CROSS CAPTURE26 「晩餐の語らい」
神の世界での決戦後に訪れた休息。その中で起こった異世界からの来訪者、再び前へと向き合う戦い。この一日でさまざまな出来事が行われた。
それらも一段落がついて夜になった頃。食事の時間が近づく中、男性陣の治療部屋ではリクが頭を押さえていた。
「――で、どうしてカイリ達まで…?」
その原因は、部屋の空きスペースを使って三人分のテーブルとイスを用意するカイリとオパールだ。
この呟きに、カイリは準備する手を止めて不満そうにリクを見た。
「いいでしょ、一緒の部屋で食事しても。リク達と違ってこっちは回復してるし。それにあんな戦いしたんだから食べさせないと…ねっ、オパール?」
「ど、どうしてそこであたしに振るのよ!? カカカカイリがリクに食べさせればいいでしょ、幼馴染みなんだから!!」
突然の事に、顔を真っ赤して言い訳を作るオパールだったが。
「カイリー、俺身体が痛くてー。食べさせてー」
「そう言う訳だから、お二人でごゆっくりー」
「ヴェン、覚えてなさい!! カイリも後でデコピンの刑だからね!!」
何処か棒読みで話を進めるヴェンとカイリに、思わずオパールは握り拳を作る。
騒がしくなった部屋の一角を見ながら、同じく共に食事をする為に来たアクアはビラコチャに頭を下げた。
「すみません…いろいろと」
「賑やかなのはいいことだ。そう気になさるな」
そんな会話をする中、横でベットに座っているテラが声をかける。
「ところで、食事なら二人を起こした方がいいのでは?」
「いや…もう少しだけ寝かせて置いた方が良いだろう。今の二人は食事所ではないだろうからな」
ビラコチャはそう言うと、眠っているウィドと紫苑に目を向ける。
ウィドはクウに対して強い憎しみを持っているし、紫苑もゼロボロスに対して何かしらの強い感情を抱いている。そんな状態では二人だけでなく自分達も満足に食事など取れないだろう。
そうこう考えていると、扉がノックされた。
「お食事、お持ちしました」
その声と共に、先程のメイドが食事を乗せた荷台を押して入ってくる。
だが、その後ろに予想もしなかった人物達がいた。
「よっ、シャオ」
気くさに笑いながら、オルガが部屋の中に入ってきた。その後ろからアーファ、イオン、ペルセも続く。
「オルガさん!? どうしてここに!?」
「使用人の人に頼んで、私達もここで食事を取る事にしたの。それよりシャオ!! どうしてあんな危険な事したの!! 窓から飛び降りてすっごく心配したんだからっ!!」
「ご、ごめん…アーファさん」
よほど心配をかけさせたのが伝わり、すぐにシャオはアーファに頭を下げる。
そうして怒られていると、ペルセが止めに入った。
「アーファさん、落ち着いて。これからみんなで食事でしょ?」
「そうそう。さ、早く配って食べようぜ!」
最後に見知らぬ茶髪の青年が入ってくるなり、メイドの人と一緒に食事を配り始める。
この人物に、シャオはイオンに質問した。
「イオン先輩、あの人は?」
「菜月さんって言うんだ。僕達の仲間で、一緒に食事する事になって」
二人で話している間にもテラ達の食事はそれぞれに行き渡り、オルガ達も折り畳み式のテーブルやイスで自分達のスペースを作る。
そんな中、自分達に当てられた料理に思わずカイリが呟いた。
「これ、何だか病院食みたい…」
自分達のトレイに乗せられているのは、卵粥に海藻サラダ、筑前煮に林檎一切れと言うヘルシーなものだ。対するオルガ達はパンにコーンスープ、野菜の付け合せ付きのハンバーグだ。
他の人も物足りないと言った表情で見ていると、配り終えたメイドの人が苦笑した。
「今日だけですよ。明日にはあなた方にも普通の食事をご用意いたします」
「見る限り怪我も良くなってるし、今日だけ我慢すりゃいいさ」
付け加える様に菜月も言うと、ヴェンが箸を握った。
「俺、もうお腹ペコペコ! いただきまーす!」
「こら、ヴェン! はしたないでしょ!」
「いいじゃないか。さ、俺達も食事にしよう…戦いの連続で何も食べてなかったしな」
「…そうね」
テラの言葉に、アクアはヴェンを怒るのを止めて食事を始める。
それを皮切りに他の人も食事を始めるが、オパールは卵粥をスプーンで掬うとベットに座るリクに突き出した。
「あ、あんた…怪我してるでしょ? 仕方ないからあたしが食べさせてあげる。だから、少しは感謝しなさいよね! ほ、ほら口開けてっ!!」
「いや…戦ったとは言え、さっきの薬で大分治ってるから別にそんな必要は「いいから食えぇ!!」ムグォ!?」
拒否は許さんと言わんばかりに、口の中に無理やり卵粥を突っ込むオパール。
こうして食事の場が賑やかになる中、菜月が思い出すように周りを見回した。
「そういや、オイラ達の自己紹介がまだだったよな。ここでやっておくか?」
「そう言えば、皆さんの名前も知りませんでしたね」
サラダを食べながらアクアも今の状況を理解すると、他の人達も頷く。
そしてすぐに、ここにいる全員はそれぞれ簡単な自己紹介を始めた。
「へー、シャオだけじゃなくてヴェン達もキーブレード使いなんだ!」
「キーブレード使いの知り合いって言えばイオンぐらいしか知らないから、何か新鮮さがあるな」
キーブレード使いと言う事にアーファが目を輝かせる中、オルガも関心するようにヴェン達を見る。
「イオンもキーブレード使いなの? 凄いね!」
「そんな事ないですよ。僕なんて、全然…」
カイリが笑顔でイオンを見るが、本人は何処か浮かない表情で目を逸らす。
互いの事を知って場が盛り上がっていると、菜月がイオンを見る。
「ん? なあ、カイリって言えばイオンの「「あー、手が滑ったー!!!」」ごはぁ!?」
菜月が何か言おうとした瞬間、イオンとシャオのキーブレードが顔面に直撃した。
そのまま菜月が後ろに飛ばされた光景に、ヴェンが目を丸くする。
「何、いきなり!?」
「ななな、なんでもないですよ…!?」
「そ、そうそう! 気にしないでよー!!」
「は、はぁ…?」
ワザとらしい笑顔を浮かべる二人に、カイリは首を傾げるしか出来ない。
その間に、口封じを行った二人は菜月に近づくなり小さな声で話し出した。
「菜月さん、余計な事言わないでくれませんか!?」
「そうだよ! いくら別の世界でも、イオン先輩が自分の未来の子供だって知ったらどうなるか分かるでしょ!」
小さい声にも関わらず、イオンとシャオはもの凄い剣幕で菜月に詰め寄る。
カイリはイオンにとって母親の存在だ。無轟の場合はとっくに神無は生まれていたからいいが、こちらは子供所か結婚している訳ではない。そんな状態でもし知られてしまったら混乱が起きるだけでなく、彼らの未来に影響を及ぼしかねない。
「わ、悪かったってば…――ん? シャオ、お前は何でイオンの事知っているんだ?」
「へ!? あ、それはその…」
思わぬ菜月の質問に、シャオは冷や汗を掻いて口籠る。
その質問をキッカケに、テラ達も一斉にシャオに視線を向ける。
「そう言えば…俺達、シャオの事を何にも知らなかったな」
「エンと同じ異世界の人って言うのは知ってるけど、それ以外は何も知らなかったわね。クウと顔見知りからすると、私達とも関係があるのかしら?」
完全に当たってしまっているアクアの推理に、シャオの肩がビクつく。
これ以上自分の事を知られてはマズいと、シャオはシラを切らそうとする。
「そっ…そんな事無いよ、アクア“おばさん”!……ハッ!?」
つい、いつもの呼び方をしてしまい慌てて口を押えるシャオ。
しかし、何もかもが手遅れだった。
「アクア…おばさん?」
「俺達の事を知っていると言い、その言い方と言い…――シャオ、お前本当は何処から来た?」
カイリが茫然と呟くと、リクがこちらを睨んでくる。
もう言い逃れ出来る方法が無くなり、シャオは観念したように頭を下げて白状した。
「…20年後の異世界から来ましたぁ…」
『『『20年後ぉ!!?』』』
予想していなかった答えに、シャオから話を聞いていたオルガ達を除いた全員が絶叫を上げる。
「もしかして、君もシルビアに連れて来られたのか!?」
「い、いや…そう言うのじゃ…」
「そうそう。シャオは両親との喧嘩で家出「わーーっ!!!」むぐっ!?」
テラの質問に首を振っていると、オルガが訳を話し出して慌てて口止めする。
「家出で…異世界に来たの…?」
「本当に何者なの、あの子…?」
シャオの頑張りも虚しく完全にバレてしまい、アクアとオパールが呆れの視線を送る。
これにはシャオが居た堪れなくなっていると、ヴェンとカイリは黙々と今の情報を整理していた。
「えっと、シャオって俺達からしたら未来の人間で…で、シャオはイオンの事を知っているって事は…」
「ここって、私達からしたら未来の異世界って事!?」
ヴェンに続く様に、カイリが導き出した結論を出す。
だが、今まで騒いでいたシャオが動きを止めて振り向いた。
「んー…そう言う訳じゃないと思う。異世界は同じようで違う世界。だから、多少時間の流れ方が違ったりして、同じ時間帯で移動してもそこは過去だったり未来だったりする事もあるんだ。だから、みんなにしてみればここは未来の姿を描いた世界って所だね」
「シャオって、凄く物知りだね…」
「これも知り合いの受け売りだからねー」
シャオの博識にペルセが感心を見せると、気を良くして鼻を高くする。
すると、不意に今まで黙っていたリクが話しかけてきた。
「ところで、お前はこれからどうする気なんだ? 家出とは言え、俺達に巻き込まれた形なんだ。元の世界に戻れるなら――」
彼なりに心配してくれる言葉なのが伝わるが、シャオは首を横に振った。
「戻る事は出来ないよ。それに…こうなった以上、見て見ぬ振りも出来ないから。出来ればボクもこの戦いに参加したいんだけど…駄目、かな?」
恐る恐ると言った感じに、シャオは上目使いで皆に聞く。
不安を見せるシャオに対し、テラとアクアは優しく微笑んだ。
「いや…寧ろ、君の様なキーブレード使いが仲間になってくれるんだ」
「ええ。こちらとしてはありがたいくらいだわ」
「ありがと、二人とも!」
今まで巻き込まれた形だったが、改めて彼らの仲間として迎え入れられた事にシャオは笑顔を見せる。
これには周りも笑顔を浮かべると、カイリはある事を思い出した。
「キーブレードって言えば、あの時クウも持ってたよね?」
「そうね…あいつ、何で持てたのかしら?」
オパールも頷くと、先程の無轟との戦いを思い出す。
自分達が駆け付けた時、クウはゼロボロスのように黒と白の双翼を纏いキーブレードを持っていた。しかも、途中で二刀流にまで変化させていた。一緒にいた時には拳や蹴りと言った格闘術で戦っていたのに。
この不可解な謎に他の人も考えていると、テラが答えた。
「俺がクウに出会った時はキーブレードを使っていたぞ。未来で再会したら、使えないって言っていたが…」
「キーブレードが使えない!? そんな事あるのか!?」
「分からないわ…彼に何があったのかしら?」
キーブレードに関する修行をしてきたヴェンとアクアが困惑を浮かべると、傍観していたビラコチャが助言を出した。
「ならば、食事が終わってから聞きに行くのはどうかね? あちらも食事で起きている頃だろう」
「そうだね、ボクも師匠の様子を見に行きたいし! オルガさん達も一緒に行こうよ!」
大きく頷くなり、いつもの調子でシャオがオルガ達を誘う。
「いいのか? なら、お言葉に甘えて同行させて貰うか」
「うん。私もシャオのお師匠さんを見たいし」
クウに会う事に乗り気なようで、オルガとペルセは笑みを浮かべて頷く。
こうして今後の事を決めた彼らは、他愛の無い会話を混ぜつつ食事を進めていった。
それらも一段落がついて夜になった頃。食事の時間が近づく中、男性陣の治療部屋ではリクが頭を押さえていた。
「――で、どうしてカイリ達まで…?」
その原因は、部屋の空きスペースを使って三人分のテーブルとイスを用意するカイリとオパールだ。
この呟きに、カイリは準備する手を止めて不満そうにリクを見た。
「いいでしょ、一緒の部屋で食事しても。リク達と違ってこっちは回復してるし。それにあんな戦いしたんだから食べさせないと…ねっ、オパール?」
「ど、どうしてそこであたしに振るのよ!? カカカカイリがリクに食べさせればいいでしょ、幼馴染みなんだから!!」
突然の事に、顔を真っ赤して言い訳を作るオパールだったが。
「カイリー、俺身体が痛くてー。食べさせてー」
「そう言う訳だから、お二人でごゆっくりー」
「ヴェン、覚えてなさい!! カイリも後でデコピンの刑だからね!!」
何処か棒読みで話を進めるヴェンとカイリに、思わずオパールは握り拳を作る。
騒がしくなった部屋の一角を見ながら、同じく共に食事をする為に来たアクアはビラコチャに頭を下げた。
「すみません…いろいろと」
「賑やかなのはいいことだ。そう気になさるな」
そんな会話をする中、横でベットに座っているテラが声をかける。
「ところで、食事なら二人を起こした方がいいのでは?」
「いや…もう少しだけ寝かせて置いた方が良いだろう。今の二人は食事所ではないだろうからな」
ビラコチャはそう言うと、眠っているウィドと紫苑に目を向ける。
ウィドはクウに対して強い憎しみを持っているし、紫苑もゼロボロスに対して何かしらの強い感情を抱いている。そんな状態では二人だけでなく自分達も満足に食事など取れないだろう。
そうこう考えていると、扉がノックされた。
「お食事、お持ちしました」
その声と共に、先程のメイドが食事を乗せた荷台を押して入ってくる。
だが、その後ろに予想もしなかった人物達がいた。
「よっ、シャオ」
気くさに笑いながら、オルガが部屋の中に入ってきた。その後ろからアーファ、イオン、ペルセも続く。
「オルガさん!? どうしてここに!?」
「使用人の人に頼んで、私達もここで食事を取る事にしたの。それよりシャオ!! どうしてあんな危険な事したの!! 窓から飛び降りてすっごく心配したんだからっ!!」
「ご、ごめん…アーファさん」
よほど心配をかけさせたのが伝わり、すぐにシャオはアーファに頭を下げる。
そうして怒られていると、ペルセが止めに入った。
「アーファさん、落ち着いて。これからみんなで食事でしょ?」
「そうそう。さ、早く配って食べようぜ!」
最後に見知らぬ茶髪の青年が入ってくるなり、メイドの人と一緒に食事を配り始める。
この人物に、シャオはイオンに質問した。
「イオン先輩、あの人は?」
「菜月さんって言うんだ。僕達の仲間で、一緒に食事する事になって」
二人で話している間にもテラ達の食事はそれぞれに行き渡り、オルガ達も折り畳み式のテーブルやイスで自分達のスペースを作る。
そんな中、自分達に当てられた料理に思わずカイリが呟いた。
「これ、何だか病院食みたい…」
自分達のトレイに乗せられているのは、卵粥に海藻サラダ、筑前煮に林檎一切れと言うヘルシーなものだ。対するオルガ達はパンにコーンスープ、野菜の付け合せ付きのハンバーグだ。
他の人も物足りないと言った表情で見ていると、配り終えたメイドの人が苦笑した。
「今日だけですよ。明日にはあなた方にも普通の食事をご用意いたします」
「見る限り怪我も良くなってるし、今日だけ我慢すりゃいいさ」
付け加える様に菜月も言うと、ヴェンが箸を握った。
「俺、もうお腹ペコペコ! いただきまーす!」
「こら、ヴェン! はしたないでしょ!」
「いいじゃないか。さ、俺達も食事にしよう…戦いの連続で何も食べてなかったしな」
「…そうね」
テラの言葉に、アクアはヴェンを怒るのを止めて食事を始める。
それを皮切りに他の人も食事を始めるが、オパールは卵粥をスプーンで掬うとベットに座るリクに突き出した。
「あ、あんた…怪我してるでしょ? 仕方ないからあたしが食べさせてあげる。だから、少しは感謝しなさいよね! ほ、ほら口開けてっ!!」
「いや…戦ったとは言え、さっきの薬で大分治ってるから別にそんな必要は「いいから食えぇ!!」ムグォ!?」
拒否は許さんと言わんばかりに、口の中に無理やり卵粥を突っ込むオパール。
こうして食事の場が賑やかになる中、菜月が思い出すように周りを見回した。
「そういや、オイラ達の自己紹介がまだだったよな。ここでやっておくか?」
「そう言えば、皆さんの名前も知りませんでしたね」
サラダを食べながらアクアも今の状況を理解すると、他の人達も頷く。
そしてすぐに、ここにいる全員はそれぞれ簡単な自己紹介を始めた。
「へー、シャオだけじゃなくてヴェン達もキーブレード使いなんだ!」
「キーブレード使いの知り合いって言えばイオンぐらいしか知らないから、何か新鮮さがあるな」
キーブレード使いと言う事にアーファが目を輝かせる中、オルガも関心するようにヴェン達を見る。
「イオンもキーブレード使いなの? 凄いね!」
「そんな事ないですよ。僕なんて、全然…」
カイリが笑顔でイオンを見るが、本人は何処か浮かない表情で目を逸らす。
互いの事を知って場が盛り上がっていると、菜月がイオンを見る。
「ん? なあ、カイリって言えばイオンの「「あー、手が滑ったー!!!」」ごはぁ!?」
菜月が何か言おうとした瞬間、イオンとシャオのキーブレードが顔面に直撃した。
そのまま菜月が後ろに飛ばされた光景に、ヴェンが目を丸くする。
「何、いきなり!?」
「ななな、なんでもないですよ…!?」
「そ、そうそう! 気にしないでよー!!」
「は、はぁ…?」
ワザとらしい笑顔を浮かべる二人に、カイリは首を傾げるしか出来ない。
その間に、口封じを行った二人は菜月に近づくなり小さな声で話し出した。
「菜月さん、余計な事言わないでくれませんか!?」
「そうだよ! いくら別の世界でも、イオン先輩が自分の未来の子供だって知ったらどうなるか分かるでしょ!」
小さい声にも関わらず、イオンとシャオはもの凄い剣幕で菜月に詰め寄る。
カイリはイオンにとって母親の存在だ。無轟の場合はとっくに神無は生まれていたからいいが、こちらは子供所か結婚している訳ではない。そんな状態でもし知られてしまったら混乱が起きるだけでなく、彼らの未来に影響を及ぼしかねない。
「わ、悪かったってば…――ん? シャオ、お前は何でイオンの事知っているんだ?」
「へ!? あ、それはその…」
思わぬ菜月の質問に、シャオは冷や汗を掻いて口籠る。
その質問をキッカケに、テラ達も一斉にシャオに視線を向ける。
「そう言えば…俺達、シャオの事を何にも知らなかったな」
「エンと同じ異世界の人って言うのは知ってるけど、それ以外は何も知らなかったわね。クウと顔見知りからすると、私達とも関係があるのかしら?」
完全に当たってしまっているアクアの推理に、シャオの肩がビクつく。
これ以上自分の事を知られてはマズいと、シャオはシラを切らそうとする。
「そっ…そんな事無いよ、アクア“おばさん”!……ハッ!?」
つい、いつもの呼び方をしてしまい慌てて口を押えるシャオ。
しかし、何もかもが手遅れだった。
「アクア…おばさん?」
「俺達の事を知っていると言い、その言い方と言い…――シャオ、お前本当は何処から来た?」
カイリが茫然と呟くと、リクがこちらを睨んでくる。
もう言い逃れ出来る方法が無くなり、シャオは観念したように頭を下げて白状した。
「…20年後の異世界から来ましたぁ…」
『『『20年後ぉ!!?』』』
予想していなかった答えに、シャオから話を聞いていたオルガ達を除いた全員が絶叫を上げる。
「もしかして、君もシルビアに連れて来られたのか!?」
「い、いや…そう言うのじゃ…」
「そうそう。シャオは両親との喧嘩で家出「わーーっ!!!」むぐっ!?」
テラの質問に首を振っていると、オルガが訳を話し出して慌てて口止めする。
「家出で…異世界に来たの…?」
「本当に何者なの、あの子…?」
シャオの頑張りも虚しく完全にバレてしまい、アクアとオパールが呆れの視線を送る。
これにはシャオが居た堪れなくなっていると、ヴェンとカイリは黙々と今の情報を整理していた。
「えっと、シャオって俺達からしたら未来の人間で…で、シャオはイオンの事を知っているって事は…」
「ここって、私達からしたら未来の異世界って事!?」
ヴェンに続く様に、カイリが導き出した結論を出す。
だが、今まで騒いでいたシャオが動きを止めて振り向いた。
「んー…そう言う訳じゃないと思う。異世界は同じようで違う世界。だから、多少時間の流れ方が違ったりして、同じ時間帯で移動してもそこは過去だったり未来だったりする事もあるんだ。だから、みんなにしてみればここは未来の姿を描いた世界って所だね」
「シャオって、凄く物知りだね…」
「これも知り合いの受け売りだからねー」
シャオの博識にペルセが感心を見せると、気を良くして鼻を高くする。
すると、不意に今まで黙っていたリクが話しかけてきた。
「ところで、お前はこれからどうする気なんだ? 家出とは言え、俺達に巻き込まれた形なんだ。元の世界に戻れるなら――」
彼なりに心配してくれる言葉なのが伝わるが、シャオは首を横に振った。
「戻る事は出来ないよ。それに…こうなった以上、見て見ぬ振りも出来ないから。出来ればボクもこの戦いに参加したいんだけど…駄目、かな?」
恐る恐ると言った感じに、シャオは上目使いで皆に聞く。
不安を見せるシャオに対し、テラとアクアは優しく微笑んだ。
「いや…寧ろ、君の様なキーブレード使いが仲間になってくれるんだ」
「ええ。こちらとしてはありがたいくらいだわ」
「ありがと、二人とも!」
今まで巻き込まれた形だったが、改めて彼らの仲間として迎え入れられた事にシャオは笑顔を見せる。
これには周りも笑顔を浮かべると、カイリはある事を思い出した。
「キーブレードって言えば、あの時クウも持ってたよね?」
「そうね…あいつ、何で持てたのかしら?」
オパールも頷くと、先程の無轟との戦いを思い出す。
自分達が駆け付けた時、クウはゼロボロスのように黒と白の双翼を纏いキーブレードを持っていた。しかも、途中で二刀流にまで変化させていた。一緒にいた時には拳や蹴りと言った格闘術で戦っていたのに。
この不可解な謎に他の人も考えていると、テラが答えた。
「俺がクウに出会った時はキーブレードを使っていたぞ。未来で再会したら、使えないって言っていたが…」
「キーブレードが使えない!? そんな事あるのか!?」
「分からないわ…彼に何があったのかしら?」
キーブレードに関する修行をしてきたヴェンとアクアが困惑を浮かべると、傍観していたビラコチャが助言を出した。
「ならば、食事が終わってから聞きに行くのはどうかね? あちらも食事で起きている頃だろう」
「そうだね、ボクも師匠の様子を見に行きたいし! オルガさん達も一緒に行こうよ!」
大きく頷くなり、いつもの調子でシャオがオルガ達を誘う。
「いいのか? なら、お言葉に甘えて同行させて貰うか」
「うん。私もシャオのお師匠さんを見たいし」
クウに会う事に乗り気なようで、オルガとペルセは笑みを浮かべて頷く。
こうして今後の事を決めた彼らは、他愛の無い会話を混ぜつつ食事を進めていった。
■作者メッセージ
今回はバトンを交代し、久しぶりにNANAが更新しました。
今までずっと夢さんにまかせっきりだったので、しばらくは私のターンでいこうと思っています。
追記:タイトル・内容ともに一部修正しました
今までずっと夢さんにまかせっきりだったので、しばらくは私のターンでいこうと思っています。
追記:タイトル・内容ともに一部修正しました