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ダブルクロスThe 3rd Edition【Promise in the Guilty】

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INDEX

  • あらすじ
  • 01 人物紹介
  • 02 セッション準備編
  • 03 PC1紹介
  • 04 PC2紹介
  • 05 PC3紹介
  • 06 PC4紹介
  • 07 オープニングフェイズ1
  • 08 オープニングフェイズ2&3
  • 09 ミドルフェイズ1
  • 10 ミドルフェイズ2
  • 11 ミドルフェイズ3(前編)
  • 12 ミドルフェイズ3(後編)
  • 13 ミドルフェイズ4
  • 14 ミドルフェイズ4(FS判定・1)
  • 15 ミドルフェイズ4(FS判定・2)
  • 16 ミドルフェイズ4(FS判定・3)
  • 17 ミドルフェイズ5(前編)
  • 18 ミドルフェイズ5(ハンドアウトシーン)
  • 19 ミドルフェイズ5(後編)
  • 20 ミドルフェイズ6&7(前編)
  • 21 ミドルフェイズ7(ハンドアウトシーン&後編)
  • 22 ミドルフェイズ8(前編)
  • 23 ミドルフェイズ8(後編)
  • 24 ミドルフェイズ9(前編)
  • 25 ミドルフェイズ9(ハンドアウトシーン&後編)
  • 26 ミドルフェイズ10
  • 27 ミドルフェイズ11&12(前編)
  • 28 ミドルフェイズ12(ハンドアウトシーン&後編)
  • 29 ミドルフェイズ13
  • 30 クライマックスフェイズ1
  • 31 クライマックスフェイズ2
  • 32 クライマックスフェイズ3
  • 33 クライマックスフェイズ4
  • 34 クライマックスフェイズ5
  • 35 クライマックスフェイズ6
  • 36 クライマックスフェイズ7&バックトラック
  • 37 エンディングフェイズ1
  • 38 エンディングフェイズ2
  • ミドルフェイズ3(後編)


     致命傷を負った凍矢に、全員が悲鳴を上げる。
     混乱や恐怖が平和だったこの場を浸透する。誰もが凍矢や星華から距離を取るが、羽粋だけは涙目になって傍にしゃがんで揺さぶる。

    羽粋『凍矢、凍矢ぁ!! しんじゃやだ、とうや…!』

     その時、変化が起きる。

    生徒1『お、おい…!』

    生徒2『うそでしょ…!』

     凍矢に付けられた傷が見る見るうちに癒えていく。
     完全とはいかないがある程度塞がった所で、顔を歪めながら凍矢は起き上がった。
     大勢から放たれる、驚愕の視線をその体に受けながら。

    凍矢『――これで、満足ですか…!』

    月『グラッセ、お前…!』

    生徒3『生き返った!?』

    生徒4『本当に、化け物…!?』

    星華『あらあら、怯える必要はないわよ? だって…化け物は今の所、彼一人ですもの。数はあなた達が圧倒的に勝っている。排除するなら、今よ』


    SM「ここでEロイス『歪んだ囁き』と『傲慢な理想』を2つ分使う。歪んだ囁きの効果でシーンの舞台となっている学園にいる非オーヴァード全員が“エフェクトを使った黒コート以外のオーヴァード”の感情を【N:迫害】に変更するぞ!」

    ツバサ「非オーヴァードって、まさか羽粋とエリーも!?」

    SM「当たり前じゃ」

    三人「「「うわああああああ!!! ロクな事がなーーーい!!!」」」


    男性『来るな、化け物!!』

    女性『誰かあいつを追い出して!』

    生徒『殺せ!』

    月『お、おいお前ら!!』

     人々が抱いてしまった恐れは瞬く間に拡散し、凍矢へと悪意の感情をぶつける。
     その感情は、真実を知っていても対抗する術もないただの人間の心にも容赦なく浸透する。

    エリー『い、いやぁ!! 翼、あいつをやっつけて!!』

    翼『エリー!? 落ち着いて、凍矢はボクと同じオーヴァードだよ! 怖がる必要なんてどこにもないでしょ!?』

    羽粋『あ、あぁあ…!』


    SM「羽粋のロイスがタイタスになるか、その前に大勢の奴らに八つ裂きに殺されるか、どちらが先になるかのぅ?」

    ムーン「グラッセの身も心をこれ以上傷つける訳にはいかねぇ! 俺も空みたく羽粋に当て身を喰らわせて《ディメンジョンゲート》で体育館から脱出出来るか!?」

    GM「月、イージーでもエフェクトを使ったら、凍矢のように学園にいる大勢の人物から敵視されるがいいのかい?」

    ムーン「構うか! 周りよりグラッセが最優先だ!」

    グラッセ「ムーン…!」

    SM「ふん、緊急時は無理であろう? 今の騒動の中で出来るとはとても思えんのぉ」

    ムーン「くそっ!」

    ツバサ「だったら、ボクが《ショート》を使って体育館の照明を全部壊して全員の目を引き付ける! その間なら逃げられるよね!」

    SM「ふむ。壊すのは構わぬが、全部は無理だぞ」

    ツバサ「ねえSM…『並列回路』って知ってる?」

    SM「へ、並列回路?」

    グラッセ「…何だったっけ?」

    ツバサ「小学校の理科の授業で習う、並列つなぎ、直列つなぎを大人にした言い方かな。直列回路は各部位に流れてくる電流を同じ分だけ流す。並列回路は各部品にかかる電圧を均等に同じにする事で負荷を軽減させる。小学校卒業した人なら、電球と電線と電池を使って実験した事ある筈だよね」

    クウ「あ〜…うっすらとそんな記憶が…」

    ムーン「てかもう俺、小学校の授業とか思い出せないんだけど…」

    SM「そ、それと照明を壊すのにどんな繋がりが」

    ツバサ「あるよ。体育館の照明…ていうか、建物はもちろん、家庭の家で使う天井の照明って全部平行回路を使っているんだ。直列回路だと、全部に同じ電流を流すから燃費は掛かるしすぐ機械が駄目になる。けど、平行回路だと部品が違ってもそれぞれの電圧に調整出来るから長持ちする仕組みなんだ。ちなみに、直列回路を見つけたのはエジソンだけど、平行回路を見つけたのはまた別の人物って言われているよ」

    SM「は、はぁ…?」

    ツバサ「言ってみれば、照明は電線で全部繋がっている――そこに過度の電流を流せば、ぜーんぶ破壊出来るよね?」

    SM「そ、そんな事が可能なわけが――!」

    ツバサ「雷落ちたら、停電になる時あるよね? それは設備でも耐える事が出来ない過度な電圧がかかってしまった所為なんだ。あと、下手すればコンセントに繋いでいた機械も全部壊れたりするでしょ? 平行回路だから、直接過度な電流と電圧が機械に平等にかかって壊れる仕組みだよ。機械一つ壊せるくらいの電流を――雷並みの電流流すんだから、僕が出来ない道理はないよねー?」

    SM「う、うぐぐぐぐ…!!!」

    グラッセ「リアルノイマン…リアルノイマンがここにいますよ…!」

    クウ「いやこれクトゥルフで言うと《言いくるめ》だから。ウィドがよくやってる奴だから」

    ムーン「見慣れてるから、そこまで落ち着いてるんだなお前…」

    GM(本来、逃げ出す判定で体育館内にいる凍矢と月には【肉体】の難易度12に挑戦して貰う予定だったが…翼の提案は論が通ってるし、なによりSMが困ってるし、このまま黙っておこうか)

    SM「そ、そこまで言うなら〈RC〉で判定じゃ! 難易度は10にしておいてやる!」

    ツバサ「エフェクト使いたいけど…素振りで行くよ!」


     〈RC〉判定
     3D+5→22 成功


    ツバサ「いよっし!」

    ムーン「よくやった、翼! 遠慮なく《ディメンジョンゲート》使うぜ、浸蝕率61%!」


     凍矢と月のピンチに、真っ先に動いたのは翼だった。

    エリー『翼、どこに行くの!?』

     慌てふためくエリーの声も無視して、体育館に入り込むと照明のスイッチがある壇上の舞台袖に駆け込む。
     すぐにスイッチを見つけるなり、翼は掌に電撃を発生させる。

    翼『ダアァ!』

     そのまま、半ば叩きつける様にしてスイッチと照明を繋ぐアースへと電撃を流し込む。
     直後、照明がショートして次々と蛍光灯が割れた。

    女性『きゃあああ!?』

    生徒『照明が!?』

     降り注ぐ蛍光灯の欠片に、凍矢を蔑んでいた人達が狼狽えて頭を覆う。
     この隙を見逃さず、月は羽粋の背後に回り込んで当て身を喰らわせる。

    月『悪い、羽粋!』

    羽粋『…ぁ…!』

    月『グラッセ!』

     すぐに羽粋を抱えると、凍矢の足元ごと真下に《ディメンジョンゲート》を開いた。

    凍矢『うわああぁ――!!』

     どうにか月の能力でその場から離脱する二人。翼はその様子を舞台袖から見守っていた。

    翼『良かった…』

    エリー『イ、イヤ…!』

     だが、そう簡単に終わらない。
     後ろからついてきたエリーの表情が、見る見る歪み出す。

    翼『エリー?』

    エリー『怖い…来ないで!』

    翼『エ、エリー!? ごめん!』

     恐れを抱いて逃げようとするエリーに、翼も慌てて腹を殴って気絶させた。

    生徒『今悲鳴が聞こえたぞ』

    女性『あっちで変な光が…』

    男性『化け物の仲間か!?』

    翼『マズ…!』

     騒ぎを聞きつけて壇上に駆け込む人達の動きに、翼はエリーを抱えて裏口から脱出した。


    GM「では、三人とも無事に逃げれた所でシーン終了しようか」



    グラッセ「何かもうどっちもどっちになってますよね…!」

    ツバサ「かたや組織のエリート暗殺集団。かたやトチ狂ったパニック集団――なんかもう、色々ヤバい状況だね…」

    ムーン「俺達の青春、どこに行ったんだ…?」

    GM「次に進みたい所だが…ここで一旦、マスターシーンを挟むよ」



     マスターシーン1 シーン7〈増幅する悪意〉


     あれから数分――口車による洗脳により、凍矢達を敵と認識した学園にいた人達が三人を探しに校舎内へと駆けまわる。
     今は誰もいなくなった体育館。そこに二人の黒コートを着た人物がいた。
     一人は外見からして胸の大きい少女。その傍らに立つのは、体格からして男性のようだ。

    「ククク…中々面白い事になってきたわ」

    「――そう仕向けたのはお前だろう」

    「何じゃ、妾に口答えするか? 貴方は何時から妾より偉くなったかのぉ?」

     少女が男性に対して意味ありげに言うと、これ以上の反論が出来ないのか押し黙ってしまう。

    「分かればよい――む?」

     再び視線を戻した所で、違和感に気づく。
     体育館の横の扉。それが勝手に開いたのだ。

    「良かった…誰もいない。ここならしばらく隠れられそう…もう、何がどうなっているの?」

     暗闇の中を手探りするように女子高生が体育館の壁を伝いながら入ってくる。
     明らかに洗脳が効いていない。この事実に少女は壇上から不機嫌そうに彼女の前に降り立った。

    「ふん、覚醒したばかりのオーヴァードか? よくジャームにならずに済んだな」

    「だ、誰!? あの女の仲間!?」

    「…貴女、中々に面白い力を持っておるな。宿しているのは役に立たんが、レネゲイドの力は一級品よ」

    「な、何を言って――!!」

    「どれ。その力、妾が解放してやろう」

     警戒心を露わにする女子高生に対し、少女は手を翳す。
     すると、彼女の胸元に赤い何かが突き刺さった。

    「い、いや…いやあああああああぁ!!!」

     心臓付近を貫かれたにも関わらず、彼女は痛みではなく自身の中の暴走するレネゲイドに悲鳴を上げる。
     この少女の行い、フードに隠れている男性の表情が歪む。

    「どこまで性根が腐っているんだ…!」

    「ふん。その辺の駒(どうぐ)をどう使おうが妾の勝手よ。それよりも、早く奴らを追いかけて始末しろ。貴方の力量なら簡単であろう?」

    「………」

     尚も続く無関係である筈の生徒の苦痛の悲鳴を無視するように、男性は黙ってその場を後にした。

    17/06/01 22:35 NANA   

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