ミドルフェイズ7(ハンドアウトシーン&後編)
グラッセ「ど、どういう事!?」
ムーン「こう言う事だ。さあ、これが俺のRハンドアウトだ!」
PC2 闇代月用Rハンドアウト
ロイス:エレクトロノイズ 推奨感情(P執着/N敵愾心)
文化祭の3日前。君はUGN日本支部長室に呼び出されて、極秘で霧谷雄吾から一つの情報を聞かされる。【ダークカオス】の一人、“エレクトロノイズ”が志武谷に潜伏してしまったとの事だ。
エレクトロノイズの正体は今も尚不明。性別も性格も外見も、誰も正体を突き止める事の出来ない潜入工作員と言う事らしい。
ただ、過去にUGNと交戦したデータがあり、建物内でひとたび能力が発動すると一般人の避難も出来ない状況になり、無関係の者を巻き込む程の戦いに発展するらしい。しかも人が多ければ多い程、最悪な方向に発揮するそうだ。
一般人も集まる文化祭が行動を実行する絶好のチャンスとなるだろう。君はその日に何としてでも大量の人物の中からエレクトロノイズを突き止めて凍矢達を、学園の人々を守らなければならない。
*公開条件:シーン内に他PCしかいない時のみ公開できる。
*もし他PC以外の人物が見ている状態で公開すると、エレクトロノイズにまで内容がバレてしまい正体を突き止める事が出来なくなる。
*このRハンドアウト公開後、〈“エレクトロノイズ”について〉が調べられる。
ツバサ「なるほどね。だから監視の目を潰す必要があったんだ」
グラッセ「しかも、月も事前に敵が潜入していた事を知っていた。だから星華さんが現れた時に知ってたような素振りを見せていたのか」
GM「では、月のハンドアウトシーンに入ろうか」
日にちは、3日前まで遡る。
昼を少し過ぎた辺りで、今も学園では文化祭の準備の真っ最中だと言うのに、月は《ディメンジョンゲート》で日本支部のある東京某所にやってきていた。
案内の人に支部長室に通され、今は霧谷と対峙するようにソファに座っている。
「闇代月さん。お忙しい所、日本支部までお呼び立ててしまいすみません」
「建前はいい。羽粋の護衛を一旦中止して至急本部まで来いって言われたが、今度は何の任務を言い渡されるんだ?」
「あなたを呼んだのは任務ではありません――極秘でお知らせしたい事が出来たのです」
「極秘?」
「最近志武谷で活動している【ダークカオス】と言うFHセルはご存知ですよね?」
「まあな。もうかれこれ何度もやりあっている」
自分達の街で活動しているFHセルを思い出しながら頷く月。すると、霧谷は深刻な表情で月に一つの情報を伝える。
「そのメンバーの一人――コードネーム“エレクトロノイズ”が志武谷に潜入したとの報告が上がりました」
「何!?」
「街に入り込む前に奴を倒そうとエージェント数名が襲撃をかけましたが、相手は《ワーディング》で逃げようとする人をあえて閉じ込める事でパニック集団を起こし戦況を混乱及び撹乱させられて、逆に部隊を壊滅させられました」
「そのやりようからして危険人物じゃねーか…! そいつは何処にいる!?」
「残念ながら足取りは不明です。ですが、目的は分かっています。奴は必ず、あなたの学園で行われる文化祭に現れるでしょう」
「文化祭?」
思わず眉を顰める月。だが、霧谷はは淡々と説明を続ける。
「エレクトロノイズは広大な建物、それも人が大勢いる場所で目撃されています。万が一見つかっても、自分の有利なフィールドで戦闘を行えるように。【ダークカオス】の目的は狭川羽粋と判明している事から、パニック集団を引き起こした上で略奪する作戦かもしれません」
「つまり、文化祭は確実に事件が起こる。その時に羽粋を守りきれって事か? …ふざけるな!! 襲撃されるのが分かってて受け身になれだ!? そんな事するぐらいなら、文化祭までに敵をぶっ倒せばいいだろ!! 街に潜伏しているのが分かってんだ!? 今からでも俺が――!!」
「月さん。何故この情報をあなたに通信機も使わず、こうして本部に呼び立ててまでお伝えしたか分かりますか? そして、なぜ私が“奴”と表記するのかも」
「はぁ?」
やり方に激怒して日本支部を飛び出す勢いで立ち上がるが、霧谷に止められる。
妙な言い方に仕方なく足を止めて聞く体制になると、霧谷から驚くべき情報が飛び出した。
「エレクトロノイズは――正体不明なんです。誰にも姿が視認できない、奇妙な存在なんです」
「なんだよ、それ?」
「あなたが対峙した因縁のあるメンバーの一人、風切冷牙のように変装を使うと言えば分かりますか?」
「チッ…! 正体が掴めないってそう言う事かよ」
「その上、通信手段を潰してはデータ改ざんも行って追跡も不能で…いえ、不満をどうこう言うのは止めましょう。気が乗らないのはこちらも同じです、ですがエレクトロノイズを見つける手段が現段階で無い以上、迎え撃つしか方法がありません。どうか分かってください」
霧谷の言う事は正論だ。この手の敵はきっと何の手がかりもないまま行動しても徒労に終わるだけだ。下手すれば闇討ちに合う恐れもある。
冷牙の一件でその事を知っているからこそ、月は苛立ちながらもソファに座った。
「…分かったよ。俺はどうすればいい?」
「まず、極力この話は人前でしない事。事件が起きても何も知らないフリをしておいてください。エレクトロノイズは僅かでも自分の情報があれば全力で存在を隠蔽します。そうなってしまえば、見つけるのはUGNの技術を以てしても不可能になってしまう。不利な状況のまま事件の対処をしなければならないでしょう」
「とにかく、相手に何も分かっていないと思わせるんだな。いいぜ、そう言うのは得意だ」
「一応この情報はあなたが信頼出来ると思った人には話して構いませんが、その人しかいない状況でお願いします。エレクトロノイズは、どこに潜んでいるか分かりませんからね。最後にこれまで纏めた情報もお渡しします。まあ大きいのから細かいのまでビッシリ書いてありますので調べるのが大変でしょうが、無いよりマシでしょう」
そう言うと、霧谷は一冊のメモ張を差し出す。中を読むと、ビッシリと情報が詰まっている。
月がそれを制服の内側のポケットに仕舞いこんだのを見計らい、霧谷が軽く頭を下げた。
「狭川羽粋を、学園の人達、街の人達を頼みます。闇代月さん」
「…ああ。もう俺は復讐者じゃない、UGN――世界を、この日常を守る者だ」
月も頷き返すと、立ち上がって手を掲げる。
虚空から《ディメンジョンゲート》を出現させ、何事もないように学園生活へと戻っていった。
月『…これが、俺が秘密裏に言い渡された任務だ。今まで言えなくて悪いな』
凍矢『仕方ないさ。じゃあ、敵はゼノともう一人――エレクトロノイズって奴がいるんだな』
月『ああ。恐らくそいつが学園と外界を遮断している元凶だろうな。最初はステージに上がった星華がエレクトロノイズじゃないかって思ってたんだが…まさか、あいつの所為だったとはな。ったく、間際らしい事しやがって…!』
翼『まあまあ。それよりささっと調べちゃおうよ』
ムーン「じゃ、俺もシナリオロイスを霧谷からエレクトロノイズに、表をNで書き換えてと――んで、情報調べたいんだが難易度は?」
GM「それはこちらだ」
・“エレクトロノイズ”について(UGN・FH6/9)
ムーン「低めだな。よし、大元の情報持ってる俺が調べるか。〈UGN〉でダイスはボーナスついて5個だ」
“エレクトロノイズ”について(UGN6/9)
5D+4→12 成功
ムーン「よし、成功だな」
GM「では情報だ」
UGN6
外見は黒コートを着た子供で、常にフードを被っている。シンドロームはエンジェルハイロゥ・ブラックドック・ノイマンのトライブリード。
主にセルの一員であるゼノと共に行動していて、敵や一般人を建物に閉じ込めたり通信機器を使えないようにするなど遮断役を担っている。ゼノが従者を通して他人を煽る時には《組織崩壊》で一般人を更にパニックにさせている原因でもある。
尚、フードを外した際に見せる姿はバラバラ。エグザイルのように姿を変えるような形に近い様だが、人によって見え方が違う事からして変装の類ではなさそうだ。
UGN9
エレクトロノイズが行動する時は主に目立たない所かつ、何かしらの機械が接地してある場所に潜んでいる。
この学園で条件に当てはまる場所は、高等部の改装工事をしている区画にある『第一コンピューター室』だ。そこに潜んでいるだろう。
奴を倒せば、暴走している人も落ち着き、通信機器も回復する。
凍矢『ゼノは陽動部隊。エレクトロノイズが遮断役を担っているのか…』
月『鬼に金棒所か、混ぜるな危険だなこりゃ…』
翼『こいつのシンドローム……ボクと同じだ』
凍矢『言われてみれば…! ま、まさか翼!』
翼『違うよ! 確かにシンドロームは一緒だけど探せば沢山いるし、こいつはレネゲイドビーイングじゃないでしょ! 変な疑いかけないでよ!』
月『すまん、つい。とにかくこいつを倒せば、通信機器は回復するし一般人の暴走も収まる。俺達に分が来る筈だ』
凍矢『それじゃあ、向かおう!』
GM「では、次のシーンでエレクトロノイズの元に向かうと言う方針に決まったと言う事で」
SM「次はマスターシーンを挟むぞ」
マスターシーン2 シーン12〈一つの不信〉
高等部にある第一コンピューター室。改装工事中で校舎全体を防音シートで覆っており、日に当てないよう厚めのカーテンで閉め切っている為、部屋の中は薄暗い。
その部屋の中央に、黒コートを着た子供が一人。電子のグリッドを床に走らせながら焦りを浮かべていた。
「…通信機が全部ダメになった…!? なんで、ありえない…!?」
翼によって通信を断ち切られ、急いで復旧しようと能力を発動させる。
その時、子供に通信が入りボタンを押す暇もなく女性の甲高い声が響く。
『何をしておるのじゃ、エレクトロノイズ! どうして映像が途切れた!』
「…何者かに妨害された。今復旧を」
『ああ、もう! 本当に貴女は使えぬ奴だな! いいからすぐに直せ、妾の居場所が見つかったらどうしてくれるのじゃ! 早く光を奪わないといけぬのに…!!』
「光を奪う? あんたがやりたいのは、義理の弟を徹底的に甚振りたいんでしょ? 盟主の命令違反してまで行うなんて」
『黙れ! それよりさっさと何とかしろ、この出来損ない!』
一方的に喚き騒ぐと、そのまま通信を切ってしまった。
「横暴だね…ん?」
嘆息ついて再び作業を始めていると、起動していたPCの画面に映像が映る。
学園の外では、《ワーディング》と共に闇に包まれた学園を隠蔽するUGNの部隊が取り囲んでいる。その中の作戦指揮官に混じり、現場に赴いたテレーズと闇代陸があれこれ話し合っている。
「闇代陸はともかく、テレーズまで出向くなんてね…まあどんな対策をしようが無駄だよ。この建物は今や“ボク”の支配下だ。外部からどう力を働かせようが無駄に終わるさ」
画面の二人に無駄だと言わんばかりに不敵に笑う子供。
だが、その表情は何時しか消えて不信感を露わにした。
「…そうだ、ボクが張り巡らせた力は簡単には打ち砕けない。なのに、どうして打ち砕かれた…?」