幸運EXマスターによる星5サーヴァント歓迎会
私の真名は沖田総司。生前は新選組一番隊隊長、今ではカルデア一番のセイバー!(自称)
このカルデア初の星5サーヴァントにして、第一特異点から異聞帯まで共に歩み続けて来ました。その活躍はあのノッブに劣らず、いえ寧ろ私の方が上だと言っても過言ではありません! まあこのカルデアにノッブは居ませんが。
そんなセイバーの中でも強くて頼れる私ですが…今、かつてないピンチが。それは――
「それでは、星5サーヴァントによる玉藻の前、エレシュキガル、オリオン(アルテミス)の歓迎会を開催したいと思います。乾杯の音頭は私、天草四郎時貞が務めさせて頂きます」
なんでこんな事にぃぃぃ!!? コフッ!
「きゃあああ!? この人いきなり血を吐いたのだわ!?」
「おい、大丈夫か嬢ちゃん!? あ、アルテミスさん? これは純粋に心配しているだけだぞだから矢を向けるのはいだだだだ!!?」
「あのぉ…折角の歓迎会はありがたいのですが、本当に大丈夫ですか?」
「ご安心を、彼女のこれは日常茶飯事です。このくらいで狼狽えては、人理修復なんて夢のまた夢ですよ新人達」
ああ、新しくやってきたエース達は本当に常識があって助かります…天草四郎、あなたは後で『無明三段突き』です。
「だ、大丈夫です…私のこれは、生前の病弱が原因でして…心配をおかけしました…」
「なるほど…まあ、いざとなったらこの玉藻ちゃんが回復してあげましょう。ところで肝心のマスターは何処に? 確か私達の歓迎会はマスターが企画されたとか…」
尻尾がピコピコ反応している。やはりと言うか、清姫ほどではないですが狙っているなこの巫女狐。
とはいえ、マスターの姿がこの場にいないのも気になる。そもそもの発端は『三人の歓迎会をしよう』と言いだしたマスターだ。わざわざ今カルデア内にいる星5サーヴァントを呼んで、食堂の一角を借りたのもマスターなのになぜか主催者がこの場にいない。
「マスターならば、星5チケットのカタログを睨めっこしながら『安定の教授にするか、刑部姫でオリュンポスでチェイテピラミッド姫路城を作るか…!』とマイルームで悶えておりましたよ。ジャンヌを選択肢から除外したのは、ルーラーの私としては嬉しい限りです」
「オリュンポスの前にアトランティス攻略からでしょ!? チェイテピラミッド姫路城って、難易度激ムズとか言われてるギリシャに有効なんです!? てか何なんですか、今年になってからマスターの幸運EX爆発してません!?」
普段は数か月に一回の割合でしか当たらないマスターの幸運。しかし、今年になってから約一か月に1回の値で星5が当たる事態に。
EXと言われる由来は、役に立つサーヴァントを呼び寄せているからだ。今回の玉藻の前はサポートとしては超有能で、エレシュキガルも火力だけでなくサポート効果があり、オリオンも男性に対しては強力な効果を出す。
もちろん自分だって負けてない。アルテラ、オジマンディアス、水着BB、ヒロインXオルタ、天草四郎。どれも居なければ異聞帯の攻略は厳しかった…あれ? 一人足りない?
「天草四郎、シェ…不夜城のキャスターは?」
「マイルームでこの三人を呼び寄せたあまりの幸運に倒れてしまい、医務室で安静中です。今も死んでしまうと魘されているとか」
「この中で一番の常識人がいないって、この歓迎会大丈夫です!?」
度が過ぎる心配性が玉に瑕だが、良心がある不夜城のキャスターがいなければこの歓迎会がカオスになる。何かあってもガッツ付与で生き延びるのだって出来ない。天草四郎に宝具を打たれたらどちらにせよ無意味だが。
「なんですか、その言いぐさ? まるでBBちゃんが非常識って言い方じゃないですか〜」
「歩くパンドラボックスが何言ってんですか!? 歓迎会なんですから、その名状しがたき触手を仕舞いなさい!」
「ファラオに不可能無し! 万物万象我が掌中にあり! さあ、酒をもっと持ってこい!」
「このファラオ、段取り無視してもう飲み始めてるし!?」
「むぐむぐ…この饅頭とやら、美味いな。和菓子は良い文明だ」
「はぁう!? エミヤさんが作った水饅頭が…対セイバー用の奥義をお見舞いせねばなりません…!」
「落ち着きなさいヒロインXオルタ!? 私の分の水饅頭あげますから! お代わりもあっちでエミヤさんが用意してますよ!?」
「…この歓迎会、大丈夫なのかしら?」
「エレシュキガルさん。流石の玉藻ちゃんも、正直不安でなりません」
「私はダーリンと一緒なら何でも楽しいわ!」
「あーはいはい、分かったから頭に刺さってる矢を抜いてくれアルテミスさん」
新人のエレシュキガル、玉藻さんは既に不安がって、アルテミスは喜んでますが今の様子で楽しんでいる訳ではないし…この歓迎会、どうなるんでしょうか…コフっ!
「ふはははは、やるなフンヌの王よ! だが、余も負けぬぞ!」
「この葡萄酒…ワイン、と言ったか。うむ、悪くない。年代物と言うのは良い文明だ。それはそれとして、お替わりを頼む」
「まあ、これも初めて食べるお菓子だわ! ねえねえオルタ、これは何て言うの?」
「今食べたのは、豆大福と言うものですアルテミスさん。黒豆を混ぜた皮で粒餡を包んでいるのです。ちなみにこちらはこし餡仕様です」
「そうなのね、これも美味しいからダーリンに食べさせましょう! はい、ダーリン! あ〜ん」
「ア、アルテミスしゃぁん…さ、さっきから俺の口に饅頭や団子を詰め込んで…も、もう腹がいっぱい、てか喉に詰まりかけ…もごぉ!?」
「そーもーそーもー、なーんで玉藻さんまでカルデアに来たんですー?」
「おや、BBさん。私がこのカルデアに来た事になんのご不満が? まさか、邪魔者はいない、小悪魔系後輩ヒロインとしてマスターを独り占め! とかやましい考えお持ちで?」
「まっさかー。ま、小悪魔系後輩ヒロインの部分は認めますけど、これでも私もう1年以上は一緒なんですよ? 今更来たところで、あなたがマスターさんに付け入る隙なんてどこにもないんじゃないかなーと」
「ふ、私の性能を舐めない事ですよ。それにあなたのクラスでは精々役に立つのはバーサーカーとアヴェンジャーくらいでしょう? キャスターとして最高のサポート性能でマスターをお助け、そしてあなたの絆レベルくらい追い越して見せますわよオホホホホ」
「へぇ…何なら、今から勝負しますかぁ? 邪神の権限を解放した私と?」
「おや怖い。でしたら私、エミヤさんやラムダリリスさんでも呼んできましょうかねぇ?」
「あ、あのぉ…止めなくて大丈夫なの?」
止めて下さいエレシュキガル。そんな目で私を見てもこの修羅場は収まりません。
オジマンディアスとアルテラの酒飲み勝負はまだいい、寧ろこのままの方がありがたい。ヒロインXオルタとアルテミスだって…熊のぬいぐるみが犠牲になっているだけですし。
あの如何にも因縁ある二人の修羅場は、ルーラーとして相性抜群な天草四郎が場を収めるのに一番適任なのに…。
「ああ、あの二人なら別に放っておいても問題はないでしょう。それで、エレシュキガルは確かジュースでしたよね? お替わりは如何です?」
「何をどう見てそんな事言えるんです!? あなたが止めないとこのカルデア崩壊する勢いですよ!?」
この人本当に聖人ですか!? 私と同じ同郷ですか!? 無責任にも程があるでしょう!? お願いですマスター、星5チケットでジャンヌを呼んでください今すぐに!!
「沖田さん。私だって人理の為に召喚された身、カルデアが滅ぶ事は避けたいと思ってます。それはそれとして、このバカ騒ぎもまた一興だなと」
「カ、カルデアってこんなに危険な所なの!? 聞いてた話と違うのだわ!?」
「そんな事ないですから!? 私だって今にも吐血しそうですがどうか怯えないでくださいエレシュキガルさん!?」
とはいっても、この状況だ。まともな精神のエレシュキガルの風評被害ばかりが増えていく。
「BBちゃんの本気…見せてあげますよ」
「おや、とうとう本性を現しましたね。私だって既にレベル90となった身、そう簡単にはやらせませんとも!」
「喧嘩か? 余も気分がいい、その余興に混ざるとしよう――ファラオに歯向かう愚か者めがぁ!!」
「あああぁぁ…みたらし団子が…! 出力最大展開、オルトリアクター限界突破ぁ!!」
「争いか…争いは悪い文明、滅ぶべし!」
「ちょちょちょ、アルテラさん!? 俺は何にもしてな…ぎゃあ〜〜〜〜!!?」
「ああー、ダーリーン!? よくも私のダーリンをお星様にしてくれたわね! ダーリンの仇よー!」
「ひやああぁぁ!? あちこち攻撃が飛び交ってもうどうしようもないのだわー!? お、沖田さんだっけ、この暴動どうすればいいのだ「コフっ!」…え、あ。きゃあああ!! また血を吐いたのだわー!? 誰か、誰か助けてー!!」
ああ…死にそうなのに、エレシュキガルの声が鮮明に聞こえる…そう言えば、彼女は冥界の女神でしたね…。
ノッブ…土方さん…オルタの私…それから実装されていない新選組の皆…私はここまでのようです…もうすぐ座に還ります…志半ばでしたが、せめて頑張ったと快く迎えてくだ…さ……
――た――おき――
遠くから、声が聞こえる…
――お――たさん――
この声は…
「――沖田さん!! しっかりして!!」
「はっ!」
自分を必死で呼ぶ声に、ガバっと起き上がる。
白いベット、無機質な壁、医療用の棚とカーテン。隣のベットでは魘される不夜城のキャスター。
その反対側には、一人の男性。涙目でこちらを見ている、自分のマスター。
「マ、マスター…?」
「よ、良かったぁぁぁ…! 本当にごめん、沖田さん!」
そうして、マスターは私に説明してくれた。
私が吐血して倒れた後、エミヤを筆頭とする様々な保護者が場を収めてくれた事。その際に血を吐いた自分を抱きしめてパニックで泣きわめくエレシュキガルに、急いで医務室に搬送された事。この知らせを聞きつけて、マスターが自分の傍でずっと声をかけていた事も全部説明してくれた。
「そうですか…申し訳ありません、マスター。本来なら古株の私が何とかするべきだったのに、結局場を混乱させてしまうだけで…」
「沖田さんだけの所為じゃない。それに、天草四郎がちゃんと手配してくれたから、カルデア崩壊までは至らなかったし」
「はい? 天草四郎が?」
「そうだけど? オジマンを止める為に術のギル様やニトさんを裏に手配させて、それだけじゃなくヒロインXオルタの為にアルトリアリリィとヒロインXX、アルテミスにはアタランテ、アルテラはサンタメンバーでサンタにして止めにかかったし、BBちゃんの暴走はヤバかったけどちゃんと天草四郎が最後に割って入ったおかげで止まったし」
自分勝手な聖人かと思ってましたが、ちゃんと考えていたんですね…少しだけ考えを改めてあげましょう。
ただ、騒動があった事には変わらない。となると…
「大きな騒動にならないのは良かったですが…もう歓迎会は失敗ですよね」
特にエレシュキガル。吐血で倒れてしまった自分を抱えて助けを求めたのだ。根はいい子の彼女はトラウマ作ってしまったかもしれない。
「その辺も大丈夫だよ。イシュタルとギル様がちゃんとケアしてくれてるって」
「それも、天草四郎が?」
「うん。それに玉藻もBBちゃんと仲良く…って言うよりは距離が縮んだ感じかな。オリオンとアルテミスも、アタランテやギリシャ勢に出会って嬉しそうにしてたし。エミヤ達にこってり叱られたけど、全部が全部無駄じゃない。それに天草四郎から聞いたよ、沖田さんなりに頑張って場を仕切ってたって」
「マスター…!」
「肝心な時に傍にいなくてごめん。そして、ありがとう。やっぱり沖田さんはカルデアの頼れるエースだ!」
彼の笑顔一つで、こんなにも憂鬱だった心が晴れていく。
そうだ、私はカルデアのエースなのだ。共に旅をしてきた月日だけは、マスターの信頼は、あのメンバーの中では誰にも負けない。私だけの特権だ。
だから――敢えて目を背けていた事も、今なら聞き出せる。
「ところでマスター。マスターの後ろにいる人は一体どなたで、どこから来たので?」
「…すまない、沖田さん…散々迷った挙句、あのチケットでエルメロイ教授を呼び寄せた…」
「またライバルが増えたぁぁぁ!!」
このカルデア初の星5サーヴァントにして、第一特異点から異聞帯まで共に歩み続けて来ました。その活躍はあのノッブに劣らず、いえ寧ろ私の方が上だと言っても過言ではありません! まあこのカルデアにノッブは居ませんが。
そんなセイバーの中でも強くて頼れる私ですが…今、かつてないピンチが。それは――
「それでは、星5サーヴァントによる玉藻の前、エレシュキガル、オリオン(アルテミス)の歓迎会を開催したいと思います。乾杯の音頭は私、天草四郎時貞が務めさせて頂きます」
なんでこんな事にぃぃぃ!!? コフッ!
「きゃあああ!? この人いきなり血を吐いたのだわ!?」
「おい、大丈夫か嬢ちゃん!? あ、アルテミスさん? これは純粋に心配しているだけだぞだから矢を向けるのはいだだだだ!!?」
「あのぉ…折角の歓迎会はありがたいのですが、本当に大丈夫ですか?」
「ご安心を、彼女のこれは日常茶飯事です。このくらいで狼狽えては、人理修復なんて夢のまた夢ですよ新人達」
ああ、新しくやってきたエース達は本当に常識があって助かります…天草四郎、あなたは後で『無明三段突き』です。
「だ、大丈夫です…私のこれは、生前の病弱が原因でして…心配をおかけしました…」
「なるほど…まあ、いざとなったらこの玉藻ちゃんが回復してあげましょう。ところで肝心のマスターは何処に? 確か私達の歓迎会はマスターが企画されたとか…」
尻尾がピコピコ反応している。やはりと言うか、清姫ほどではないですが狙っているなこの巫女狐。
とはいえ、マスターの姿がこの場にいないのも気になる。そもそもの発端は『三人の歓迎会をしよう』と言いだしたマスターだ。わざわざ今カルデア内にいる星5サーヴァントを呼んで、食堂の一角を借りたのもマスターなのになぜか主催者がこの場にいない。
「マスターならば、星5チケットのカタログを睨めっこしながら『安定の教授にするか、刑部姫でオリュンポスでチェイテピラミッド姫路城を作るか…!』とマイルームで悶えておりましたよ。ジャンヌを選択肢から除外したのは、ルーラーの私としては嬉しい限りです」
「オリュンポスの前にアトランティス攻略からでしょ!? チェイテピラミッド姫路城って、難易度激ムズとか言われてるギリシャに有効なんです!? てか何なんですか、今年になってからマスターの幸運EX爆発してません!?」
普段は数か月に一回の割合でしか当たらないマスターの幸運。しかし、今年になってから約一か月に1回の値で星5が当たる事態に。
EXと言われる由来は、役に立つサーヴァントを呼び寄せているからだ。今回の玉藻の前はサポートとしては超有能で、エレシュキガルも火力だけでなくサポート効果があり、オリオンも男性に対しては強力な効果を出す。
もちろん自分だって負けてない。アルテラ、オジマンディアス、水着BB、ヒロインXオルタ、天草四郎。どれも居なければ異聞帯の攻略は厳しかった…あれ? 一人足りない?
「天草四郎、シェ…不夜城のキャスターは?」
「マイルームでこの三人を呼び寄せたあまりの幸運に倒れてしまい、医務室で安静中です。今も死んでしまうと魘されているとか」
「この中で一番の常識人がいないって、この歓迎会大丈夫です!?」
度が過ぎる心配性が玉に瑕だが、良心がある不夜城のキャスターがいなければこの歓迎会がカオスになる。何かあってもガッツ付与で生き延びるのだって出来ない。天草四郎に宝具を打たれたらどちらにせよ無意味だが。
「なんですか、その言いぐさ? まるでBBちゃんが非常識って言い方じゃないですか〜」
「歩くパンドラボックスが何言ってんですか!? 歓迎会なんですから、その名状しがたき触手を仕舞いなさい!」
「ファラオに不可能無し! 万物万象我が掌中にあり! さあ、酒をもっと持ってこい!」
「このファラオ、段取り無視してもう飲み始めてるし!?」
「むぐむぐ…この饅頭とやら、美味いな。和菓子は良い文明だ」
「はぁう!? エミヤさんが作った水饅頭が…対セイバー用の奥義をお見舞いせねばなりません…!」
「落ち着きなさいヒロインXオルタ!? 私の分の水饅頭あげますから! お代わりもあっちでエミヤさんが用意してますよ!?」
「…この歓迎会、大丈夫なのかしら?」
「エレシュキガルさん。流石の玉藻ちゃんも、正直不安でなりません」
「私はダーリンと一緒なら何でも楽しいわ!」
「あーはいはい、分かったから頭に刺さってる矢を抜いてくれアルテミスさん」
新人のエレシュキガル、玉藻さんは既に不安がって、アルテミスは喜んでますが今の様子で楽しんでいる訳ではないし…この歓迎会、どうなるんでしょうか…コフっ!
「ふはははは、やるなフンヌの王よ! だが、余も負けぬぞ!」
「この葡萄酒…ワイン、と言ったか。うむ、悪くない。年代物と言うのは良い文明だ。それはそれとして、お替わりを頼む」
「まあ、これも初めて食べるお菓子だわ! ねえねえオルタ、これは何て言うの?」
「今食べたのは、豆大福と言うものですアルテミスさん。黒豆を混ぜた皮で粒餡を包んでいるのです。ちなみにこちらはこし餡仕様です」
「そうなのね、これも美味しいからダーリンに食べさせましょう! はい、ダーリン! あ〜ん」
「ア、アルテミスしゃぁん…さ、さっきから俺の口に饅頭や団子を詰め込んで…も、もう腹がいっぱい、てか喉に詰まりかけ…もごぉ!?」
「そーもーそーもー、なーんで玉藻さんまでカルデアに来たんですー?」
「おや、BBさん。私がこのカルデアに来た事になんのご不満が? まさか、邪魔者はいない、小悪魔系後輩ヒロインとしてマスターを独り占め! とかやましい考えお持ちで?」
「まっさかー。ま、小悪魔系後輩ヒロインの部分は認めますけど、これでも私もう1年以上は一緒なんですよ? 今更来たところで、あなたがマスターさんに付け入る隙なんてどこにもないんじゃないかなーと」
「ふ、私の性能を舐めない事ですよ。それにあなたのクラスでは精々役に立つのはバーサーカーとアヴェンジャーくらいでしょう? キャスターとして最高のサポート性能でマスターをお助け、そしてあなたの絆レベルくらい追い越して見せますわよオホホホホ」
「へぇ…何なら、今から勝負しますかぁ? 邪神の権限を解放した私と?」
「おや怖い。でしたら私、エミヤさんやラムダリリスさんでも呼んできましょうかねぇ?」
「あ、あのぉ…止めなくて大丈夫なの?」
止めて下さいエレシュキガル。そんな目で私を見てもこの修羅場は収まりません。
オジマンディアスとアルテラの酒飲み勝負はまだいい、寧ろこのままの方がありがたい。ヒロインXオルタとアルテミスだって…熊のぬいぐるみが犠牲になっているだけですし。
あの如何にも因縁ある二人の修羅場は、ルーラーとして相性抜群な天草四郎が場を収めるのに一番適任なのに…。
「ああ、あの二人なら別に放っておいても問題はないでしょう。それで、エレシュキガルは確かジュースでしたよね? お替わりは如何です?」
「何をどう見てそんな事言えるんです!? あなたが止めないとこのカルデア崩壊する勢いですよ!?」
この人本当に聖人ですか!? 私と同じ同郷ですか!? 無責任にも程があるでしょう!? お願いですマスター、星5チケットでジャンヌを呼んでください今すぐに!!
「沖田さん。私だって人理の為に召喚された身、カルデアが滅ぶ事は避けたいと思ってます。それはそれとして、このバカ騒ぎもまた一興だなと」
「カ、カルデアってこんなに危険な所なの!? 聞いてた話と違うのだわ!?」
「そんな事ないですから!? 私だって今にも吐血しそうですがどうか怯えないでくださいエレシュキガルさん!?」
とはいっても、この状況だ。まともな精神のエレシュキガルの風評被害ばかりが増えていく。
「BBちゃんの本気…見せてあげますよ」
「おや、とうとう本性を現しましたね。私だって既にレベル90となった身、そう簡単にはやらせませんとも!」
「喧嘩か? 余も気分がいい、その余興に混ざるとしよう――ファラオに歯向かう愚か者めがぁ!!」
「あああぁぁ…みたらし団子が…! 出力最大展開、オルトリアクター限界突破ぁ!!」
「争いか…争いは悪い文明、滅ぶべし!」
「ちょちょちょ、アルテラさん!? 俺は何にもしてな…ぎゃあ〜〜〜〜!!?」
「ああー、ダーリーン!? よくも私のダーリンをお星様にしてくれたわね! ダーリンの仇よー!」
「ひやああぁぁ!? あちこち攻撃が飛び交ってもうどうしようもないのだわー!? お、沖田さんだっけ、この暴動どうすればいいのだ「コフっ!」…え、あ。きゃあああ!! また血を吐いたのだわー!? 誰か、誰か助けてー!!」
ああ…死にそうなのに、エレシュキガルの声が鮮明に聞こえる…そう言えば、彼女は冥界の女神でしたね…。
ノッブ…土方さん…オルタの私…それから実装されていない新選組の皆…私はここまでのようです…もうすぐ座に還ります…志半ばでしたが、せめて頑張ったと快く迎えてくだ…さ……
――た――おき――
遠くから、声が聞こえる…
――お――たさん――
この声は…
「――沖田さん!! しっかりして!!」
「はっ!」
自分を必死で呼ぶ声に、ガバっと起き上がる。
白いベット、無機質な壁、医療用の棚とカーテン。隣のベットでは魘される不夜城のキャスター。
その反対側には、一人の男性。涙目でこちらを見ている、自分のマスター。
「マ、マスター…?」
「よ、良かったぁぁぁ…! 本当にごめん、沖田さん!」
そうして、マスターは私に説明してくれた。
私が吐血して倒れた後、エミヤを筆頭とする様々な保護者が場を収めてくれた事。その際に血を吐いた自分を抱きしめてパニックで泣きわめくエレシュキガルに、急いで医務室に搬送された事。この知らせを聞きつけて、マスターが自分の傍でずっと声をかけていた事も全部説明してくれた。
「そうですか…申し訳ありません、マスター。本来なら古株の私が何とかするべきだったのに、結局場を混乱させてしまうだけで…」
「沖田さんだけの所為じゃない。それに、天草四郎がちゃんと手配してくれたから、カルデア崩壊までは至らなかったし」
「はい? 天草四郎が?」
「そうだけど? オジマンを止める為に術のギル様やニトさんを裏に手配させて、それだけじゃなくヒロインXオルタの為にアルトリアリリィとヒロインXX、アルテミスにはアタランテ、アルテラはサンタメンバーでサンタにして止めにかかったし、BBちゃんの暴走はヤバかったけどちゃんと天草四郎が最後に割って入ったおかげで止まったし」
自分勝手な聖人かと思ってましたが、ちゃんと考えていたんですね…少しだけ考えを改めてあげましょう。
ただ、騒動があった事には変わらない。となると…
「大きな騒動にならないのは良かったですが…もう歓迎会は失敗ですよね」
特にエレシュキガル。吐血で倒れてしまった自分を抱えて助けを求めたのだ。根はいい子の彼女はトラウマ作ってしまったかもしれない。
「その辺も大丈夫だよ。イシュタルとギル様がちゃんとケアしてくれてるって」
「それも、天草四郎が?」
「うん。それに玉藻もBBちゃんと仲良く…って言うよりは距離が縮んだ感じかな。オリオンとアルテミスも、アタランテやギリシャ勢に出会って嬉しそうにしてたし。エミヤ達にこってり叱られたけど、全部が全部無駄じゃない。それに天草四郎から聞いたよ、沖田さんなりに頑張って場を仕切ってたって」
「マスター…!」
「肝心な時に傍にいなくてごめん。そして、ありがとう。やっぱり沖田さんはカルデアの頼れるエースだ!」
彼の笑顔一つで、こんなにも憂鬱だった心が晴れていく。
そうだ、私はカルデアのエースなのだ。共に旅をしてきた月日だけは、マスターの信頼は、あのメンバーの中では誰にも負けない。私だけの特権だ。
だから――敢えて目を背けていた事も、今なら聞き出せる。
「ところでマスター。マスターの後ろにいる人は一体どなたで、どこから来たので?」
「…すまない、沖田さん…散々迷った挙句、あのチケットでエルメロイ教授を呼び寄せた…」
「またライバルが増えたぁぁぁ!!」
■作者メッセージ
コロナ自粛にGWという家にいる期間。少しでも活用しようと、このようなFGO短編集を書いてみました。沖田さん視点で書くという変わった方法なので、もしかしたら読みにくいとかあるかもです…。
本当はリラさんと相談してGW期間中にそれぞれのカルデアで短編書いてみようということだったんですが、色々あって結局自分だけ作り上げました。
ちなみに、最後にも書きましたが私は悩みに悩んだ末に星5チケットで教授と交換しました。リラさんはもちろんアルトリア。その後にジャンヌオルタ当たるとか…チクショーーーー!!!(拳ダン!)
いや、本編書かないといけないってわかってる…分かっているんだよ…頑張りたい、本当に…。
本当はリラさんと相談してGW期間中にそれぞれのカルデアで短編書いてみようということだったんですが、色々あって結局自分だけ作り上げました。
ちなみに、最後にも書きましたが私は悩みに悩んだ末に星5チケットで教授と交換しました。リラさんはもちろんアルトリア。その後にジャンヌオルタ当たるとか…チクショーーーー!!!(拳ダン!)
いや、本編書かないといけないってわかってる…分かっているんだよ…頑張りたい、本当に…。