CROSS CAPTURE21 「Epic Man」
―――無轟、貴方……また旅に出るの?
あれはこの旅を始める前夜だったか。
妻に旅をする事を告げて、最低限の準備をしている時だ。
『ああ。これを最後の旅にする』
―――……そう、私は止めないわ。ただ、この子にも約束して。
観念したような妻は抱きかかえた幼子を俺へと近づけた。
妻との間に出来た幼子は俺へとその小さな手を伸ばして嬉しそうに声を上げている。
『……必ず帰る。それまで、元気に待っていてくれ…』
俺は我が子の手と指切りしてそう誓った。妻も小さく笑顔を浮かべた。
そうして旅に出た。自分を見つめなおす旅、戦いの旅になっていったのは聊か喜ぶべき予想外だったが。
「――いくぞ、お前たち」
燃え盛る火の中、無轟も炎を纏わせ、『緋乃炎産霊神』を顕現させる。
しっかりと凛那を握り締めて、無轟はゆっくりと走り出し、次第に一気に駆け出す。
「荒れ狂え、火之龍凪(ひのたつなぎ)!」
炎を纏った凛那を振り払うと炎の龍が無数に現れ、クウたちへと襲い掛った。
「おいおい、さっそく全体的な攻撃かよ!」
クウは飛んで回避できる。だが、他の者達は自衛の魔法を持っていても防ぎきれるかわからなかった。
思考を廻り、迎え撃つ事をと決断して、双剣を握り締め、羽ばたこうとした。
「――クウ、俺たちに任せて欲しい」
「な、テラ…?」
自信に満ちたテラの声に動きを止めて振り向くとクウへ頷き、アクアたちに視線を送る。
彼女も強気に微笑んで頷き返して、ヴェントゥスに声をかける。
「ええ。いくわよ、ヴェン」
「勿論!」
テラ、アクア、ヴェントゥスの三人は新たに得たそれぞれのキーブレードの切っ先を合わせて、掲げた。
呼応するように光が彼らを包み込んだ。それは魔法「リフレク」と似たものだと理解できる。
「「「『トリニティ・バリアース』!!!」」」
炎の龍たちは一斉に結界に喰らい付くが、結界は微塵も揺るがずにこれを打ち消した。
そして、迫ってきた無轟が結界へと炎熱を集束させた凛那を振り下ろす。
「!」
だが、結界の強度は凄まじく、亀裂一つ生じていなかった。
更に、三人の反撃の声が重なり合う。
「「「『トニリティ・パニッシュ』!!!」」」
「なにっ! うおぁ――――!!?」
結界が光を発して、衝撃となって無轟に跳ね返り、その衝撃に大きく天に舞った。
「クウ!」
「ああ!」
テラの一声でクウは応じ、無轟のいる空中へと飛翔した。だが、無轟も空中で体勢を整え、見計らって迎え撃つようにクウに斬りかかった。
「っと!」
慣れない双剣で無轟の一撃を躱し、いなして、反撃の一撃を繰り出す。意思に呼応するように双剣の刀身に闇の力が漲る。
「これはさっきの礼だぜ。――『ニゲル・プルート』!!」
「――ぬぅ!!」
クウの双剣による闇の一撃を受け、無轟は地に叩きつかれる。
すると、叩きつけられた方向からクウの胴に炎の鎖が伸びて絡き、引き寄せられる。
「な―――くそっ!!」
この技は間違いなく無轟の『火之鎖刈突』。
視線を凝らすと、叩きつかれた場所に彼が炎の鎖を片手でこちらに引っ張ろうとしていた。
更には、凛那に纏った炎を大きく膨れ上がらせている。追撃を繰り出そうとしているのであった。
「覆いて噛み砕け、『火之琿狼(ひのぐんろう)』!!」
再び炎を放射すると、今度は無数に群れを成す炎の琿狼が天地に姿を現した。
動きを止められたクウ、そして、救出しに、或いはこちらへと攻勢してきたテラたちへと襲い掛かったのだ。
「クウ、今助けるよ!」
風を纏い、素早くクウの元に現れたヴェントゥスがキーブレードで炎の鎖を見事に断ち切る。
同時に、落下する彼にも風を纏わせ、衝撃を和らげる処置を施すとクウへとめがけていた琿狼らはヴェントゥスに狙いを集中した。
「捉えられる? 『エアロ・シューティング』!!」
ヴェントゥスは風を更に纏って、自らを砲弾のように縦横無尽に飛びまわった。
通り抜けると同時にキーブレードで一閃し、琿狼らを撃退する。
その勢いのままに、無轟に突撃した。
「ッ…!」
烈風の一撃を無轟は耐え、ヴェントゥスと対峙する。
「無轟さん、これ以上戦いあうのは―――」
「今は、戦え。お前が守りたいものを守れなくなるぞ?」
「!」
その怜悧な一声に、ヴェントゥスは表情を引き締める。
その少年らしい様子を無轟は静かな笑みを洩らして、力を込める。
「そうだ、その意気だ!」
「行くぜ! 『ラストアルカナム』!」
怒涛の連撃、キーブレードを巧みに用いて無轟に斬りこんで行く。無轟はそれを一撃の『炎産霊神』で牽制しようと振り払った。
瞬間、空中へと飛びあがったヴェントゥスが切っ先を向けて、吼える。
「喰らえ、『ホーリーバースト』!!」
「ぬおっ!!?」
集束された光弾が無轟に着弾し、大きく吹き飛ばした。だが、同時に炎の鳥がヴェントゥスを押し飛ばした。
「うわぁぁっ!?」
「ヴェン!」
テラが転がり込んできたヴェントゥスの身を起こして、呼び掛ける。
「だ、大丈夫! ビックリしただけだから」
「そうか…やはり、強い」
無事を確認したテラは再度、無轟の強さを実感するように彼の方を見据えた。
キーブレードを強く握り締め、そのまま駆け出していった。
「もう、だらしないわね」
「う、うるせぇ!」
「さっさと飲んで、仕切りなおしだ」
一方、地上へ落下したクウへオパールとリクが駆け寄り、回復アイテムのポーションを手渡す。
それを飲み、クウはすぐさま双剣で襲い掛かってきた残る琿狼をリクたちと共に斬り捨てて、無轟へと向かう。
「――テラ、お前か」
琿狼を切り抜け、斬りこんで来たのはテラであった。凛那で受け止めながら、無轟は笑みを浮かべながら呟いた。
彼ともクウと同じくにこの旅で最初から同行して、戦いあってきた戦友だと思っていた。
「今は……こうして戦うしかないんですか?」
憂うにも似た表情で問いかける彼に、無轟は鍔競る中で、火花を散らす彼の新たなキーブレードを見やる。
禍々しい見目をしたキーブレード、闇の力を恐れず行使する事で開花したそれを。
「……強い力を感じる。さあ! 魅せてみろ、テラ! 躊躇うな!!」
「うおおおおっ!!」
無轟との鍔競りに押し勝ち、彼を突き飛ばすとキーブレードの刀身に闇を集束させる。
「『カオス・イレイザー』!!」
キーブレードを突き出し、集束された闇を一気に放射する。闇の奔流がそのまま無轟を飲み込んだ。
だが、奔流の中から茜の火柱が立ち上がった。火柱から無数の炎槍が一斉にテラへと突き出されていく。
「氷結せよっ!! 『コキュートス・レーザー』!」
アクアがキーブレードを振りかざし、周囲に魔法陣が展開され、青いレーザーが放たれた。
テラに襲い掛かった槍を全て凍りつかせ、更には立ち上った火柱にも放ったことにより氷結させた。
「――『火之挙爪(ひのたかづめ)』!」
凍りついた火柱の中から燃え盛る拳が突き出され、氷結した周囲を粉々に薙ぎ払った。
「簡単にはいかないわね…!」
「当然だ――来るぞ!」
突き破った拳がテラとアクアが迫り、二人はそれぞれ身構える。
そこへその拳へ何かが投げつけられた。
「『ガード・ブロック』!!」
投げつけたのはオパールで、彼女のアイテムが発動される。
それは薄い壁のようなものがテラたちを護るように出現し、炎拳と激突して消し飛んだのだ。
無轟は崩れた氷壁から姿を現す。テラの一撃、アクアの攻勢にも傷一つない。燃え盛る炎の衣を纏い、再び、刀身に炎を集束させる。
「皆に力を! 『スフィア・マクシア』!」
取り出した水晶のアイテムを上空へと放り投げる。水晶は砕け、粒子となってクウたちを包み込んだ。
粒子は肌や体に触れると染み入るように溶け、浴びたクウたちの体に力が沸々と湧き上がってくる。
そして、クウが飛翔しながら双剣を振り下ろして、無轟の攻撃予備動作をつぶした。
「――慣れてきたか?」
双剣の剣戟を交わしながら、無轟が茶化すように言う。クウは茶化しながらも炎産霊神を繰り出してくる彼と違って必死な様相で言い返す。
「ざけんな!」
「『アルシェール』っ!」
割り込むようにリクがキーブレードを無轟へと投擲する。それを凛那で弾き、隙が生じた。
「『ウィング・アーツ』!!」
飛翔と同時に無轟を蹴り上げ、双剣によるラッシュを叩き込む。
攻撃を防きれず落下する無轟は凛那は振ると周囲に燃え盛った炎を集めさせる。
「火之裁輝」
塊となった炎熱が奔流となってクウとリクへと叩き込んだ。
「リク!」
「ああ!」
二人はそれぞれ闇の力を圧縮した衝撃波で奔流を抑え込みながら、クウはリクの傍に着地する。
そして、剣と剣を重なり合わせ、更なる闇を二人の刀身に増長させる。
「「『カオス・ノヴァ』!!」」
交じり合った闇を同時に繰り出し、巨大な衝撃波で奔流を押し返して、無轟に跳ね返した。
「ッ『炎産霊神』!!」
迫った闇の衝撃波を炎熱の一刀で綺麗に両断した。
無轟はそのまま身に纏っていた紅蓮の衣、周囲にある炎を凛那へと集束させた。
「――――……」
それを最大の攻撃と見たテラ、アクア、クウ、ヴェントゥス、リク、オパールが一斉に挑みかかった。
それぞれの最大限の力で、無轟に応じるように。
「『ダーク・ヘルセキュア』!」
テラは大きくキーブレードを振り下ろし、渾身の闇炎の衝撃波を振り放った。
「『オーロラ・グラキセイス』!」
アクアはキーブレードを掲げ、光の力を帯びた氷結の弾雨を降り注ぐ。
「『カオスエクスバースト』!」
クウは双剣を交差するように振り、Xの形をした巨大な衝撃波が繰り出す。
「『シャイニングラグナロク』!」
上空へ舞い上がったヴェントゥスはキーブレードから無数の光の剣を射出し、無轟へと放った。
「『ブラックインパルス』!」
同じくリクは空中からキーブレードを擲って、着弾と同時に闇の奔流が荒れ狂う一撃を撃った。
「『ギャラクシー・メテオレイ』!」
最後にオパールが取り出した水晶から解き放たれたのは、上空を銀河に染め、巨大な光弾の流星が降り注いだ。
「―――――」
それら全ての猛攻に呑まれる刹那、無轟は彼らへと笑みを浮かべていた。戦いの中で魅せた獰猛な笑みではない、無愛想な男が見せた穏やかな、優しい微笑みを。
■作者メッセージ
ということで、今回の戦闘は夢旅人が担当です。もしかすると修正あるかも……技詳細もしますね
クウ
ウィング・アーツ:敵を空中へと蹴り上げ、双剣、または体術による追撃をする
ニゲル・プルート:闇の力を双剣に込めて、敵に叩き込む。
カオスエクスバースト:双剣に闇の力を纏わせ、交差に振り放つとX型の衝撃波となって敵に衝突する。
無轟
火之龍凪(ひのたつなぎ):炎の奔流を無数の龍に変えて、敵に喰らい付く。全体的な攻撃でもあるが、単体に集中的に攻撃も出来る。
火之琿狼(ひのぐんろう):炎の塊で出来た狼をかなりの数を具現化させ、敵に放つ。
火之挙爪(ひのたかづめ):炎の拳を作り出し、敵や障害物などを薙ぎ払う技。
火之裁輝(ひのさばき):炎を集め、巨大な塊を形成し、塊から奔流を敵へと降り注ぐ。
テラ
カオス・イレイザー:キーブレードの切っ先から闇の放射を放つ。
ダーク・ヘルセキュア:闇炎の強力な衝撃波を放つ。無轟の技などを参考にしている。
ヴェントゥス
エアロ・シューティング:風を纏い、縦横無尽に敵を翻弄しながら攻撃する。
ホーリーバースト:キーブレードの切っ先に光の力を集束させ、強力な光弾を撃ち出す。
アクア
コキュートス・レーザー:魔法陣を展開し、氷結のレーザーを放つ。
オーロラ・グラキセイス:光の力を帯びた氷の弾雨を敵に降り注ぐ。
リク
アルシェール:キーブレードを敵にたくみに投擲する技。
ブラック・インパルス:キーブレードを擲ち、着弾と共に闇の奔流が炸裂する。
オパール
ガード・ブロック:防御結界を展開させるアイテム。
スフィア・マクシア:展開と共に粒子になり、粒子に触れた仲間は攻撃力を強化させる能力がある。
ギャラクシー・メテオレイ:上空一体を銀河に染め上げ、そこから流星雨が降り注ぐアイテム。
クウ&リク
カオス・ノヴァ:お互いの闇の力をそれぞれの武器に宿し、同時に巨大になった闇の衝撃波を繰り出す。
テラ&アクア&ヴェントゥス
トリニティ・バリアース:強力なバリアを作り出し、敵の攻撃を防ぐ。
トリニティ・パニッシュ:バリアースの連続技。バリアを破壊する事でその衝撃波を敵に放つ。
クウ
ウィング・アーツ:敵を空中へと蹴り上げ、双剣、または体術による追撃をする
ニゲル・プルート:闇の力を双剣に込めて、敵に叩き込む。
カオスエクスバースト:双剣に闇の力を纏わせ、交差に振り放つとX型の衝撃波となって敵に衝突する。
無轟
火之龍凪(ひのたつなぎ):炎の奔流を無数の龍に変えて、敵に喰らい付く。全体的な攻撃でもあるが、単体に集中的に攻撃も出来る。
火之琿狼(ひのぐんろう):炎の塊で出来た狼をかなりの数を具現化させ、敵に放つ。
火之挙爪(ひのたかづめ):炎の拳を作り出し、敵や障害物などを薙ぎ払う技。
火之裁輝(ひのさばき):炎を集め、巨大な塊を形成し、塊から奔流を敵へと降り注ぐ。
テラ
カオス・イレイザー:キーブレードの切っ先から闇の放射を放つ。
ダーク・ヘルセキュア:闇炎の強力な衝撃波を放つ。無轟の技などを参考にしている。
ヴェントゥス
エアロ・シューティング:風を纏い、縦横無尽に敵を翻弄しながら攻撃する。
ホーリーバースト:キーブレードの切っ先に光の力を集束させ、強力な光弾を撃ち出す。
アクア
コキュートス・レーザー:魔法陣を展開し、氷結のレーザーを放つ。
オーロラ・グラキセイス:光の力を帯びた氷の弾雨を敵に降り注ぐ。
リク
アルシェール:キーブレードを敵にたくみに投擲する技。
ブラック・インパルス:キーブレードを擲ち、着弾と共に闇の奔流が炸裂する。
オパール
ガード・ブロック:防御結界を展開させるアイテム。
スフィア・マクシア:展開と共に粒子になり、粒子に触れた仲間は攻撃力を強化させる能力がある。
ギャラクシー・メテオレイ:上空一体を銀河に染め上げ、そこから流星雨が降り注ぐアイテム。
クウ&リク
カオス・ノヴァ:お互いの闇の力をそれぞれの武器に宿し、同時に巨大になった闇の衝撃波を繰り出す。
テラ&アクア&ヴェントゥス
トリニティ・バリアース:強力なバリアを作り出し、敵の攻撃を防ぐ。
トリニティ・パニッシュ:バリアースの連続技。バリアを破壊する事でその衝撃波を敵に放つ。