ミドルフェイズ5(ハンドアウトシーン)
三人「「「…ええええええっ!!?」」」
クウ「ってな感じで、俺のRハンドアウトを公開するぜ」
PC3 七雲空用Rハンドアウト
ロイス:トワイライトディスト 推奨感情(P執着/N敵愾心)
文化祭の前日、君は闇代陸と共に符宴の施設に残っていたデータを漁っていると【ダークカオス】の一員が襲い掛かった。
コードネームは“トワイライトディスト”。従者使いの少女で、凍矢の義理の姉と名乗った彼女。君は彼女に襲われ、血を飲まれた事で大切な人――天義星華を模った従者が生み出されてしまった。
姿だけでなく能力までも模った従者を作り出した彼女の力は非情に脅威だ。しかも、天義星華の姿をした従者が作られたと同時に、君にとって大切な人との繋がりが感じられなくなってしまう。やがて少女とともに従者もその場を去ってしまう。君は彼女の情報収集を陸に任せ、二人の足取りを追う事に専念する。
*公開条件:他PCから天義星華の人物の目撃情報を聞いたら、いつでも公開できる。
*このRハンドアウト公開後〈“トワイライトディスト”について〉が調べられるようになる。
*公開した後、Eロイス《砕け散る絆》の効果を適応。ロイス欄から天義星華のロイスを消去する事。
ツバサ「こ、こんなRハンドアウトだったの!?」
グラッセ「でもこれ、星華さんのロイスを持っていなかったら他の人物になっていたって事ですよね?」
GM「そこら辺は空を信用していたからね。Sロイスも星華から変わらないと思ってたし」
クウ「で、こいつを公開したから俺のSロイスは除外されるんだよな…まあ前回みたく解除条件があるんだろ?」
GM「もちろん。ではここからハンドアウトシーンが変わるが、浸蝕率はあげなくていいよ」
クウ「回想シーンみたいな感じなんだな。これは助かるぜ」
時間は、昨日にまで遡る。
二つ目の事件――戦闘用人格事件の時に首謀者である符宴と戦った施設。UGNによって接収されたのか、最初に来た時より設備が無くなって物寂しい感じになっている。
この場所に空は、護衛として陸と共に来ていた。
「お前達は、『インフィニティコード』を知っているか?」
「インフィニティコード?」
施設の奥にあった一つのコンピューター。キーボードを叩きながら質問する陸。その問いに、空は首を傾げる。
「インフィニティコード――“無限の始源”と呼ばれていて、レネゲイドに関するFHで行われているプロジェクトだ。その計画を実行しているのが、アルフレッド・J・コードウェル博士。お前達も知っている筈だ」
「…UGNの創立者であり、FHに鞍替えした幹部だろ」
「今の所分かっているのは、インフィニティコードは一つではない。ゼノスのプランナー、都築京香の齎す“プラン”のように幾つも張り巡らされている。そして…計画ごとにレネゲイドが齎す衝動の名前がつき、世界を変革させる実験が行われている」
(衝動?)
蒼空が疑問を呟くが、陸は答えない。当然だ、彼は人間…オーヴァードにしか聞こえない《シークレットトーク》を経由しても話は出来ない。
だが代わりに、空が内側の人格に対して疑問に答える。
「レネゲイドに発症した際、オーヴァードに齎される衝動は全部で12種類に分けられる。順に、解放・吸血・飢餓・殺戮・破壊・加虐・嫌悪・闘争・妄想・自傷・恐怖・憎悪ってさ」
「そうだな。かつて刻ヶ峰を中心に起こった遺産を使った事件があったが、実態は“飢餓のインフィニティコード”と呼ばれる大規模な実験だった。ウロボロスシンドロームが初めて見つかった風峰市の事件は、インフィニティコードに関連していた。そして、今俺達が関わっているのが――“解放”のインフィニティコードだ」
(解放…?)
「前に冷牙の戦いで、翼が変な暴走を起こしただろ? 解放の衝動にさらされると、あんな感じになるんだよ」
まだ記憶に新しい冷牙との戦い前の出来事。レネゲイドに耐え切れず翼が暴走してしまい、力を惜しみなく使い出した。幸い暴走はすぐに収まったが。
陸もその場にいた一人なので、小さく頷いて相槌を打つ。
「…奴らが何をしようとしているか分からないが、FHの重役が動いているのは確かだ。とにかく調べる必要が…ん?」
「どうした?」
急にキーボードを打つ手を止める陸に、空が声を掛ける。
すると陸は、プロテクトのかかった画面を見せた。
「…ここからの情報は秘匿になっていて、普通のパスワードでは開かない構成にされている」
「方法は?」
「ちょっとした遺伝子検査らしい。どうやら、接続されている試験管に体液を入れて遺伝子を分析するようだ。ここを使っていた相手はエグザイルとソラリス…冷牙もエグザイルだった事を考えると、遺伝子検査と言う方法が使えるな」
「遺伝子って、敵のだよな。もうお手上げじゃねーか…」
「UGNもそれを感じて、この設備に手を出さなかったようだな。だが、方法は無い訳じゃない」
「へぇ、流石は社長様。で、どうするんだ?」
「簡単だ――拳銃に撃たれろ」
「(ハイィ!?)」
真顔で懐から拳銃を取り出して銃口を向ける陸に、空だけでなく蒼空まで叫ぶ。
だが、陸は至極真剣な目で空に語り掛ける。
「お前は奴らの研究の実験体。更に言えば、符宴と同じ戦闘用人格。つまり、お前の遺伝子そのものがパスワードになるという事だ。そう言う訳だから血を寄越せ」
「おい待てぇ!? 俺はブラム=ストーカーだぞ!? お前が攻撃しなくても血ぐらい出してやれるっての!!」
「冷牙に融合されてたとはいえ、俺の体ごと散々大鎌で切り刻んだ事など微塵に思っていない」
「私怨ありまくりだなおいぃ!!! しかも攻撃したのは俺じゃなくて宿主の方じゃねーか!!!」
(月が長い間こいつに恨みを持ってた理由が垣間見えた気がする…!!)
二人が騒ぐが、陸は既に聞く耳を持っていない。その証拠に、銃の安全装置を外してる。
「安心しろ、急所は外す」
「そう言う問題(バァン!)いでーーー!!?」
空の抵抗も虚しく、腕を掠るように撃たれた。
「――よし、見立て通り解除出来た。とは言え、一部しか開けなかったな…」
「ソウデスカーソリャヨカッタナー」
空の血を採取した事によってプロテクトが解かれた画面を操作する陸。一方、空は後ろで遠い目になって棒読みで言い放つ。
そのまま陸がキーボードを叩き続けると、1つのファイルを見つける。
「…“光”、か?」
「え? それって何だ――」
「困るな――これ以上妾達の素性を漁るのは」
頭上から聞こえた少女の声。同時に突き刺さる、殺気。
(相棒!)
「分かってる!」
蒼空に言われる前に、空は陸を庇いながら血の大剣を作って振り下ろす。
重量のある武器によって作られた風圧と共に、黒い複数の刃が地面に叩き伏せられる。
だが、背後のコンピュータまでは庇えず複数の刃が突き刺さって火花を撒き散らしてしまった。
「すまない…!」
不覚を取られた事に陸が謝るが、空は無視して攻撃の飛んできた方向を見る。
すると、暗闇に染まった頭上から茶髪に金色の目の黒コートを纏った子供が降り立った。黒コートからでも分かるほど胸が大きいのを見るに、性別は女性だと分かる。
「血を操る…なるほど、貴方が“ブラッドエッジ”か?」
(黒コート! まさか、【ダークカオス】か!)
「ご名答、実験体――妾は『トワイライトディスト』。海命凍矢…いや、うちの愚弟が世話になっているそうじゃな」
(愚弟…まさか、凍矢が言ってた義理の姉ってお前か?)
「いかにも。妾は海命ゼノ…いや、こんな憎たらしい苗字などもう語る必要なかったな」
前に凍矢の身の内話を聞いていた為、蒼空が質問するが少女はクスクス笑いながら答える。
その態度に、空は少女を睨みながら大剣を肩に担ぐ。
「…何の用だ? 仲間になれって話なら、俺だろうがお断りだぞ?」
「仲間? ハッ、自分を過大評価しているようで。まあ、話があるのは認めるが」
「話なんているかぁ!!」
一喝して大剣を振り下ろしながら一気に迫る。
ゼノを切り捨てようと振るう刃。だが、その刃はゼノの影から現れた黒コートが身代わりのように受け止めた。
「おお、怖い怖い。こーんなか弱いレディに斬りかかるなんて」
黒コートに守られながら、芝居がかった口調でゼノが挑発する。
彼女を守る黒コートは、顔がない。いや、顔どころか生気もない。
空は直感で見破る。ゼノを守るコレの正体、それはブラム=ストーカーしか使えない使い魔を呼び出す技。
「――従者!」
「ふふ、流石はブラム=ストーカー。妾の使う能力を理解するだけの頭はあると言う訳か」
「ちっ!」
「そう身構えるな、貴様に関しては宣戦布告で済ませるつもりだ。でも、その前に――」
ゼノが手を動かすと、黒い刃が空の肩を貫らぬく。その衝撃で、空の血が辺りに飛び散る。
「ッ…!」
(相棒!?)
相手の不意打ちに、思わず負傷した肩を抑える空。
ゼノはと言うと、飛んできた空の血を器用に指に付ける。そのまま口に持っていくと血を舐めた。
「ふむ…純血(ピュアブラム)の血と言うのはまた格別ね」
「俺の血を…!」
「貴様は盟主の為に行った計画の一部。だが、既に妾達の手から外れた存在。だから、近い内に潰しにかからせて貰うぞ」
「潰すだぁ? 上等だ、俺もお前達にはうんざりしていたんだ…近い内と言わず、今ここで始末してやる!!」
自分の血を舐めると言う行動に一瞬引いたが、再び襲い掛かる空。
「ふん。舐めて貰っては困る」
その言葉と同時に、再び大剣が防がれる。
だが、空の攻撃を防いだ人形の従者ではなく、ガンブレードの刃だった。
(星、華…?)
目の前で鍔迫り合いしているのは、殺した筈の星華。
気を取られた隙を見計らい、星華は空の懐に入り込み思いっきり薙ぎ払った。
「っ――!」
「空!」
吹き飛ばされた空に、陸が駆けつける。そんな二人に、ゼノは星華の後ろで笑い出す。
「どうだ、大切な人を模した妾特性の従者は? 懐かしいであろう?」
「悪趣味だな…!」
(…相棒)
「宿主?」
(変われ。あいつは…俺が殺す)
普段の温厚な性格なら言わないような台詞を吐き捨てる蒼空。内側に引っ込んで何も出来ない筈なのに、勝手に憎悪が湧き上ってくる。
「おい、宿主…!?」
(俺の大事な恋人の記憶を勝手に奪われて利用しようとしているんだぞ!? このままにしておけるかぁ!!!)
蒼空の訴えに、空も気づく。自分の中にある筈の、天義星華の繋がりともなる想いが消えかけている事に。
この事実に気づいていると、星華は嬉しそうに笑う。
「まあ、そんなに私の事を大切に思ってくれているの? ふふ、あなたはやっぱり優しいのね――なら、遠慮なく殺されてくれるわよね?」
そうして空の前に躍り出ると、心臓目掛けて剣を突き出す。
空はその突きを間一髪で防ぎきり、大剣を振るって弾いて星華との間合いを作る。
「お断りに決まってるだろ!」
「あら、私を殺しておいて? 普通憎まれないのがおかしいじゃない。恋人に殺しておいて、本人はのうのうと生きているなんて私は許せない…。ねえ蒼空、あなたなら分かるでしょ? 私は星華としての人格を持っているし、記憶だってあるわ。信じてないなら最後の言葉、言ってあげましょうか。空、愛し」
「黙れ」
低い声で呟き、星華に持っている“大鎌”を突き付ける。
誰が見ても完全に怒り心頭しており、彼の“赤い瞳”がより鋭くなる。
「星華の姿で、耳障りな戯言吐くな。聞いてて憎たらしくなるだろ…っ!?」
(やど、ぬし…!?)
勝手にレネゲイドを上昇させて人格を無理やり入れ替えた蒼空は、空を無視して攻撃を仕掛ける。
だが、二人は攻撃を軽々と避けて見下した目を向けてきた。
「ふん。これでも妾は忙しい身、ここで失礼する。こいつも使い、舞台を作らねばなるまいからな」
その言葉と共に、ゼノと星華はその場から消え去った。
「待ちやがれぇ!?」
「空、いや蒼空! まずはレネゲイドを落ち着かせて人格を戻せ! それとここからは別行動だ。俺は奴についてのデータを調べる、お前は足で奴らの足取りを追え!」
「…分かったよ!」
GM「これでハンドアウトシーンは終了だ。あ、シナリオロイスも書き換えておいてくれ」
クウ「シナリオロイスが陸だったから…トワイライトディストに変更っと。表は敵だからNだな」
GM「では、通常のシーンに戻ろうか」
クウ「ってな感じで、俺のRハンドアウトを公開するぜ」
PC3 七雲空用Rハンドアウト
ロイス:トワイライトディスト 推奨感情(P執着/N敵愾心)
文化祭の前日、君は闇代陸と共に符宴の施設に残っていたデータを漁っていると【ダークカオス】の一員が襲い掛かった。
コードネームは“トワイライトディスト”。従者使いの少女で、凍矢の義理の姉と名乗った彼女。君は彼女に襲われ、血を飲まれた事で大切な人――天義星華を模った従者が生み出されてしまった。
姿だけでなく能力までも模った従者を作り出した彼女の力は非情に脅威だ。しかも、天義星華の姿をした従者が作られたと同時に、君にとって大切な人との繋がりが感じられなくなってしまう。やがて少女とともに従者もその場を去ってしまう。君は彼女の情報収集を陸に任せ、二人の足取りを追う事に専念する。
*公開条件:他PCから天義星華の人物の目撃情報を聞いたら、いつでも公開できる。
*このRハンドアウト公開後〈“トワイライトディスト”について〉が調べられるようになる。
*公開した後、Eロイス《砕け散る絆》の効果を適応。ロイス欄から天義星華のロイスを消去する事。
ツバサ「こ、こんなRハンドアウトだったの!?」
グラッセ「でもこれ、星華さんのロイスを持っていなかったら他の人物になっていたって事ですよね?」
GM「そこら辺は空を信用していたからね。Sロイスも星華から変わらないと思ってたし」
クウ「で、こいつを公開したから俺のSロイスは除外されるんだよな…まあ前回みたく解除条件があるんだろ?」
GM「もちろん。ではここからハンドアウトシーンが変わるが、浸蝕率はあげなくていいよ」
クウ「回想シーンみたいな感じなんだな。これは助かるぜ」
時間は、昨日にまで遡る。
二つ目の事件――戦闘用人格事件の時に首謀者である符宴と戦った施設。UGNによって接収されたのか、最初に来た時より設備が無くなって物寂しい感じになっている。
この場所に空は、護衛として陸と共に来ていた。
「お前達は、『インフィニティコード』を知っているか?」
「インフィニティコード?」
施設の奥にあった一つのコンピューター。キーボードを叩きながら質問する陸。その問いに、空は首を傾げる。
「インフィニティコード――“無限の始源”と呼ばれていて、レネゲイドに関するFHで行われているプロジェクトだ。その計画を実行しているのが、アルフレッド・J・コードウェル博士。お前達も知っている筈だ」
「…UGNの創立者であり、FHに鞍替えした幹部だろ」
「今の所分かっているのは、インフィニティコードは一つではない。ゼノスのプランナー、都築京香の齎す“プラン”のように幾つも張り巡らされている。そして…計画ごとにレネゲイドが齎す衝動の名前がつき、世界を変革させる実験が行われている」
(衝動?)
蒼空が疑問を呟くが、陸は答えない。当然だ、彼は人間…オーヴァードにしか聞こえない《シークレットトーク》を経由しても話は出来ない。
だが代わりに、空が内側の人格に対して疑問に答える。
「レネゲイドに発症した際、オーヴァードに齎される衝動は全部で12種類に分けられる。順に、解放・吸血・飢餓・殺戮・破壊・加虐・嫌悪・闘争・妄想・自傷・恐怖・憎悪ってさ」
「そうだな。かつて刻ヶ峰を中心に起こった遺産を使った事件があったが、実態は“飢餓のインフィニティコード”と呼ばれる大規模な実験だった。ウロボロスシンドロームが初めて見つかった風峰市の事件は、インフィニティコードに関連していた。そして、今俺達が関わっているのが――“解放”のインフィニティコードだ」
(解放…?)
「前に冷牙の戦いで、翼が変な暴走を起こしただろ? 解放の衝動にさらされると、あんな感じになるんだよ」
まだ記憶に新しい冷牙との戦い前の出来事。レネゲイドに耐え切れず翼が暴走してしまい、力を惜しみなく使い出した。幸い暴走はすぐに収まったが。
陸もその場にいた一人なので、小さく頷いて相槌を打つ。
「…奴らが何をしようとしているか分からないが、FHの重役が動いているのは確かだ。とにかく調べる必要が…ん?」
「どうした?」
急にキーボードを打つ手を止める陸に、空が声を掛ける。
すると陸は、プロテクトのかかった画面を見せた。
「…ここからの情報は秘匿になっていて、普通のパスワードでは開かない構成にされている」
「方法は?」
「ちょっとした遺伝子検査らしい。どうやら、接続されている試験管に体液を入れて遺伝子を分析するようだ。ここを使っていた相手はエグザイルとソラリス…冷牙もエグザイルだった事を考えると、遺伝子検査と言う方法が使えるな」
「遺伝子って、敵のだよな。もうお手上げじゃねーか…」
「UGNもそれを感じて、この設備に手を出さなかったようだな。だが、方法は無い訳じゃない」
「へぇ、流石は社長様。で、どうするんだ?」
「簡単だ――拳銃に撃たれろ」
「(ハイィ!?)」
真顔で懐から拳銃を取り出して銃口を向ける陸に、空だけでなく蒼空まで叫ぶ。
だが、陸は至極真剣な目で空に語り掛ける。
「お前は奴らの研究の実験体。更に言えば、符宴と同じ戦闘用人格。つまり、お前の遺伝子そのものがパスワードになるという事だ。そう言う訳だから血を寄越せ」
「おい待てぇ!? 俺はブラム=ストーカーだぞ!? お前が攻撃しなくても血ぐらい出してやれるっての!!」
「冷牙に融合されてたとはいえ、俺の体ごと散々大鎌で切り刻んだ事など微塵に思っていない」
「私怨ありまくりだなおいぃ!!! しかも攻撃したのは俺じゃなくて宿主の方じゃねーか!!!」
(月が長い間こいつに恨みを持ってた理由が垣間見えた気がする…!!)
二人が騒ぐが、陸は既に聞く耳を持っていない。その証拠に、銃の安全装置を外してる。
「安心しろ、急所は外す」
「そう言う問題(バァン!)いでーーー!!?」
空の抵抗も虚しく、腕を掠るように撃たれた。
「――よし、見立て通り解除出来た。とは言え、一部しか開けなかったな…」
「ソウデスカーソリャヨカッタナー」
空の血を採取した事によってプロテクトが解かれた画面を操作する陸。一方、空は後ろで遠い目になって棒読みで言い放つ。
そのまま陸がキーボードを叩き続けると、1つのファイルを見つける。
「…“光”、か?」
「え? それって何だ――」
「困るな――これ以上妾達の素性を漁るのは」
頭上から聞こえた少女の声。同時に突き刺さる、殺気。
(相棒!)
「分かってる!」
蒼空に言われる前に、空は陸を庇いながら血の大剣を作って振り下ろす。
重量のある武器によって作られた風圧と共に、黒い複数の刃が地面に叩き伏せられる。
だが、背後のコンピュータまでは庇えず複数の刃が突き刺さって火花を撒き散らしてしまった。
「すまない…!」
不覚を取られた事に陸が謝るが、空は無視して攻撃の飛んできた方向を見る。
すると、暗闇に染まった頭上から茶髪に金色の目の黒コートを纏った子供が降り立った。黒コートからでも分かるほど胸が大きいのを見るに、性別は女性だと分かる。
「血を操る…なるほど、貴方が“ブラッドエッジ”か?」
(黒コート! まさか、【ダークカオス】か!)
「ご名答、実験体――妾は『トワイライトディスト』。海命凍矢…いや、うちの愚弟が世話になっているそうじゃな」
(愚弟…まさか、凍矢が言ってた義理の姉ってお前か?)
「いかにも。妾は海命ゼノ…いや、こんな憎たらしい苗字などもう語る必要なかったな」
前に凍矢の身の内話を聞いていた為、蒼空が質問するが少女はクスクス笑いながら答える。
その態度に、空は少女を睨みながら大剣を肩に担ぐ。
「…何の用だ? 仲間になれって話なら、俺だろうがお断りだぞ?」
「仲間? ハッ、自分を過大評価しているようで。まあ、話があるのは認めるが」
「話なんているかぁ!!」
一喝して大剣を振り下ろしながら一気に迫る。
ゼノを切り捨てようと振るう刃。だが、その刃はゼノの影から現れた黒コートが身代わりのように受け止めた。
「おお、怖い怖い。こーんなか弱いレディに斬りかかるなんて」
黒コートに守られながら、芝居がかった口調でゼノが挑発する。
彼女を守る黒コートは、顔がない。いや、顔どころか生気もない。
空は直感で見破る。ゼノを守るコレの正体、それはブラム=ストーカーしか使えない使い魔を呼び出す技。
「――従者!」
「ふふ、流石はブラム=ストーカー。妾の使う能力を理解するだけの頭はあると言う訳か」
「ちっ!」
「そう身構えるな、貴様に関しては宣戦布告で済ませるつもりだ。でも、その前に――」
ゼノが手を動かすと、黒い刃が空の肩を貫らぬく。その衝撃で、空の血が辺りに飛び散る。
「ッ…!」
(相棒!?)
相手の不意打ちに、思わず負傷した肩を抑える空。
ゼノはと言うと、飛んできた空の血を器用に指に付ける。そのまま口に持っていくと血を舐めた。
「ふむ…純血(ピュアブラム)の血と言うのはまた格別ね」
「俺の血を…!」
「貴様は盟主の為に行った計画の一部。だが、既に妾達の手から外れた存在。だから、近い内に潰しにかからせて貰うぞ」
「潰すだぁ? 上等だ、俺もお前達にはうんざりしていたんだ…近い内と言わず、今ここで始末してやる!!」
自分の血を舐めると言う行動に一瞬引いたが、再び襲い掛かる空。
「ふん。舐めて貰っては困る」
その言葉と同時に、再び大剣が防がれる。
だが、空の攻撃を防いだ人形の従者ではなく、ガンブレードの刃だった。
(星、華…?)
目の前で鍔迫り合いしているのは、殺した筈の星華。
気を取られた隙を見計らい、星華は空の懐に入り込み思いっきり薙ぎ払った。
「っ――!」
「空!」
吹き飛ばされた空に、陸が駆けつける。そんな二人に、ゼノは星華の後ろで笑い出す。
「どうだ、大切な人を模した妾特性の従者は? 懐かしいであろう?」
「悪趣味だな…!」
(…相棒)
「宿主?」
(変われ。あいつは…俺が殺す)
普段の温厚な性格なら言わないような台詞を吐き捨てる蒼空。内側に引っ込んで何も出来ない筈なのに、勝手に憎悪が湧き上ってくる。
「おい、宿主…!?」
(俺の大事な恋人の記憶を勝手に奪われて利用しようとしているんだぞ!? このままにしておけるかぁ!!!)
蒼空の訴えに、空も気づく。自分の中にある筈の、天義星華の繋がりともなる想いが消えかけている事に。
この事実に気づいていると、星華は嬉しそうに笑う。
「まあ、そんなに私の事を大切に思ってくれているの? ふふ、あなたはやっぱり優しいのね――なら、遠慮なく殺されてくれるわよね?」
そうして空の前に躍り出ると、心臓目掛けて剣を突き出す。
空はその突きを間一髪で防ぎきり、大剣を振るって弾いて星華との間合いを作る。
「お断りに決まってるだろ!」
「あら、私を殺しておいて? 普通憎まれないのがおかしいじゃない。恋人に殺しておいて、本人はのうのうと生きているなんて私は許せない…。ねえ蒼空、あなたなら分かるでしょ? 私は星華としての人格を持っているし、記憶だってあるわ。信じてないなら最後の言葉、言ってあげましょうか。空、愛し」
「黙れ」
低い声で呟き、星華に持っている“大鎌”を突き付ける。
誰が見ても完全に怒り心頭しており、彼の“赤い瞳”がより鋭くなる。
「星華の姿で、耳障りな戯言吐くな。聞いてて憎たらしくなるだろ…っ!?」
(やど、ぬし…!?)
勝手にレネゲイドを上昇させて人格を無理やり入れ替えた蒼空は、空を無視して攻撃を仕掛ける。
だが、二人は攻撃を軽々と避けて見下した目を向けてきた。
「ふん。これでも妾は忙しい身、ここで失礼する。こいつも使い、舞台を作らねばなるまいからな」
その言葉と共に、ゼノと星華はその場から消え去った。
「待ちやがれぇ!?」
「空、いや蒼空! まずはレネゲイドを落ち着かせて人格を戻せ! それとここからは別行動だ。俺は奴についてのデータを調べる、お前は足で奴らの足取りを追え!」
「…分かったよ!」
GM「これでハンドアウトシーンは終了だ。あ、シナリオロイスも書き換えておいてくれ」
クウ「シナリオロイスが陸だったから…トワイライトディストに変更っと。表は敵だからNだな」
GM「では、通常のシーンに戻ろうか」