ミドルフェイズ7(後編)
暗黒の力を纏った獣の爪と、毒を仕込んだシザーナイフ。
月は油断なく相手を睨みタイミングを計っている。一方、狭間は飄々とした笑みを崩さず視界に相手を捕らえている。
そして、肉眼で捉えられない速さで互いに交差する。背中越しに止まる足、武器を下した腕。数秒間、沈黙が続き――月が血を吐きながらその場に倒れ込んだ。
月『が、はっ…!』
狭間『さすがは坊ちゃん。ですが、何もかも甘いですねぇ?』
凍矢『ムーン!!』
蒼空『お前ぇ!!』
狭間『おや、いいのですか? あなた方の攻撃と、私が坊ちゃんにナイフを突き刺すの…どちらが早いかお判りでしょう?』
狭間と月の距離は背中越しだった為、至近距離だ。大して、凍矢達は少し離れた場所にいる。唯一遠距離型の翼の超電磁砲も銃も、コインや拳銃を取り出して撃つとなるとタイムロスがあるので追いつかない。
凍矢&蒼空&翼『『『…クッ!』』』
狭間『おやぁ? 坊ちゃんの傷が治らないのを見るに、限界以上にレネゲイドが浸食しているようですね。今のあなたなら、旦那様が守ってきた“闇”を受け入れる事が出来るやもしれませんねぇ』
月『やみ…!?』
陸『ま、て…!』
その時、倒れていた陸が声を上げて顔を上げる。
苦し気に狭間を見る陸の目は、何がを懇願するようにも感じれる。そんな姿に、狭間は面白いと言わんばかりに蛇のように不気味に笑った。
狭間『――いいでしょう』
そう言うと、足元で倒れていた月を掴み上げる。
直後、思いっきり月を窓へと放り投げてガラスを打ち破って外へと放り出した。
月『ェ…』
凍矢『ムーン!』
突如としてかなりの高度がある空中へと放りだされた月。戦闘不能と言う、身体を動かせない状態では足掻く事は一切できない。
そのまま夜の街へと落下――した所で手が掴まれ、何かが削られる音と共に宙吊りの状態となった。
蒼空『ッ…! おい、月! しっかりしろ!』
空(手ぇ離すなっ!)
手を掴んだのは蒼空で、大剣をビルの壁に突き刺した状態で月の手を握っている。裏へと引っ込んだ空もまた、必死に月に声を掛ける。
この救出劇は、社長室にいた凍矢と翼も割られた窓から覗いて見ていた。
凍矢『よ、良かった…!』
翼『――っ、待って狭間は!』
慌てて翼は振り向くが、その頃には狭間は倒れた陸を掴み上げていた。
狭間『坊ちゃんの代わりに、この男を引き取る事にします。まだまだ役に立ってもらわないといけませんからねぇ!』
凍矢『待てぇ!!』
狭間の企みに気づき二人は駆けこむが、闇に溶ける様に陸と共にその場から消えてしまった。
SM「――演出としてはエグザイル専用のエネミーエフェクト《神出鬼没》の効果を使ってその場から退場します。本来は私だけですが、陸は戦闘不能で抵抗できない状態ですので荷物代わりにして共に退場した事にしました。と言う訳で、ここでシーンを終了しましょう」
四人「「「「…………」」」」
GM「あー、お前ら…言いたい事は分かるが、思った事は口に出してみろ」
グラッセ「ウラノスさんも相当酷いですが、こっちもこっちで酷いですね…!」
ムーン「お前ら、よくこいつと付き合ってられるな…!」
クウ「あー、うん…もう成り行きだから…」
ツバサ「ていうか、一度敵になってる前科持ってるからこの人…」
SM「うふふふふふ…っ!!!」(黒笑)
四人((((駄目だこの人…既にドSの顔してる…))))
レイシャ「さすがウィドさん!」
ゼノ「GMと同じで仲良くなれそうね!」
ツバサ「あーもう、ドSコンビがウィドさんに感化されてるよー!」
ゼアノート「ふむ、中々の策士よのぉ。我が真の13機関に入らないかね?」
SM「いえ、私悪役は得意でも敵になりたいとは思ってないので」
グラッセ「こっちはこっちでスカウトしてますよぉ!?」
クウ「いやもういいだろ。すいません、こいつ13機関で使いませんか?」
グラッセ「手に負えないからって、悪役サイドに引き渡そうとしていいんですかぁ!?」
シグバール「正直俺達の所でも使いたくないってハナシ」
サイクス「返品だ」
グラッセ「クーリング・オフ!?」
SM「失礼な! まるで腫物扱いではないですか!!」
ゼノ「別によろしいではないですか。妾は大歓迎ですぞ」
レイシャ「そうそう! ウィドさんなら大歓迎するよ!」
レイシャ&ゼノ「「きっと、勇者達を陥れるとっておきの策を考えてくれるよ…!」」(黒笑)
グラッセ「あの、どうするんですか…もう収集つきませんよ?」
GM「別にいいんじゃない? だってこいつの姉――たった一人の男の為だけに、僕達の所属している組織の古株敵に回して壊滅させた挙句、そのまま実権を奪いとった実績持ってるんだ。弟であるこいつを敵サイドに引き渡せば、壊滅まではいかなくても乗っ取りくらいは出来るだろうよ…」(遠目)
スピカ「乗っ取るって言い方止めて頂戴! 私はあくまでも裏切り者って言うクウの立場を実力と説得で撤回させただけなんだから! 言わば愛の力よっ!!」
ツバサ「そう言えばスピカさん…前にそんな話してたっけ…」
レイシャ「…やっぱりいいです」
ゼノ「この姉も弟も、機関に引き込んだら乗っ取られかねない…」
SM「姉さんが凄すぎて、余計に遠巻きにされましたけど…?」
ツバサ「とにかく話を戻して――真の敵、基ラスボスが現れたけど、弱点であるクトゥグァの召喚方法ってどうするっけ?」
クウ「魔道書見つけるのがセオリーだろ。大抵は本棚探せば日記と一緒に見つかるはずだ」
GM「これクトゥルフじゃないよ。てかダブクロのシステムだと神話生物も神格も見た瞬間即ジャーム化なるぞお前ら」
リラ「そう言えば、ナナさん。SMが言っていた、アトラク何とかって何ですか?」
ナナ「リラさん…あの…(ゴニョゴニョ)」
リラ「――キィヤァァァーーーーーーーーーーー!!!??」(発狂)
ウラノス「リラがリアル発狂したぞ!?」
ラック「あんた何を言ったんだい!?」
ナナ「いやぁ…リラさんにとっては刺激の強い神話生物だったから…」(*詳しく知りたい方はアトラク=ナチャを各自でお調べください。ただし、調べた場合に伴うSANチェックは自己負担です。お気を付けください)
グラッセ「とにかく、今分かっている事は狭間が敵だった事と陸さんが連れ去られた事の二つですね。後は、翼が調べている闇と言うアイテムについても出ましたね…」
ツバサ「情報は全部そろっている訳じゃない。ここからが勝負になりそうだね…」
クウ「そういや、俺あんな形で月を助けたけど次のシーンでは合流しててもいいのか?」
GM「それは全然構わないよ。あくまでもあれは演出の一種だったし、蒼空なら体張って助けるだろうと予想もしてたからね。月の戦闘不能も解除してて大丈夫、ただし、HP1にしておいてくれ」
SM「それでは、次のシーンへと進みましょう」