第六話 「対面」
戦争が終わり、皆が喜びを分かち合う中、ザックスは一人それを素直に喜べずにいた。色々な事がありすぎた。ウータイでも、バノーラでも・・・。それは若干16歳の少年にはあまりにも過酷な体験。信じていたものの裏切り。組織の重圧。存在の抹消。失ったものはとてつもなく大きい。
それとは逆に、手に入れたのは形見ともいえるこの大剣。色んな人間の思いの詰まった大切な剣―――――アンジールのおふくろさんは、この剣を我が家の誇りだと言った。そんな大切なものを置いてどっか行っちまうなんて・・・アンジール、何考えてるんだよ・・・。
少年が物思いに耽っていると、突然ザックスの携帯が無人のエントランスにその音を響かせた。通話ボタンを押し、はい、と一言もの言った後、耳に飛び込んできたのは他でもない、英雄セフィロスの声だった。要件は後、ラザード統括の部屋へ来てからとのことだったが―――――。・・・、あまり良い予感はしない、というよりも、何がどうあれ今の心境では何事も普段のようには感じる事は出来ないであろうことは自覚していたからだ。しかし、かといって出向かないわけにはいかず、少年はあまり乗り気でない表情で統括のいる部屋へと足を運んだ。
いつものように部屋に足を踏み入れると、そこには壁にもたれかかり腕組みをしている英雄の姿ともう一人、知らない子供がそれと相対する形で向かいの壁にもたれかかりながら同様に腕組みをしていた。上から褪せた色のボロ衣をマントがわりに羽織ってはいたが、その下には肩当てをはじめかなりの数の金属製の防具を身につけており、しかしその大半は腕や足、腰付近に集中的に装備され、肝心の胸部や腹部は防弾チョッキはおろか防具一つ付けてはいないのだから、ある意味で驚愕ものだった。腰に巻かれたベルトには拳銃を二丁装備しているだけで、他に武器らしきものは見つからない。変わった点と言えば、目にゴーグルを付けている事だが、それが何故か子供の服装にマッチしているのだから、これまた変な感じがした。
「・・・あまりジロジロ見ないでやれ。他人と干渉することを極端に嫌うやつだからな。」
呆気に取られて子供に視線をはべらせているのに気づいたか、セフィロスが横からそう促したので、ザックスは子供から視線をそらし、正面の椅子に腰かけているラザードの方へと歩み寄った。
「―――――おめでとう。本日付で、君はソルジャークラス1stに昇格だ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
このメンツの中何を言われるのかと思ったが、自分が1stに昇格?
ずっと願っていた、憧れていた1stに、俺が・・・今、この状況で?
言葉の後の沈黙の中、ザックスは普段の彼にしては珍しい、喜ぶでも呆気にとられるでもなく、ただ無表情のまま俯き、そうして一言、
「―――――あんま嬉しくない。」
と言った。
無理もない―――――そうラザードは続けたが、それでもザックスの表情にはさほど変化は無かった。それを見越した統括は、本題へとすぐさま話題を転換―――――その瞬間、後ろで腕組みをしている二人の表情が少しばかり歪んだ
ザックスにとっては、いや、おそらくソルジャーの大半が納得する筈のないような内容だった。
“ジェネシスとアンジール、そしてその配下の抹殺”―――――
投入されるのは神羅兵と言う事だが、そこに割りこんで来たセフィロスは追い打ちをかけるかのように、自分も出る、という。統括が更に付け加えると、後ろで腕組みをしている子供も作戦への投入が決まっているらしい。
「ちょっと待てよ・・・、それって・・・。」
「―――――嫌ならすっこんでろ。」
うろたえが隠せないでいるザックスに、子供が辛辣な言葉を浴びせた。光景にはセフィロスの目が若干見開いたのが横目で確認できたが、はっきり言って今は英雄の表情どうこうの問題ではない。
「君はセフィロスとアンジール以外の1stとは面識がないんだったね。―――――紹介しよう、彼がそのうちの一人、史上最年少で1stに昇格したクロウ・ボルフィードだ。これを機に任務でも同行する事が増えるだろう、覚えておくといい。」
そう言われて、ザックスの視線は改めてその子供の姿をとらえた。他の1st、というよりは、神羅兵を含めてかもしれないが、今まで見た兵士よりもどす黒く、重々しい格好から放たれる戦場慣れした雰囲気に、ゴーグルと短い金色の髪の隙間から覗く深海よりも深い、光のない鋭い目。セフィロスを初めて見た時は、アンジールに比べて何てとっつきにくそうな人だろうといった印象を受けたが、これはその比ではない。
ツォンやカンセルから聞いた。史上最年少の1stは他の誰よりも好戦的かつ荒々しい性格をしていると―――――。戦場での様から付いた二つ名が『鬼神』だと―――――・・・。
そう、この雰囲気はまるで鬼・・・。こんな禍々しいオーラを放つソルジャーが作戦に投入されたら、もしかしたらあのアンジールであっても危ないんじゃないか。さっき言ったコイツの言葉は、抹殺命令に何のためらいも感じているようには思えなかった。
何だろう、わけも分からないが感覚で分かる。コイツは危険だ。
「『裏切者』は始末する。理由なんざそれで十分だ。」
「やめろ、クロウ、言い過ぎだ。」
「はっ、笑わせる。」
「おさえろ。ロゼの事は確かにそうだが、ザックスには何の関係もない。」
「そうだ、何の関係もない。無論『俺』にもだ。誰の失態のせいでこんなことになってると―――――・・・」
1st同士の言い争いが勃発する中、物凄い衝撃の後、突如サイレンが鳴り響き、非常用シャッターが展開、社内に警報が響き渡った。
「なっ、何だ!?」
「侵入者だ!」
突然の出来事にうろたえるザックスを傍目に、ラザードはその場のソルジャー3人に的確に指示を出していく。
「セフィロスは社長室!ザックスとクロウはエントランスへ!」
「分かった!」
「チッ。」
それぞれが部屋をあとに出撃する。ザックスとクロウ、後に大きく関わることになる二人の最初にして最悪の出会い、そしていきなりの同行任務だった。
それとは逆に、手に入れたのは形見ともいえるこの大剣。色んな人間の思いの詰まった大切な剣―――――アンジールのおふくろさんは、この剣を我が家の誇りだと言った。そんな大切なものを置いてどっか行っちまうなんて・・・アンジール、何考えてるんだよ・・・。
少年が物思いに耽っていると、突然ザックスの携帯が無人のエントランスにその音を響かせた。通話ボタンを押し、はい、と一言もの言った後、耳に飛び込んできたのは他でもない、英雄セフィロスの声だった。要件は後、ラザード統括の部屋へ来てからとのことだったが―――――。・・・、あまり良い予感はしない、というよりも、何がどうあれ今の心境では何事も普段のようには感じる事は出来ないであろうことは自覚していたからだ。しかし、かといって出向かないわけにはいかず、少年はあまり乗り気でない表情で統括のいる部屋へと足を運んだ。
いつものように部屋に足を踏み入れると、そこには壁にもたれかかり腕組みをしている英雄の姿ともう一人、知らない子供がそれと相対する形で向かいの壁にもたれかかりながら同様に腕組みをしていた。上から褪せた色のボロ衣をマントがわりに羽織ってはいたが、その下には肩当てをはじめかなりの数の金属製の防具を身につけており、しかしその大半は腕や足、腰付近に集中的に装備され、肝心の胸部や腹部は防弾チョッキはおろか防具一つ付けてはいないのだから、ある意味で驚愕ものだった。腰に巻かれたベルトには拳銃を二丁装備しているだけで、他に武器らしきものは見つからない。変わった点と言えば、目にゴーグルを付けている事だが、それが何故か子供の服装にマッチしているのだから、これまた変な感じがした。
「・・・あまりジロジロ見ないでやれ。他人と干渉することを極端に嫌うやつだからな。」
呆気に取られて子供に視線をはべらせているのに気づいたか、セフィロスが横からそう促したので、ザックスは子供から視線をそらし、正面の椅子に腰かけているラザードの方へと歩み寄った。
「―――――おめでとう。本日付で、君はソルジャークラス1stに昇格だ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
このメンツの中何を言われるのかと思ったが、自分が1stに昇格?
ずっと願っていた、憧れていた1stに、俺が・・・今、この状況で?
言葉の後の沈黙の中、ザックスは普段の彼にしては珍しい、喜ぶでも呆気にとられるでもなく、ただ無表情のまま俯き、そうして一言、
「―――――あんま嬉しくない。」
と言った。
無理もない―――――そうラザードは続けたが、それでもザックスの表情にはさほど変化は無かった。それを見越した統括は、本題へとすぐさま話題を転換―――――その瞬間、後ろで腕組みをしている二人の表情が少しばかり歪んだ
ザックスにとっては、いや、おそらくソルジャーの大半が納得する筈のないような内容だった。
“ジェネシスとアンジール、そしてその配下の抹殺”―――――
投入されるのは神羅兵と言う事だが、そこに割りこんで来たセフィロスは追い打ちをかけるかのように、自分も出る、という。統括が更に付け加えると、後ろで腕組みをしている子供も作戦への投入が決まっているらしい。
「ちょっと待てよ・・・、それって・・・。」
「―――――嫌ならすっこんでろ。」
うろたえが隠せないでいるザックスに、子供が辛辣な言葉を浴びせた。光景にはセフィロスの目が若干見開いたのが横目で確認できたが、はっきり言って今は英雄の表情どうこうの問題ではない。
「君はセフィロスとアンジール以外の1stとは面識がないんだったね。―――――紹介しよう、彼がそのうちの一人、史上最年少で1stに昇格したクロウ・ボルフィードだ。これを機に任務でも同行する事が増えるだろう、覚えておくといい。」
そう言われて、ザックスの視線は改めてその子供の姿をとらえた。他の1st、というよりは、神羅兵を含めてかもしれないが、今まで見た兵士よりもどす黒く、重々しい格好から放たれる戦場慣れした雰囲気に、ゴーグルと短い金色の髪の隙間から覗く深海よりも深い、光のない鋭い目。セフィロスを初めて見た時は、アンジールに比べて何てとっつきにくそうな人だろうといった印象を受けたが、これはその比ではない。
ツォンやカンセルから聞いた。史上最年少の1stは他の誰よりも好戦的かつ荒々しい性格をしていると―――――。戦場での様から付いた二つ名が『鬼神』だと―――――・・・。
そう、この雰囲気はまるで鬼・・・。こんな禍々しいオーラを放つソルジャーが作戦に投入されたら、もしかしたらあのアンジールであっても危ないんじゃないか。さっき言ったコイツの言葉は、抹殺命令に何のためらいも感じているようには思えなかった。
何だろう、わけも分からないが感覚で分かる。コイツは危険だ。
「『裏切者』は始末する。理由なんざそれで十分だ。」
「やめろ、クロウ、言い過ぎだ。」
「はっ、笑わせる。」
「おさえろ。ロゼの事は確かにそうだが、ザックスには何の関係もない。」
「そうだ、何の関係もない。無論『俺』にもだ。誰の失態のせいでこんなことになってると―――――・・・」
1st同士の言い争いが勃発する中、物凄い衝撃の後、突如サイレンが鳴り響き、非常用シャッターが展開、社内に警報が響き渡った。
「なっ、何だ!?」
「侵入者だ!」
突然の出来事にうろたえるザックスを傍目に、ラザードはその場のソルジャー3人に的確に指示を出していく。
「セフィロスは社長室!ザックスとクロウはエントランスへ!」
「分かった!」
「チッ。」
それぞれが部屋をあとに出撃する。ザックスとクロウ、後に大きく関わることになる二人の最初にして最悪の出会い、そしていきなりの同行任務だった。
■作者メッセージ
お久しぶりです、かなり駄文ですが。。。
大学に無事受かりましたのでまた亀更新ながらにあっぷしていきますw
大学に無事受かりましたのでまた亀更新ながらにあっぷしていきますw