CROSS CAPTURE11 「信頼と不穏」
「まさか、カルマがあなた達の世界にいたとはね…!!」
「そして、エンはお前達の仲間の一人の別世界のノーバディ…か」
「道理で見当たらない訳だよ…辛い事なのに、教えてくれてありがとね」
アクアの説明により、姿を見せなかった敵の情報を得る事が出来たミュロス、毘羯羅、セイグリットが思い思いに呟く。
そんな三人に、アクアもゆっくりと頭を下げた。
「私達の方こそ、ありがとうございます。こうして治療して頂いて…」
人としての礼儀を尽くすアクアだが、彼女の胸の内は後悔で渦巻いていた。
(どうして、ヴェン達を安全な世界に返さなかった? あの時、彼をテラから引き離していれば…)
これまで、二人を闇から守る為に頑張ってきた。そして、未来の世界でも世界に迫りくる脅威から守ろうとした。
なのに、結果はこれだ。世界を守る為にスピカを斬り捨て、ソラを止められず、シルビアが身代わりとなり別の世界に逃がされた。
あの時、ソラ達をヴェンと一緒に安全な世界に避難させていれば。ウィドに構わず、クウをテラから引き離しておけば。きっと…。
(私の、所為だ…!!)
もはやどうする事も出来ない事態に、アクアが悔しさで拳を握り締めていた時だった。
「アクアは、どう思ってるの?」
「え?」
突然カイリから声をかけられ、アクアは顔を上げる。
見ると、いつの間にかカイリは顔を上げてアクアに視線を送っている。
「クウの事、今はどう思ってるの? やっぱり信じられない?」
「…そう言うカイリは、どう思ってるの?」
「分かんない…でも、悪い人じゃないのは分かるよ」
「どうして…そう思うの?」
恐る恐るアクアが質問すると、カイリは少しだけ笑みを浮かべて答えた。
「ソラを助けようとしてくれたから」
あまりにも簡単な理由に、アクアは言葉を失う。
その間にも、カイリは笑みを保ちながら話を続ける。
「リクだってそう。リクも闇に染まったけど、私やソラを助けてくれたもん。だから、クウも信じたいんだ」
そう静かに語りながら、カイリは記憶を蘇らせる。
一年前、ソラによって心を取り戻して目覚めた後の事だ。アンセムが襲い掛かろうとしたが、リクが決死の思いで動きを封じたおかげで逃げる事が出来た。
少し前の機関との戦いの時も、島でアクセルに捕らわれようとした所をリクが闇の回廊で逃げ道を作ってくれたし、ナミネのおかげで牢屋から脱出した後にサイクスを退けてくれた。
あの時のクウも、闇に染まってでもソラを助けようとした。だからこそ、彼の事を信じたい。
そんな気持ちを抱くカイリに、アクアは納得したくないのか思わず身を乗り出す。
「でも、彼の所為でソラは闇に消えて――!!」
「消えないよ」
「「え…?」」
否定するカイリに、アクアだけでなくオパールも目を丸くする。
すると、カイリは胸に手を当てて二人に言った。
「ソラは消えない。どんなに深い闇だとしても、私達が繋がっている限りソラは消えない…消させないんだから…!!」
「カイリ…」
胸に当てた手をギュっと握るカイリに、アクアの中で何かが揺らぐ。
これを見て、オパールもアクアに向かって口を開く。
「ねえ、アクア。アクアの言い分は正しいと思う。あたし、闇で故郷も家族も奪われたから」
そうアクアに語りながら、忌々しい過去の記憶を過らせる。
10年も経った今でも胸が締め付けられるような錯覚に陥るが、オパールは真っ直ぐにアクアを見た。
「でもさ、全部否定するのは嫌なの。だって、アクアの言う使命って…言い換えてみれば、リクもテラも…レイアやスピカさんも消すって言ってるようなもんじゃないの?」
「それは…!」
核心を突いたオパールの言葉に、アクアは戸惑いを浮かべる。
キーブレード使いの使命は、世界の脅威である闇から守り消し去る事。闇は存在してはいけない、そうエラクゥスから教え込まれた。
実際、これまで闇の存在であるアンヴァースを始めとしたハートレスやノーバディの人ならざる敵。そして、ヴァニタスを始めとした闇に染まった住人と戦ってきた。
闇に染まり世界に脅威を齎そうとする彼らと、同じように闇に染まったテラ達。一体何が違うのだろうか?
アクアが自問自答していると、オパールは更に言葉を重ねる。
「それに、闇に落ちたから消すしかないって…正しいかもしれないけど、あたしは納得したくない。助けたいのに、諦めるの…あたしはイヤ」
「オパール…」
何かを堪える様に固く拳を握るオパールに、アクアは何も言えなくなる。
もはや反論する余裕さえも無くなったアクアに、カイリが笑顔を浮かべた。
「闇はさ、否定してもいいと思う。でも…仲間の事は信じてあげよう。そうじゃなかったら、きっと余計に悪い方向に進んじゃうから」
「あー、それあたしの知り合いにもいた。闇を宿してるって理由で何でも一人で抱え込んで、目を離せば勝手に行動してエアリスやレオン達に心配させて…」
「仲間を、信じる…」
笑いながら話すカイリとオパールを見ながら、アクアは胸に手を当てる。
彼らとの違いなんて、考えなくても分かる事だ。それなのに分からなかったのは、自分は…。
答えがすぐそこまで見えた時、急にオパールがミュロス達を見て話しかけた。
「ね、あいつらがいる部屋行ってもいい? もう身体も動けるし」
「さっきのレイアと言い、あなた達と言い勝手に…アイネアス様は見張れって言ってたけど、どうする?」
「ま、これだけ元気なら止める理由もないしね。別に構わないけど、同行はさせて貰うよ?」
痛そうに頭を押さえるミュロスがセイグリットに聞くと、条件付きだがあっさりOKを貰える。
それを聞き、カイリも勢いよく手を上げた。
「じゃあ、私も行く! アクアも行こ?」
「私は…遠慮するわ」
カイリが誘うが、アクアは顔を俯かせて辞退する。
何処か元気のないアクアに、カイリとオパールは互いに顔を見合わせるとアイコンタクトを取り合って頷く。
直後、二人同時にベットから降りるとアクアに近づいて両側から腕を掴んで拘束した。
「え!? ふ、二人とも何を…!?」
「いいから、行くよっ!」
「拒否権なんて、ないんだからっ!」
アクアの言葉を無視しながら、カイリとオパールがベットから引き摺り下ろす。
その状態のまま、無理やりアクアを連れて二人は部屋を出るためにドアを開けた。
今では心剣士や反剣士、永遠剣士達の拠点となる城は、主に上層・中層・下層の三つに分かれている。
中層・下層は主に彼らが使っており、上層はイリアドゥスや城の主であるサイキやアイネアスと言った半神達が主に使っている。
その上層にある広間のロビー。そこにベルフェゴルとキルレスト、そしてアルカナもいてオルガ達五人と話をしていた。
「なるほど。それで私達の所に来た訳か」
「確かに、【物】に関してはキルレストやベルフェゴルに聞くのが一番だ。良い判断だな」
オルガとシャオが事のあらましを説明すると、キルレストはもちろんアルカナも納得して頷く。
そんな中、ベルフェゴルは何処か嬉しそうにシャオを見ながら話を進める。
「それで、そのお守りと言うのは?」
「これだよ」
すぐにシャオがポケットからお守りを取り出し、ベルフェゴルに差し出す。
こうしてお守りを受け取ると、ベルフェゴルはさっそくキルレストと共に調べ始めた。
「ねえ、何か分かる?」
お守りじっくりと見回して細部まで調べる二人に、待ちきれないのかアーファが身を乗り出して聞く。
四人も気持ちは同じで神妙な面付きで結果を待っていると、少ししてから二人は顔を向けた。
「――確かに、このお守りから何か力を感じるの」
ベルフェゴルが呟いた言葉に、五人は顔を輝かせる。
その喜びのままに、オルガは二人に聞いた。
「それで、どうすればいいんだ!?」
「さすがにそこまでは分からん…物から力を感じ取る事は出来るが、それを取り出す技術は私も彼も持っていない」
「じゃあ、それが出来そうな人は?」
キルレストが首を振りながら説明すると、今度はイオンが質問する。
この問いに、キルレストとベルフェゴルは再度お守りを見てから言った。
「そうだな…こう言った力はサイキやアイネアスが妥当か」
「原点が【思い】じゃからのう。感情を司るシュテンにも会って損はない」
こうして二人が答えを出すと、アルカナは何やら掌から小さな魔法陣を展開させて五人を見た。
「とりあえず、三人にはこちらで連絡して置こう。少し待っててくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
ペルセがお礼を言うと、アルカナは一つ頷いて何やら小声で魔法陣に話しかける。
やがて連絡が終わったのか、その手にある魔法陣を消すと五人を見た。
「さて…連絡も終わった所で、一ついいだろうか?」
「何ですか?」
イオンが聞くと、アルカナは微笑してタロットカードの束を取り出した。
「ちょっとした占いだ。シャオ…だったな。このカードから一枚選んでみてくれないか?」
「え? うん…」
戸惑いながらもシャオが近づくと、アルカナは空中に22枚のカードを裏面にして浮かばせる。
辺りに浮かぶカードに思わず顔を動かすが、シャオは気持ちを改めてじっくりと選ぶ。
「う〜ん…――よし! これに決めたっ!」
悩みに悩んだ末に、シャオは少し離れた場所にあるカードに勢いよく手を伸ばして掴み取る。
それを見ると、アルカナは軽く手を振ってすぐに残りのカードを束に戻す。そうして、シャオの持つカードを受け取った。
「ご苦労。占いの結果は後で教えよう。それから、三人は執務室で待つそうだ」
「いろいろありがと!」
「良かったね、シャオ」
シャオがお礼を言うと、ペルセも嬉しそうに微笑む。
そうして五人はアルカナ達のアドバイスの元、執務室を目指してその場を離れる。
やがて五人の姿が見えなくなると、キルレストは軽く肩を竦めてアルカナを見た。
「アルカナ…お前も人が悪い」
「どう言う事じゃ?」
何の事か分からないベルフェゴルに、キルレストは種明かしを兼ねた説明をした。
「今のは、カードを使って相手の人也を調べる方法だ」
「彼らが何者か、私達はまだ分かっていない。それに、後でちゃんと彼らの今後について占うつもりだ」
若干言い訳も交えて話すと、アルカナはシャオから貰ったカードを裏返す。
直後、訝しげな目をしてカードを睨みつける。どうやら悪いカードだったようで、キルレストはアルカナに声をかけた。
「どうした?」
「正位置の【月】のカード…」
キルレストに答える様に、淡々とアルカナは低い声で呟く。
その言葉に、キルレストも訝しげな表情で彼らの去った方向を見て呟く。
シャオの事を表すカードの意味を。
「嘘・偽り…か」
「そして、エンはお前達の仲間の一人の別世界のノーバディ…か」
「道理で見当たらない訳だよ…辛い事なのに、教えてくれてありがとね」
アクアの説明により、姿を見せなかった敵の情報を得る事が出来たミュロス、毘羯羅、セイグリットが思い思いに呟く。
そんな三人に、アクアもゆっくりと頭を下げた。
「私達の方こそ、ありがとうございます。こうして治療して頂いて…」
人としての礼儀を尽くすアクアだが、彼女の胸の内は後悔で渦巻いていた。
(どうして、ヴェン達を安全な世界に返さなかった? あの時、彼をテラから引き離していれば…)
これまで、二人を闇から守る為に頑張ってきた。そして、未来の世界でも世界に迫りくる脅威から守ろうとした。
なのに、結果はこれだ。世界を守る為にスピカを斬り捨て、ソラを止められず、シルビアが身代わりとなり別の世界に逃がされた。
あの時、ソラ達をヴェンと一緒に安全な世界に避難させていれば。ウィドに構わず、クウをテラから引き離しておけば。きっと…。
(私の、所為だ…!!)
もはやどうする事も出来ない事態に、アクアが悔しさで拳を握り締めていた時だった。
「アクアは、どう思ってるの?」
「え?」
突然カイリから声をかけられ、アクアは顔を上げる。
見ると、いつの間にかカイリは顔を上げてアクアに視線を送っている。
「クウの事、今はどう思ってるの? やっぱり信じられない?」
「…そう言うカイリは、どう思ってるの?」
「分かんない…でも、悪い人じゃないのは分かるよ」
「どうして…そう思うの?」
恐る恐るアクアが質問すると、カイリは少しだけ笑みを浮かべて答えた。
「ソラを助けようとしてくれたから」
あまりにも簡単な理由に、アクアは言葉を失う。
その間にも、カイリは笑みを保ちながら話を続ける。
「リクだってそう。リクも闇に染まったけど、私やソラを助けてくれたもん。だから、クウも信じたいんだ」
そう静かに語りながら、カイリは記憶を蘇らせる。
一年前、ソラによって心を取り戻して目覚めた後の事だ。アンセムが襲い掛かろうとしたが、リクが決死の思いで動きを封じたおかげで逃げる事が出来た。
少し前の機関との戦いの時も、島でアクセルに捕らわれようとした所をリクが闇の回廊で逃げ道を作ってくれたし、ナミネのおかげで牢屋から脱出した後にサイクスを退けてくれた。
あの時のクウも、闇に染まってでもソラを助けようとした。だからこそ、彼の事を信じたい。
そんな気持ちを抱くカイリに、アクアは納得したくないのか思わず身を乗り出す。
「でも、彼の所為でソラは闇に消えて――!!」
「消えないよ」
「「え…?」」
否定するカイリに、アクアだけでなくオパールも目を丸くする。
すると、カイリは胸に手を当てて二人に言った。
「ソラは消えない。どんなに深い闇だとしても、私達が繋がっている限りソラは消えない…消させないんだから…!!」
「カイリ…」
胸に当てた手をギュっと握るカイリに、アクアの中で何かが揺らぐ。
これを見て、オパールもアクアに向かって口を開く。
「ねえ、アクア。アクアの言い分は正しいと思う。あたし、闇で故郷も家族も奪われたから」
そうアクアに語りながら、忌々しい過去の記憶を過らせる。
10年も経った今でも胸が締め付けられるような錯覚に陥るが、オパールは真っ直ぐにアクアを見た。
「でもさ、全部否定するのは嫌なの。だって、アクアの言う使命って…言い換えてみれば、リクもテラも…レイアやスピカさんも消すって言ってるようなもんじゃないの?」
「それは…!」
核心を突いたオパールの言葉に、アクアは戸惑いを浮かべる。
キーブレード使いの使命は、世界の脅威である闇から守り消し去る事。闇は存在してはいけない、そうエラクゥスから教え込まれた。
実際、これまで闇の存在であるアンヴァースを始めとしたハートレスやノーバディの人ならざる敵。そして、ヴァニタスを始めとした闇に染まった住人と戦ってきた。
闇に染まり世界に脅威を齎そうとする彼らと、同じように闇に染まったテラ達。一体何が違うのだろうか?
アクアが自問自答していると、オパールは更に言葉を重ねる。
「それに、闇に落ちたから消すしかないって…正しいかもしれないけど、あたしは納得したくない。助けたいのに、諦めるの…あたしはイヤ」
「オパール…」
何かを堪える様に固く拳を握るオパールに、アクアは何も言えなくなる。
もはや反論する余裕さえも無くなったアクアに、カイリが笑顔を浮かべた。
「闇はさ、否定してもいいと思う。でも…仲間の事は信じてあげよう。そうじゃなかったら、きっと余計に悪い方向に進んじゃうから」
「あー、それあたしの知り合いにもいた。闇を宿してるって理由で何でも一人で抱え込んで、目を離せば勝手に行動してエアリスやレオン達に心配させて…」
「仲間を、信じる…」
笑いながら話すカイリとオパールを見ながら、アクアは胸に手を当てる。
彼らとの違いなんて、考えなくても分かる事だ。それなのに分からなかったのは、自分は…。
答えがすぐそこまで見えた時、急にオパールがミュロス達を見て話しかけた。
「ね、あいつらがいる部屋行ってもいい? もう身体も動けるし」
「さっきのレイアと言い、あなた達と言い勝手に…アイネアス様は見張れって言ってたけど、どうする?」
「ま、これだけ元気なら止める理由もないしね。別に構わないけど、同行はさせて貰うよ?」
痛そうに頭を押さえるミュロスがセイグリットに聞くと、条件付きだがあっさりOKを貰える。
それを聞き、カイリも勢いよく手を上げた。
「じゃあ、私も行く! アクアも行こ?」
「私は…遠慮するわ」
カイリが誘うが、アクアは顔を俯かせて辞退する。
何処か元気のないアクアに、カイリとオパールは互いに顔を見合わせるとアイコンタクトを取り合って頷く。
直後、二人同時にベットから降りるとアクアに近づいて両側から腕を掴んで拘束した。
「え!? ふ、二人とも何を…!?」
「いいから、行くよっ!」
「拒否権なんて、ないんだからっ!」
アクアの言葉を無視しながら、カイリとオパールがベットから引き摺り下ろす。
その状態のまま、無理やりアクアを連れて二人は部屋を出るためにドアを開けた。
今では心剣士や反剣士、永遠剣士達の拠点となる城は、主に上層・中層・下層の三つに分かれている。
中層・下層は主に彼らが使っており、上層はイリアドゥスや城の主であるサイキやアイネアスと言った半神達が主に使っている。
その上層にある広間のロビー。そこにベルフェゴルとキルレスト、そしてアルカナもいてオルガ達五人と話をしていた。
「なるほど。それで私達の所に来た訳か」
「確かに、【物】に関してはキルレストやベルフェゴルに聞くのが一番だ。良い判断だな」
オルガとシャオが事のあらましを説明すると、キルレストはもちろんアルカナも納得して頷く。
そんな中、ベルフェゴルは何処か嬉しそうにシャオを見ながら話を進める。
「それで、そのお守りと言うのは?」
「これだよ」
すぐにシャオがポケットからお守りを取り出し、ベルフェゴルに差し出す。
こうしてお守りを受け取ると、ベルフェゴルはさっそくキルレストと共に調べ始めた。
「ねえ、何か分かる?」
お守りじっくりと見回して細部まで調べる二人に、待ちきれないのかアーファが身を乗り出して聞く。
四人も気持ちは同じで神妙な面付きで結果を待っていると、少ししてから二人は顔を向けた。
「――確かに、このお守りから何か力を感じるの」
ベルフェゴルが呟いた言葉に、五人は顔を輝かせる。
その喜びのままに、オルガは二人に聞いた。
「それで、どうすればいいんだ!?」
「さすがにそこまでは分からん…物から力を感じ取る事は出来るが、それを取り出す技術は私も彼も持っていない」
「じゃあ、それが出来そうな人は?」
キルレストが首を振りながら説明すると、今度はイオンが質問する。
この問いに、キルレストとベルフェゴルは再度お守りを見てから言った。
「そうだな…こう言った力はサイキやアイネアスが妥当か」
「原点が【思い】じゃからのう。感情を司るシュテンにも会って損はない」
こうして二人が答えを出すと、アルカナは何やら掌から小さな魔法陣を展開させて五人を見た。
「とりあえず、三人にはこちらで連絡して置こう。少し待っててくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
ペルセがお礼を言うと、アルカナは一つ頷いて何やら小声で魔法陣に話しかける。
やがて連絡が終わったのか、その手にある魔法陣を消すと五人を見た。
「さて…連絡も終わった所で、一ついいだろうか?」
「何ですか?」
イオンが聞くと、アルカナは微笑してタロットカードの束を取り出した。
「ちょっとした占いだ。シャオ…だったな。このカードから一枚選んでみてくれないか?」
「え? うん…」
戸惑いながらもシャオが近づくと、アルカナは空中に22枚のカードを裏面にして浮かばせる。
辺りに浮かぶカードに思わず顔を動かすが、シャオは気持ちを改めてじっくりと選ぶ。
「う〜ん…――よし! これに決めたっ!」
悩みに悩んだ末に、シャオは少し離れた場所にあるカードに勢いよく手を伸ばして掴み取る。
それを見ると、アルカナは軽く手を振ってすぐに残りのカードを束に戻す。そうして、シャオの持つカードを受け取った。
「ご苦労。占いの結果は後で教えよう。それから、三人は執務室で待つそうだ」
「いろいろありがと!」
「良かったね、シャオ」
シャオがお礼を言うと、ペルセも嬉しそうに微笑む。
そうして五人はアルカナ達のアドバイスの元、執務室を目指してその場を離れる。
やがて五人の姿が見えなくなると、キルレストは軽く肩を竦めてアルカナを見た。
「アルカナ…お前も人が悪い」
「どう言う事じゃ?」
何の事か分からないベルフェゴルに、キルレストは種明かしを兼ねた説明をした。
「今のは、カードを使って相手の人也を調べる方法だ」
「彼らが何者か、私達はまだ分かっていない。それに、後でちゃんと彼らの今後について占うつもりだ」
若干言い訳も交えて話すと、アルカナはシャオから貰ったカードを裏返す。
直後、訝しげな目をしてカードを睨みつける。どうやら悪いカードだったようで、キルレストはアルカナに声をかけた。
「どうした?」
「正位置の【月】のカード…」
キルレストに答える様に、淡々とアルカナは低い声で呟く。
その言葉に、キルレストも訝しげな表情で彼らの去った方向を見て呟く。
シャオの事を表すカードの意味を。
「嘘・偽り…か」
■作者メッセージ
今回の投稿はNANAがしました。さすがに三回連続で投稿しているので、次は夢旅人に渡そうと思ってます。