夏に起こった嘘のようで本当の話
これは、5周年記念から数日経った頃に起きた、世にも奇妙な実話である――
「5周年記念に合わせて、石も呼符も大量にやってきたぞー! これでしばらくはガチャが持つー!」
ウキウキ気分で召喚サークルに向かう二人組の内の一人の少年。あだ名は先輩マスター。
周りは課金しているが、一人無課金で進めている猛者(一度だけ課金カードを貰った)。その為、基本的に星5サーヴァントが少ない。2019年の召喚キャラを確認したら、福袋を除いてまさかの1体だけしか来なかったほどだ。
普段は爆死が目立ち幸運Eに思われがちだが、当たった時がヤバイと言う召喚の振れ幅が凄すぎて、幸運EXと言われている。
未だにアトランティス攻略中。今は全力で寄り道して夏イベを楽しんでいる。
「マスター。どれだけ石があろうとマスターの幸運EXでは当たる確率は非常に低いと思うのですが」
「マシュ、夢くらいは見させてくれ」
隣にいた少女――後輩のマシュに窘められるマスター。遠い目をしたのも気のせいではないだろう。
それでも期待は込めて召喚サークルでいそいそと用意した石や呼符を用意するマスターに、通信が入る。
「…それで、また私がマイルームですか…!」
マスターの私室にて今にもぶっ倒れそうな声を出すのは、先輩カルデアでおなじみの不夜城のキャスター。他のキャスター勢に比べるとパッとしない性能だが、少し前の大奥イベントでは沢山活躍してくれた。
だが、彼女の凄さはそれだけではない。
「不夜キャスさん。あなたは今年になって色んな星5サーヴァントを連れてきてくれた。今年のバレンタインからマイルーム設置後にエレシュキガル、オリオン(アルテミス)、更にはホームズまで連れてきてくれた」
ラクシュミーのバレンタインで彼女はステンノ、エウリュアレ、BBと同じ幸運EXと分かり、彼女をマイルームに設置してからほとんど音沙汰無しだった星5が次々と来るようになったのだ。
この結果に、マスターは確信した。不夜城のキャスターはこの為にカルデアにやってきたのだと。転んでもただじゃ起きない幸運EXはちゃっかり発揮されていたのだと!
(*尚、これは当社比です。他のマスターが同じ方法をしたからと言って当たるとは限りません)
「その分、爆死したガチャも沢山ありますが…」
「言うな、マシュ! 分かってる、周りは課金と言うシステムを使って当てまくる! 大先輩ぐだ子や後輩ぐだ子に至ってはガチャ運Aで簡単に手に入れる! 無課金と幸運EXの自分はコツコツやるしかないんだよ!!」
自慢してくるぐだ子達を思い返し、悔しさを露わにして思いっきり壁を叩く。
「で、マスター。まさかキャストリアを狙うんですか? 確かに無敵貫通すらも防御可能な宝具は魅力的ですが、マーリンのようにHP回復効果はないですよ? 正直私が入ればキャスターのサポート枠は十分だと思うんですけど? ほら、孔明さんもいる事ですし…寧ろキャスター枠ばかり偏る必要ないと思うんですよね?」
いつの間にかやってきていた玉藻の前。回復・NPチャージ、更にはスキルチャージ減少に可愛い・良妻と今までカルデアでは不足していたサポートキャスターがやってきた事で、結構楽させて貰っている。
「マーリンは爆死したし、後輩が見事にヘルニアと引き換えにして当てたから欲しいとは思ってる。ただ当たるとは思ってないよ…既に回して、ニトさんとヘラクレス来たし…」
「ほら、そこは運が無かったと思うべきかと! 大丈夫ですよ、大奥イベントでは私のサポートの万能さは理解したでしょう! これに孔明さんが入ればもう百人力、ご主人様の石の為にも私のライバル役はこれ以上増えなくてよろしいんですよ!」
「玉藻の前様…本音が出ています…」
もはや掴みかかる勢いの玉藻の前に、不夜城のキャスターはポツリと注意する。
「分かってる…けど、呼符1枚で丁度2回分引けるから…最後に、最後にこれだけを…!」
「もう…それで終わりですよ、マスター? 水着だって始まったばっかりですから」
プルプルと懇願するマスターに、玉藻の前もつい甘やかしてしまう。
そして、最後の一枚を召喚サークルに投入…する時に。
「ここにチョコあるよ〜、一緒に食べよう…なーんて」
どこで知ったか、キャストリアが大好きなチョコで釣ろうとするマスター。そんな事を呟きながら、金の紙を投入。
そして、虹色のサークルが出現した。
「「「「ん?」」」」
思わず目を見張るマスター、マシュ、玉藻の前、そして別室にいる不夜城のキャスター。
そして出現したのは金色の、キャスターの絵柄。
「「「「はい?」」」」
そうして登場したのは――
「こんにちは! キャスター・アルトリアと申します!」
「マジでキターーーーーーーーー!? んおあああああああああ!?」
「はあああああああ!? ご主人様、あなたの幸運EXなら本来はすり抜けとかこっちじゃねぇが起きる筈でしょう!? ホームズに続いてどうなっているんですか!? なんで本命当てちゃうんですぅ!? あなたも何だってチョコで釣られたんですかぁぁぁ!!!」
本命を当てて喜ぶマスターの胸倉を掴むなり、絶叫を上げながらガクガクと揺さぶる玉藻の前。反応が両極だ。
(ガクガクブルブル)
「不夜城のキャスターさんの顔が蒼白になってます、マスター!?」
一方、画面越しでも分かる不夜城のキャスターの狼狽えた様子に、マシュが叫びを上げていた。
「さーて、今からコンビニでチョコ買いに行くかー! コンビニチョコならガ〇ボかなー!」
「わーい! チョコー!」
「ご主人様正気ですか!! こんな真夏ではチョコなんて溶けますよ!?」
だが、この時のマスター達は知らなかった。
今年の夏はこれだけで終わらないと言う事を――
それから三日後…
「イリヤちゃんとキアラさんの水着だぁぁぁ!!」
今年の夏イベスタートで、水着ガチャ配信された。お目当ては、前に爆死したイリヤスフィール(プリズム版)の水着版だ。
そんなやる気満々のマスターの今回のお供は、カルデアエースの沖田さんと水着BBだ。
「燃えてますねー。去年も今年も、星4の沖田さん水着は来なかったのに…」
「BBちゃんとしては、先輩があの女の水着を狙わなくて満足ですが。実質、ムーンキャンサーは私で事足りてますしっ!」
「キアラか…まあ、話のネタとしては欲しいかなっては」
「先輩、何か言いましたぁ?」
即座に目を赤く光らせるBBに、慌ててマスターは弁明する。
「いや、当たる訳ないとは思ってるよ! ……多分」
「そこは断然する所じゃないですかぁ?」
「いや、幸運EXのマスターにそう言われても…そもそも、あなたがこのカルデアに来ているんですから」
「うーん、そう言われると流石のBBちゃんも何とも言えなくなりますね…」
沖田の正論(?)に、BBも目の色を元に戻して何時もの小悪魔系後輩に戻る。
何が起こるか分からない。それが幸運EXの力である。
「とにかく、不夜城のキャスターには続けざまにマイルーム待機して…挑戦だー!!」
しばらくして…
「くっそぉ…イベント礼装がぜんっぜん出ない…キアラ水着どころかイリヤもブリュンヒルデも、すり抜けすら起きない…」
ズーンと落ち込みながら、四つん這いで挫折を味わうマスター。石はまだ余裕があるが、爆死結果か続いてしまった。
見慣れた光景に、沖田は溜息を吐き、別室の不夜城のキャスターは安堵を浮かべている。
「キャストリアできっと、幸運を使い切ったのでしょう…ここで引き際かと…」
「ううう…ただ、イリヤちゃんは欲しい…一応、10連だけ…」
沖田が慰めるも、諦めきれないマスターは最後に石を投入する。
そうして…金色のカード、ライダーの絵柄が現れる。
「金のライダー?」
「まさか、オジマンディアス――!」
マスターがポカンとする中、沖田は目の敵とばかりに刀に手を掛ける。
「真名、オデュッセウス。現界した」
全く予想もしない、寧ろアトランティスで現在死闘を繰り広げている人物がそこにいた。
『…………』
突然の登場に、不夜城のキャスター含めて全員フリーズする。
「む? どうした?」
固まったメンツにオデュッセウスが不思議そうに首を傾げる。
そうしていると、召喚サークルの前を通り過ぎる者が。
「ピピピピッピ、ピグレッ……ドォオオオオオオオオオオ!!?」
鼻歌を歌っていたオケアノスのキャスター。だが、召喚サークルのオデュッセウスを見た瞬間、少女らしかぬ絶叫を上げる。
「ほう、キ…いや、オケアノスのキャスターと呼ぶべきか。あなたもカルデアにいたのか」
「君、いつピックアップされたぁぁぁ!? おいマスター、男性水着ガチャでも引いたのかぁぁぁ!? アトランティスで絶賛敵対中の奴がイベント礼装から飛び出してくるとか幸運EX凄すぎだろうがぁぁ!!」
考えもしなかった再会に、オケアノスのキャスターは三日前の玉藻の前と同じようにフリーズ中のマスターの胸倉を掴んでガクガクと揺さぶったのであった…。
更に、六日後――
「オデュッセウスはオケアノスのキャスターに任せて…! いよいよアビーちゃんの水着だぁ!!」
「何時までも進まないから痺れを切らしてカルデアに乗り込んだのかと思いました……まさかとは思いますが、来年オデュッセウスが水着とかないですよね…?」
「あったらビックリですよ!? いえ、今年の礼装にはなってますけど!」
不穏な予想を立てる沖田に、珍しくBBがツッコミを入れる。
「さ、酸欠で死にそうです…!」
「過呼吸起こさないでください!」
満身創痍な不夜城のキャスターを沖田が宥める中、ガチャはスタート……だが
「アビーの10連二回目で、ようやく礼装が一枚ずつ来たって…」
「周りはみんな当ててますね…大先輩ぐだ子からアビゲイルの水着写真送られてますよ?」
「あんのやろおおおお!! くっそぉ、30個来た石で再度イリヤチャレンジだ!」
これ見よがしに送られたアビーの写真に、丁度50日ログインで貰った石をアビゲイルではなくキアラガチャへとつぎ込む。
そうして…金のアーチャーのカードが現れる。
「海だ! イリヤです! アーチャーです!」
「よっしゃあ!! イリヤちゃんキター!! 今年の夏の一つの目標は達成したー!」
何と目当てのキャラを当てるのに成功し、思わずガッツポーズを作るマスター。これには沖田もホッと一息を吐く。
「良かったですね、マスター!」
「ふう…あとはアビゲイルだけですか…XXさんだけでは大変ですし、フォーリナーは確保しておきたい所…ん?」
不夜城のキャスターが最後に現れたカードを見て、目を疑う。
それは、金色のカード。だが、絵柄がいつもと違った。
「あれ…? 見慣れない柄…ムーンキャンサー、じゃないしフォーリナーでもない筈…」
「ちょ!? あの絵柄はルーラーですよ!?」
マスターも首を傾げた瞬間、BBが絵柄のクラスを教える。
直後、現れたのは――
「サーヴァント・ルーラー。ジャンヌ・ダルク。お会いできて――」
あらゆる面で鉄壁の防御を誇る、あのジャンヌ・ダルクであった。
「「「はああああああああああああぁぁぁ!!?」」」
「コフッ!!」
「不夜城のキャスター、吐血は私の持ちネタ! じゃなくて、しっかりしてください!?」
連続での星5。更にはキャストリアに続く最優良サーヴァントに、とうとう不夜城のキャスターは血を吐いて倒れてしまう。
「な…なんで…!?」
「そんなの、あの女がカルデアに来ない為の抑止力に決まってますよ! いやー、良かったですね、先輩! これでカルデアの平和は守られましたっ!」
「BBちゃん、BBちゃんも弱点なの分かって言ってる?」
ルンルン気分でジャンヌを歓迎するBBに、思わずマスターはツッコミを入れる。
すると、騒ぎを聞きつけて召喚サークルに入ってきたのは…水着ジャンヌオルタだ。
「うっさいわね、何の騒ぎよ? こっちはイベント周回の準備を済ませて…」
「あ、水着のオルタ!」
「………何やってんのよあんたぁぁぁ!! どこで幸運EX爆発させてんのよぉ!? キャストリアにオデュセウスの次にあいつとか!! 短期間でも酷いけど、これならキアラが来た方が100倍もマシよぉおおおおお!!」
かくして、マスターは三回連続で胸倉をガクガクと揺さぶられたのであった。
「5周年記念に合わせて、石も呼符も大量にやってきたぞー! これでしばらくはガチャが持つー!」
ウキウキ気分で召喚サークルに向かう二人組の内の一人の少年。あだ名は先輩マスター。
周りは課金しているが、一人無課金で進めている猛者(一度だけ課金カードを貰った)。その為、基本的に星5サーヴァントが少ない。2019年の召喚キャラを確認したら、福袋を除いてまさかの1体だけしか来なかったほどだ。
普段は爆死が目立ち幸運Eに思われがちだが、当たった時がヤバイと言う召喚の振れ幅が凄すぎて、幸運EXと言われている。
未だにアトランティス攻略中。今は全力で寄り道して夏イベを楽しんでいる。
「マスター。どれだけ石があろうとマスターの幸運EXでは当たる確率は非常に低いと思うのですが」
「マシュ、夢くらいは見させてくれ」
隣にいた少女――後輩のマシュに窘められるマスター。遠い目をしたのも気のせいではないだろう。
それでも期待は込めて召喚サークルでいそいそと用意した石や呼符を用意するマスターに、通信が入る。
「…それで、また私がマイルームですか…!」
マスターの私室にて今にもぶっ倒れそうな声を出すのは、先輩カルデアでおなじみの不夜城のキャスター。他のキャスター勢に比べるとパッとしない性能だが、少し前の大奥イベントでは沢山活躍してくれた。
だが、彼女の凄さはそれだけではない。
「不夜キャスさん。あなたは今年になって色んな星5サーヴァントを連れてきてくれた。今年のバレンタインからマイルーム設置後にエレシュキガル、オリオン(アルテミス)、更にはホームズまで連れてきてくれた」
ラクシュミーのバレンタインで彼女はステンノ、エウリュアレ、BBと同じ幸運EXと分かり、彼女をマイルームに設置してからほとんど音沙汰無しだった星5が次々と来るようになったのだ。
この結果に、マスターは確信した。不夜城のキャスターはこの為にカルデアにやってきたのだと。転んでもただじゃ起きない幸運EXはちゃっかり発揮されていたのだと!
(*尚、これは当社比です。他のマスターが同じ方法をしたからと言って当たるとは限りません)
「その分、爆死したガチャも沢山ありますが…」
「言うな、マシュ! 分かってる、周りは課金と言うシステムを使って当てまくる! 大先輩ぐだ子や後輩ぐだ子に至ってはガチャ運Aで簡単に手に入れる! 無課金と幸運EXの自分はコツコツやるしかないんだよ!!」
自慢してくるぐだ子達を思い返し、悔しさを露わにして思いっきり壁を叩く。
「で、マスター。まさかキャストリアを狙うんですか? 確かに無敵貫通すらも防御可能な宝具は魅力的ですが、マーリンのようにHP回復効果はないですよ? 正直私が入ればキャスターのサポート枠は十分だと思うんですけど? ほら、孔明さんもいる事ですし…寧ろキャスター枠ばかり偏る必要ないと思うんですよね?」
いつの間にかやってきていた玉藻の前。回復・NPチャージ、更にはスキルチャージ減少に可愛い・良妻と今までカルデアでは不足していたサポートキャスターがやってきた事で、結構楽させて貰っている。
「マーリンは爆死したし、後輩が見事にヘルニアと引き換えにして当てたから欲しいとは思ってる。ただ当たるとは思ってないよ…既に回して、ニトさんとヘラクレス来たし…」
「ほら、そこは運が無かったと思うべきかと! 大丈夫ですよ、大奥イベントでは私のサポートの万能さは理解したでしょう! これに孔明さんが入ればもう百人力、ご主人様の石の為にも私のライバル役はこれ以上増えなくてよろしいんですよ!」
「玉藻の前様…本音が出ています…」
もはや掴みかかる勢いの玉藻の前に、不夜城のキャスターはポツリと注意する。
「分かってる…けど、呼符1枚で丁度2回分引けるから…最後に、最後にこれだけを…!」
「もう…それで終わりですよ、マスター? 水着だって始まったばっかりですから」
プルプルと懇願するマスターに、玉藻の前もつい甘やかしてしまう。
そして、最後の一枚を召喚サークルに投入…する時に。
「ここにチョコあるよ〜、一緒に食べよう…なーんて」
どこで知ったか、キャストリアが大好きなチョコで釣ろうとするマスター。そんな事を呟きながら、金の紙を投入。
そして、虹色のサークルが出現した。
「「「「ん?」」」」
思わず目を見張るマスター、マシュ、玉藻の前、そして別室にいる不夜城のキャスター。
そして出現したのは金色の、キャスターの絵柄。
「「「「はい?」」」」
そうして登場したのは――
「こんにちは! キャスター・アルトリアと申します!」
「マジでキターーーーーーーーー!? んおあああああああああ!?」
「はあああああああ!? ご主人様、あなたの幸運EXなら本来はすり抜けとかこっちじゃねぇが起きる筈でしょう!? ホームズに続いてどうなっているんですか!? なんで本命当てちゃうんですぅ!? あなたも何だってチョコで釣られたんですかぁぁぁ!!!」
本命を当てて喜ぶマスターの胸倉を掴むなり、絶叫を上げながらガクガクと揺さぶる玉藻の前。反応が両極だ。
(ガクガクブルブル)
「不夜城のキャスターさんの顔が蒼白になってます、マスター!?」
一方、画面越しでも分かる不夜城のキャスターの狼狽えた様子に、マシュが叫びを上げていた。
「さーて、今からコンビニでチョコ買いに行くかー! コンビニチョコならガ〇ボかなー!」
「わーい! チョコー!」
「ご主人様正気ですか!! こんな真夏ではチョコなんて溶けますよ!?」
だが、この時のマスター達は知らなかった。
今年の夏はこれだけで終わらないと言う事を――
それから三日後…
「イリヤちゃんとキアラさんの水着だぁぁぁ!!」
今年の夏イベスタートで、水着ガチャ配信された。お目当ては、前に爆死したイリヤスフィール(プリズム版)の水着版だ。
そんなやる気満々のマスターの今回のお供は、カルデアエースの沖田さんと水着BBだ。
「燃えてますねー。去年も今年も、星4の沖田さん水着は来なかったのに…」
「BBちゃんとしては、先輩があの女の水着を狙わなくて満足ですが。実質、ムーンキャンサーは私で事足りてますしっ!」
「キアラか…まあ、話のネタとしては欲しいかなっては」
「先輩、何か言いましたぁ?」
即座に目を赤く光らせるBBに、慌ててマスターは弁明する。
「いや、当たる訳ないとは思ってるよ! ……多分」
「そこは断然する所じゃないですかぁ?」
「いや、幸運EXのマスターにそう言われても…そもそも、あなたがこのカルデアに来ているんですから」
「うーん、そう言われると流石のBBちゃんも何とも言えなくなりますね…」
沖田の正論(?)に、BBも目の色を元に戻して何時もの小悪魔系後輩に戻る。
何が起こるか分からない。それが幸運EXの力である。
「とにかく、不夜城のキャスターには続けざまにマイルーム待機して…挑戦だー!!」
しばらくして…
「くっそぉ…イベント礼装がぜんっぜん出ない…キアラ水着どころかイリヤもブリュンヒルデも、すり抜けすら起きない…」
ズーンと落ち込みながら、四つん這いで挫折を味わうマスター。石はまだ余裕があるが、爆死結果か続いてしまった。
見慣れた光景に、沖田は溜息を吐き、別室の不夜城のキャスターは安堵を浮かべている。
「キャストリアできっと、幸運を使い切ったのでしょう…ここで引き際かと…」
「ううう…ただ、イリヤちゃんは欲しい…一応、10連だけ…」
沖田が慰めるも、諦めきれないマスターは最後に石を投入する。
そうして…金色のカード、ライダーの絵柄が現れる。
「金のライダー?」
「まさか、オジマンディアス――!」
マスターがポカンとする中、沖田は目の敵とばかりに刀に手を掛ける。
「真名、オデュッセウス。現界した」
全く予想もしない、寧ろアトランティスで現在死闘を繰り広げている人物がそこにいた。
『…………』
突然の登場に、不夜城のキャスター含めて全員フリーズする。
「む? どうした?」
固まったメンツにオデュッセウスが不思議そうに首を傾げる。
そうしていると、召喚サークルの前を通り過ぎる者が。
「ピピピピッピ、ピグレッ……ドォオオオオオオオオオオ!!?」
鼻歌を歌っていたオケアノスのキャスター。だが、召喚サークルのオデュッセウスを見た瞬間、少女らしかぬ絶叫を上げる。
「ほう、キ…いや、オケアノスのキャスターと呼ぶべきか。あなたもカルデアにいたのか」
「君、いつピックアップされたぁぁぁ!? おいマスター、男性水着ガチャでも引いたのかぁぁぁ!? アトランティスで絶賛敵対中の奴がイベント礼装から飛び出してくるとか幸運EX凄すぎだろうがぁぁ!!」
考えもしなかった再会に、オケアノスのキャスターは三日前の玉藻の前と同じようにフリーズ中のマスターの胸倉を掴んでガクガクと揺さぶったのであった…。
更に、六日後――
「オデュッセウスはオケアノスのキャスターに任せて…! いよいよアビーちゃんの水着だぁ!!」
「何時までも進まないから痺れを切らしてカルデアに乗り込んだのかと思いました……まさかとは思いますが、来年オデュッセウスが水着とかないですよね…?」
「あったらビックリですよ!? いえ、今年の礼装にはなってますけど!」
不穏な予想を立てる沖田に、珍しくBBがツッコミを入れる。
「さ、酸欠で死にそうです…!」
「過呼吸起こさないでください!」
満身創痍な不夜城のキャスターを沖田が宥める中、ガチャはスタート……だが
「アビーの10連二回目で、ようやく礼装が一枚ずつ来たって…」
「周りはみんな当ててますね…大先輩ぐだ子からアビゲイルの水着写真送られてますよ?」
「あんのやろおおおお!! くっそぉ、30個来た石で再度イリヤチャレンジだ!」
これ見よがしに送られたアビーの写真に、丁度50日ログインで貰った石をアビゲイルではなくキアラガチャへとつぎ込む。
そうして…金のアーチャーのカードが現れる。
「海だ! イリヤです! アーチャーです!」
「よっしゃあ!! イリヤちゃんキター!! 今年の夏の一つの目標は達成したー!」
何と目当てのキャラを当てるのに成功し、思わずガッツポーズを作るマスター。これには沖田もホッと一息を吐く。
「良かったですね、マスター!」
「ふう…あとはアビゲイルだけですか…XXさんだけでは大変ですし、フォーリナーは確保しておきたい所…ん?」
不夜城のキャスターが最後に現れたカードを見て、目を疑う。
それは、金色のカード。だが、絵柄がいつもと違った。
「あれ…? 見慣れない柄…ムーンキャンサー、じゃないしフォーリナーでもない筈…」
「ちょ!? あの絵柄はルーラーですよ!?」
マスターも首を傾げた瞬間、BBが絵柄のクラスを教える。
直後、現れたのは――
「サーヴァント・ルーラー。ジャンヌ・ダルク。お会いできて――」
あらゆる面で鉄壁の防御を誇る、あのジャンヌ・ダルクであった。
「「「はああああああああああああぁぁぁ!!?」」」
「コフッ!!」
「不夜城のキャスター、吐血は私の持ちネタ! じゃなくて、しっかりしてください!?」
連続での星5。更にはキャストリアに続く最優良サーヴァントに、とうとう不夜城のキャスターは血を吐いて倒れてしまう。
「な…なんで…!?」
「そんなの、あの女がカルデアに来ない為の抑止力に決まってますよ! いやー、良かったですね、先輩! これでカルデアの平和は守られましたっ!」
「BBちゃん、BBちゃんも弱点なの分かって言ってる?」
ルンルン気分でジャンヌを歓迎するBBに、思わずマスターはツッコミを入れる。
すると、騒ぎを聞きつけて召喚サークルに入ってきたのは…水着ジャンヌオルタだ。
「うっさいわね、何の騒ぎよ? こっちはイベント周回の準備を済ませて…」
「あ、水着のオルタ!」
「………何やってんのよあんたぁぁぁ!! どこで幸運EX爆発させてんのよぉ!? キャストリアにオデュセウスの次にあいつとか!! 短期間でも酷いけど、これならキアラが来た方が100倍もマシよぉおおおおお!!」
かくして、マスターは三回連続で胸倉をガクガクと揺さぶられたのであった。
■作者メッセージ
幸運EXは言っている。ギリシャは万全の状態で向かわせてやるよと。
はい。と言う感じで。ツイッターにも書いたんですがまさかまさかの10日以内に星5が三体来るという今までにない爆発を起こしました。水着とは一体?
そんな実話を、カルデアにいるサーヴァントも登場させての物語形式にいたしました。不夜城のキャスター、ありがとう、ありがとう(効果は人それぞれです。真似をして当たらないとクレームが来ても私は一切責任を持ちません)
オデュッセウス来てよかったね、オケアノスのキャスター。そして通常のお姉ちゃん来てよかったね、水着ジャンヌオルタとサンタリリィ。ハハハハハ…これがすり抜けって、すっごい複z(ry
はい。と言う感じで。ツイッターにも書いたんですがまさかまさかの10日以内に星5が三体来るという今までにない爆発を起こしました。水着とは一体?
そんな実話を、カルデアにいるサーヴァントも登場させての物語形式にいたしました。不夜城のキャスター、ありがとう、ありがとう(効果は人それぞれです。真似をして当たらないとクレームが来ても私は一切責任を持ちません)
オデュッセウス来てよかったね、オケアノスのキャスター。そして通常のお姉ちゃん来てよかったね、水着ジャンヌオルタとサンタリリィ。ハハハハハ…これがすり抜けって、すっごい複z(ry