CROSS CAPTURE101 「黒翼」
「ぜぇ、ぜぇ…! 全然、駄目だ…!」
戦火の上がる城下町で、息切れをしながらソラは立ち止まっていた。
少し距離を離した場所で、エンは今も余裕を持ってソラと対峙している。元々10人以上相手をしても引けを取らなかった相手だ。たった一人で挑むのは無謀だった。
「考えなきゃ…! えーと、こういう場合は相手の行動を予測するのがいいんだよな…?」
何が何でも隙を見つけてアガレス達を捕えている力の源を奪い取らなければ。ソラはとにかくエンの行動を注意深く見る。
すると、ある事に気づく。
(あれ? あのお城にある塔を気にしてる? なんでだろ……あ、そうだっ!)
ここでソラの頭に電球が光るように現れる。ここにカイリやリクなどの幼馴染コンビがいたら「何か悪だくみしてる」と発言するだろう。
事実、ソラは子供が悪戯をするような笑みを浮かべるなり、エンの視線が塔に向いている隙に軽く跳躍する。
「ストライクレイドォ!!!」
「ッ!」
わざと大声で技名を言うと、塔を気にしていたエンが素早く反応してダブルセイバーを前に構える。
すると、ソラはしてやったりとばかりに笑った。
「じゃなくて、新技のメテオレイン!!」
「しまっ…!?」
横からではなく頭上から降り注ぐ隕石に、エンの反応が一歩遅れてしまう。
隕石の爆発に飲み込まれ、エンの手から宝玉が離れる。宝玉は攻撃を受けないようにしていて、そのまま壊れる事無く遠くの瓦礫の近くに転がった。
「へっへーん! 余所見してるのがいけないんだぞー!」
卑怯な手を使って上手く反撃を与えられ、ソラは土埃の前で踏ん反り返る。
それから宝玉へと急いで走るソラ。だがその前に、行く手を塞ぐようにダブルセイバーが垂直に突き刺さった。
「へ?」
「…確かに非があったのは認めましょう」
僅かに振るわせた声に、ソラの背筋から冷汗が流れ落ちる。
ゆっくりと振り返ると、土埃の中からエンが睨んでいた。流石に傷は浅いが、それ以上に彼から只ならぬ気配が漂う。
「も…もしかして、怒ってる?」
「怒ってなどいないっ!! ブラスタースペル!!」
怒鳴りながら、エンは前に苦しめた魔法をソラに発動させた。
「うわあああああん!!! 卑怯な事してごめんなさーい!!!」
次々と襲う炎や氷の激しい攻撃に、ソラは謝りながらリフレガで対処する。
しかし、最初から許す気はないようでまだ雷と風の攻撃が襲い掛かる。
(どうしよう、もう耐え切れないかも…!!)
リフレガの効果が切れかけるのを感じて、ソラが覚悟を決めて残りの光と闇の攻撃を喰らおうと決意した時だった。
「――そのままじっとして!」
数日ぶりに聞いた女性の声に、ソラはハッと顔を上げる。
すると、ソラの元に光の球体が飛んできて、消えかけていた光の障壁が再度構築された。
「アルテマキャノン!」
「サイクロン!」
「ゴーストドライブ!」
巨大な光の球体が、竜巻の斬撃が、円状に突き刺さる刃が自分達を巻き込むように繰り出される。
そうして魔法を掻き消すと、ソラの前にキーブレードを持った三人が降り立った。
「ヴェン、テラ、アクア!!」
思わぬ仲間の登場に、ソラの顔が綻ぶ。
それは三人も一緒でソラとの再会にそれぞれ笑顔を浮かべるが、今は強敵との戦闘中もある為すぐにエンに向き直った。
「他の人から連絡を受けてきたの! 事情は囚われたアガレス達を見つけたローレライ達から全部聞いたわ!」
「エン、彼らを封じた宝玉を返して貰うぞ!」
こうして参戦してくれたアクアとテラがキーブレードを構え、エンと対峙する。
「あ、それならあっちに落ちてる!」
「「「え?」」」
てっきりエンが持っているとばかり思っていた為、ソラが指差した方向に三人は間抜な声を出してしまう。
「取れるものなら取って見なさい! エアロガ!」
「「「うわぁ/きゃあ!?」」」
即座に宝玉を巻き込む様に四人に暴風と化した魔法をぶつける。
威力は凄まじいが、それでもソラは堪える様に留まるとキーブレード持ち上げる。
「取る必要なんてない…! キーブレードで――」
「その隙を与える程寛容ではない!!」
「ならば、そちらも隙を与えなければいいのだろう?」
直後、エンの足に炎の鎖が絡まって引っ張られる。
流石のエンもこれにはバランスを崩して地面に倒れる。鎖の先を見ると、城で戦っている筈の無轟が新しい凛那と炎の鎖を握っていた。
「無轟さん!」
「覚えのある気配がしたから辿ってみたんだ。こんな所で出会えるとは思っていなかったぞ、エン」
「ソラっ!」
「いっけえ!」
暴風が収まり宝玉が宙を浮く。ヴェンが叫ぶと、ソラはキーブレードを掲げて光線を出す。
そのまま宝玉に当たると、カチリと小さく閉まる音が鳴る。それを聞くと、すぐにヴェンがキーブレードを投げて宝玉を粉々に砕いた。
「やったぁ!」
無事に封印してハートレス増援の阻止も達成し、ソラはガッツポーズを作る。
この光景にヴェン達三人も笑顔を浮かべる。一方エンは相手が勝ったと言うのに、どこか満足気に笑っていた。
『エン、陽動はいいわ。戻ってきなさい』
その時、思念用の紙がエンの懐から滑り落ちる様に現れて彼の前に浮かぶ。
カルマの声にその場にいる全員が警戒する中、エンは落ち着いた様子で問いかける。
「おや、どうなりました?」
『上出来よ――もう一人の貴方が、とんでもない事をしでかしてくれたおかげでね』
「とんでもない事?」
『ええ。見てみる?』
そう言うと、カルマはエンの前に一つの映像を浮かべた。
それは他の人にも見える様になっている為、この場にいる全員がカルマの見せる映像を見る事となる。
「なっ――!!?」
「クウ…!?」
すると、あまりの光景にエンとソラの口から驚愕の声が漏れる。
どこかの屋外、吹き荒れる風の中で、クウの身体が赤黒い銃剣に貫かれており。
その傍で、仮面を付けたスピカもクウに抱きしめられた状態で銀の銃剣に胸を貫かれていた。
時間は、少しだけ遡る―――
「スピカ…俺の声、聞こえるか?」
心の世界から戻ったクウは、あれから鍔迫り合いとなったまま目の前のスピカに話しかける。
「うあっ…うああああああああっ!!!」
「聞こえなくてもいい…言わせてくれ」
暴走によって意識がなく、ただただ叫ぶスピカにクウは一拍置くと息を吸い込んだ。
「――負けるなぁ、スピカァ!!!」
「っ!?」
「いくら洗脳が強力でも、暴走しようと、俺の知ってるお前はそんな物に負けない心を持ってるだろぉ!!!」
まるで喝を入れる様にスピカに叫ぶと、クウは片手でキーブレードを持った状態で胸に手を当てる。
「俺は何度でもお前を呼ぶ……だから、お前も俺を呼べっ!! 俺はあの日全てを裏切ったが、あの『称号』は捨てていないっ!!!」
スピカを、皆を守る為に戦う。そんな決意を表す、『組織』で貰った呼び名がある。
「呼べよ、俺を…――俺の名前をっ!! 叫んでみろよぉ、スピカァァァ!!!」
力の限り、心の思いをスピカにぶつけるクウ。
純粋な彼の思いは、彼女の胸に一つの光を生む。
「…す…けて…」
か細い声が、仮面の奥から漏れる。
同時に、胸に灯る光が輝き始めた。
「たす、けて…――助けてぇ!!! クウゥゥゥーーーーーーっ!!!!!」
正気を取り戻した彼女の叫びが、響き渡る。
そしてスピカの胸の輝きの中から、銀色と黒の剣の柄が現れる。
「あれは心剣!? そんな馬鹿な!?」
「反剣を引き抜いたのに、どうして…!?」
「んなもん…!!」
信じられないとばかりに目を見開くゼツと王羅の言葉に答える事無く、クウはスピカの胸から現れた剣を掴む。
「今はどうだっていいだろぉ!!!」
言い切るなり、クウは空いた手で剣を引き抜く。
持ち手にカバーが付き、中央が黒の銀色に輝くガンブレード。混沌のような反剣と違い、聖なる力を思わせる武器だ。
クウは一旦距離を取るようにバックステップすると、心剣をまじまじと見つめた。
「オーバーチュア――お前らしい力だ」
この剣は本来持つスピカの心、そしてスピカを思う自分の心が合わさって生まれたモノ。
クウは持っていたキーブレードを消すと、心剣を振るいスピカへと宣言する。
自身に与えられた称号を、やるべき使命を。
「光を守る闇―――【黒翼】として、必ずあなたを助け出す」
スピカからの返事はない。代わりに至近距離で近づき剣が振るわれる。
だが、クウはそれを心剣受け流すと呆然としていたウィドに声を掛ける。
「行くぞ、ウィド…てめえの姉、助け出すんだろぉ!!!」
「愚問…だぁぁぁ!!!」
ウィドも駆け出し、スピカに剣を振るう。
スピカが先程取り戻した正気は、既に消えている。当然だ、心剣を生み出す為に無理やり正気に戻したようなものだから。
再び炎の魔法が二人に襲い掛かる。が、ロケットを持つウィドも、クウも大したダメージが与えられていない。それどころか、傷が塞がり出している。
(防御だけでなく、回復もしてくれるのか!! これなら…!!)
心剣の力に守られ、クウはスピカに連撃を叩きこむ。
一度スピカを仰け反らせると、そのまま吹き飛ばす。それからレイアとウィドに声を掛ける。
「二人とも! 息、合わせられるか!?」
「もちろんです!」
「やるしかないのでしょう!?」
レイアもウィドも、クウへと頷く。どうやら、思いは一緒のようだ。
三人ならば、きっと。
「うあああああああああああああああっ!!!!!」
暴走するスピカに、構わずクウとウィドは攻撃する。レイアも回復を中心に二人にかけるが、隙あらば光の魔法で追撃する。
とは言え、スピカは尚も攻撃と防御を的確に行っている。状況としては平行線だ。しかし、クウは何処か自信のある顔をしている。
「クウ、何か策が見つかったんですか!?」
「ああ! ただ、成功する保証が0だから今の今まで除外していたけどなぁ!!」
「どんな方法ですか!?」
半ばツッコミのようにウィドが叫ぶと、クウは握っている柄を見せつける。
よく見ると、握っている部分に見た事もない文字がかかれた一枚の紙を挟んでいる。
「それは?」
「リフレガ!!」
レイアの魔法が発動すると同時に、スピカの見えない剣技が二人に襲い掛かる。
「あと15秒、このまま時間稼ぎ出来れば俺がどうにかする」
「いいでしょう。あなたを信じます」
魔法の障壁が解かれると同時に、ウィドはスピカの背後に移動する。
スピカもまた気づいて斬撃を防御するが、そこでレイアがサンダガで追撃をかける。
二人とも、クウの策を信じてくれている。クウは紙を剣に押し付ける様に握り締め――密かに“発動している力”に集中する。
残り5秒になった瞬間、クウが大声でレイアに指示を出した。
「レイアっ!! 後で有りっ丈の回復魔法、俺にかけろっ!!!」
「えっ!?」
急な指示に一瞬動きを止めるレイア。だが、クウは気にすることなく剣を後ろに構える。
(型は一緒なんだ。きっと、使える――)
そう心の中で呟き、自分が使う技とスピカ達が使う技のモーションを思い浮かべて剣を振るう。
「空衝撃――牙煉!!」
二人が使うのと同じように、巨大な衝撃波を対峙していたウィドとスピカに飛ばす。
ウィドは一早く離れ、直撃を間逃れる。一方、スピカは迫る衝撃波に反剣を居合抜きで構え――消えた。
直後、衝撃波を切り裂きながらクウの目の前に現れ、勢いを殺さぬまま赤黒い刃で彼の腹部から身体を貫いた。
「が、はっ…!?」
「クウさんっ!?」
「クウっ!?」
剣で貫かれた事により、クウの口から洩れる血に咳き込む。
レイアとウィドだけではない。神月達もまたクウの痛々しい姿に血の気が引いていく。
彼らとは逆に敵を倒したスピカは、貫いた剣を引き抜こうと力を込めた。
瞬間、彼女の手首が掴まれた。
「っ!?」
「…待ってた、ぜ…――この、瞬間を…なぁ…!」
途切れ途切れながらも、手首を掴んだクウが血を垂らしながらニヤリと笑う。そのままスピカを掴みながら、傷が深まる事も厭わずに更に剣を自身の身体に食い込ませる。
至近距離の状態でスピカの動きを封じる事。これこそが、クウの真の狙いだった。
「目、覚ませよ……スピカァァァーーーーーーーーっ!!!!!」
痛みを堪えながら心剣を握り、思いっきり突き上げる。
動けなくなった彼女の胸に、成すすべもなく銀色の心の刃が貫いた。
■作者メッセージ
PS4持っている従兄弟がKH2.8を買って遊びに来たので、丁度いいとばかりに0.2編のプレイを最初から最後まで隣で見せて貰いました。
画質が凄く、私と同じく長年KHをプレイしている従兄弟も「操作がいつものKHとは違う」と良い意味で絶賛。「KH3がこれなら発売が楽しみ」と言う言葉通りストーリーだけでなく(その際従兄弟はスターウォーズがどうのとか言っていたが、私は全力で聞かないフリをした)、戦闘操作も改変してあり隣で見ている私も画質や戦闘の良さで数時間と言う長さでしたが十分に楽しめました。ストーリーはネタバレになるので多くは語りません。でもかなりのネタ収穫が出来た(オイ)
システムで注目したのは、ミッションクリアでFF13LRのようにアクアにコスチュームとかアクセとか付く事ですね。KH3もそうなるとソラにアクセサリ、ネコミミとか…今後のKHもネタ要素に走る事だろうなぁ、テイルズのように。
…個人的には3Dのようにリク操作して、KHUXのようにあのイケメン顔に鼻眼鏡とか王様ミミなんかのネタ要素を付けさせ面白可笑しうわぁ何をするやめギャアアァ!!?
リク「――こんな作品だが、次回を待っていてくれ♪」(顔と拳に血がついている)
ソラ&カイリ「「拳で始末したーーーー!!?」」
オパール「鼻眼鏡…!」(キラキラ…!)
リリィ「王様ミミ…!」(キラキラ…!)
リク「エ、チョ、マテマテマテ…!! 二人とも期待するような目で見ないでそれはどこかに置いて落ち着いて話を――ギャアアアアアアアアア!!!??」
ソラ&カイリ「「リクーーーーー!!!??」」
こうしてKH2.8の一部を色々楽しむ事が出来ました。が、アクア編クリア後にFF15のディスクに交換するのですが、未プレイの私の前で何もかもストーリーすっ飛ばしてラスボス戦やろうとするな…。
ソラ「何か凄い哀愁が…」
未プレイによるネタバレ関連に関しては去年散々な目に遭ってきた…。友達の家に遊びに行ったらTOBのラスボス基エンディングに遭遇。P5も所々しか見てないのにいつの間にかラストダンジョン手前でそのままラスボスからエンディングまで見た私のやるせなさな気持ちが分かるか…アハハハハ…。
ソラ&カイリ「「うわぁ…」」
画質が凄く、私と同じく長年KHをプレイしている従兄弟も「操作がいつものKHとは違う」と良い意味で絶賛。「KH3がこれなら発売が楽しみ」と言う言葉通りストーリーだけでなく(その際従兄弟はスターウォーズがどうのとか言っていたが、私は全力で聞かないフリをした)、戦闘操作も改変してあり隣で見ている私も画質や戦闘の良さで数時間と言う長さでしたが十分に楽しめました。ストーリーはネタバレになるので多くは語りません。でもかなりのネタ収穫が出来た(オイ)
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…個人的には3Dのようにリク操作して、KHUXのようにあのイケメン顔に鼻眼鏡とか王様ミミなんかのネタ要素を付けさせ面白可笑しうわぁ何をするやめギャアアァ!!?
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ソラ&カイリ「「拳で始末したーーーー!!?」」
オパール「鼻眼鏡…!」(キラキラ…!)
リリィ「王様ミミ…!」(キラキラ…!)
リク「エ、チョ、マテマテマテ…!! 二人とも期待するような目で見ないでそれはどこかに置いて落ち着いて話を――ギャアアアアアアアアア!!!??」
ソラ&カイリ「「リクーーーーー!!!??」」
こうしてKH2.8の一部を色々楽しむ事が出来ました。が、アクア編クリア後にFF15のディスクに交換するのですが、未プレイの私の前で何もかもストーリーすっ飛ばしてラスボス戦やろうとするな…。
ソラ「何か凄い哀愁が…」
未プレイによるネタバレ関連に関しては去年散々な目に遭ってきた…。友達の家に遊びに行ったらTOBのラスボス基エンディングに遭遇。P5も所々しか見てないのにいつの間にかラストダンジョン手前でそのままラスボスからエンディングまで見た私のやるせなさな気持ちが分かるか…アハハハハ…。
ソラ&カイリ「「うわぁ…」」