CROSS CAPTURE105 「敗北、そして…」
こうして、ビフロンスでの大規模な襲撃戦は幕を下ろした。
建物による被害は出たし、怪我人も出てしまったものの、この世界を守り切った。だが「勝利」した、とは言い難かった。
敵の目的は『シルビア』と『アウルム』を完全に融合して、もう一つのχブレードを完成させる事。それが成しえてしまったからだ。
洗脳したスピカとの戦いが終わってから敵は引いた。敵の動きや、保護したスピカからの証言を考えると原因は彼女達の戦いだと自ずと分かってしまう。が、今更どうこう言ってももう過ぎた事だ。
戦いが終わり、怪我の治療、施設の復興、現状の確認…休む事無く、バタバタと時間が過ぎて太陽が沈む。
そしてまた、夜が明ける―――
「――チッ、着にくいな…あー、めんどくせっ。これでいいか」
戦いから丸一日経ち、クウは用意された自室でボヤいていた。
何時もの黒いコートを着ているが、少しよれよれになっていて右の部分だけを着流ししている。露出した右腕は、指先から肩辺りまで黒に変色している。
左手でドアを開け、見慣れた通路を歩く。そのまま目的地である城門前に着くと、既にこちら側のメンバー全員が集まっていた。
「クウさん!」
「もう集まってたのか、早いな」
「クウが遅いのよ…まあ、仕方ない事だけど」
レイアに続くように、スピカも近づいて声を掛ける。自分と同じように――厳密には違うが――傷は完治しているようだ。
「スピカ、何でここにいんだよ? お前まだ療養しないといけないんじゃ…」
「決まってるでしょ、私も皆について行くから」
「はぁ!? ついて行くって――!!」
「確かにカルマの所為で反剣を抜いた挙句無茶し過ぎて弱体化したし、体力も回復しきってない。でも、一番酷い人がいるのに寝てるだけなんて嫌」
「けど…」
「それに、道案内役も仲介人も必要でしょ? その腕を元に戻す為には」
チラリと黒い右腕に目を向けられ、クウの反論が途切れてしまう。
そこに割り込むように、ウィドも不機嫌な顔で援護射撃する。
「姉さんの優しさを無下にしてみろ、叩き切ってやります」
「あーもー、やっぱお前ら姉弟だわ…」
頑なについて行こうとするスピカと、後ろから剣を構え脅すウィド。この二人にクウも諦めて溜息を吐くしかなかった。
「集まったわね」
話が一段落した頃合いを見計らうように、凛とした声が響く。
現れたイリアドゥス、ヴェリシャナ、ティオンの姿に、全員が真剣な顔付きになって向き直った。
「昨日の襲撃によって、こちら側だけでなくあなた側のχブレードまで完成してしまった。だけど、クウのおかげで僅かだが時間を稼ぐ事が出来ている。その間に、何としてでもクウの腕に付けられた闇を払いなさい。切り札がない以上、シルビアは救えない。破壊するしか出来ない。それは嫌なのしょう?」
確認するイリアの言い方に、全員が無言で頷く。
彼らの気持ちを真摯に受け止めると、ティオンが一枚の札を差し出した。
「これは、私とアルガで作り出した転送用の術を込めた札です。こちらの世界とあなた達の世界には時間のズレが生じていますので、それを逆手にとった術を施しました。こちらを使えば、そちらである程度日数を過ごしても決戦する時間にこちら側に戻る事が可能です。とは言え、有効期限があるので出来るだけ早く戻ってきてください」
「分かったわ。これは私が預かっておくわね」
説明が終わり、アクアが代表でティオンから札を受け取る。
全ての準備が終わり、イリアはスッと手を掲げる。
「では、戻りなさい――あなた達のセカイに。彼女の思いをもう一度蘇らせる為に」
掲げた先に、光の回廊が作られる。あの先にあるのは、本来自分達がいるべきセカイだ。
いざ踏み出そうとした所で、無轟と紫苑が自分達から離れて申し訳なさそうに頭を下げて来た。
「すまない…俺と紫苑は共にこちらに残る事にした」
「すみません、最後まで一緒に同行出来なくて」
『ちょっと、こっちでやる事が出来ちゃってね』
炎産霊神も一緒になって謝ると、あちらでずっと一緒に旅をしていたアクアとテラは首を横に振った。
「大丈夫。あなたにも事情があるのは分かってますから」
「この世界の息子さん達に、よろしく伝えてください」
「こっちに来た時に比べたら、ソラも戻ってるし新しい人も増えたし! 心配しないでよ!」
ヴェンも気にするなと言う風に元気づけると、三人は安堵したように笑いかける。
こうしてイリアドゥス、ヴェリシャナ、ティオン、無轟、炎産霊神、紫苑が見送る中、カイリは皆を見回して言った。
「じゃあ、戻ろう。私達の世界に」
「そして行こう。【闇の世界】――クウとスピカさんが守ってる場所に、なっ!」
ソラが笑顔で言うと、他の人達も笑いながら頷く。
そして、光の回廊へ――自分達の縁(えにし)が繋がる世界へと足を踏み入れた…。
■作者メッセージ
これにて、この作品は終了です!!! 本当に長かった、そして本当に申し訳ございません夢旅人さん!!!
そして読者の皆さんも本当にここまでついて来てくれてありがとうございます!!! このリレー作品を初めてもう5、6年くらい? 私の方がスランプだったり仕事だったりプライベートだったりイベントだったり震災だったりTRPGに嵌ったりと色んな事に感けて更新出来ない事もあったりして、夢旅人さんも離脱を決意して…私も辞めようかなと思ったけど、どうにか区切りのいい所で終わらせる事が出来たと思います。
ただ、続きがあるように書いている通り、今後は私パートで離脱したソラ達の話を続ける事にしています。やはり書きたいネタ…と言うか消化しておきたい話とかもある中で、「俺達の戦いはまだまだこれからだぜ!!」と言う中途半端な状態で終わらせるのはなぁ…と思った為です。
かなり長い年月で書いてるだろ、作品数半端ないだろ、何時になったら終わるんだよ?と思ってますよね…もう本当にすみません。「ブ〇ーチやワン〇ースみたく、こんだけ作品長いと読む気ないよ〜」って人絶対いるよなぁ…実は私もその一人です、ハイ(オイ
この話の続きは、私だけの作品となるので別アカで出す事になります。ようやくソラもルキルも復帰して、新ヒロインのスピカとツバサも仲間になりましたので、彼らを活躍できるような話を作りたいと思っています。他のメンバーも見せ場を作れるように頑張りたいです。
最後にここまで読んでくれた読者の方に。この【開闢の宴】を最後まで読んでくれて本当にありがとうございます。夢旅人さん側の話はこれにて終了となります。この数年間、こんな私と共に執筆活動を続けてくれて本当にありがとうございました。
そして読者の皆さんも本当にここまでついて来てくれてありがとうございます!!! このリレー作品を初めてもう5、6年くらい? 私の方がスランプだったり仕事だったりプライベートだったりイベントだったり震災だったりTRPGに嵌ったりと色んな事に感けて更新出来ない事もあったりして、夢旅人さんも離脱を決意して…私も辞めようかなと思ったけど、どうにか区切りのいい所で終わらせる事が出来たと思います。
ただ、続きがあるように書いている通り、今後は私パートで離脱したソラ達の話を続ける事にしています。やはり書きたいネタ…と言うか消化しておきたい話とかもある中で、「俺達の戦いはまだまだこれからだぜ!!」と言う中途半端な状態で終わらせるのはなぁ…と思った為です。
かなり長い年月で書いてるだろ、作品数半端ないだろ、何時になったら終わるんだよ?と思ってますよね…もう本当にすみません。「ブ〇ーチやワン〇ースみたく、こんだけ作品長いと読む気ないよ〜」って人絶対いるよなぁ…実は私もその一人です、ハイ(オイ
この話の続きは、私だけの作品となるので別アカで出す事になります。ようやくソラもルキルも復帰して、新ヒロインのスピカとツバサも仲間になりましたので、彼らを活躍できるような話を作りたいと思っています。他のメンバーも見せ場を作れるように頑張りたいです。
最後にここまで読んでくれた読者の方に。この【開闢の宴】を最後まで読んでくれて本当にありがとうございます。夢旅人さん側の話はこれにて終了となります。この数年間、こんな私と共に執筆活動を続けてくれて本当にありがとうございました。