体力ゲージもだいぶ減った辺りで、第3の冥界に足を踏み入れたORTとシャドウボーダー。そこで待ち構えていたエレシュキガルの加護のおかげで、戦局がカルデア陣営に傾く。

「すげえ、エレちゃんのバフのおかげで全体宝具持ちでも削れるようになった！！　メフィストが良い感じに！」

「そうでしょうともそうでしょうとも！！」

「呪いの効果も含めて、地味に削れるのは悪くない判断だ！！　これは行けるぞ！！」

　マスターに褒められて鼻を高くするエレシュキガル。そしてメフィストの呪い付属のおかげでORTへのダメージが重なる。



「まさか、アウトローの僕が1人で最後まで活躍出来るとは夢にも思わなかったな……！　仕事はしたよ、みんな」

　エレシュキガルの加護を受けたビリー１人が体力100万からのゲージブレイクの偉業を為し、後に託す。



「パリスちゃん、ガンバレ！　君なら出来る！」

「ええ。その為に私も前線に出たのです！　相手の強化は施します、容赦なくやってくださいまし！」

「はい！　清姫さんも出たんです、皆に負けないよう削り切って見せます！」

　パリスの強みを最大限に生かすために、清姫のバフとデバフ付与スキルをORTに与える。そこからパリスのスキルでつけられたバフを打ち消す事で、宝具への強化が付与される。

「いっけぇぇぇ！！」



　こうして、ゲージを全て削り切ってORTの進行は止まった。


　かに、見えた。



「くう……あれだけ規格外な体力ゲージで戦ったと言うのに、まさかの第二ラウンド開始とは！！　だが幸い、主力はまだまだ残っている！！」

「まだこの戦いが続く可能性もある、流石にここからは１体ずつの温存系で立ち向かえ！！　マシュも出撃可能になったら思いっきり使え！」

「了解！！」

　エレシュキガルの加護も消えて進行を続けるORTに、より緊迫感を見せるゴルドルフとカドックに、マスターも頷く。



　第二形態となったORTの妨害は、より激しさを増した。ただでさえ厄介だったのに、更に追加ダメージまで与えられて生き残る術がほぼないと言う状態に。
　それでも、持てる全力を、サーヴァント達を投入する。



「しゅりょー、任せるのだわ！！　ふぉーりなーには弱いけど、バーサーカーなら！！」

　プリテンダーである九紋竜エリザを投入し、ダメージを稼ぐ。

「おうおうおう、このフリスビー野郎！！　全身から漲るヤバヤバオーラでこのジャガー様を止められると思っとんのかー！！」

　怒鳴りながら円盤に向かって突撃するジャガーマン。

「吸収された姉様達の為にも！！　我が憎悪を喰らえぇ！！」

　攻撃力を強化したゴルゴーンの宝具が炸裂する。

「サンソンだってやってのけたのだ！　フランスの騎士として、私だってやってみせる！」

　ORTを魅了しながら、防御と回復で生き延びつつデオンは着実に後へと繋ぐ。



　1騎だけの投入と言う作戦は、マスターの魔術礼装と概念礼装のサポートがあるとはいえ戦うサーヴァントには負担を強いるものだ。
　それでも、続く冥界からの後押しが入った事で好転も起こり、堅実に、着実に、ORTとの戦いの終わりは確かに近づいていた。



「もう少しで次のブレイクだ！　次はランサークラス！」

「強化コピー……ここか強化をあまり施さないランスロットか、アタランテ・オルタで……！」

　カドックの言葉にマスターがそろそろ残りが半分に差し掛かった出撃メンバーのリストを見てどちらにするか迷っていると、申し出る声が。

「いえ、私が行きます。ランサーの私が託したのです、必ず残りの体力を削って見せます！」

「なら、頼む――セイバー・ディムルット！」

　マスターの指名を受け、セイバーのディムルットが前へと出る。
　既にORTは紅閻魔とプロテアの決死の作戦により弱体化をしている。初手で宝具を繰り出す。

「ここだ！　憤怒の波濤（モラ・ルタ）！！」

　二刀の剣でORTを斬り裂く。

「よし、残り体力がかなり減った！！」

「これは、行けるか！！」

「セイバー・ディムルット、頼む！！」

　カドックとゴルドルフとマスターが祈るように声援を送る。

「まだだ！　断ち切る！」

　エクストラアタックが決まり、丁度ORTの体力ゲージが0となった。

「よし、やったぞ！」

「うむ、彼はやる時にはやるのだ！」

　ディムルットの活躍に喜ぶカドック、その横でとある温泉イベントにて親睦を深めていたゴルドルフも鼻を高くする。
　一方で、マスターは汗を拭う。

「ゲージも、これで、残り少し――！！」

　再び戦おうと解析結果を待っていたが、彼らは目撃する。
　終わりが見えないサーヴァントとORTとの戦い――その終了を。