オープニングフェイズ1&2
マスターシーン シーン1〈闇の囁き〉
明りのない闇に包まれた、薄暗く無機質な広間。
その闇に潜む複数の人物が会し、何か話をしている。
「《スター・キラー》も《シューティングスター》もやられたか…荷物運搬すら出来ないなんて、とんだ奴らを引き受けてしまったわね。あの恥晒し共め」
「……誰なの、邪魔した奴らって?」
「例の如く、UGN――と言いたい所ですが、どうやらFHの介入もあったようです。まさか手を結んで結託するとは…敵の敵は味方と言う事ですか」
「まあいいじゃん、計画には支障はないんでしょ? ところで、あいつは?」
何処か明るい感じの小さな人影が辺りを見回し、誰かを探す。
すると、隣にいた――パッと見少女らしき人物が答える。
「ああ、“ディザスターペイン”なら何でも今後の計画を良くする為に人員の確保に向かったそうだ。丁度欠落を埋めるいい人材も見つかったと言う話もあるからな」
「へー、新しい仲間を作りにいったの。んで、そいつ何者? ちゃんと腕のある奴じゃないと面白味がないよー」
「ああ、それは大丈夫でしょう」
今度は背の高い――大人の男性が宣言すると、近くにあったテーブルの上に乱雑に紙の束を投げつける。
それはカルテのようで、文字だけでなく数値やグラフなどが事細かに書かれている。その片隅には、カルテの主である顔写真が張り付けてある。
「七雲空。前回の作戦にて、あの二人を打ち負かした人物です。しかも――」
ここで言葉を切ると、ある項目を見ながら口角を吊り上げる。
「《シューティングスター》と同じ…いえ、例の研究所で生き残った最後の貴重な披検体です」
オープニングフェイズ1 シーン2〈《人変わり》の噂〉
シーンプレイヤー 海命凍矢
《シーン登場》
凍矢1D→3 29%→32%
グラッセ「よし! 今回もまずまずの出目でいい調子だ!」
GM「では、浸食値も上がった事で凍矢のOPを始めようか」
ホームルームも終わり、学校の終わりを告げる最後のチャイムが鳴る。
その途端、教室は一気に授業から解放された生徒で騒めき出す。そのまま帰宅しようと帰り支度をする者。部活に向かう者。またはそれ以外…様々な人で教室は賑わっている。
いつもと変わらぬ日常。何の変哲もない時間。しかし、そんなクラスを遠巻きに見ている凍矢は知っている。
この当たり前の世界が、既に変貌している事に。
『さて――今日は久々に支部に寄って行こうかな』
表向き自由とは言え、UGNと言う組織の協力者。何時でも行動できるように凍矢は部活には入らずに、帰宅部となっている。転校し立ての頃はいろんな人から部活に誘われたが、それももう一ヵ月も経てば自然と収まった。
その事を思い出しながら帰り支度をしている凍矢に、話しかけるクラスメイトがいる。
『凍矢、もう帰るのか?』
顔を上げると、クラスでは有名な三人組がいた。クラスの皆からあだ名で、イルト・ガレット・エイルと呼ばれている。
グラッセ「ちょっと待ったーーーーーーーっ!!!??」
GM「なに、急に?」
グラッセ「なに、じゃないでしょ!? 何俺達のキャラを当然のようにぶっこんで来たんですか!?」
GM「いやだなー、あくまでもこれはTRPGだよ? それに登場としてはモブキャラだから大丈夫大丈夫。名前もあだ名って事にしてるし、凍矢としてもこの方が話しやすいでしょ?」
グラッセ「不安しかないですけど…否定はしません」
凍矢「『そ、そうだけど』。俺は話しかけてきた人物、イルトに答えますね」
GM「なら、三人は君に近付いて話をするよ」
ガレット『ねえねえ、凍矢。ちょっといい?』
エイル『《人変わり》の噂、知ってる?』
凍矢『《人変わり》?』
イルト『最近流行っている噂なんだってさ。ある日、急に性格が変わるらしいんだ』
エイル『そうなんだ。他校の話なんだけど、いじめられている子がいたんだ。その子は気弱だからか反抗も抵抗も出来ずに毎日過ごしていたんだって。だけど、ある日性格が変わってしまったんだ。大人しかった子が一変し、いじめっ子達を撃退! しかも無視していたクラスメイト達に復讐と言わんばかりに暴力を振るったそうだよ』
凍矢『…それ、どう聞いてもいじめた方や無視を決め込んだ人達が悪いですよね? 報復に出ただけじゃないか』
ガレット『そうなんだけど。でも、いじめとかに関係なく最近そう言う人が増えているんだよ。性格が狂暴になったり、酷い時には自分が誰なのか分からなくなったりするんだって。だから《人変わり》って呼んでるの』
エイル『名前を付けたのは僕だけどね!』
イルト『威張る事かよ、普通?』
凍矢『性格が変わる…か』
これらの話に、凍矢は思い出す。
一ヵ月前に起きた志武谷での戦い。仲間として行動した人物である七雲空。
戦闘の途中で、性格が――人格が入れ替わった瞬間を。
凍矢(あの時の空さんも、突然性格が変わってた。スター・キラーの話では、元の人格が逃げたって言ってたけど…)
あの事件の後、少しだけ戦闘用人格を調べてみた。
戦闘用人格。最初から存在する人格の中で、レネゲイドの扱いに長けた別人格がいる状況だ。
その別人格は本来の人格よりもレネゲイドの知識や扱いが得意とされている。同時に、通常の生活に必要な抑制や感情、記憶を削ぎ落しており数倍の戦闘力を発揮すると。
だが、それは多くの一例と書いており、実際はこの検証と違ったりする事があるようだ。そう、空のように。
凍矢『戦闘用人格、《人変わり》…空さんに聞いたら、何か分かるかな?』
イルト『凍矢?』
凍矢『いや、何でもないよ!』
GM「では、ここでシーンを切ろう。次は空の番だ」
クウ「俺でいいのか?」
SM「話の都合上、先に終わらせたいのさ。それじゃ、いくよ」
オープニングフェイズ2 シーン3〈再会と依頼〉
シーンプレイヤー 七雲空
《シーン登場》
空1D→7 33%→40%
クウ「うげ、一気に上がった…!」
GM「まあこんな時もあるだろ。さあ、話を進めるよ」
凍矢がクラスメイトと放課後を過ごしている頃。場所は志武谷の隣町。
その裏路地で、空は仕事を片付けていた。
空『こんなものだな…後は他の奴らに任せりゃいいよな』
作り出した血の大剣を霧散しながら腕を伸ばす。
そんな彼の足元に転がっているのは、UGNのエージェントとジャームの群れ。
二つの勢力が戦っている最中に第三者として割り込みを行い、互いに消耗した体力で混乱をしている隙をついてどちらとも倒したのだ。
無事に戦闘を終わらせると、背後から一人の男が近づいてきた。
男性『ご苦労だった。さすがに管理セル〈ブラックスカル団〉の協力者だな』
クウ「管理セル?」
SM「FHのセルにも分野があるのさ。詳しくは下で教えておくよ」
ツバサ「管理セルだから、結構上の部類に入るんだね」
空『あー、どーも。そう言うお世辞はいいんで。俺は戦えればいいんだよ』
男性『後の処理はこちらでやっておく。わざわざ来てくれて助かったぞ』
空『へいへい。報酬はうちのリーダーにでも渡してくれ』
こうして狩谷から受けた仕事を終わらせ、空は帰宅の道を歩く。
こちら側に入ってから、仕事にも、赤く染まった手にも、慣れてしまった。
空(あれから1ヵ月か…時折来るセルの依頼を除けば、何も起こらない…何も“起こさない”)
思い出すのは、もう一人の自分――本当の人格。
戦いの最中に、彼に乗っ取られた感覚。
身体は動かせない。どんなに叫んでも声は届かない。
気づいて欲しいのに、気づいてくれない…虚しさ、怒り…憎悪。
空『なに不安になってんだよ…! 俺らしくない』
?『ええ、本当にあなたらしくない』
背後から声がかけられて、振り返る。
そこにはスーツを着て、少し長めの髪を一つに纏めた細目をした顔の整った男性――御剣祥耶がいた。
空『あんたは…!』
御剣『鴻央会系暴力団高川組組長、“クロックワーク”御剣祥那です。久しぶりですね――“ブラッドエッジ”』
空『ああ…一ヵ月ぶりか?』
御剣『あの時はビックリしましたよ。UGNを抜けてFHに入りたいだなんて聞かされて、私とあなたの仲だから組のネットワークを使って、何でも屋としての仲介を介せましたが…』
空『ああ、今は協力者って形で仕事してる。FHも悪くねーな』
御剣『元UGN…いえ、【特殊犯罪調査室】――通称“特調”の幹部である父親が現在の息子の現状を耳にしたら泣きますよ?』
グラッセ「特殊犯罪…えーと?」
ツバサ「特調って覚えておけばいいよ。早い話、レネゲイドについて知っている警察機関の事だよ。って言うか師匠…キャラ付け壮大なんだけど?」
クウ「出自が政治権力だからしょうがねーだろ。文句あるならダイスの女神に言えよ」
GM「実際、こうでもしないと辻褄合わせが難しいからね…今の状況が状況だし。とりあえず説明は下でするから、先に進めるよ」
空『オーヴァードだって分かった瞬間、家族やあの組織とは縁は切ってる。ま、聞いたら抹消として始末されるのが妥当だろうが、逆に返り討ちにするだけだ。一般人がオーヴァードに勝てる訳ねーしな』
御剣『……今回はあなたに依頼を持ってきました』
空『依頼?』
御剣『中国から来たFHエージェント。『金符宴』と言う男が、あなたに依頼したいとの事です。この地図の場所にいるので、直接会って依頼を聞いて欲しいらしいですよ』
そうして御剣は一枚の地図を渡す。
受け取って中を広げると、志武谷にほど近い建物に印がついている。ここからなら、少し移動すれば夜までにはつくだろう。
空は地図を確認すると、失笑を浮かべて御剣をバカにした目で見る。
空『へぇ、こんな依頼を持ってくる為に俺に会いに来たのか? 組長なのに暇人だな』
御剣『それがFHから来た私の“依頼”ですからね。あなたをFHに入れるキッカケを作ったのが私ですから…この先は言わなくても察せるでしょう?』
空『ま、元UGNだからな。簡単には信用出来ないってか。で、依頼者ってどんな奴だよ?』
御剣『中国から来た以外に分かるのは、『戦闘用人格』を用いている事ぐらいです』
空『『戦闘用人格』…!』
御剣『どうしました?』
空『何でもない。それじゃ俺はその依頼者に会いに行くとするよ、んじゃな』
地図を受け取り、空はその場を去っていく。
だが、御剣が強く呼び止める。
御剣『待ってください! ――あなた、本当に“七雲空”ですか?』
空『どういう意味だ?』
御剣『…いえ、何でもありません。では私はこれで。無事に依頼が終わる事を願ってますよ』
疑いがある目で見ていたが、すぐに顔を逸らしてその場を去る。
その去り際。空には聞こえない事で彼は呟く。
御剣『再会した時から、性格が違いすぎるからですよ』
■作者メッセージ
補足コーナー(上級ルルブから転載)
『管理セル』:FHのセルは蜘蛛の網状で横に広がっている。全て同じ考えて行動している訳ではなく大小や行動理念が様々だが、大体種類は五つに分けられる。その内の一つが管理セルと呼ばれている。
このセルは主に他のセルを管理・運営する為に存在している。戦闘用セルに戦場を与え、調査用セルには情報や計画を実行する為の部隊を与える。各セルが行動を円滑に進められるようにお膳立てを行っている。
尚、独立性が高く他者からの干渉を嫌うセルが多いため数が少ない。大体、計画を立てて実行する際複数のセルで合同するのだ。ある種、このセルは貴重な存在でもある。
この卓では〈ブラックスカル団〉は希少な管理セルと言う事にしている。その方が、文句を言われつつも存続できる理由が出来ると考えたので。
『御剣祥耶』:鴻央会系暴力団・高川組の組長。先代組長に唯一意見を出来たほど信頼を置かれる腹心中の腹心。彼もオーヴァードで、オルクスのピュアブリード。
先代からの信頼に情報収集能力と冷徹な知識を兼ね備えている。ただ、組内ではあまりにも若すぎるために古参の者達からは良い顔をされていない。本人は気にせずに己の仕事を全うしている。
この卓の設定では、七雲空は彼とはUGNに入る前からの知り合いと言う事にしている。
『特調』:【特殊犯罪調査室】の略称。警視庁公安部内に非公式に組織されている対レネゲイド機関。オーヴァードに関しては敵と認識しているからか、全てのオーヴァードを排除する事でレネゲイドの脅威を失くそうと活動している過激派。
とはいえ、レネゲイドに関連する知識や事件は低いため表向きはUGNに協力している。だが、多くはUGNやオーヴァードの人間を快く思っておらず差別している。
この卓の設定では、政治権力の元に生まれたと言う事で空は特調の幹部の息子と言う事にしました。
『管理セル』:FHのセルは蜘蛛の網状で横に広がっている。全て同じ考えて行動している訳ではなく大小や行動理念が様々だが、大体種類は五つに分けられる。その内の一つが管理セルと呼ばれている。
このセルは主に他のセルを管理・運営する為に存在している。戦闘用セルに戦場を与え、調査用セルには情報や計画を実行する為の部隊を与える。各セルが行動を円滑に進められるようにお膳立てを行っている。
尚、独立性が高く他者からの干渉を嫌うセルが多いため数が少ない。大体、計画を立てて実行する際複数のセルで合同するのだ。ある種、このセルは貴重な存在でもある。
この卓では〈ブラックスカル団〉は希少な管理セルと言う事にしている。その方が、文句を言われつつも存続できる理由が出来ると考えたので。
『御剣祥耶』:鴻央会系暴力団・高川組の組長。先代組長に唯一意見を出来たほど信頼を置かれる腹心中の腹心。彼もオーヴァードで、オルクスのピュアブリード。
先代からの信頼に情報収集能力と冷徹な知識を兼ね備えている。ただ、組内ではあまりにも若すぎるために古参の者達からは良い顔をされていない。本人は気にせずに己の仕事を全うしている。
この卓の設定では、七雲空は彼とはUGNに入る前からの知り合いと言う事にしている。
『特調』:【特殊犯罪調査室】の略称。警視庁公安部内に非公式に組織されている対レネゲイド機関。オーヴァードに関しては敵と認識しているからか、全てのオーヴァードを排除する事でレネゲイドの脅威を失くそうと活動している過激派。
とはいえ、レネゲイドに関連する知識や事件は低いため表向きはUGNに協力している。だが、多くはUGNやオーヴァードの人間を快く思っておらず差別している。
この卓の設定では、政治権力の元に生まれたと言う事で空は特調の幹部の息子と言う事にしました。