ミドルフェイズ12(ハンドアウトシーン&後編)
グラッセ「ここで、俺のRハンドアウトを公開します」
PC1 海命凍矢用Rハンドアウト
ロイス:狭川羽粋 推奨感情(P任意/N任意)
【ダークカオス】が彼女を狙う理由を、君はよく知っている。
親の都合で羽粋が転校する前に、君は彼女に一つのペンダントを渡した。それは闇代家の“闇”と同じように海命家に代々伝わっていた宝石で、父親の代から受け継がれていたと言う。君は子供の頃に、そのペンダントを羽粋に渡したのだ。
知らなかったとは言え“光”を渡したのは、彼女が狙われる原因を作ったのは君だ。だからこそ、君自身の手で彼女を守ると誓ったのだ。
*いつでも公開できる。
グラッセ「どうですこれ! まさに主人公らしい展開でしょう!」
ムーン「確かに、主人公な展開だな…」
GM「では、ハンドアウトシーンを開始しよう――」
俺には幼馴染がいた。
狭川羽粋。ずっと近所に住んでいた事もあって、彼女とは幼い頃から付き合いをしてきた。
だけど、一緒に過ごしてきた羽粋は親の都合で転校することになったんだ。
だから俺は、最後に出来る事をしようと、別れの日に羽粋の家まで行ったんだ。
「羽粋ー!」
荷物を纏め終え、いざ車に乗ろうとしていた羽粋を見つけた俺は必死で叫んだ。
彼女の顔は別れもあってやはり暗い。しかし俺の声を聞いた彼女は、表情を明るくして俺の前まで走ってきた。
「凍矢、見送りに来てくれたの!」
「うん。引っ越す前に、渡したいものがあってさ」
「渡したいもの?」
「あのさ…これ、羽粋にあげるよ」
ポケットから取り出したのは、透明な宝石が付いたペンダント。俺はそれをまだ小さい羽粋の手の中に握らせた。
「きれい…!」
「このペンダント、家に代々受け継がれたお守りなんだって。大事な友達と別れるなら、渡してあげろって父さんがくれたんだ。だからこれ、羽粋にあげるよ」
俺の一番の友達である羽粋のためにと、父さんがわざわざ持ち出したお守りだ。きっと、これからは羽粋を守ってくれるはずだ。
そんな思いで渡した贈り物に、羽粋の目が潤みだす。
「ありがとう、凍矢…う、ううっ…!」
「羽粋!?」
急に泣き出す羽粋にどうしていいか分からず困惑していると、彼女が俺を抱きついた。
「やだよ…凍矢と、みんなとお別れしたくないよ…!」
「俺もだよ…!」
出来ればこのまま一緒にいたい。そんなの俺だって同じだ。でも、子供である俺達にはどうしようも出来ない。
泣く羽粋を抱きしめて、こっちまで泣かないように必死で涙を堪えて居ると車から羽粋の父親が降りて来た。
そして彼は、俺達に近付くと娘である羽粋の頭を撫でる。
「羽粋、ごめんな。お父さんの所為で辛い思いをさせてしまって…」
「ぐすっ…! お父さんは、悪くないよ…! お仕事、なんでしょ…!」
ようやく羽粋は俺から離れ、小さな袖で涙を拭う。
どこか悲しそうに父親は頭を撫で続けると、俺を見て笑みを向けた。
「凍矢だったな。今まで羽粋と仲良くしてくれてありがとう。もしかしたら、もうこの町に戻る事は出来ないかもしれないが…ここでの思い出は、忘れないよ」
「…はい…うっ、うえ…!」
彼女の前で良い所を見せたかったのに。とうとう俺まで我慢出来ずに泣き出してしまった。
互いに慰めて、慰められて。最後の別れを済ませて羽粋も父親も車に乗り込む。
そして車が動き出す直前、羽粋は窓を開けるとお守りとして渡したペンダントを見せながら手を振った。
「凍矢…これ、大事にするからね! 凍矢の事、ずっと忘れないからぁ!」
「俺もだ、羽粋ぃ!」
遠ざかる彼女の姿を、俺は見えなくなるまでずっと手を振った。
けど、俺は知らなかったんだ。
羽粋に渡したペンダント。それを敵が狙っていただなんて…。
グラッセ「これで俺の回想シーンは終了ですね! あ、ロイスは一緒なのでそのままにします」
ナミネ「リズが真面目にヒロインやってる…!! 私は、これが、見たかったのよおおおぉぉぉ…!!」(ノД`)・゜・。
カイリ「ご、号泣するほど…?」
ツバサ「てか誰これ?」
ジェダイト「二人とも、もはや本人じゃないです」
カヤ「元を知ってる身としてはどっちも違和感しかないな」
リズ&グラッセ「「今文句言った奴、新技喰らわせるから裏に来い」」
GM「はいはい。まだセッション中だから後にしろ。さ…続きだ」
凍矢『――羽粋が狙われたのは、ある意味で俺の所為だ。だから』
羽粋『ねら、われた…私、が…!? あ、うっ…!』
突然、羽粋がその場に倒れ込む。
激しい頭痛に見舞われたようで顔色は悪く、苦痛を浮かべて頭を押えている。
凍矢『どうしたんだ、羽粋!?』
??『ふふっ。貴女のその反応――どうやら、思い出しかけておるようじゃな?』
どこから聞こえた女の声に反応し、凍矢は振り返る。
そこにいたのは、茶髪の髪に金色の瞳をした黒コートを着た女性。かつての義理の家族――海命ゼノがいた。
ゼノ『久しぶりだな、愚弟』
凍矢『ゼノ!?』
羽粋『思い出す…なにを…!?』
ゼノ『ほう…“血の繋がってない弟”を思い出せないと言うのかえ?』
羽粋『お、弟――あっ…ああああぁ!!』
凍矢『羽粋っ!?』
ゼノ『どうやら、思い出したようじゃな』
羽粋『そう、だ…恋火お姉ちゃんが、闇一が、みんなが、ああ、ああぁぁあああああ!!!』
とうとう頭を押えながら悲鳴を上げる羽粋。
凍矢『羽粋!? ゼノ、何をした!?』
ゼノ『何も。自分がどんな目に遭ったか、勝手に思い出しただけの事よ。そうであろう…羽粋?』
凍矢『ふざけるなぁ!!! そんなの、お前のデタラメ――!!!』
羽粋『思い、だした……私、知ってた…見たんだ、あの時…恋火お姉ちゃんが、怪物になったの…!!』
凍矢『羽粋…?』
羽粋『それだけじゃない…私には、弟がいた…! 私を、守ろうとして…雷神お兄ちゃんも、小暮お姉ちゃんも、化け物って…!! みんな、私の所為なのに、なんで、あんな事忘れて…っ!!』
蹲りながらぶつぶつと呟く羽粋。彼女の口から零れる内容に、凍矢も何が起こったのか理解する。
羽粋に施された記憶処理が解けてしまったのだと。
凍矢『まさか、本当の事を思い出したのか!?』
ゼノ『そうだ、羽粋。お前が狙われたのも、弟の記憶を失くしたのも、家族と離れ離れになったのも、知り合いが化け物になったのも、この学校を滅茶苦茶にしたのも――悪いのは、こやつよ』
羽粋『うああああああああああ!!!』
ゼノの囁きに、羽粋がはち切れたように叫ぶ。
同時に、彼女の首にかけてあるペンダントが激しい閃光を放ち、彼女を包み込む。
凍矢『何が起きたんだ!?』
ゼノ『光を大きくするなど簡単、深い闇に落とせばいいだけの事よ。光は闇で消える? いいや。全て闇に染まれば、ちっぽけな小さな光も太陽の如くより輝いて見える。何も見えない暗い場所から外に出たら眩しすぎて見えない原理と同じ事』
凍矢『な…待てよ! 俺が渡した“光”は、“闇”のように俺の血筋にしか扱えないんじゃないのか!?』
ゼノ『そうじゃな、本来はお前らにしか扱えない…だが、秘められた力を引き出す事ぐらいは可能じゃ。例え扱えなくとも――エネルギーを無造作に放出出来るようになれば“使い捨ての兵器”として十分よ』
話が終わると共に、羽粋を覆っていた光が弱まる。それと同時に、彼女は立ち上がる。
彼女は虚ろな目をしたまま、光で作られた剣を握っている。
紛れもなく、オーヴァードに覚醒した証だ。
凍矢『お…お前ぇぇぇ!!!』
ゼノ『感謝するぞ、凍矢――いや、愚弟。これで妾の目的の半分は果たした! 後は、貴様を殺すのみ! さあ、羽粋! 貴様の人生を狂わせた男に裁きを与えよ!!』
GM「凍矢、ここで二つの選択肢が取れる。羽粋を洗脳しようとするゼノとの〈交渉〉対決か、オーヴァードとしての力を手に入れた羽粋の攻撃をガードするかになる――さあ、どちらを選ぶ?」
凍矢「…その二つで、成功した場合と失敗した場合を教えてくれませんか?」
SM「教えると思うのかえ?」(ゲス顔)
凍矢「ぐぐぐ…!! 浸蝕率的にはもうガードはキツい…〈交渉〉で対決だ、パーティ随一の社会適合者の力思い知らせてやる!!」
SM「クククッ…なら勝負じゃ!! 妾はFHチルドレン専用エンブレム『生来の狂気(ナチュラルボーン)』を使用、交渉判定の達成値+10追加じゃあ!!!」
凍矢「ぎゃあああああああああああ!!?」
ツバサ「あ、諦めないで凍矢! まだ負けたと決まった訳じゃない!」
凍矢「そ、そうだ! やってやるぅ!!」
〈交渉〉対決
凍矢7D+2→21 失敗
ゼノ5D+18→24 成功
凍矢「折角クリティカルしたのになんじゃ相手の技能値はあああ!!?」
SM「ふん。妾は社会1じゃが〈交渉〉技能は8も取っておる」
ツバサ「ダイス運は良かったけど、固定値で負けたね…」
ムーン「固定値ヤバいな…」
凍矢『羽粋、目を覚ませ!?』
このままではゼノの操り人形にされてしまう。凍矢は必死に羽粋へと声を掛ける。
羽粋『黙って――化け物』
しかし、帰ってきたのは拒絶の言葉。そして、腹部を剣で貫かれた事で起きる激痛だった。
羽粋『全部お前の所為だ…お前が、私を滅茶苦茶にしたんだぁ!!!』
GM「操られているとはいえ、完全に拒絶されたと言う事で――羽粋のロイスをタイタスに変更だ」
SM「更に、羽粋が剣を握り凍矢を突き刺す。HPは0にしておけ」
ムーン「お、おい待った! その攻撃、俺がシーン登場してカバーリング出来ないか!?」
GM「ん、まあ…見栄え的にはその方が良さそうだけど」
SM「無理じゃ。なにせバッドルートに入ったからの」
四人「「「「バッドルート!?」」」」
凍矢『が、はっ!』
血を吐きながら崩れ落ちる凍矢。羽粋はそんな凍矢を感情の無い目で見降ろしている。
ゼノ『――ふん、これで終わりと思わぬことだな。貴様を絶望のどん底に落とす舞台はここではない。待っているぞ凍矢』
凍矢『待、て…!!』
凍矢は手を伸ばすが、ゼノは羽粋と共にその場から消え去り、虚空を掴むだけで終わった。
SM「ゼノは《瞬間退場》と《瞬間退場U》を発動して羽粋と共にその場を去る。これにて、シーンエンドとしよう」
グラッセ「あの…これ、どうなったんです?」
GM「グラッセ…他PCのRハンドアウトを見てただろう? それで、なぜ凍矢のRハンドアウトだけ『何も指定がなかった』か考えなかったのかい?」
グラッセ「えーと…?」
GM「簡潔に説明するが、凍矢のRハンドアウトは他の皆と違って《トラップ(罠)》の一種だったんだ。クトゥルフで例えるならNPCが味方になるかどうかの分岐点に失敗した感じだ…失敗する条件はただ一つ。『羽粋の前でRハンドアウトを開く事』だったんだよ…」
ツバサ「もし羽粋の前で開かなかったら?」
GM「羽粋のロイスはタイタスする事はなかったし…今後、苦しい結果になると言っておく」
SM「ハッハッハ!! これで貴様らの希望は途絶えた!! 覚悟しろグラッセ、ここで貴様をどん底に落としてくれるわー!!」
リズ「…敵ながらクズだな」
ガイア「うん、真性のクズね」
ウラノス「人間じゃねぇだろ、コイツ」
テルス「ここまで来るとドン引きものね」
SM「やかましい!! 外野はすっこんでおれ!!」
グラッセ「こ、こんなトラップなら事前にあるって教えてくれれば…!」
GM「いいや、ここがボーダーラインだったんだよ…ゼノの無茶振りをこれだけ優しくしたんだ、羽粋の前で言うかどうかの二択だから伏せさせてもらった。が…まさか本当に引っかかるとは…」
ムーン「まあ、GMも念を押してたしな。それに、羽粋の前で開かなければいいだけの話だもんなこれ」
GM「あーあ、折角運の悪い凍矢の為にヒロインを助けるシチュ作ったのに…難易度が一気に上がったよ」
グラッセ「えええええ!? 難易度あったんですか!?」
クウ「おい、もうGMがヤケになってるぞ…」
ツバサ「グラッセ、もしかして主人公になれない呪いでもかけられてる?」
グラッセ「俺はもう出ない…何もしたくない…!」
クウ「…クライマックスに行く前に、俺と凍矢で出たい。いいか?」
グラッセ「いえ…俺もういいです」
クウ「いいから出るぞ、その殻ぶっ壊してやるから。あとクライマックス前に買い物と回復もしたいしな」
ツバサ「それが目的なんだね…」
■作者メッセージ
裏話
ナナ:(Rハンドアウトを公開後)で、どうですか? これ、羽粋の前で暴露しちゃいます?
リラ:どうぞ☆
ナナ:…………そっかぁ…(遠目
リラ:面白ければよし☆
ナナ:(あ、もうこれ何言っても無駄だ)……実はこれ、トラップとして考えてた。
リラ:何でだ
あるチャット会にて、凍矢がトラップに引っかかるかでこのような会話が繰り広げられていた。私は悪くねぇ!!!
ナナ:(Rハンドアウトを公開後)で、どうですか? これ、羽粋の前で暴露しちゃいます?
リラ:どうぞ☆
ナナ:…………そっかぁ…(遠目
リラ:面白ければよし☆
ナナ:(あ、もうこれ何言っても無駄だ)……実はこれ、トラップとして考えてた。
リラ:何でだ
あるチャット会にて、凍矢がトラップに引っかかるかでこのような会話が繰り広げられていた。私は悪くねぇ!!!