メモリー編10 「揺らぐ闇」
忘却の城の広間に存在する記憶の歪みが消えると共に、リクとオパールが現れる。
だが、出てきて早々にオパールが小さく溜息を吐いた。
「はぁ…」
「なかなかアクセルの記憶は見つからないな」
「うん…でも、こいつの事いろいろ分かった気がする」
何処となく寂しそうな笑みを浮かべ、顔を俯かせるオパール。
彼女の心の内が理解出来たのか、リクは目を逸らしながら腕を組んだ。
「確かにな。おかげで俺も、この城でソラに起きてた事がよーく分かった…」
「あははっ…見てて何かハラハラしなかった?」
「ハラハラどころか、イライラしてきた。あいつ、何だってこんな見え透いた罠に騙されるんだ…!」
ナミネに関する記憶に翻弄されるソラを思い出したのか、リクは痛そうに頭を押さえる。
あくまでもリク=レプリカ――ルキルの視点からだが、先に進むごとに嘘の記憶でソラがナミネにこだわる様子や、ナミネを浚った男――マールーシャ達のソラを手に入れようとする計画を知る事が出来た。
この城での事件を思い返していると、オパールはある事に気が付いた。
「でもさ、こうして見ると…クウって、ソラと何か似てない?」
「寝言は寝て言うものだ、オパール。あんな女の敵とソラが似ているなんて、天地がひっくり返ってもありえないだろ?」
「あんたってさ、ソラやカイリの事となると急に人格変わるわよね…」
素早く顔を向けるなり黒い満面の笑みで全面否定をするリクに、オパールは思わず呆れを浮かべてしまう。
「そう言う事じゃないの。ほら、ソラは騙されたとしても、利用されてたナミネやルキルを許したじゃない。クウだって最初はあたし達の中で一番落ち込んでたけど…あたし達を立ち上がらせるキッカケを作ってくれた」
利用されていたナミネもルキルもソラは許し、利用しようと企んでいた敵を倒す事で二人を救った。そしてクウは、無轟との戦いの中で迷いを振り切った姿を見せてくれたから心に抱えた傷跡が消えた。
この二人の行動には共通する点が一つある。
「結果的には、二人ともみんなの心に出来た傷を癒してくれた。そう考えるとさ…二人って何か似てるなーって」
「言われてみればそうだが…」
「ああ、もういいわ。意地でも認めないって分かったから」
とてつもなく嫌そうな顔をするリクに、それなりに付き合ってきたオパールは心の内が分かったようで諦めたように肩を竦める。
ここで話が終わると思ったが、何処か不安そうに再びオパールが声をかけた。
「――ねえ、リク」
「何だ?」
「ずっと、気になってたんだけど……ナミネって何者なの? カイリに似ているし、記憶を操るし…普通の人じゃないよね?」
この質問に、僅かにだがリクは狼狽える。
それでもオパールは黙ってリクを見続けると、決心がついたのか口を開いた。
「ナミネは――」
「こんな所で何をしているんですか?」
丁度その時、二人の後ろから咎めるような声が投げつけられた。
「「ウィド!?」」
すぐに二人が振り返ると、ウィドが不満げな様子でこちらを睨んでいる。その後ろにはシーノもいるが、どうしようか迷っている表情でウィドを見ている。
「私はてっきりあの場所で休憩しているとばかり思っていたんですがね。どうやら、私達だけ先に進んだ方が正解だったようです」
「ご、ごめん…」
棘のある言葉を浴びせられ、原因を作ったオパールは頭を下げる。
それでも尚ウィドは不満をぶつけようとするが、見計らうようにシーノが助け舟に入った。
「まあ、落ち着いて。人数は多いに越した事はないんだし、ね?」
「…とにかく、早く行きますよ」
シーノの宥めが効いたのか、ウィドは三人に背を向ける。
そのまま奥の通路へと歩き去る姿を見て、慌ててオパールは呼び止めた。
「あっ…ま、待って!」
その声に歩いていたウィドは足を止めるが、振り返る事はせずに冷たく質問を返した。
「何ですか?」
「お願い、もう少しだけ…ううん、あと一つだけでいいの。こいつの記憶を覗かせて欲しいんだけど…」
「そんな事して何の意味があるんです? 時間の無駄だ」
「俺からも頼む。あと一つだけ、記憶を覗かせてくれ」
リクも説得に参加し、どうにかウィドを引き止めようとする。
二人の説得に、ウィドはその場で静止しつつ不満げに問いかけた。
「…理由は何ですか?」
「…昔、いなくなった知り合いがいるの。そいつの手がかり、ルキルの記憶にあったから…」
「そんなくだらない事で…!」
オパールの話した理由に苛立ちを覚えたのか、表情を歪めながら振り返る。
「くだらなくはない。ウィド、あんただってスピカさんの手がかりが見つかったから俺達に協力してくれたんだろ? だったらオパールの気持ちくらい――」
すぐにリクが話に割り込み、ウィドに言い聞かせる。
しかし、話している途中で急に風が吹き、リクは反射的にキーブレードを取り出す。
直後、銀色の斬撃が前方に構えたキーブレードに叩きつけられた。
「ッ!?」
「リク!?」
突然リクに向かって攻撃してきたウィドに、オパールが悲鳴を上げる。
それぞれの刀身をぶつけた状態で、すぐ目と鼻差の先でこちらに突き刺さるように睨みつけるウィド。だが、リクは憶する事無く彼に睨み返す。
互いに動かないまま睨みあって数秒か、数分か。やがて根気負けしたのか、ウィドが先に剣を引いた。
「――覗くのは、一つだけだ。それ以上は認めない」
「あ、あぁ…」
どうにか返事を返すが、ウィドは抜いた剣を鞘に収め一人その場を去って行く。
それと入れ替わる様に、オパールが焦った様子でリクに近づいた。
「リク、大丈夫!? 怪我は!? 痛みは!?」
「平気だ。それより、どうにか許可が取れたな」
「そう、かな…?」
あのウィドの態度を見る限り、完全に許したとは言い難く何処となく不安が過る。
そんなオパールに、成り行きを見ていたシーノが話しかけた。
「気にする事はないよ。ウィド、少しだけ心が揺らいでるから戸惑ってるんだ」
「「え…?」」
そう言いながら微笑むと、二人は驚きを露わにする。
シーノは笑いながら通路の奥へと去るウィドの背を見ると、静かに胸に手を当てる。
「それは彼の中に渦巻く闇の感情が、少しだけ和らいでいる証拠でもある。君達の行動は全部が全部、無駄じゃない」
「シーノ…」
このシーノの励ましに、オパールの肩の荷が少しだけ下りる。
彼女の心境が伝わったのか、シーノはクスリと笑うとウィドが去った方向に指を差した。
「とにかく、見終わったらこの通路の奥に来て。そこでウィドと待ってるから」
そう言って場所を教えると、シーノもウィドを追いかけてその場から去って行く。
再び二人きりとなった空間で、徐にリクが話しかけた。
「さて…どうする、オパール?」
「どうするも何も…行って終わらせるしかないでしょ?」
腰に両手を当て、心に残った未練を捨てるように言い放つオパール。
そして二人は、最後となるだろう記憶の歪みを探し始めた。
だが、出てきて早々にオパールが小さく溜息を吐いた。
「はぁ…」
「なかなかアクセルの記憶は見つからないな」
「うん…でも、こいつの事いろいろ分かった気がする」
何処となく寂しそうな笑みを浮かべ、顔を俯かせるオパール。
彼女の心の内が理解出来たのか、リクは目を逸らしながら腕を組んだ。
「確かにな。おかげで俺も、この城でソラに起きてた事がよーく分かった…」
「あははっ…見てて何かハラハラしなかった?」
「ハラハラどころか、イライラしてきた。あいつ、何だってこんな見え透いた罠に騙されるんだ…!」
ナミネに関する記憶に翻弄されるソラを思い出したのか、リクは痛そうに頭を押さえる。
あくまでもリク=レプリカ――ルキルの視点からだが、先に進むごとに嘘の記憶でソラがナミネにこだわる様子や、ナミネを浚った男――マールーシャ達のソラを手に入れようとする計画を知る事が出来た。
この城での事件を思い返していると、オパールはある事に気が付いた。
「でもさ、こうして見ると…クウって、ソラと何か似てない?」
「寝言は寝て言うものだ、オパール。あんな女の敵とソラが似ているなんて、天地がひっくり返ってもありえないだろ?」
「あんたってさ、ソラやカイリの事となると急に人格変わるわよね…」
素早く顔を向けるなり黒い満面の笑みで全面否定をするリクに、オパールは思わず呆れを浮かべてしまう。
「そう言う事じゃないの。ほら、ソラは騙されたとしても、利用されてたナミネやルキルを許したじゃない。クウだって最初はあたし達の中で一番落ち込んでたけど…あたし達を立ち上がらせるキッカケを作ってくれた」
利用されていたナミネもルキルもソラは許し、利用しようと企んでいた敵を倒す事で二人を救った。そしてクウは、無轟との戦いの中で迷いを振り切った姿を見せてくれたから心に抱えた傷跡が消えた。
この二人の行動には共通する点が一つある。
「結果的には、二人ともみんなの心に出来た傷を癒してくれた。そう考えるとさ…二人って何か似てるなーって」
「言われてみればそうだが…」
「ああ、もういいわ。意地でも認めないって分かったから」
とてつもなく嫌そうな顔をするリクに、それなりに付き合ってきたオパールは心の内が分かったようで諦めたように肩を竦める。
ここで話が終わると思ったが、何処か不安そうに再びオパールが声をかけた。
「――ねえ、リク」
「何だ?」
「ずっと、気になってたんだけど……ナミネって何者なの? カイリに似ているし、記憶を操るし…普通の人じゃないよね?」
この質問に、僅かにだがリクは狼狽える。
それでもオパールは黙ってリクを見続けると、決心がついたのか口を開いた。
「ナミネは――」
「こんな所で何をしているんですか?」
丁度その時、二人の後ろから咎めるような声が投げつけられた。
「「ウィド!?」」
すぐに二人が振り返ると、ウィドが不満げな様子でこちらを睨んでいる。その後ろにはシーノもいるが、どうしようか迷っている表情でウィドを見ている。
「私はてっきりあの場所で休憩しているとばかり思っていたんですがね。どうやら、私達だけ先に進んだ方が正解だったようです」
「ご、ごめん…」
棘のある言葉を浴びせられ、原因を作ったオパールは頭を下げる。
それでも尚ウィドは不満をぶつけようとするが、見計らうようにシーノが助け舟に入った。
「まあ、落ち着いて。人数は多いに越した事はないんだし、ね?」
「…とにかく、早く行きますよ」
シーノの宥めが効いたのか、ウィドは三人に背を向ける。
そのまま奥の通路へと歩き去る姿を見て、慌ててオパールは呼び止めた。
「あっ…ま、待って!」
その声に歩いていたウィドは足を止めるが、振り返る事はせずに冷たく質問を返した。
「何ですか?」
「お願い、もう少しだけ…ううん、あと一つだけでいいの。こいつの記憶を覗かせて欲しいんだけど…」
「そんな事して何の意味があるんです? 時間の無駄だ」
「俺からも頼む。あと一つだけ、記憶を覗かせてくれ」
リクも説得に参加し、どうにかウィドを引き止めようとする。
二人の説得に、ウィドはその場で静止しつつ不満げに問いかけた。
「…理由は何ですか?」
「…昔、いなくなった知り合いがいるの。そいつの手がかり、ルキルの記憶にあったから…」
「そんなくだらない事で…!」
オパールの話した理由に苛立ちを覚えたのか、表情を歪めながら振り返る。
「くだらなくはない。ウィド、あんただってスピカさんの手がかりが見つかったから俺達に協力してくれたんだろ? だったらオパールの気持ちくらい――」
すぐにリクが話に割り込み、ウィドに言い聞かせる。
しかし、話している途中で急に風が吹き、リクは反射的にキーブレードを取り出す。
直後、銀色の斬撃が前方に構えたキーブレードに叩きつけられた。
「ッ!?」
「リク!?」
突然リクに向かって攻撃してきたウィドに、オパールが悲鳴を上げる。
それぞれの刀身をぶつけた状態で、すぐ目と鼻差の先でこちらに突き刺さるように睨みつけるウィド。だが、リクは憶する事無く彼に睨み返す。
互いに動かないまま睨みあって数秒か、数分か。やがて根気負けしたのか、ウィドが先に剣を引いた。
「――覗くのは、一つだけだ。それ以上は認めない」
「あ、あぁ…」
どうにか返事を返すが、ウィドは抜いた剣を鞘に収め一人その場を去って行く。
それと入れ替わる様に、オパールが焦った様子でリクに近づいた。
「リク、大丈夫!? 怪我は!? 痛みは!?」
「平気だ。それより、どうにか許可が取れたな」
「そう、かな…?」
あのウィドの態度を見る限り、完全に許したとは言い難く何処となく不安が過る。
そんなオパールに、成り行きを見ていたシーノが話しかけた。
「気にする事はないよ。ウィド、少しだけ心が揺らいでるから戸惑ってるんだ」
「「え…?」」
そう言いながら微笑むと、二人は驚きを露わにする。
シーノは笑いながら通路の奥へと去るウィドの背を見ると、静かに胸に手を当てる。
「それは彼の中に渦巻く闇の感情が、少しだけ和らいでいる証拠でもある。君達の行動は全部が全部、無駄じゃない」
「シーノ…」
このシーノの励ましに、オパールの肩の荷が少しだけ下りる。
彼女の心境が伝わったのか、シーノはクスリと笑うとウィドが去った方向に指を差した。
「とにかく、見終わったらこの通路の奥に来て。そこでウィドと待ってるから」
そう言って場所を教えると、シーノもウィドを追いかけてその場から去って行く。
再び二人きりとなった空間で、徐にリクが話しかけた。
「さて…どうする、オパール?」
「どうするも何も…行って終わらせるしかないでしょ?」
腰に両手を当て、心に残った未練を捨てるように言い放つオパール。
そして二人は、最後となるだろう記憶の歪みを探し始めた。
■作者メッセージ
【パーティチャット】(カイリ編・2)
カイリ「それとね、もう一つやってみたい事を思いついたんだけど協力してくれない?」
ヴァイ「やってみたい事?」
カイリ「えーとね。リクとオパールが寝てる間に、二人を同じベットに移して、抱き合ってる写真でも撮ろうかなって!」(黒笑)
紗那「あらあら、それは面白そうねぇ…」(黒笑)
菜月「差し詰め俺達は恋のキューピットって感じですかねぇ?」(黒笑)
ヴァイ「じゃあ、あたしカメラ取りに行ってくるねー」(部屋を出ていく)
神月「さて。その間に俺達はセッティングしますか…」(怪しい笑み)
かくして、彼らはカイリを筆頭に恋のキューピット作戦を開始した…。
神月「えーと、これをこうして…」
菜月「オパール抱えた方が早くないか?」
紗那「腕は…こんな感じかしら」
カイリ「あー、それよりもうちょっと前に…」
―――数分後
ヴァイ「おまたせー! カメラ持ってきたよ――…って、どうしたの?」
一つのベットを囲んで固まる四人に、ヴァイが覗き込むと――…そこには、ベットで抱き合って眠っているアンセム姿のリクとオパールの姿があった。
神月「…どうしてこうなった?」
カイリ「リクが犯罪者に見える…」
菜月「こんなオッサンの姿じゃ無理があるって何で気が付かなかったんだ…」
紗那「こんなの写真に撮って残したら、私達タダじゃ済まないわね…」
カイリ「それとね、もう一つやってみたい事を思いついたんだけど協力してくれない?」
ヴァイ「やってみたい事?」
カイリ「えーとね。リクとオパールが寝てる間に、二人を同じベットに移して、抱き合ってる写真でも撮ろうかなって!」(黒笑)
紗那「あらあら、それは面白そうねぇ…」(黒笑)
菜月「差し詰め俺達は恋のキューピットって感じですかねぇ?」(黒笑)
ヴァイ「じゃあ、あたしカメラ取りに行ってくるねー」(部屋を出ていく)
神月「さて。その間に俺達はセッティングしますか…」(怪しい笑み)
かくして、彼らはカイリを筆頭に恋のキューピット作戦を開始した…。
神月「えーと、これをこうして…」
菜月「オパール抱えた方が早くないか?」
紗那「腕は…こんな感じかしら」
カイリ「あー、それよりもうちょっと前に…」
―――数分後
ヴァイ「おまたせー! カメラ持ってきたよ――…って、どうしたの?」
一つのベットを囲んで固まる四人に、ヴァイが覗き込むと――…そこには、ベットで抱き合って眠っているアンセム姿のリクとオパールの姿があった。
神月「…どうしてこうなった?」
カイリ「リクが犯罪者に見える…」
菜月「こんなオッサンの姿じゃ無理があるって何で気が付かなかったんだ…」
紗那「こんなの写真に撮って残したら、私達タダじゃ済まないわね…」