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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第十七話 「胎動」



     クロウが元の姿に戻って数分―――――鳩が豆鉄砲を食らったような顔でセフィロスが彼女から視線を外せないでいると、肉親の悶絶している状況を全て赤の他人に放り出し自分は事を見越してかせっせと衣類の調達に出向いたロゼが場に戻ってきた。その手にはレースのきいた真紅のドレスともう一着、これは使用人用だろうか、赤いドレスと比べると質素な印象が拭えない黒のワンピースがおさまっている。ロゼの帰還で何とか意識を逸らすことは出来たが、如何せんこの状況は色々マズイ。

    「・・・何素っ頓狂な顔してんのさ。ほら、年齢差があるからってそうまじまじ見るもんじゃないよ。男は退出退出!」

    そう言うとロゼは手にしていた二着を妹の前に置くとセフィロスの背中を押しながら玉座の間をあとにした。



    「―――――お前からの話で頭では認識したつもりでいたんだが・・・。ああして元の姿を見るとそれが突然現実として襲い掛かってきたような感覚に襲われた。」

    「まあ、いつも見ていたのが10歳そこらの子どもの姿じゃねぇ。無理はないけど。」

    玉座の間を退出した二人はそのまま扉を抜けてすぐの所で立ち止まり、どこともなしの方向に目を遣りながらそんな言葉を交わしていた。実兄故にロゼはかの姿を何度も見てきているのだろう、動揺する仕草などは一切見当たらない一方で、その隣で自らの足元の方へ視線を向けるセフィロスは、一見普段の淡々とした冷静沈着な表情を貼り付かせてはいるが、その実言葉では形容し難い感覚に見舞われていた。自覚しているのか、はたまた無自覚かは知らないが、セフィロスは物思いに耽る時は決まって視線が下を向く。長く連れ添った所為か、今の彼が何を考えているのかがロゼには手に取るように分かった。

    「・・・あれを見てどう思った?目の前でその変化を見たんだろう?変化前後で抱く印象が変わった筈だ。」

    長く続く廊下の先―――――壁の隙間からの光で幾分か明るいとはいえ、それでも先を覆うには十分な陰の方から顔を其方へ向けるでもなく問うてきたロゼの言葉に対し、セフィロスは少しの沈黙を挟んだ。その静かな空間では、退出先から微かに聞こえる衣擦れの音以外何も耳に入ってこない。静寂という一呼吸を置いた英雄の口から零れ出た答えは、先程素っ頓狂と評された表情と寸分の違いもない、極めて素直なものであった。

    「あいつのことを初めて“女”という認識で見たような、そんな感覚だ。以前の姿からは想像し難かったが・・・身体の曲線だったり艶やかな髪だったり・・・・・・、どう・・・言えばいいんだろうな・・・。例えるなら―――――神秘的な美を目の前にしたような感じ、か・・・。」

    自身の感情に思考を巡らせる哲学者めいた口調でそう口にした言葉に、ロゼは動じるでもなくそのまま―――――。


    ―――それが、あいつの“隠したかった”ものだよ、セフィロス。


    「幼少からいる君は勿論知ってることだけど、神羅の軍事部門における女性兵士の割合なんて一割にも満たない。一般兵でさえごく稀なのにそれがソルジャーの、それもクラス1stにいたとなれば社会の認知度から変わってくる。あいつは自分を女として見て欲しくないんだよ。身体的構造からしてもそうだけど、如何せん男と比べると“弱い”という偏見は未だに根強く残っているからね。まぁ素行が男の子っぽいから周りには勘違いされるわ、それを逆手にとって宝条に細胞後退の薬を依頼するわ、好き勝手やってたのは事実なんだけど。」

    最後に若干の苦笑を含みながら、その後ロゼはこう付け加えた。性別を理由に力から逃げることをしなかった、妹はそんな強い心を持った人間なのだと。

    「―――――いらんことをベラベラと・・・。付け加えお前は何故ここにいる?」

    間髪入れずに背後から聞こえてきた声に振り向けば、背にしていた扉を開け中からこちらに鋭い眼差しを向ける一人の少女の姿があった。その身は先程ロゼが手渡したうちの真紅のドレスの方を身に纏っており、髪を結い上げ多少の化粧と装飾品を身に付ければ立派な貴族の令嬢として見えそうな様相だ。

    「あれ、そっち着たんだ?」

    「もう一方はサイズが合わなかった。」

    「あらま。」

    さして反省する様子もなくロゼは不快感を露わにするクロウと言葉を交わすが、突如その意識がセフィロスの方へ向けられ、様子を見ていた英雄は勢いに圧されたか少々驚いた表情を見せる。無言のままにこちらを睨み付ける双眸には先程見た神々しさなど宿っておらず、むしろ城内に入ってから嫌というほど体感した殺気にも似た冷たさしか見て取れない。このふてぶてしさを通り越した可愛げの欠片もない冷淡な態度を見ると、幾ばくかの変化があったとしてもこれは矢張りクロウ本人なのだと実感させられる。

    「・・・・・・連れ戻しに来た。」

    「また余計なことを。」

    吐き捨てるように言ったその仕草はふてぶてしさ極まりなかった。自身が神羅の広告塔として名を馳せているが故か、はたまた恵まれた容姿故なのかは知らないが、セフィロスは相当女性にモテる。今まで数知れない異性からアプローチを受けてきたが、所謂ツンデレやら小悪魔やら、やれお姉さまタイプだの何だのと一見素直に見えない路線で近付いてくる女はいたが、目の前にいる少女程の憎たらしさとふてぶてしさを兼ね備えた女はいなかった。その度合いと言えば、はて、ロゼの妹とは矢張り本当は弟の間違いではないのか・・・、とさえ思う程だ。

    「それで?この後はどうするんだ?」

    眉間に皺の寄る少女からは早々と視線を外し、横の男へとそう問いかければ、男はうーんと悩んだ末に城で一泊する事を選択した。

    「良いのか?1stが揃いも揃って不在など・・・。」

    「大丈夫大丈夫。ミッドガルにいた時に遠方の方をぐるっと探してくるから時間がかかるかもってラザードには言ってあるし。」

    「抜け目ないな。」

    「まぁね。君も随分とこの大陸に関しては興味示してたし、予め連絡しといて良かったって事だね。折角だから日の高いうちに見といでよ。」

    そう促され、好奇心が疼いたのか、それとも事の収束に安堵したのか、セフィロスは言われるままに城をあとに古代都市の探索に乗り出した。残された兄妹は暫しの沈黙の後、互いが互いを見遣ると、どちらからともなく歩を進め始める。向かう先は―――――決まっていた・・・。





     一晩の休息を取った後、一行はクロウの乗ってきた中型の飛空艇で大陸を発った。迎撃システムを再稼働させる際に大型だと墜落しかねないからである。一行はミッドガルへの帰路の途中、どこか適当な街に立ち寄りクロウの衣服の新調を済ませる予定だった。

    「さすがにマズいだろう、それは。」

     第一にクロウの性別が女だという事実はまだ公表されておらず、混乱を招く。付け加えドレスなんぞ着て帰れば秘匿しているルートやルーツがある程度特定され怪しまれてしまう。危険因子は出来る限り排除しなければならない。

    「お前が降りるのは駄目だ。セフィロスも目立つ。俺が行くから仲良くしとけよ?間違っても暴れて飛空艇壊すなよな。」

    そう言ってロゼは適当な街に船を着陸させるとさっさと買い出しに出てしまった。知名度の高い英雄やドレスを着た女が行くよりは妥当な人選と言えるだろうが、それでもロゼとて英雄に次ぐ2の実力者だ。知名度なんて話を持ち出せば彼とて十分に目立つ。残された顔ぶれを考えればむしろ本人に行かせる方が良かったかもしれない。船内は閑散とした空気に包まれていた。
     セフィロスは虚ろな目で外の景色に視線を這わせるクロウを横目で見遣る。視線には気付いているだろうがそれでも一向に目を合わせようとしない様子なので、こちらも別に視線に関して遠慮する必要はない。

    「―――――――――。」

    姿は別として、顔をまじまじと見る機会はなかった為自然と注意がそこへ向かう。眉間に皺ばかり寄せている間は気付かなかったが、兄妹と言ってもロゼよりもクロウの方が目は大きい。兄が小さいかと言われれば決してそうではないのだが、切れ長で落ち着いた雰囲気を纏うかの目を思えば眼前の少女のそれはそれよりも縦に大きい。猫目、と表現するのが的確か、はっきりとした印象の強い目だと思う。しかしながら長い睫毛やくっきりと入った二重の線、すっと通った鼻筋に形の良い唇といったパーツは二人が兄妹であることを無言のうちにもの語っている。表情次第では官能的とも妖艶とも形容し得よう美貌は以前までの見慣れた姿からは想像し難かったが、成程あの端正な顔立ちが成長するとこうなるのかという軌跡を思えば納得がいく。兎角容貌に関してのみ言えば文句のつけようのない美形だ。
     ではそんな美貌が浮かない顔のまま言葉を殺しているのは何故か、理由は何となく想像がつく。これからが大変なのだ。この少女にとって、偽ってまで隠し続けてきた性別という個性をこれからは白昼堂々と晒していかなければならないのだ。無論固有の特質が為に服用していた薬なんぞは最早使えない。このプロポーションだ、ある程度はカムフラージュ出来ようがそれでも完璧とはならないだろう。持ち前の性格から、当然落ちるであろう周囲からの信頼には気など落とすまいが、環境の変化が知らず知らずのうちにストレスになるなんて話はよくある。この少女の場合は・・・どうなのだろう。
     そんなこんな思考しているうちにロゼが戻ってきた。取り敢えずマシなものを、という程度だから、服を見繕うのにもそれ程時間はかからなかったのだろう、案外早い帰還だった。クロウは服を受け取ると隣の部屋へと移動し着替えを済ませてまた戻ってくる。



     さあ、帰還だ。




    16/09/09 15:47 960   

    ■作者メッセージ
    就活がひと段落しましたので続きを書き始めようと思います。

    今回は多分一番動きの少ない話ですね。
    次回から慌ただしくしていきたいと思っておりますのでその反動で内容とタイトルを決定した次第です。
    本来の姿でクロウを動かすことを軸に考えるとむしろここからが始まりですね、早くクライシスコアの核心まで行きたい!
    そしてオリキャラ二人(三人)の核心部も描いていきたい!!
    まあ当たり前なことだとは思うんですが、ロゼ、クロウ、ルシアの結末は決まっております。
    その辺りまで早く行きたいですね、更新頑張ります!!

    それではここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
    次回更新をお待ちください!
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