ミドルフェイズ10
ムーン「で、これからなんだが。とりあえず響と六介をどうにかしないといけないよな?」
クウ「六介の方は誰でもクリア出来る感じか?」
GM「うん、六介の所に行くと宣言して、波音の声を聞かせれば終わりだね。代わりに1シーン必要になるけど」
ツバサ「響さんの方だけどボクはもう駄目だから、精神が高いグラッセに二つの判定を頑張ってもらうしかないね…」
クウ(……ん? このエネミーエフェクトの説明…)
ムーン「俺の支援も使えばどうにかなる…かな? だが、浸食率が…」(ペラペラ…)
グラッセ「月は無理しなくていいよ。精神も〈RC〉も俺が高いし、どうにかなるって」(パラパラ)
ツバサ「ちなみに、失敗したらどうなるの?」(ピラッ)
SM「もれなく9D+9のダメージが襲い掛かるぞ」(パララッ)
ムーン「失敗できない奴じゃねーかオイ!」(パタン)
ツバサ「――って、師匠はさっきからEA(エフェクトアーカイブ)読んでるけどどうしたの?」
クウ「……なあ、SM。1つ質問があるんだが」
SM「なんじゃ?」
クウ「《鮮血の牙》ってさ、対象の体内に血を入れ込んで操っているんだよな?」
SM「む…? そうじゃな、洗脳よりはそっちの方がやりやすい。その方向で行っておるが?」
クウ「ならさ――
俺の《生命吸収》と《ブラッドリーディング》を使って、その血だけを選別して吸い取る事って出来るか?」
GM「…は?」
ツバサ「え? ちょ、師匠!?」
GM「そ、その方法だと、体内に操ってる元凶の血を取り入れる事になるんだけど…」
クウ「なら、その穢れた血を《瀉血》で出す。理論としては行けると思うんだが?」
SM「…何が言いたい?」
クウ「血を吸収するって方法で洗脳を解除する判定を〈白兵〉で試みたい。出来るか?」
ツバサ「でもそれ、相手が一番有利な土俵に立つ事になるよ?」
クウ「だが、それは俺も一緒だ。【戦闘用人格】分もあるから、どうにかなるはずだ。あと、あいつは攻撃となるとダイス運が酷いからな。そこを考えれば、勝機は十分にある」
オパール「喧嘩売ってるなら買うわよ黒羽蒼空!」
GM「…僕としては構わない。ちなみにSMは」
SM「ふむ――別にいいわ」
ツバサ「え? いいの?」
SM「ただし《鮮血の牙》を自ら取り込む形になる。〈白兵〉の対決判定に成功しても〈意思〉判定10に失敗した場合、代わりに妾の従者となって貰う。それで良いか?」
クウ「…上等。精神7なめるなよ?」
ムーン「なら、響はお前に任せる。六介はグラッセが…」
グラッセ「いや、月が行ってくれないか? 俺、ちょっとやりたい事を思い付いたんだ」
ムーン「やりたい事?」
グラッセ「うん…Rハンドアウト、公開したいんだ。出来れば、羽粋と二人っきりでさ!」
GM(エ…!)(ピシリ!)
SM「ほう…羽粋と二人っきりで、か?」
グラッセ「ああ。…もしかして、誰かPCがいないと公開出来ないのか?」
GM「いや、そんな事はない…そんな事は、ないんだが…――確認のために訊くよ、凍矢はそれでいい?」
グラッセ「もちろん! 話的に盛り上がると思うからさ! 演出は大事だって言ってるじゃないですか!」
GM「…分かった。では、その他の処理から始めよう」
ミドルフェイズ10 シーン15〈その拳を振るう意味〉
シーンプレイヤー 七雲空
GM「ではまずは、響の処理から入ろうか。登場するのは空…蒼空だけでいいの?」
クウ「ああ。もう誰も無理はさせられないからな、俺だけ登場する」
GM「なら、シーンプレイヤーは蒼空。チャート表は振らなくてもいいよ」
ツバサ「蒼空さん、頑張って!」
《シーン登場》
蒼空1D→4 106%→110%
クウ「ふう…やっと落ち着いてきたか。あ、響の居場所だが《かぐわしき鮮血》で探すぜ」
GM「許可しよう。探す場合は判定も要らないよ。では、運命の判定に入ろうか」
一般人の避難もあらかた済ませた蒼空は1人、かつて敵に追われた廊下を戻っていた。
ライムによって逃げ道を繋いだロッカー、六介と対峙した場所…派手にぶち破られた窓ガラスの所で足を止める。そこはあの黒い獣…響と戦った場所。
蒼空は僅かに残った血痕に顔を近づけ、血の臭いを嗅ぐ。それだけで、彼女が何処にいるか。見えない臭いの痕が見える…血が教えてくれる。
蒼空『…あっちか』
空(にしても、一人で止めようとするなんてな。どう言う風の吹き回しだ、宿主?)
蒼空『…ちょっと、な』
階段を降りながら空と会話する蒼空。その表情は、どこかぼんやりとしている。
一階まで降りきり、少し歩く。そこに、目当ての人物…黒い獣がいた。
響『グウウウ…!!』
空(一歩間違えればお前が敵になる。覚悟出来てるだろうな?)
蒼空『ああ…やってやるさ!』
GM「それでは〈白兵〉の判定に入る。今回は響がアクション側、蒼空がリアクション側とする。その為、同点では蒼空が勝つことになるよ」
SM「響は先程と同じくイニシアチブで《死神の疾風2》発動! マイナーは《完全獣化2》《エアロドライブ4》《バトルビート3》! メジャーは《コンセントレイト3:ハヌマーン》《一閃2》《音速攻撃2》《電光石火2》《神獣撃4》!
ダイスは22個、攻撃力9+9D、達成値3、C値7の攻撃じゃ!」
クウ「マイナーは無しだ。倒す為に来たわけじゃないからな。メジャーで《コンセントレイト3:ブラム=ストーカー》《鮮血の一撃3》《始祖の決闘4》《生命吸収2》だ!
俺のダイスは25個、達成値5、C値7、《生命吸収》の効果でHPと一緒に血を吸い上げる!」
《対決判定》
響22D+3(C値7)→29
蒼空25D+5(C値7)→49
ツバサ「やった!」
クウ「おし! 浸蝕率は合計122%、回復してHP19だ。そのまま《ブラッドリーディング》を使って《鮮血の牙》の血を吸い上げるぜ!」
GM「なら、《鮮血の牙》を吸い上げる事には成功するよ」
グラッセ「ちなみに、どうやって吸うんですか?」
クウ「ん〜…軽く傷をつけて、そこから血液を吸い取る感じかな」
ツバサ「えー!! 吸血鬼みたいに首筋に噛んで吸わないのー!? そっちの方が絵面的に絶対カッコいいのにー!!」
クウ「…ツバサ。お前最近何かアニメを見たか?」
ツバサ「うん! 吸血鬼ラブコメのスト○イク・ザ・ブラッド!! あと漫画で月○!!」
クウ「目を輝かせながら答えるな! しかも後者はお前の歳で見れる漫画じゃないだろ!!」(*理由はR指定ではないですが、グロ描写とエロ描写が半端ないからです)
スピカ「でもいいわねー、私も蒼空に血を吸われてみたいわー」
グラッセ「いやあなた吸う側ですよね!? 衝動:吸血ですよね!?」
二人は一気に距離を縮めると、即座に拳と拳のラッシュが繰り出される。
一方は黒い爪、もう一方は血に濡れた拳。相手は力自慢のキュマイラ。だが、負けじと空も限界まで血流を高めて、身体能力を大幅に強化して響と渡り合う。
防ぎ、当て、避け、反撃し、傷つけあう…だが、その応酬も数分を過ぎた所で決着がつく。
蒼空『バカ野郎…!!』
響が伸ばした腕を避けたと思えば、手首を掴み上げる。
彼女はすぐに振りほどこうとするが、蒼空の方が行動が早い。
蒼空『お前の拳は――誰かを傷つける為に振るう力じゃねーだろぉ!!!』
そんな想いを込めるように拳を握り込み、空いた手で腹部を殴りつける。
殴った衝撃で響の動きが止まったのを見計らい、すかさず彼女の腕に傷を作ると血液を吸収する。
他人の血を吸い取る事で自身の傷を癒す――その行為の中に異物が入り込み、蒼空の神経が掻き乱される。
蒼空『つ、ぐ…!』
空(相、棒…!)
蒼空『分かってる…!』
SM「ここからが本番じゃな。難易度10の〈意思〉判定を行うがいい」
クウ「失敗出来ない、成功させる!」
《意思判定》
10D+1→13 成功
クウ「良かった、クリティカル出て…」
GM「では、響の効果は無事に解除したよ」
蒼空『――ッ、らぁ!!』
嘲笑うように自我を塗り潰そうとする悪意を振り払い、腕を振るってその場に血をぶちまける。
体内から出した血は心なしか黒くも見えるが、それ以上は何も起きず普通の血液同様固まり、色も徐々に変質を始めた。
蒼空『はぁ、はぁ…!』
空(結構ギリギリだったじゃねーか…!)
蒼空『でも、助けられた…!』
血を床にぶちまけたまま、蒼空はそのまま座り込む。その腕の中には、黒い獣から女子高生の制服を着た少女が気絶している。
響『ん…』
少しして、少女が――響が身じろぎする。
ゆっくりと瞼を開き、顔を覗き込む蒼空を見上げた。
響『あれ…あたし…』
蒼空『えーと…その、大丈夫か?』
響『…助けて、くれたの?』
蒼空『ああ』
響『そっか…“また”、助けられたね…』
洗脳から解き放たれた反動か、響は再び気を失った。
空(…また?)
蒼空『…気にする事ないと思う。さて、どこか安全な場所に寝かせておくか。良くも悪くも今回の件でオーヴァードに覚醒しているんだ、一般人と一緒に保護は出来ないからな…』
蒼空は優しく響を抱えて立ち上がり、隠れられそうな場所を探しに行った。
けれど、彼はまだ気づいていない。
自らが放った、本来ならば知る筈のない“情報”が言葉になっていた事に。