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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第十一話 「戯れ」


    「『深淵の謎―――――それは女神の贈り物。われらは求め、飛び立った。彷徨い続ける心の水面に、かすかなさざなみを立てて――――。』」

     吹き行く風が四人の男の髪を撫で、その風音以外には―――――そう、何度も耳にした、あの聞き慣れた声が、同じく飽きるほど聞いたあのフレーズを、飽きることなく発している。

    「『LOVELESS』第一章。」

     ビル屋外の鉄塔の上で、海辺に向かうようにして立っている黒コートを着た銀の長髪の男は、自身の背で鉄の壁にもたれかかりながら朗読を続ける赤髪の男を振り返ると、そう口にした。男の横には首までの黒髪を綺麗に掻き上げたオールバックの髭面の男と、もう一人―――――髪色とその長さだけならば『英雄』と称される男と瓜二つ―――――通称『女王』と呼ばれる、女顔の男の二人。そのうちの一人、白銀の髪の男の方はこちらを振り返った我が社が誇る最高峰の頂に目を向けると、くすくすと微笑んだ。

    「―――詳しいな。」

     そんな彼を脇目にして笑いながら、朗読を続けていた赤髪の男は手にしていた本を閉じ、脇へと避けると、彼の左横に立ち並んでいたオールバックの男と共に目の前の超人に視線を向けた。

    「毎日聞かされれば、嫌でも覚える。」

    そう言って自身の頭を突いて見せた英雄は、その左手に握りしめていた自身の愛刀―――――正宗を振りかざし、その双眼に映る英傑二人の姿を睨む様な鋭い目で見つめる。それに呼応するかのように二人―――――ジェネシスとアンジールはそれぞれの獲物を構える。ジェネシスはそのイメージを象徴するかのような真紅の長刀を。アンジールはソルジャーなら誰もが手にする訓練用の剣を。

    「・・・ロゼは参加しないのか?」

     少し後ろを振り返り、ジェネシスは段差に腰かけたまま動こうとしない残る一人―――――ロゼにそう声をかけた。

    「いいよ、俺は。連携とか得意じゃないし、何より弱いからね。」

     自身の直ぐ横に正宗ほどではないがそれなりの長さを誇った二ホン刀ともう一対、ジェネシスの持つものとはまた違った真紅の剣をしっかりと準備しているわりに、ロゼは今回の勝負にはあまり興味がなさそうな口振りでそう言った。彼の興味は別―――――その視線の先にあったのは先程ジェネシスが脇へと避けた古書『LOVELESS』。

    「ねぇ、これ読んでても良いかな、ジェネシス?」

     あまりにもその視線が古書一直線だったので、ジェネシスは呆れ混じれに好きにしろ、と一言返し前を向き直った。


    「アイツ、なめてるな。何が“弱い”だ・・・。」

    「まぁいい。ロゼとはまた今度決着をつけるさ。」

     そうして二人はそれを合図にするかのように同時に跳躍しセフィロスへと斬りかかった。
     まずはアンジールが、そうしていとも簡単に受け止められた太刀を流された後はすかさずジェネシスが、交互に互いの攻撃を繰り出し、英雄に少しの間も与えない。しかしそこは流石英雄である。二人の鮮やかな連携をもってしても、彼のその涼しい表情は一向に崩れることはなく、繰り出される斬撃を止めるにも、まだまだ余裕が見える。

    「ま、セフィロスがこのレベルのじゃれ合いに本気なんて出すわけないよね。」

     本の隙間から戦いにチラと視線を向けたロゼはそう言ってはまたそのまなざしを下へと下ろす。
     何故彼がこの戦いに参加しなかったのか―――――それはこの本の持ち主の、英雄に対する激しい憧憬の感情が、周囲に漏れ出すまでに高まっていたのを、何となくではあるが感じたからである。
     確かに二人の連携には目を見張るものがある。それは幼少の頃よりの付き合いが故か、お互いが培ってきた信頼の上成り立っているのは一目瞭然。しかしそれすらも余裕でかわして見せるセフィロスという男に追いつく為には、『仲良しごっこ』での連携では足りない―――――そこから更に踏み出す必要がある。
     ロゼがジェネシスらを差し置き神羅のbQを名乗れる所以は、彼がたとえセフィロスを相手にしたとしても、対峙する敵に殺意を抱くことを忘れないからである。故にこれと同種の雰囲気には異常に敏感なのである。

    「まずアンジールは―――――少なくともその配布用の剣を仕舞わなくちゃね。」

     言葉が呼応するかのごとく、彼の前で繰り広げられる戦いはセフィロスとアンジールの一騎打ちになっていた。そうして感じることも同じか、セフィロスはつい先ほどロゼが呟いた言葉と同じものを口にすると、そのまま正宗を思い切り押し出してアンジールを弾き、後退させた。

    「そうしてジェネシスは―――――いや、言うまでもない、か―――・・・。」

     そうして再び視線を眼前の英傑三人へと向けたロゼの眉間には、端正な面立ちには珍しい、しわが一つ寄っていた。まるで何かを懸念するような、そんな表情で彼が見詰める先には、何かしらの動きが見えた。

    「セフィロスと勝負がしたい。」

     そう言ってのけたのはジェネシス。アンジールを後ろへと下がらせると、戦いが始まる直前にロゼが感じ取った感情の高ぶりが今露わになったような、獲物を前にした時の狩猟者のごときまなざしでセフィロスを捉え、今までは抑えていたであろう愛刀の力を解放し、斬りかかった。
     剣の力を解放させたジェネシスの斬撃の威力は先程とは比べ物にならず、同様に受けて見せたセフィロスの足場を陥没させる程の凄まじさであった。容赦ない攻撃の連続に、余裕たっぷりで身構えていた英雄の口から、少しの苛立ちの混じった声が漏れ出る。
     ジェネシスが一線を越えた。本気とは言えないが、セフィロスの表情を見れば明らかにそれに近い状態で戦っているのが分かる。

    「―――――っ!!」

    その気迫に応える為か、セフィロスの斬撃の威力も増す。ただの受け流しが反撃へと一転、攻撃を繰り出していたジェネシスはその数撃の間に防戦一方へと成り下がる。付け加えて攻めに転じた英雄の一撃一撃の重さは尋常ではなく、何の仕掛けもないただの斬り込みからも、この男が英雄と称される所以が伝わってくる。

    「チィイッッ!!」

     接近戦では相手の方が一枚も二枚も上手と見たか、ジェネシスは魔法を使った空中戦へと戦いの場を広げる。
     見たところフレア系というよりはエクスプロージョン系の方が的確か―――――自由自在に操作可能な発光弾はジェネシスの身振り手振りに呼応するように宙で方向転換するとセフィロス目掛けて惜しみなく炸裂していく。
     最初は光弾を斬って防いでいたセフィロスも、そのあまりの数に手が回らなくなり、遂にはとてつもない爆発の中へと姿が消えてしまう。一瞬の隙をも与えまいと渾身の魔力を込めて追撃しようとしたジェネシス。しかし、その手はアンジールによって遮られてしまう。

    「やめろ。ビルを破壊する気か?!」

    「―――英雄になりたいだけだッ!!」

    ―――が、説得も虚しく、ジェネシスは仲裁に入った友の顔面に向かって爆発を食らわせると、すかさず前を向き直り姿をくらませたままの怪物の方を注視した。
     爆発をもろに受けたアンジールは海へと真っ逆さまに落ちていく―――――が、光景を見ていたロゼが本を片手にその右人差し指をアンジールの落下点へと向けると、一瞬にしてその場に氷の足場が出現し、アンジールの肢体を難なく受け止めた。
     一方友の無事を確認することなく戦いへと戻っていったジェネシスの方はというと、やはり何事もなかったかのように爆風を切り裂き出現した怪物の放つ鋭い斬撃を相殺させることに必死になっていた。かわされたり外れたりしたその太刀筋は戦いの足場になっていたビルの円筒を容赦なく輪切りにし、下に広がる大海の中へと沈ませていく。




     “―――――さぁ、反撃だ”



     そう言わんばかりに、そこからの攻防はただひたすらにセフィロスのあの怪物染みた斬撃が、円筒をまるできゅうりか何かと間違えているような感覚で爽快なまでに海へと沈め、太刀を受けてはいるもののその勢い凄まじいことこの上なく、ジェネシスは後退を余儀なくされ、戦いの場はみるみる後ろへと下がっていき、遂には見物を決め込んでいたロゼをも通り過ぎてしまう程であった。
     圧される一方のジェネシスの顔つきは最初の頃の爽やかさを纏ってはおらず、最早相手がセフィロスであるということを忘れているのか、酷い形相に変化していた。

    「―――っ、これはマズイ。アンジール、止めなければ―――っ!」

     異変を察知したロゼはすぐ隣で光景を見詰めていたアンジールの方を勢いよく振り向きそう叫んだ。均衡、というよりはセフィロス優位なこの状況でジェネシスは剣の力を二倍、三倍と増幅させ、遂には剣表面に浮かび上がる古字が消失するほどの高い魔力を解放させる。セフィロスもそんなジェネシスの行動に応答するように正宗を構え直し、今にも二人の剣が交差する、その瞬間であった。

    「二人とも―――――ッ・・」

    「そこまでだッ!」

    瞬時に二人の下半身が氷漬けになり、そうしてその間に入り込んだアンジールがジェネシス、セフィロス双方の剣を自身の二刀で受け止め、戦いに割って入った。そんなアンジールの姿を見て少々不満の色が表情を覆うセフィロスは、仲裁に入った二人の友の名を呟くが、一方で先程同様、いやそれ以上にこの仲裁に怒りを露わにしたジェネシスは左手に異様なほどの魔力を凝縮させ、再びアンジール向かってそれをぶつけようとした。刹那だった。ジェネシスの太刀を受け止めていた、おもちゃの剣と称さる訓練用の刀剣が折れ、その刃先がジェネシスの左肩を抉ったのだ。

    「ジェネシス!!」

    予想だにしなかった事態にその場にいた全員が一斉にその名を叫んだ。と同時に、時間切れか、はたまた二人の戦いでどこかの機能を損傷したのか、バーチャルの世界が崩れ落ち、元の薄暗いトレーニングルームがその姿を現す。
     斬撃が当たっていたか、所々機器の損傷が見られ、そこから走る電流とアラートだけがこだまするそんな中、片膝をつきその場に屈していたジェネシスは立ち上がり様に「掠り傷だ。」と一言告げると、先程までの高揚を失った調子で部屋の扉へと歩を進めた。

    「―――約束のない明日であろうと、君の立つ場所に必ず舞い戻ろう・・・。」

     そう朗読して見せるその背中を、残された三人の男たちはただ静かに見つめていた―――――。




    16/06/05 20:11 960   

    ■作者メッセージ
    CCFFZの中でも人気の高いあのシーンです。
    最初見た時は鳥肌立ちました、いやほんと、Zの迫力ある戦闘シーンが美麗CGで再現されたと思うと・・・ッ

    ここではオリキャラのロゼを突っ込んでの再現になります。
    設定上は四人の中で最年少、実力は英雄に次ぐ二番手な彼ですが、今回は矢張り本編での三人の活躍を重視したものにしたかった為、何かと脇でちょこちょこさせるだけの登場になりました。
    彼の活躍するカッコいい(本編ではまだ肩書きだけでだらしない姿しか描いてませんからね(;'∀'))話も後々書く予定です。
    ではw
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