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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第十三話 「エアリス」




     目を開けた自分を見るなり、少女は嬉しそうに笑った。
     それと同時に今いる空間の景色もぼんやりと目に映ってきて。所々崩れた天井から差し込む光は、石柱やステンドグラスと相まって神聖な雰囲気を醸し出している。

    「天国?」

    思わずこぼれた言葉に少女は笑いながら首を横に振ると、ここがスラムの教会だと教えてくれた。上体を起こし、辺りを見回す自分を見下ろしてくる少女は、如何にも楽し気な笑みを浮かべている。珍しいものでも見たかのような反応だ。実際珍しい光景には変わりないだろうが。
     改めて少女の姿を捉えると、明るい声色とは打って変わって清廉な印象を受ける。茶色の長く豊かな髪を結った上で後ろで一つに束ね、身に纏うは教会の守り人たるに相応しい清廉潔白な純白のワンピース。その白の衣装の左肩のラインには色鮮やかな花が散りばめられており、少女が少女たる所以を醸し出しているかのように思えた。

    「―――天使?」

    そんな少女の姿に何を受けたのか、再び口をついて出たとんでもない言葉に少女はまたも首を横に振ると、澄んだ瞳でザックスを見詰めながら、

    「私、エアリス。」

    と嬉しそうに答えた。





     エアリスによると、自分は教会の天井の崩れた部分から落ちてきたのだという。おそらくはアンジールが放った衝撃波で足場が崩れ、そのまま落下した先がこの教会だったのだろう。
     何はともあれ助けてくれたお礼をと思い、少女にデート1回を申し出てみると、あっさり一刀両断された。良く笑う清廉な彼女からばっかみたいと返された時は流石の自分も少々言葉に詰まった。
     その後は何とはなしにエアリスに同行する形で上への行道を辿っていたが、中途スラム街の一角に小さく店を構えていたアクセサリーショップが目に入ったので、そこで足を止めた。デート1回は馬鹿にされて終わってしまったが、何と言っても助けてもらったのだ、矢張りお礼はしておきたい。その旨を伝え、彼女に好きなものを選ぶよう促すと、エアリスは少々遠慮しがちにピンクのリボンを手に取った。お安い御用だと言わんばかりに得意げな顔で会計を済ませ、早速彼女の頭につけてやる。良く似合っていた。

    「ザックス、ありがとう!」

    照れくさそうに笑うエアリスにつられて自分にも自然に笑顔が移る。そんな感じがした。
     しばらく二人で歩いていると、小さな公園に差し掛かった。いや、公園というには遊具らしきそれは神羅の施設から廃棄されたであろうゴミを集めて作ったもののようだったが、それでもその高台の上から左手を高々と上げ声を張る子ども達にとっては良い遊び場のようだった。左手を上げていた男児はどうやらセフィロスの真似事をしているらしい。他にも子どもが数人、男の子に女の子が混じっていて、それぞれ好きなソルジャーになりきって遊んでいる様子には、何となく儚げな笑みしか零れなかった。

    「ソルジャーって、会ったことある?」

     そんな中ふと耳に届いたエアリスの質問に、ザックスは意識を引き戻される。彼女はゆっくりと歩を進めながら、自分は会ったことがあるのだと言った。ソルジャーに知り合いがいるのだと。しかし、傍で遊ぶ子どもと比べてその声色に喜色の気はない。

    「・・・幸せなのかな。」

    何とはなしに呟いたのか、それとも彼女が長年抱いていた疑問か。そのどちらであったとしても、この少女の口から出た言葉は今の自分自身にもかかってくる問題なのだと、そう思った。

    「子ども達の憧れ、世界を守るヒーロー。でも、普通じゃない。良く知らないけど、特別な手術、受けるんでしょ?」

     振り返ったエアリスの表情は、笑顔を張り付かせていたものから一変してどこか怯えたような、不安そうな色を醸し出していた。

    「・・・らしいな。」

    「普通が一番幸せ、私、そう思う。・・・ソルジャーって、なんか、変・・。それに――――――怖い―――・・・。」

    戦うこと、大好きなんだよ?そう続いた言葉に、ザックスは何も言えなかった。彼女の表情や、言葉を聞いていれば分かる。明らかにソルジャーに畏怖の念を抱いているということ。壁を作っているということ。それは、彼女の言う知り合いと何か関係があるのだろうか―――。ふとそんな疑問が頭に浮かんだ時には、思考よりも口が動くのが速かった。

    「・・・それってさ、その知り合いと何か関係あんの?」

    「少し、ね。その人、ソルジャーになって、変わっちゃったから・・・。」

    まずかった。触れてはいけない過去というやつだ、とザックスは直感した。気まずかった雰囲気が余計に気まずくなった。どうしたものか。
     そもそも自分が少女が恐怖してやまないソルジャーであるという事実をどうするのか。言ってしまえば怖がるだろうか。隠している方が良いのか。いや隠し事なんて出来るような器用な性格をしていれば仔犬なんて半ば馬鹿にされたようなあだ名なんかついちゃいない。場を改善する良い打開策も見当たらなかったので、ザックスは素直に事を受け入れようと決意した。
     少しばかり腹をくくり、申し訳なさそうな反面変えることのできない事実からくる開き直りとでもいうのか。兎角形容しがたい曖昧な表情で自身の素性を明かした少年の言葉に、エアリスは一瞬の戸惑いと瞬時に湧き出た罪悪感から頭を垂れ、俯きながら一言謝った。別にエアリスに非があるわけではないのだ。かといって自分に非がある話でもない。見る者によっては汚職と形容して良い立場だ。エアリスのように思う人間がいても何も不思議じゃない。さてどうしたものか。そう思い耽って頭を掻いていると、少女の口から感嘆の声が漏れた。虚を突かれたように一瞬目を見開いたが、流石は仔犬。切り替えが早い。
     綺麗と言われた対象は自分の顔かと期待交じりに聞いてみるとそこは全否定。エアリスは柔らかな笑みを浮かべて「瞳。」と返した。

    「気に入った?だったらもっとよく見てよ!魔晄を浴びた者の瞳――――――ソルジャーの証だ。」

     ここで決め顔。抜け目ないのか阿呆なのか。それでも場の雰囲気は格段と良くなったように思える。きっかけはエアリスが作ったが、この少年は見事それを拾って見せた。
     ふざけたような少年の態度にエアリスは苦笑しながら少年の胸を押して見せる。壁、のように漂っていた空気はどこかへ消え去り、二人はじゃれあいにも似た会話を弾ませる。

    「空みたいな色だろ?」

    「―――うん。この空なら、怖くない。」

     その後にも会話は続いたが、突如鳴り響いた着信音に二人の顔色が変わる。電話に応答すると、声の主はセフィロスだった。何でもジェネシスが神羅ビルへと攻撃を仕掛けてきたのだという。
     会話を終え、済まなさそうに彼女に謝ると、彼女は優しく背中を押してくれた。また会うという約束と、友達が助かることを祈って。
     彼女の思いやりに精いっぱいの笑顔を返すと、ザックスは神羅ビルへと足を走らせた。







     ゴミ集積場から帰ってみればこの有様だ。そう言わんばかりに眉間にしわを寄せ光景を見渡す一人の小さな子ども。
     眼前に広がる神羅ビル本社は敵襲を受け炎上し、煌々と散りゆく火花が魔晄炉やビルから照射する光とともに夜の闇を明るく照らしていた。
     2ndや3rd、一般兵らが応戦する中、ビルの右上部分から大きな氷柱が突如として出現したのを目の端で確認すると、子ども――――――クロウは一つ息を吐いてから自身の武器を掌から出現させる。目視した限りでは、ビル周辺を取り巻いている大型召喚獣は全部で三体。形状からしてバハムートの亜種であろうことが確認できる。

    「まずはあれを仕留める。」

    その次は元凶を拘束する。自分が取るべき行動を僅か1秒足らずで脳内にインプットすると、クロウは路面を助走台にしビル目掛けて大きく跳躍した。その跳躍力たるや、彼は実は背中に羽でも生えているのではないかと疑いたくなる程だ。

    「やぁ、本格的に動きだしてきたね。」

    「社長は?」

    「大丈夫、安全なとこに保護してもらってきたよ。」

    「良し。」

     あっという間にビル右上部の氷柱まで駆け付けたクロウは、この厄介な柱の創造者たる自身の兄―――ロゼに向かって言葉をかけると、その背に背中を合わせるようにして剣を構えた。

    「この状況・・・、どうやら俺は足止めしておきたいようだ。」

     余裕綽々、むしろ現状のこの臨場感を楽しんでいるかのようにお気楽な言葉を並べ立てるロゼを横目でちらと一瞥すると、その兄を取り囲むように上空に佇み奇声とも分からぬ雄叫びを上げる召喚獣に再度視線を送る。そうしてそれらを一周見終えるとフンと鼻で笑い、クロウは珍しく口角を釣り上げた。

    「―――余程人手不足らしいな。」

    「そのようで。」

    「これでは足止めにもならん。」

     兄の復帰祝いにこれら召喚獣をまとめてくれてやりたいところではあるが、生憎先程受けた屈辱故か今のクロウはかつて無いほどまでに敵を欲していた。悪いが兄であっても今回ばかりはこの機会をくれてやるわけにはいかないらしい。クロウは一言、手を出すなとだけ告げると、ものの一分もせぬうちにバハムート三体を一刀両断して見せる。

    「―――お見事。」

     様子を傍観していた麗人はその美貌を緩やかに笑みを纏いながら言った。

     その後ザックスやアンジールの協力もあり、ジェネシスによる神羅襲撃はさほど大きな被害を出すことなく終結を迎える。結局のところ諸悪の根源とも言えるジェネシスは逃走、一時は共闘したアンジールもその跡を追って行方をくらませ、崩壊した日常が戻ってきたのだった。





     しかしこの後、ミッドガルにある一つの噂が流れる。
     神羅から一人のソルジャーが姿を消した、と――――――・・・。





    16/06/07 00:30 960   

    ■作者メッセージ
    一挙二話更新。
    文体が変わったせいもあるけど情景描写が苦手になりました、そのぶん皮肉めいた文章は上達しました(オイ
    会話文を入れると文章が途切れちゃったりするものでまだまだ向上の余地ありですが、読んでいただければ嬉しいです!


    タイトルは「エアリス」にしましたが思いのほか文章がコンパクトにまとまってしまった為後半タイトルあんま関係ないような・・・って感じになってますね、すみません。
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