復刻ネロ祭・超高難易度6
第三演技「流星、雨の如く」
「あのよー…マスター…。一つ良いか?」
「どうした? 今回の唯一のアタッカー、クーちゃんよ」
控室に呼ばれて待機していたクーフーリン(槍)。本来なら闘志を燃やすほど戦闘好きの彼だが、何故か渋い表情でどんよりとした空気を纏っている。
「今回のアーラシュ戦は何時もの戦闘と違って、耐久戦ってのは俺も理解している。無敵貫通のステラを受け切って生き延びなければ勝利出来ないってのも。けどよぉ…」
そこで一旦言葉は途切れ、耐えられないとばかりに後ろを振り向く。
「何なんだよ、このメンツ!? 敵はアーチャーなのに半数以上がキャスターじゃねーか!!」
指を差した方向には、キャストリア・孔明・アイリ・玉藻の前がスタンバっている。
サポート勢のサーヴァントの中に戦闘特化の自分がいると言う、どう見ても場違いなパーティに入れられたクーフーリンに、マスターは不満げに唇を尖らせる。
「しょうがないだろ。無敵貫通のステラ対策として今回はキャストリアが主軸なんだ、フレの孔明先生とうちの玉藻ちゃんでとにかくキャストリアの宝具を回して、5回のステラを受け切るのが勝利条件だ」
「万が一キャストリアちゃんの防御が間に合わなかったとしても、私の全体ガッツ宝具さえ発動すればみんな生き残れるわ。それに、この子もいるんだし」
「ガアアアアアアアア!!」
ニコニコしたアイリの後ろから、やる気満々なヘラクレスの雄たけびが響き渡る。
「ヘラクレスは完全に保険じゃねーか! むしろこれ、俺がいる必要ある!?」
「あるよ! クーちゃんには最初の取り巻き撃破して貰わないとなんだから! ちゃんと本命のアーラシュになったらオーダーチェンジ使って引っ込ませるし! もし打ち漏れで全滅した時はヘラクレスと一緒にガッツで生き残って貰うと言う、とっても重要な役目だってあるんだよ! ほら、クーちゃんは微妙だけど貴重な自己回復使えるし」
「悪かったな微妙で!! と、とにかくキャストリアがいれば俺はアーラシュの耐久戦に出なくて済むんだろ…頼むぜお三方」
マスターの指示間違い――基、自分の幸運Eが発動しない事を祈りつつ、試合開始を待つのであった。
試合が始まる。先峰メンバーは、クーフーリン・キャストリア・フレンドの孔明だ。
最初に現れた取り巻きはクーフーリンで倒し、本命のアーラシュ戦へと入る。
開始早々、永続無敵貫通を発動するアーラシュ。すぐさまクーフーリンと玉藻を交代し、宝具の備えを始めるが。
「うっわ! アーラシュがキャストリアに! しかもクリティカル攻撃!? 仕方ない。少々早いけど、次でNPスキル一部回復するしここで使おう。孔明先生、キャストリアにオーバーチャージ用の魔力を回して!」
「私の宝具だと敵のチャージが減少するが…ここで誰か一人でも落ちる訳にもいかん。いいだろう」
孔明とキャストリアによる連続宝具により、守りを一段階固める。
そして、待ちわびていた瞬間が訪れる。
「ステラーーー!」
最初の宝具が三人に襲い掛かる。しかし、キャストリアの対粛清防御のおかげで防御に成功する。
「よし、1回目耐えた!」
「さーて、HPもスキルも回復いたしますよ!」
「ていうか、さっきからアーラシュ、キャストリアばっかり狙っているような…」
玉藻で回復出来ているが、どう言う訳かキャストリアを集中的に攻撃しているように思えてくる。
そうこうして体制を立て直していると、再びアーラシュのチャージが溜まった。
「2回目のステラだ! みんな、防御準備!」
「「はい!」」
指示を出し、玉藻とキャストリアによる宝具準備をする。
再びステラを放ったアーラシュ。こちらは相変わらず無傷で、あちらは2回目のガッツが発動する。
「よし、残りあと3回! これはもう行けるだろ!」
「だな! お、来るぞ!」
受け流すコツも掴んでガッツポーズを作るマスターの横で、クーフーリンも観戦モードに入る。
そうして、3回目のステラが放たれる。
「よし、3回目のガッツは剥がれた。そして玉藻のおかげでスキルも良い感じに回復してる!」
「キャストリアさん、私の魔力回しますよ!」
「はい!」
アーラシュの宝具を放ってすぐに、玉藻の魔力を使ってキャストリアに再度宝具を張って貰う。
この行動に、同じく観戦モードのアイリが首を傾げる。
「マスターさん、アーラシュさんはステラを撃った直後なのに、もう?」
「もうだよ。4回目のステラは…」
アーラシュの番になった途端、ガッツと同時にチャージMAXとなる。
「この後すぐなんだから!」
間髪入れずに、アーラシュのステラが炸裂する。
こちらも即座に張ったキャストリアの対粛清防御で4回目のステラを耐え切り、アーラシュもガッツが無くなる。復活はもうない。
「後は次のチャージが溜まるまでキャストリアを守りつつNP貯めれば勝てる! 頼むみんな!」
やっと終わりが見えた戦いに、三人はいつも通りアーツでNPを稼いでキャストリアの守りを維持する。
「ステラーーー!!」
最後のステラが放たれるものの、キャストリアの防御は健在。ダメージを与える事無く、アーラシュはそのまま消滅してしまった。
こうしてキャスター勢だけで耐久戦を勝利すると、待機していたクーフーリンは安堵の息を吐いた。
「誰も落ちずに勝利出来たな……いやホント、キャストリアいて良かったわ。そうじゃなかったら、あんなのをずっとガッツで耐えなきゃいけなかった…」
今のサーヴァントがどれだけ恵まれた性能を持っているか。今回の戦いで改めて感じたクーフーリンだった。
第四演技「白と黒の兄弟」
「えーと。カルナを先にブレイクするとアルジュナの即死効果が強化。アルジュナを先に倒すと、カルナに特殊耐性の強化が入る。二人同時ブレイクだと、どっちも……ねえ、あのインド兄弟、実は仲良いんじゃないのか?」
次の対戦相手であるアルジュナとカルナのコンビのギミックを確認し、マスターはジト目になる。
兄弟でありながら、生前は殺し合う関係だった二人。人理修復中の五章や、普段のカルデアでのイベントでも顔を合わせれば殺伐――と言うか、アルジュナがカルナを嫌っている様子が伺える。今回の戦いにおいて私情は関係ないと言いたいのか、全面的にカルナの補助を行うようだ。
「マスターからそう見えるのなら、俺としては素直に喜ばしいものだな」
「褒めてないよ! 寧ろなにこのめんどくさいギミック! 只でさえクラスが隣同時で編成割くのに、お互いに攻撃と防御で強化し合って仲悪いのか良いのかハッキリしやがれコンチクショー!!」
最近すり抜けでやってきたカルナにツッコミを決めるマスター。
それでも、一度やると決めたらやる体質だ。嫌な顔をしながら、自軍のサーヴァントを確認する。
「いやもう、マジでこれ編成も作戦も頭使うぞ…! アルジュナのブレイク時にカルナをスタンさせればいいらしいけど、どちらもブレイクしたらチャージMAXで宝具放たれるし……キャストリアはダメージは防げても、即死までは防げないし…!」
悶々と頭を抱えながらリストを見ていたが、大きく息を吐くとリストを閉じた。
「自分なりに攻略したかったが、仕方ない――後輩の方法を真似するか」
「後輩?」
4回戦と言う中間地点、そこに挑むマスターの勇姿に観客席は盛り上がっている。
色んな歓声が響き渡るコロシアムで、対戦相手のアルジュナとカルナと対峙したマスターは深呼吸した。
「ふうぅ…! それじゃあ頼む!」
「終わるがいい!!」
開始早々、強烈な光がアルジュナに襲いかかる。
攻撃を仕掛けたのは、オルジュナ――あの後輩ぐだ子のオルジュナだ。あらゆる強化リソース全てを捧げて最強と化したオルジュナは、バーサーカーと言う事もあってどんどん体力を削ってくれている。
戦いが始まって早々、待機組で見ているクーフーリンが声をかけていた。
「なあ、マスター…後輩の真似って、もしかしなくても」
「ああ。オルジュナによるごり押しだ。数日前にBOXガチャでハイになっていた後輩に言い聞かせて200%特攻礼装つけて貰った。安心しろ、念のため天草とキャストリアも付けている。少しタイミングズレたが、カルナもスタンで封じた」
「良かったな、天草もスタンスキル持ちで…」
天草は火力が低めと言う欠点はあるが、スキル強化によって今では色んな面で活躍出来るルーラーアタッカーに育て上げている。
そうして、作戦通りカルナの動きを封じた状態でアルジュナをブレイクする。
「アルジュナブレイク出来たな! それじゃ、全体強化! 天草と一緒にやっちゃってくれオルジュナ!! お前だけが頼りだ!」
「帰滅を裁定せし廻剣(マハー・プララヤ)!!」
バスター耐性を下げた二人に宝具を放つと、アルジュナは消滅。しかもカルナも20万ほどあったHPがブレイク状態にまで持ち込まれる。
これには、同じく待機組であるエレシュキガルも唖然となってしまう。
「……凄いのだわ、一瞬で二人撃破したのだわ……」
「でも、カルナはブレイクしただけだからまだ残ってる! 良かった、キャストリアの宝具使って! あとはオルジュナメインで攻撃して貰えば」
「うおおお!!」
一際激しいカルナによる攻撃音が響いたと思ったら、何故か前衛は天草とオルジュナの二人だけになっていた。
「ごめん今何が起こったの? キャストリアは一体どこに消えたの…?」
「現実逃避するなマスター! HP1万くらいあったのに、一発でキャストリアが退場したぞ!?」
「ぐわぁ!」
「ひやぁ!? ルーラーなのに、天草のHPも残りわずかまで減ったのだわ!?」
「カルナ攻撃力高すぎねぇ!? ぎゃー! オルジュナまでー!! でもガッツした!」
クーフーリンとエレシュキガルと一緒に騒いでいる間に、カルナは最後にオルジュナに向かって攻撃する。こちらも一撃で持っていかれたが、礼装のガッツで耐えきった。
だが、一瞬で戦線が半壊された状態に、マスターの中にあった余裕は一気に消える。
「すまねえ、マシュ! オルジュナを失う訳にはいかない! ここは無敵も付けて耐えて!」
「はい!」
タゲ集中と無敵を使い、倍以上に強化されたカルナの攻撃を1ターン持ち堪えるマシュ。
「よし、もう残り少し! これは勝てる! オルジュナ、フルパワー!!」
「マハー・プララヤ!!」
再度宝具を放って、カルナに特大のダメージを与える。
この一撃でカルナは無事に消滅し、マスター達は勝利をもぎ取った。
「勝てた…心臓に悪いよ、あの兄弟…!」
「…………すまない、先輩のマスター」
「あー、えー、オルジュナは今回役に立った! 本当に役に立ったよ寧ろ君がいなかったら勝利出来なかったありがとう!!」
しょんぼりするオルジュナに、わたわたと弁明するマスター。そんな姿に、最後まで待機していたクーフーリンとエレシュキガルは何とも言えない表情を浮かべるのだった。
「扱い大変だな…」
「そうね…」
■作者メッセージ
これで後半戦も半分終わった。実録は残り3つ!
なんやかんやでネロ祭終わって一週間は経ってる…この連休で残りを出せればいいんだが…。
ところで、アヴァロン・ル・フェまだなんですけど後半終えてエピローグなのにクリアしたマスター達が後輩揃って「何一つ解決してねぇ!」と騒いでいたりモルガンとか妖精騎士トリスタンに幸せになってもらいたいとか、妖精騎士ランスロットに貢いだり……一体アヴァロンで何があってんだ?
第三演技
クーフーリン・キャストリア・諸葛孔明(フレ)・玉藻の前・アイリ・ヘラクレス
第四演技
天草・オルジュナ(後輩)・キャストリア・マシュ・エレシュキガル・クーフーリン
なんやかんやでネロ祭終わって一週間は経ってる…この連休で残りを出せればいいんだが…。
ところで、アヴァロン・ル・フェまだなんですけど後半終えてエピローグなのにクリアしたマスター達が後輩揃って「何一つ解決してねぇ!」と騒いでいたりモルガンとか妖精騎士トリスタンに幸せになってもらいたいとか、妖精騎士ランスロットに貢いだり……一体アヴァロンで何があってんだ?
第三演技
クーフーリン・キャストリア・諸葛孔明(フレ)・玉藻の前・アイリ・ヘラクレス
第四演技
天草・オルジュナ(後輩)・キャストリア・マシュ・エレシュキガル・クーフーリン