ミドルフェイズ7(後編)
GM「さて、こちらの処理だが…ムーンの意思は変わらない?」
ムーン「ああ。俺達を裏切ったんだ、それに操られているんだろ? 俺としてはここで始末したい。UGNでそう教えられてきただろうしな」
クウ「……俺、キャラロスト確定?」
GM(…まあ、どうにか解決方法見つけたけどね。ちょっと無理やりだが、『あの条件』を発動させるためにはこれしか方法がない…! ダイスもそうだが、PLも本当に予想外の事しでかすよなぁ…)
SM「GM、進めてよ。あのガキ、ウキウキしながら待ってるよ?」
GM「…では、RPしてくれ」
ムーン「それじゃあ、遠慮なく!」
再び振るわれた大剣を、今度は強化された手で真っ向から受け止める。
そのまま腹を殴り、顎を撃ち――肉眼では見切れない、高速の拳を雄叫びと共にありとあらゆる空の身体へと打ち込む。
最後に鳩尾を殴りつけると、空の身体は宙を舞い床に叩きつけられた。
空『っ、ぐぁ…!』
月『もう終わりかよ? お前、弱くなったな』
空『黙れ、クソガキ…!!』
月『黙るのはお前だ。それじゃあな、FH!!』
手に黒いオーラを宿らせ、空の心臓目掛けてその拳を振り下ろす。世界の敵である彼を始末する為に。
だが、彼を庇うかのように一筋の雷光が飛んでくる。それは月の拳にぶつかり、痺れと衝撃が腕に襲い掛かった。
月『何!?』
?『勝手に正義を語り、善人だと自惚れるUGNが…やはりお前らは滅ぼすべき存在だな』
攻撃を中断し腕を抑える月に、背後から声がかかる。
振り返ると、そこには手を広げた眼鏡をかけた男が立っていた。広げた手に電撃が纏っている事から、彼が攻撃したのが分かる。
月『誰だよ、てめえ…!?』
黒須『マスターレイス、黒須左京。お前達UGNを抹殺するべく動いている』
月『マスターレイス!? 何でてめえがここにいる!?』
黒須『UGN、貴様らを始末する為。そして――七雲空、お前に話がある』
空『…話、ねぇ? オーヴァードを憎むマスターレイス様が俺になんの話だ?』
黒須『お前じゃない。“もう一人のお前”だ』
月『お前、こいつの戦闘用人格を知って…!』
空『ハン! 残念だが宿主はいないぜ!! マスターだか何だか知らないが、邪魔する奴は敵だぁ!!』
黒須『貴様に用はない。少々無理やりだが…引き摺り出させてもらうぞ』
GM「ここで黒須は《カームダウン3》を発動させる。シーン中…この場にいるキャラ全員、あらゆる判定のダイスが6個減るぞ。
そして、黒須から高レネゲイドが発せられる。マスターレイス、その称号を持つ者に相応しい圧倒的な力を君達二人は嫌でも感じ取ってしまう。
ここで難易度9による『衝動判定』が起こるが、同時にEロイス『堕落の誘い』を発動させる。衝動判定に失敗すると、浸食率99%以下でも即座に100%となる。その状態で衝動判定分の浸食率2Dを合わせる事になる」
ムーン「ちょ、ちょっと待てよ…衝動判定って、俺のダイス浸食ボーナス合わせて4個だぞ? 振れないんだけど?」
クウ「俺もダイス振れないんだけど、どうなるんだよ…?」
GM「その場合は自動失敗。〈暴走〉のバッドステータスと共に、二人とも浸食率100%の状態で2D分の浸食率を上げて貰う」
ムーン「嘘だろ!? 何でこんな事に!?」
クウ「お前の所為だろ!? 俺までとばっちりじゃねーか!!」
GM「いいから振れ!」
ムーン&クウ「「ううっ…!」」
《浸食率増加》
月2D→13 100%→113%
空2D→9 100%→109%
ムーン「やべぇ…やべぇぞおれ…!」
グラッセ「ムーン、気をしっかり持ってくれ!?」
クウ「俺も厳しいなー、ははは」
ツバサ「? …その割に、師匠なんか落ち着いてない?」
SM(うまい具合に切り抜けたね、GM)
GM(ムーンの所為で一人キャラロストになる所だったけどね…! 時たまいるよね、こういう奴)
SM(あー、実卓クトゥルフでKPやった作者もそれで頭パーンになったからねー)
GM(明らかに相手は敵で捕まえようとしているのに、リアル言いくるめで味方につけようとする、なんて無茶振りよりかはよっぽどマシだ…! こっちは逃げて欲しいから逃げ道を作ったのに、あえて友好的な態度を崩さずに踏み止まろうとする…下手すりゃ開始そうそうでそのまま脳味噌缶詰されてキャラロストだってのにぃ…)
SM(ってGM、作者の心の叫びが混じってるぞ!?)
ツバサ「…えーと、お取込み中なら、ボク黒須さんやっていい?」
SM「お、おう。やっててくれ。今ちょっと変な電波が混じっているからな…」
月『ぐぅ、ああぁ…!!』
空『がぁ! 止めろ…止めろぉ…!!』
黒須の圧力に負けたのか、月もその場に崩れ落ちて二人はその身に宿るレネゲイドウイルスによって引き起こされる衝動に飲み込まれてしまった。
黒須『少々やり過ぎたか? まあいい…七雲空、本来の人格か?』
そう黒須が話しかけた途端、頬に何かが横切る。
指で触ると軽い切り傷が出来ており、薄っすらと血が滲む。目を向けると、空が大鎌を握って憎々し気に睨んでいる。
更にその後ろには、月が鋭利な爪を伸ばして笑顔を浮かべている。あまりにも引き攣った、歪んだ笑みを。
月『ア、アハハ…! お前、強いじゃねーか…俺と勝負しろよ、こんな弱い奴…全然楽しくないんだよぉ!!!』
空『憎い…何もかもが憎い…!! 何でだよ何でだよ…何でお前らがぁぁぁ!!!』
闘争と憎悪。二つの感情を宿し、黒須へと襲い掛かる。
黒須『失せろ』
直後、黒須を中心に高電圧がドームとなって放出される。
攻撃だけを視野に入れていた二人は防御も出来ずに直撃し、黒須に振れる事無くそのまま白い煙を上げて崩れ落ちた。
黒須『…やり過ぎたか。まあ、命までは奪わない。貴様は勝手に自滅しろ』
月にだけ憎々し気に吐き捨てると、ふと顔を上げる。
志武谷全体に張ってあった《ワーディング》が消えたのを感知したのだ。
黒須『町の戦闘も終了しているな。時期に救援が来るか…ここはレネゲイドビーイングからの連絡を待つか』
そうして、黒須はその場を去る。
後に残されたのは、電撃によって気絶した少年と男性だけだった。