CROSS CAPTURE102 「光の絆」
スピカが心剣に貫かれた姿に、この場にいる全員が釘付けになる。
助けられなかった。そんな絶望の中、胸を貫かれたままスピカの仮面に一筋の罅が入る。
そして、罅は徐々に広がっていく。
「あ、ああっ…ああああああああああああああああああっ!!!??」
やがてスピカから悲鳴が上がり、罅割れた仮面が壊れる。
同時に二人に刺さっていた心剣と反剣も消滅する。クウは腹部の激痛を押し殺しスピカを抱えながらその場に座り込んだ。
「げほっ、ごほっ…!?」
「クウさん!? なんて無茶を!?」
「こうでも、しねえと…刺せない……がはっ、げふっ!!」
口元を抑えながら、クウは咳き込みながら血を吐き出す。
急いでレイアが傷を塞ぐ為に惜しみなく回復魔法をかけていると、突然ウィドがクウの胸倉を掴んだ。
「貴様ぁ!! よくも姉さんをぉ!!」
「落ち着け…っての……外傷は、ねえよ…」
胸倉を掴まれ顔を歪めながらも、抱えていたスピカを見せる。
自分達の攻撃を受けてボロボロにはなっているが、クウに貫かれた剣の傷はどこにも見当たらなかった。虚ろな目でクウに寄りかかっているが、ちゃんと生きている。
「でも、確かに刺した筈なのに…?」
「何が、どうなっているんですか…?」
どうしてスピカが無事なのか分からず困惑する二人に、クウは一枚の紙を取り出す。
「これを、使ったんだよ…」
そう言いながら、何も書かれていない白紙の紙を見せつけて種明かしを始めた…。
―――時間は、防衛の会議の時まで遡る。
『そうだわ――あなた達には、事前にこちらを渡しておくわね』
人員配置について纏まった時に、ミュロスが本を取り出す。
複雑な文字の書かれた複数枚の紙を取り出し、テラ・アクア・クウの三人に手渡した。
『この紙は?』
『【Sin化】対策に作った、私の魔法の簡易版って所よ。こうすると分かるかもね』
そう言うと、ミュロスはカードを取り出して上へと放り投げて部屋を真っ暗にする。そして、円環で繋がった鎖を見せつける。
そのままビフロンスの作戦でも話した内容を三人に教えると、Sin化対策の処置を施した。
『これでいいのか…で、俺達は【Sin化】対策を施した訳だが、残りの人も集めた方がいいか?』
『いいえ。そんな時間はないから、他の仲間はあなた達に任せるわ。私が渡した紙をその人に少しの時間――目安は文字が全て消えるまで翳せば処置は終わるわ。カードならすぐ終わるんだけど、流石に全員分用意する時間が取れなくて簡単な分手間がかかる方式になってしまったわ』
そうしてミュロスがやり方を教える中、話を聞いていたクウはじっと渡された紙を見つめていた。
『…こんな便利な力があるんなら、戦わなくても【Sin化】したスピカを助けられそうなんだが』
『残念ながら、そうはいかないわね。私の作った対策は効果を受けないようにするだけだから、解除するのとは全然違うわ』
『そうか…俺の融合の力使っても無理か?』
『正直無理じゃないかしら? 既にインフルエンザにかかった状態で薬ではなくワクチンを打っても治る訳じゃないでしょ? まあ、原理が原理だから私の魔法を本人の心に打ち込めばあるいはだけど…【Sin化】している状態ではきっと届かないわ』
『どっちみち、こいつはスピカに使えないって事か…』
残念そうに呟き、クウはテラとアクアとミュロスから貰った紙を分け合う事にした。
「――だから、ミュロスが施した【Sin化】対策の魔法を…スピカの心剣、だっけ? に『融合』させて、突き刺してみたんだ…心剣が心なら、直接打ち込めると思ってさ…」
この種明かしはウィドとレイアだけでなく、戦いが終わり駆けつけた王羅達も聞いていた。
「まさかこんな方法取るとは…心の剣とは言え、一歩間違っていたら大怪我以上の傷を負ってましたよ」
彼が使った方法に、会議に参加していた王羅も予想の斜め上を行き苦笑を漏らすしかない。
とは言え、スピカを助けられたのも事実だ。しかもミュロスの魔法も施したからもうパラドックスの支配も受けないだろう。
「――安心するな」
「まだ、終わってないっ!!!」
安心した雰囲気を切り裂くかのように、ゼツと神月が上空を睨みつける。
他の人も視線を追うと、ある人物が飛んでいた。
「――エン…!!」
久しぶりに見た宿敵の姿に、クウは無意識にスピカを強く抱きしめる。
一方、エンは抱えるスピカを盗み見て少しだけ安堵したように息を吐く。当然、距離が離れているクウ達には聞こえないが。
しかし、すぐにエンは白い双翼で浮かびながらクウへと厳しい視線を送った。
「本当にスピカを助けるとはな……何て奴だ」
「助けて、何か問題あるのかよ…!?」
「忘れたか? 前の俺は今のお前だ」
まるで言い聞かせるように、エンはクウへと語る。
「例え友を作り、助けても意味がない。何時か必ず貴様自身の手が、身に宿る闇が、彼らを消す…お前はそう言う運命を担っている。別れるなら今だぞ?」
「――ざけんなっ!!!」
前ならば心を揺さぶられたエンの言葉を、クウは真っ向から否定した。
「それが俺の握る宿命だろうが、運命だろうが構わない!! 例え何があっても…――俺はあんたみたいにならないっ!!!」
一つの未来の生き証人を目の当たりにしても、もう揺さぶられる事はない。
自らの信念を取り戻したのだから。
「俺は俺の道を行く……ただ、それだけだっ!!!」
「そうか」
静かに、エンは呟く。
だが、その目は冷え切っている。
「だったら、確かめてやろう…その運命を背負っても尚、本当に助けられるかどうかをなぁ!!!」
激昂と共に、ダブルセイバーを取り出す。
他の人が仕掛けるよりも早く、エンは闇を纏ったその刃を振り降ろした。
「ブラッドクロス!!!」
怒りが反映されてるのか、ひと際多い衝撃波を繰り出す。
これには防御よりも避けた方が賢明と、全員は出入り口へと退避する。
だが、衝撃波がクウ達のいた場所にぶつかると更に崩壊を起こし足場が崩れた。
「レイアァ!!」
「きゃあ!」
突然クウはスピカを抱えていた片手を放し、遅れていたレイアを勢いよく引っ張る。そのまま神月達の所へ投げるように渡す。
ゼツとシェルリアがとっさにレイアを受け止める。だが、足を止めたクウはスピカと共に崩れた足場へと巻き込まれた。
「クウ、さん…まさか、私を庇って…!」
「誰か!! 手の空いてる人は至急塔の下まで来てください!!」
その場で座り込むレイア。王羅は連絡用の栞を取り出して救援を要請する。
「これで良かったんですよ。奴は壊すだけの存在、私達にとっても、お前達にとっても――」
言い聞かせるように紡いでいたエンの言葉が止まった。
「…はぁ、はぁ…!」
全員のいる塔の出入り口。その下層の方で、まるでしがみ付くようにクウが崩れた塔の壁を掴んで宙にぶら下がっていた。
今にも下界に落ちようとするスピカの手を繋いで。
「…うぅ…!」
「おい…どうした…!? 俺達を…始末するんじゃ、ねえのか…!!」
「ッ、クウさん!」
「姉さん!?」
レイアとウィドもようやくクウの存在に気づくが、崩落に巻き込まれた為に二人の距離は大分離れている。
高い高度によって強風に晒されながらも挑発するクウに、エンも声を荒げる。
「ボロボロのくせによくそんな強がりが言えるものだ!! 例え何もせずとも、そんな身体ではいずれスピカもお前もその手を手放すぞ!!」
「確かに、俺達は…あんたに負けた…!! でも、あんただって…俺達の繋がりを消せてないじゃねーか…!! お前がどんなに強くたって…俺達は何度だって立ち向かって見せる…!!」
「ダメージの受けすぎで気が触れたか――っ!」
「うるせぇ!!! 誰かが消えるとか、いなくなるとか…そう言うのが嫌なのはお前だけじゃねーんだよ!!! 俺が前のあんたなら、あんたは前の俺でもあるんだからなぁ!!!」
一喝して黙らせ、自分と同じ顔の眼差しを向けられる。
かつて持っていた、黒の瞳、覆せぬ信念を。
「確かに、あんたの闇には敵わねーよ…一度は何もかも投げ出して逃げようとしたくらいに――だけど、今の俺には光がある!!! 切っても切れない絆で結ばれた沢山の光が俺の周りになぁ!!!」
一人ではない。繋がる絆の強さは、エンも知っている。
知っているから、ここに――世界の敵として立っている。
「闇で負けるのなら…俺は、光でお前に勝って見せる!!! 失いたくない仲間、取り戻したい人…そいつらを思う俺の気持ち分かるだろ!? 世界の敵になってでも取り戻そうとするお前ならぁ!!!」
《分からない訳ないだろ、エン!?》
王羅の持っていた栞から、聞いた事のない少年の声が返ってきた。
「この声、まさか…!」
栞から聞こえた声にレイアは、驚きよりも嬉しさを見せる。
通信は王羅が繋げっぱなしだった為、塔での会話は全て聞こえていた。
城下町から城へ移動しているソラはアクアから受け取った栞を通して、エンへと語り掛ける。
「大切な人を全部奪われた悲しみや痛みは十分俺達に伝わった。けど、沢山の人を傷つけてでも取り戻すなんて間違ってる…だから、絶対に止めてみせる!!」
もう自分達のやるべき事に迷わない。
もう負の感情で目を曇らせない。
「俺の武器はキーブレードじゃない――繋がる心が、俺の力だっ!!!」
「あいつ…!」
栞越しに久しぶりに聞いたソラの声に、クウは自然と笑みを浮かべる。
エンはソラの言葉に黙ったまま、その場から消えた。
その代わりに沢山のノーバディが現れ、邪魔建てをするように無事だった六人に嗾けた。
「っ、どいて下さい!!」
「姉さんっ!!」
「駄目だ、二人とも! この状況で助けに行くなんて危険すぎる!!」
「ですが!!」
ノーバディ達の襲撃の中で、崩落した塔を降りようとするレイアとウィドはゼツに止められる。
幸いにもクウとスピカの所にはいかず自分達に襲い掛かるが、放っておけば二人とも遥か下の地面に落ちてしまう。
現に、命綱とも言えるクウは顔が徐々に苦痛で歪み始めている。
「ぐっ、あぁ…!!」
「ク、ウ…」
「心配すんな、スピカ…すぐに、助けるから…!!」
「放して、クウ…あなたまで、落ちちゃう…」
「バカ、か…放せる訳、ねぇだろ…!!」
わざと放そうとするスピカの緩んだ手を、より強く掴む。
「だから…俺の手、しっかり握ろ…!! 絶対、この手は放さないから…!!」
どうあがいても手を放そうとしないクウに、スピカは顔を俯かせる。
クウは知ってるかどうか分からないが、反剣の力によって胴体を貫かれてからシェルリアの加護の魔法は消えている。嫌でも冷気が突き刺さり、残っていた体力を削られて治りかけの傷も痛み出している筈だ。
しかも、翼は飛ぶ事が出来るが、高度の高い状態で出してもコントロールなんて出来ず極度の空気抵抗と重力加速度によって煽られるだけ。それを分かっているからこそ、彼は戦いでは翼は飛ぶ関連で使わなかった。
助けが来るまで必死で耐えようとするクウに、スピカはポツリと呟いた。
「クウ…私、会えて良かった…!」
本音を零しながら、スピカは空いた右手で懐に手を入れる。
「子供だったあなたが、大人になってて…嬉しかった……でも、そう言うバカな所変わってないのに…嬉しいって、自分もいるの…」
「スピカ…――ッ!?」
急に語りだすスピカにクウは下に目線を落とし、表情を固まらせる。
スピカは笑顔を浮かべて――小さなナイフを握り締める形で持ち上げていた。
「あの子を…ウィドをお願いね…――さよなら」
そして、自分の手を握り締めるクウの手の甲にナイフを深く突き刺した。
助けられなかった。そんな絶望の中、胸を貫かれたままスピカの仮面に一筋の罅が入る。
そして、罅は徐々に広がっていく。
「あ、ああっ…ああああああああああああああああああっ!!!??」
やがてスピカから悲鳴が上がり、罅割れた仮面が壊れる。
同時に二人に刺さっていた心剣と反剣も消滅する。クウは腹部の激痛を押し殺しスピカを抱えながらその場に座り込んだ。
「げほっ、ごほっ…!?」
「クウさん!? なんて無茶を!?」
「こうでも、しねえと…刺せない……がはっ、げふっ!!」
口元を抑えながら、クウは咳き込みながら血を吐き出す。
急いでレイアが傷を塞ぐ為に惜しみなく回復魔法をかけていると、突然ウィドがクウの胸倉を掴んだ。
「貴様ぁ!! よくも姉さんをぉ!!」
「落ち着け…っての……外傷は、ねえよ…」
胸倉を掴まれ顔を歪めながらも、抱えていたスピカを見せる。
自分達の攻撃を受けてボロボロにはなっているが、クウに貫かれた剣の傷はどこにも見当たらなかった。虚ろな目でクウに寄りかかっているが、ちゃんと生きている。
「でも、確かに刺した筈なのに…?」
「何が、どうなっているんですか…?」
どうしてスピカが無事なのか分からず困惑する二人に、クウは一枚の紙を取り出す。
「これを、使ったんだよ…」
そう言いながら、何も書かれていない白紙の紙を見せつけて種明かしを始めた…。
―――時間は、防衛の会議の時まで遡る。
『そうだわ――あなた達には、事前にこちらを渡しておくわね』
人員配置について纏まった時に、ミュロスが本を取り出す。
複雑な文字の書かれた複数枚の紙を取り出し、テラ・アクア・クウの三人に手渡した。
『この紙は?』
『【Sin化】対策に作った、私の魔法の簡易版って所よ。こうすると分かるかもね』
そう言うと、ミュロスはカードを取り出して上へと放り投げて部屋を真っ暗にする。そして、円環で繋がった鎖を見せつける。
そのままビフロンスの作戦でも話した内容を三人に教えると、Sin化対策の処置を施した。
『これでいいのか…で、俺達は【Sin化】対策を施した訳だが、残りの人も集めた方がいいか?』
『いいえ。そんな時間はないから、他の仲間はあなた達に任せるわ。私が渡した紙をその人に少しの時間――目安は文字が全て消えるまで翳せば処置は終わるわ。カードならすぐ終わるんだけど、流石に全員分用意する時間が取れなくて簡単な分手間がかかる方式になってしまったわ』
そうしてミュロスがやり方を教える中、話を聞いていたクウはじっと渡された紙を見つめていた。
『…こんな便利な力があるんなら、戦わなくても【Sin化】したスピカを助けられそうなんだが』
『残念ながら、そうはいかないわね。私の作った対策は効果を受けないようにするだけだから、解除するのとは全然違うわ』
『そうか…俺の融合の力使っても無理か?』
『正直無理じゃないかしら? 既にインフルエンザにかかった状態で薬ではなくワクチンを打っても治る訳じゃないでしょ? まあ、原理が原理だから私の魔法を本人の心に打ち込めばあるいはだけど…【Sin化】している状態ではきっと届かないわ』
『どっちみち、こいつはスピカに使えないって事か…』
残念そうに呟き、クウはテラとアクアとミュロスから貰った紙を分け合う事にした。
「――だから、ミュロスが施した【Sin化】対策の魔法を…スピカの心剣、だっけ? に『融合』させて、突き刺してみたんだ…心剣が心なら、直接打ち込めると思ってさ…」
この種明かしはウィドとレイアだけでなく、戦いが終わり駆けつけた王羅達も聞いていた。
「まさかこんな方法取るとは…心の剣とは言え、一歩間違っていたら大怪我以上の傷を負ってましたよ」
彼が使った方法に、会議に参加していた王羅も予想の斜め上を行き苦笑を漏らすしかない。
とは言え、スピカを助けられたのも事実だ。しかもミュロスの魔法も施したからもうパラドックスの支配も受けないだろう。
「――安心するな」
「まだ、終わってないっ!!!」
安心した雰囲気を切り裂くかのように、ゼツと神月が上空を睨みつける。
他の人も視線を追うと、ある人物が飛んでいた。
「――エン…!!」
久しぶりに見た宿敵の姿に、クウは無意識にスピカを強く抱きしめる。
一方、エンは抱えるスピカを盗み見て少しだけ安堵したように息を吐く。当然、距離が離れているクウ達には聞こえないが。
しかし、すぐにエンは白い双翼で浮かびながらクウへと厳しい視線を送った。
「本当にスピカを助けるとはな……何て奴だ」
「助けて、何か問題あるのかよ…!?」
「忘れたか? 前の俺は今のお前だ」
まるで言い聞かせるように、エンはクウへと語る。
「例え友を作り、助けても意味がない。何時か必ず貴様自身の手が、身に宿る闇が、彼らを消す…お前はそう言う運命を担っている。別れるなら今だぞ?」
「――ざけんなっ!!!」
前ならば心を揺さぶられたエンの言葉を、クウは真っ向から否定した。
「それが俺の握る宿命だろうが、運命だろうが構わない!! 例え何があっても…――俺はあんたみたいにならないっ!!!」
一つの未来の生き証人を目の当たりにしても、もう揺さぶられる事はない。
自らの信念を取り戻したのだから。
「俺は俺の道を行く……ただ、それだけだっ!!!」
「そうか」
静かに、エンは呟く。
だが、その目は冷え切っている。
「だったら、確かめてやろう…その運命を背負っても尚、本当に助けられるかどうかをなぁ!!!」
激昂と共に、ダブルセイバーを取り出す。
他の人が仕掛けるよりも早く、エンは闇を纏ったその刃を振り降ろした。
「ブラッドクロス!!!」
怒りが反映されてるのか、ひと際多い衝撃波を繰り出す。
これには防御よりも避けた方が賢明と、全員は出入り口へと退避する。
だが、衝撃波がクウ達のいた場所にぶつかると更に崩壊を起こし足場が崩れた。
「レイアァ!!」
「きゃあ!」
突然クウはスピカを抱えていた片手を放し、遅れていたレイアを勢いよく引っ張る。そのまま神月達の所へ投げるように渡す。
ゼツとシェルリアがとっさにレイアを受け止める。だが、足を止めたクウはスピカと共に崩れた足場へと巻き込まれた。
「クウ、さん…まさか、私を庇って…!」
「誰か!! 手の空いてる人は至急塔の下まで来てください!!」
その場で座り込むレイア。王羅は連絡用の栞を取り出して救援を要請する。
「これで良かったんですよ。奴は壊すだけの存在、私達にとっても、お前達にとっても――」
言い聞かせるように紡いでいたエンの言葉が止まった。
「…はぁ、はぁ…!」
全員のいる塔の出入り口。その下層の方で、まるでしがみ付くようにクウが崩れた塔の壁を掴んで宙にぶら下がっていた。
今にも下界に落ちようとするスピカの手を繋いで。
「…うぅ…!」
「おい…どうした…!? 俺達を…始末するんじゃ、ねえのか…!!」
「ッ、クウさん!」
「姉さん!?」
レイアとウィドもようやくクウの存在に気づくが、崩落に巻き込まれた為に二人の距離は大分離れている。
高い高度によって強風に晒されながらも挑発するクウに、エンも声を荒げる。
「ボロボロのくせによくそんな強がりが言えるものだ!! 例え何もせずとも、そんな身体ではいずれスピカもお前もその手を手放すぞ!!」
「確かに、俺達は…あんたに負けた…!! でも、あんただって…俺達の繋がりを消せてないじゃねーか…!! お前がどんなに強くたって…俺達は何度だって立ち向かって見せる…!!」
「ダメージの受けすぎで気が触れたか――っ!」
「うるせぇ!!! 誰かが消えるとか、いなくなるとか…そう言うのが嫌なのはお前だけじゃねーんだよ!!! 俺が前のあんたなら、あんたは前の俺でもあるんだからなぁ!!!」
一喝して黙らせ、自分と同じ顔の眼差しを向けられる。
かつて持っていた、黒の瞳、覆せぬ信念を。
「確かに、あんたの闇には敵わねーよ…一度は何もかも投げ出して逃げようとしたくらいに――だけど、今の俺には光がある!!! 切っても切れない絆で結ばれた沢山の光が俺の周りになぁ!!!」
一人ではない。繋がる絆の強さは、エンも知っている。
知っているから、ここに――世界の敵として立っている。
「闇で負けるのなら…俺は、光でお前に勝って見せる!!! 失いたくない仲間、取り戻したい人…そいつらを思う俺の気持ち分かるだろ!? 世界の敵になってでも取り戻そうとするお前ならぁ!!!」
《分からない訳ないだろ、エン!?》
王羅の持っていた栞から、聞いた事のない少年の声が返ってきた。
「この声、まさか…!」
栞から聞こえた声にレイアは、驚きよりも嬉しさを見せる。
通信は王羅が繋げっぱなしだった為、塔での会話は全て聞こえていた。
城下町から城へ移動しているソラはアクアから受け取った栞を通して、エンへと語り掛ける。
「大切な人を全部奪われた悲しみや痛みは十分俺達に伝わった。けど、沢山の人を傷つけてでも取り戻すなんて間違ってる…だから、絶対に止めてみせる!!」
もう自分達のやるべき事に迷わない。
もう負の感情で目を曇らせない。
「俺の武器はキーブレードじゃない――繋がる心が、俺の力だっ!!!」
「あいつ…!」
栞越しに久しぶりに聞いたソラの声に、クウは自然と笑みを浮かべる。
エンはソラの言葉に黙ったまま、その場から消えた。
その代わりに沢山のノーバディが現れ、邪魔建てをするように無事だった六人に嗾けた。
「っ、どいて下さい!!」
「姉さんっ!!」
「駄目だ、二人とも! この状況で助けに行くなんて危険すぎる!!」
「ですが!!」
ノーバディ達の襲撃の中で、崩落した塔を降りようとするレイアとウィドはゼツに止められる。
幸いにもクウとスピカの所にはいかず自分達に襲い掛かるが、放っておけば二人とも遥か下の地面に落ちてしまう。
現に、命綱とも言えるクウは顔が徐々に苦痛で歪み始めている。
「ぐっ、あぁ…!!」
「ク、ウ…」
「心配すんな、スピカ…すぐに、助けるから…!!」
「放して、クウ…あなたまで、落ちちゃう…」
「バカ、か…放せる訳、ねぇだろ…!!」
わざと放そうとするスピカの緩んだ手を、より強く掴む。
「だから…俺の手、しっかり握ろ…!! 絶対、この手は放さないから…!!」
どうあがいても手を放そうとしないクウに、スピカは顔を俯かせる。
クウは知ってるかどうか分からないが、反剣の力によって胴体を貫かれてからシェルリアの加護の魔法は消えている。嫌でも冷気が突き刺さり、残っていた体力を削られて治りかけの傷も痛み出している筈だ。
しかも、翼は飛ぶ事が出来るが、高度の高い状態で出してもコントロールなんて出来ず極度の空気抵抗と重力加速度によって煽られるだけ。それを分かっているからこそ、彼は戦いでは翼は飛ぶ関連で使わなかった。
助けが来るまで必死で耐えようとするクウに、スピカはポツリと呟いた。
「クウ…私、会えて良かった…!」
本音を零しながら、スピカは空いた右手で懐に手を入れる。
「子供だったあなたが、大人になってて…嬉しかった……でも、そう言うバカな所変わってないのに…嬉しいって、自分もいるの…」
「スピカ…――ッ!?」
急に語りだすスピカにクウは下に目線を落とし、表情を固まらせる。
スピカは笑顔を浮かべて――小さなナイフを握り締める形で持ち上げていた。
「あの子を…ウィドをお願いね…――さよなら」
そして、自分の手を握り締めるクウの手の甲にナイフを深く突き刺した。
■作者メッセージ
ソラ「KHUXのレイドボス倒せないー!! 誰かー!!」(泣)
カイリ「こっちも今体力削ってるから文句言わない!!」(何度もスライドしてる)
ヴェン「よし、部位破壊成功! ソラ、カイリ、一気に仕掛けるよ!」
ソラ&カイリ「「うんっ!」」
テラ「KHUX熱中しているなー」
アクア「熱中するのはいいけど、やりすぎには気を付けるのよ? ところでリクは何をしているの?」
リク「俺は溜まっているメインストーリーを進めている。俺のメダル構成じゃ三人がボスを倒すより前に瞬殺するから」
アクア「リク、どれだけメダルを育て上げたの…?」
シオン「みんなー! 新作の情報持ってきたよー!」
ルキル「KH2.8でも登場した、マスター・オブ・マスターって奴の情報だ」
リク「マスター・オブ・マスター…。予知書を作った人物であり、5人のユニオンの予知者とゼアノートのキーブレードを持っている黒コートの師でもある人物なんだよな。一体どんな奴なんだ? 強いのか? 危険な敵なのか?」
シオン「詳しくはムービー見てないんだけど――なんか巷の噂では、銀○の坂〇〇時にそっくりなんだって!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ソラ「坂○○時って、確か…」
リク「万年金欠」
カイリ「家賃溜めてるニート」
ヴェン「ヘタレなスケベ」
テラ「若作りの40代」
アクア「お化けで怖がるほどのビビリ」
ルキル「まるでだめなおっさん、略してマダオ」
全員『『『……そんな奴が、キーブレードマスターの予知者を束ねた師匠……』』』(とても嫌そうな表情)
マスター・オブ・マスター「違うからな!! 俺は違うからなー!!」
クウ「ツッコミまでそっくりだぞ…」
ウィド「いやー、私達作者のどっかの誰かさんのオリキャラに似ていますねー」
クウ「おい誰がだ誰が?」
カイリ「こっちも今体力削ってるから文句言わない!!」(何度もスライドしてる)
ヴェン「よし、部位破壊成功! ソラ、カイリ、一気に仕掛けるよ!」
ソラ&カイリ「「うんっ!」」
テラ「KHUX熱中しているなー」
アクア「熱中するのはいいけど、やりすぎには気を付けるのよ? ところでリクは何をしているの?」
リク「俺は溜まっているメインストーリーを進めている。俺のメダル構成じゃ三人がボスを倒すより前に瞬殺するから」
アクア「リク、どれだけメダルを育て上げたの…?」
シオン「みんなー! 新作の情報持ってきたよー!」
ルキル「KH2.8でも登場した、マスター・オブ・マスターって奴の情報だ」
リク「マスター・オブ・マスター…。予知書を作った人物であり、5人のユニオンの予知者とゼアノートのキーブレードを持っている黒コートの師でもある人物なんだよな。一体どんな奴なんだ? 強いのか? 危険な敵なのか?」
シオン「詳しくはムービー見てないんだけど――なんか巷の噂では、銀○の坂〇〇時にそっくりなんだって!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ソラ「坂○○時って、確か…」
リク「万年金欠」
カイリ「家賃溜めてるニート」
ヴェン「ヘタレなスケベ」
テラ「若作りの40代」
アクア「お化けで怖がるほどのビビリ」
ルキル「まるでだめなおっさん、略してマダオ」
全員『『『……そんな奴が、キーブレードマスターの予知者を束ねた師匠……』』』(とても嫌そうな表情)
マスター・オブ・マスター「違うからな!! 俺は違うからなー!!」
クウ「ツッコミまでそっくりだぞ…」
ウィド「いやー、私達作者のどっかの誰かさんのオリキャラに似ていますねー」
クウ「おい誰がだ誰が?」