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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第二十二話 「夢・記憶B」






     “ロゼ、お前は俺に似ているな―――――”





     その言葉には続きがあった
     だけど、今となってはその後に父が何と言っていたのか、思い出せない







    「クロウ・ボルフィード。期待の新人だ。ロゼ、君の“兄弟”なんだそうだね。」

     愕然としたのは記憶にまだ新しい。実質的にはもうかなり前の話だけど。
     その日、ソルジャーを育てる指導教官がそう言って連れて来たのは、タークスの養成施設に預けていた筈の妹だった。力を望む幼い彼女を普通の家庭で育てることは難しい。何よりもその意志を汲んでやりたいという気持ちがあった。だがソルジャーは他の兵士に比べて圧倒的に前線に立つ確率が高い。活躍出来れば名声、実力双方が手に入ることは間違いなかったが、その分高い死亡率が付き纏う。だからタークスの施設へと彼女を入れた―――――筈だったのに。
     眼前の妹は以前同様、あどけなさの残る幼体のままではあったが、その身を包んでいる衣服がソルジャーのクラス3rdのそれだった。

    「ほう、ロゼの“兄弟”か。」

    「髪色が違うから、パッと見似てないな。」

     同じ1st同士で固まっていた為、ジェネシスやアンジールの注意も自然とそこへ向かう。セフィロスに関してはちらとその姿を確認しただけで、さほど興味はなさそうな様子だった。

    「―――――で、何でクロウがソルジャーなんです?この子は別施設に入れていた筈ですが・・・。」

    「異動希望が出てな。仕方ないから、ソルジャー登用時の能力測定で基準値を満たしていたら希望を通してやると指示が出たんだ。驚いたよ、そこいらにいる訓練兵なんて目じゃない数値だ。これなら即ソルジャーで通用すると、いきなり3rdスタートになったんだよ。まあ、君の“兄弟”なら頷ける結果だがね。」

    「ほう、凄いじゃないか。流石はお前の“兄弟”だな、ロゼ。」

     教官は至極嬉しそうにそう語った。今この場にいる1stは誰しもが皆驚く速さで昇進を遂げているが、クロウの年齢でソルジャーに登用された人間は過去に例を見ないという。このまま順調に鍛えていけば、1st昇格の史上最年少記録も夢ではないと。アンジールは教官の言葉に素直に感嘆していたが、嬉しい筈の報告はどこか遠い話のようで、自分だけが違う場所にいるような錯覚に見舞われた。





    「ヴェルドを出せ!!話が違う!!」

     タークスの方へとかけてみても主任であるヴェルドとは一向に話が出来ず。代わりにとツォンが事細かに事情を説明したが、それでも到底納得行く筈がなかった。起こってしまったことは今更どうにも出来ないが、事前に報告もなしでいきなり転属を認めるなどおかしすぎる。ヴェルドが電話に出ないことを考えると、ハイデッカーが動いているのは明らかだった。上層部が実験紛いにクロウの兵器としての性能を試している。そう思うだけで腸が煮えくり返る思いだった。

    そしてそのストレスは派遣先の戦場にて爆発し、新しい力となって発現する。

    「―――――すっげえ。・・・何あれ、・・・・・・氷、山・・・?」

    光景に同行していた兵士の殆どが固まってしまった。パラゴラという武装集団が数十名、神羅兵向かって突撃してきていた筈だった。しかし瞬きほどの時間、ほんの一瞬で、その姿は突如として目の前に現れた氷山の如き氷塊の中に消える。双眼鏡で確認すると、氷の中に人の形を幾つも視認することが出来る。彼らの表情は今にも襲い掛かってきそうな形相で、地を駆けていた時の様子と寸分も違わない。おそらく何が起こったのかさえ分からずにああなってしまったのだろう。

    「うひゃー、やっぱ1stにもなるとすげーな・・・。」

    「にしてもあんな威力のブリザガ見たことねぇよ。シヴァ並だぜ、ありゃ・・・。」

     意識的にしたことではなかった・・・
     普段はレイブレードを使って戦っていたし、今回もその大刀を発現させようとした
     だけど出てきたのは剣ではなく巨大な氷塊だった
     それも、平地を一瞬にして雪景色へと変えてしまうような、そんな馬鹿げたレベルの
     でも不思議と驚きはしなかった
     それは以前、こうなることを父から聞かされていたから・・・







     “いつになるか分からないが、レイブレード以外の力が発現するようになる”



    “『属性付与』って言ってな、召喚獣クラスの魔法が使えるようになるんだ”



     “―――とは言っても、一人に一属性。何に秀でるかは発現するまで分からない”







     おそらくこれのことだろう・・・
     自分は『氷』魔法に特化した力が使える、ということだ
     威力重視で、本当は『火』か『雷』の能力が望ましかったが、これはこれで、良い

    「・・・―――――ごめんね。でも、一瞬だっただろう?痛みがないのがせめてもの救いだと思ってよ・・・。」

     敵を労るような言葉を投げ掛けている少年の目が、その内容に反してどれほど冷たいものであったか。冷静、且つ無表情に巨大な頂を見詰めるその姿は、氷の使役者としてこれ以上の適任者はいないと言外に物語っていた。





    「―――――とうとうここまで来ちゃったか。」

     それから数年。3rdスタートだったクロウが、齢10歳にしてソルジャークラス1stまで昇格した。いつかの教官が言っていた、史上最年少記録とやらを樹立して。度々任務が重なることはあったが、妹の姿はこれを女の子だと判別するのが難しいくらいに変わり果てていた。乱雑に短く切られた金髪。まだ10歳だというのに手や腰やらに重々しい重金属を巻き付けて、腰から下げたホルダーには見たこともない銃が二丁、納められている。おまけに顔を隠すかのようにゴーグルを付けて、どこで拾ってきたのかボロ衣のようなマントまで羽織っている。

    「やっと同じステージまで来れた。」

    「・・・お前、随分と厳めしい姿になったね。俺の“弟”なんだって?」

    「そういうことにしといてくれ。何かと都合が良い。」

     『鬼神』―――――クロウ・ボルフィード。戦場での戦いぶりはまるで鬼そのもののようで、好戦的で非常に荒々しいと任務同行者は語る。子どもだと言うのに異様に戦場慣れしているその様子は、人間の道徳概念を大きく外れていると、誰かが話しているのを耳にした。たまに任務で一緒になるツォンやレノ達からも、今のクロウはまるで別人のようだと聞かされていた為に驚きこそしなかった。が、久方振りに会ってみるとその変貌ぶりに好ましさは感じない。むしろ危うい方向へと変わっているのではないかと内心不安に思った。
     案の定と言っては何だが、力を求めることに固執し過ぎるあまり周りへの配慮の無さが嫌という程目立った。結果、荒々しいイメージが余計にそう思わせるのだろう、他者を侮蔑したような言動に次第に妹は孤立していき、いつしか居場所をなくしてしまった。それでも着実に力を付けていく妹を見れば、これも正しい道だと思えなくもない。元より慣れ合うつもりで入社したわけではないのだから、環境云々をどう思うかは個人の自由だ。自由だが、身内としては、矢張り妹が悪く言われるのは快くは思えないし、常に一人でいる様を見るのも辛い。

    「クロウも飯に誘ったんだが、断られてしまった。」

     面倒見の良いアンジールが年頃故の反抗期だと大らかに見てくれているのが救いだ。とは言っても、1stの面々は2nd以下のクラスとは違って個々で任務に送られることも多い為、仲は良いものの協調性を重んじるということに必ずしもこだわらない。ジェネシスやセフィロスも、殆ど接点はないものの、対人訓練の時などは何も気にせずに妹に喋りかけているくらいだ。ここならあの子にも居場所が出来るのではないかと、そう思っては、そうなるように色々試行錯誤したものだ。





    「安心したまえ副作用はただの激痛だ。常人じゃ三日ともたない程度のな。」

     ―――――頭を抱えることだらけだ。俺自身のことだってまだまともに出来てないのに、転属に孤立、しまいには劇薬に手を出すなんて。しかも依頼先はあの宝条だ。

     今思えば、ジェネシスとは違った方向でクロウは力と向き合うことを決めたように思える。ジェネシスは曰く英雄への強い憧れから入社したようだから、その視線の先に捉えるものは彼が絶対と信じて止まないセフィロスそのものだった。対してクロウは、あやふやな記憶から成る絶望的に力の開いた相手をただひたすら追っている。基準がない為に力に通じるならば身を削ることも厭わないといった具合に、何にでも手を伸ばしているような印象を受けた。はっきり言って、どちらの考え方も理解出来ない。いや、出来ないというよりは理解したくないと言う方が正しいか。何故どちらも自分が傷付くやり方を選ぶのだろう。見ているこちらが、辛くなる―――――・・・。

     何も壊したくないのだ―――――
     壊れる様を、見たくないのだ―――――
     なのに、周囲は自分の思いとは逆にどんどん自身を壊していく
     果てには一人、又一人と友が姿を消して行く・・・
     やりきれない思いだけが残り、何故こうなってしまったのかと振り返る時間さえ与えられず、それでも過ぎ行く日常の中、『それ』は突如として影を落として・・・
     整理の追い付かない状況で、それでも頭を回して、いずれこうなる時が来ることなど初めから分かっていたじゃないかと言い聞かせて・・・
     妹の目に灯った強い意志を、自分にも宿すように
     その強烈な“色”を、俺は、この双眸で見詰めるのだ―――――・・・






    17/05/06 13:20 960   

    ■作者メッセージ
     執筆意欲が割と止まらなかったのでGW利用して書けるとこまで書いちゃえと同日に2話目を更新してしまいました。こういった心理描写はすらすらと手が勝手に動いてくれるので、非常に書くスピードが速いです。

     今回も「夢・記憶」シリーズですね。ロゼにとって好戦的になることは結果自分を苦しめる要因にしかなってこなかったので、平和主義者に落ち着いてしまった彼のグズグズとした中身が展開されている状態です。もっとぐずらせたいところではありますが、ここ最近ニコニコだった彼とのギャップがあまりにも激しいので次回は本編の方に戻る予定です。

     ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。では次回更新まで!
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