに、翼の折れた鳥だ。

    「スピカ…レイア…ウィド…」

     目の前で何も出来ず傷つけられ、自分の手で傷付けた。
     そんな自分と彼女達を思い浮かべながら、クウは力無くその場に座り込む。

    「ソラ…シルビア…」

     身代わりとなって助けてくれた二人を思い浮かべると、高所による強い風が寒気を伴ってクウに吹きつける。
     服を着ていても突き刺さるような寒さなのに、とても心地いい。このまま、何もかも冷え切って凍ってしまえばいい。
     何も出来ない身体も、内にある心も…この命も全て。

    「何で、だよ…!! 何で、俺がここにいるんだよ…!!」

     目覚めてから何度も自問自答を繰り返して来た言葉と共に、黒い瞳から一粒の涙を流す。

    (結局、貴様は誰も救えない。その身に宿る闇が、貴様の周りをすべてを壊す)

     不意に、エンの言葉が脳裏を駆け廻る。
     異世界とは言え、彼は自分から生まれたノーバディであり…その闇で全てを失った過去を持っている。
     今の自分のように。

    「――ちくしょおぉ!!!」

     どうする事も出来ない自分に無性に腹が立ち、拳を思いっきり床に打ち付けた。

    13/06/15 13:22 NANA&夢旅人   

    ■作者メッセージ
     ソラ「いよいよこの時が来たな…」
     リク「ああ、あれから8年だ…」
     カイリ「本当に長かったね…」

     KHキャラ全員『KH3発売発表おめでとーっ!!!』

     ウィド「と、言う訳で。ナンバリングタイトルがようやく発表と言う事で、今回特別にこちらのあとがきを使って軽くトークをしたいと思います。実況は私、ウィドと――」
     クウ「ちょっと待てぇぇぇ!!?」
     ウィド「何です、いきなり大声で叫んで?」
     クウ「叫びたくもなるだろっ!! そりゃあ、【KH3】の情報が出たのはファンにしてみれば喜ぶ話なのは認める。長い間続いたソラ達の話の一部が完結するって言うから、いろんなキャラが登場して助かる機会があるだろうから喜ぶのも分かる。機種はPS4だが、それに見合わせたハイスペックな画像も約束されるだろうからそれもいい。だが…何でよりにもよって暗い話の中でこんなおめでたい話を実況しなきゃいけねーんだよぉ!!? 明らかに人選ミスだろおぉぉぉ!!?」
     ウィド「仕方ないでしょう。例の番外編でこんな話しても、見る人が限られる可能性が高い。それならばここで話題に出しておいた方が、ついでにーな感覚で見る人がいるだろう。そんな考えで、夢旅人に許可も無く書き上げたと言う訳です」
     クウ「許可貰ってねーのかよ、あの作者ぁ!!? どんだけ軽い気持ちで書き上げたんだよ!!?」
     ウィド「別に軽い気持ちでここで書こうとは思ってませんよ。今から2年前…『KH BbsFM』が発売された年にこのゲーノベで夢旅人との合同小説を開始した…までは良かったんですがねー。1年後に続編である『3D』の影響で一部矛盾点が生まれたのをキッカケに、読者から批判が届いて。まあ、二次創作だから仕方ない事ですし? 結果的に上手く辻褄合わせ出来たからいいですけど? この先も起きないとは限らないから、こうして保険を――」
     クウ「分かった。いろいろと文句を言った俺が悪かった。だからこれ以上この作品と作者の傷を抉る発言は止めてくれぇ!!! この作品の存亡に関わるから!! 俺自分追い詰めた状態で消えたくねーからぁ!!!」
     ウィド「分かればいいんですよ。さて…話が大分逸れましたが、ここで喜びを露わにするKHキャラ達の様子を見ましょうか」(カメラを回す)

     ソラ「それにしても、楽しみだなー!! ちょこっとしか出なかったけど、アクア(正確にはエラクゥス)のキーブレード握って…!! ようやく俺もキーブレードマスターとか!?」
     リク「おいおい。確かに、お前は成長しているって話だが見た限りでは何も変わってなかったぞ?」
     ソラ「えー、分かんねーぞ? 壁とか大量のシャドウの上に乗ったりで華麗なアクションしてるし、服とかかっこよく変わるかもしれないし!」
     カイリ「それよりも、リク(の中の人)はKHをモチーフに作る【FF13ヴェルサス】…じゃなかった。【FF15】に出演でしょ? アクア(FF10-2・パイン役)もリマスター版で登場するし、凄い活躍じゃない!!」
     リク「そ、そうか…?」(照れる)
     ソラ「でもさー、発表からとっくに7年も経ってるから待たせ過ぎで誰からも忘れ去らぐえぇ!?」(殴られる)
     アクア「私がマスターから譲り受けたキーブレードがあの島に…どうなるのか楽しみね!」
     ヴェン「俺も! ようやく目が覚めて、沢山活躍出来たらいいなー! あ、あと新しいFFキャラとかも出てくるといいよなー!」
     カイリ「私も『3D』のシークレットムービーでキーブレード使いになったんだし、仲間とかで参加出来たらなー。あ、どうせならテーマ曲で新曲とか入れたり!!」
     リク「さ、さすがにそれは無理じゃないのか? その歌手は活動を休止してるし…」
     カイリ「分かんないよ! だって、あのエ○ァン○リオンの映画で新しく歌を作ってくれたんだし、誰もが待ち望んだ【KH3】なんだし、もしかしたら…!」

     クウ「何て言うか…もはやお祭り騒ぎだな」
     ウィド「さて、ではこの喧噪から少し離れた場所を映しましょうか」(カメラを動かす)
     クウ「へ?」

     ナミネ&シオン((どうか、復活してロクサスのヒロインになれますように…!))(手を合わせて賽銭箱にお参り)
     テラ「『3D』では、アクセルとカイリがキーブレードを持っていた…そう考えれば、俺はゼアノートとなってアクアに倒される運命に…ハハハ…」(明らかに落ち込んでいる)
     ルキル「頼む…!! どうか、どうかゼアノートとなる運命を回避出来ますように…!! そうじゃなかったら、完全に不憫な扱いにぃぃぃ…!!!」(神棚に頼んでいる)
     リリィ「『KH3』か〜。きっと、リクはキーブレードマスターで活躍するんだろうな〜」
     オパール「そうねー。それでシオンやナミネも復活フラグ立ってるし…きっとどっちかがリクのヒロインになるかもねー。そうなったらリリィも終わりよね♪」(黒笑)
     リリィ「何で嬉しそうに言うのかな?」(青筋を立てる)
     オパール「えー? 別にリクと結ばれないからって、公式に頼ってリリィを引き摺り落とそうとか考えてないよー? あたし恋人に選ばれなかったから【KH3】の話に頼って振られるフラグ立てて一緒の枠に入れさせるとか、そんなの微塵にも思ってないからー?」(黒いオーラ)
     リリス(リリィ)「黙れこのツンデレキャラがぁぁぁ!!!」(豹変)
     オパール「あんだとこの裏切りキャラがぁぁぁ!!!」(激怒)

     ウィド「いやー。こうして見ると本当にお祭りのようですねー」
     クウ「駄目だ…! 俺もう限界…こんなのツッコミきれねぇ…!」



     と、本編には関係ないようなオマケ話を書きましたが、何がともあれ続編発表おめでとうございます。
     今回で私も書く事は書いてしまいましたが、次はどちらが書くかは今の所未定です。
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