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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第二十六話 「見据える者」




     魔晄炉へ向かったザックスがツォン達に合流を果たして程なくした頃。村人や資料館を当たってもそれらしき情報が一切手に入らず、一向に進展が望めない状況の中、ツォンがザックスに対し閉口していた口を開いた。明らかにジェネシスとの関係性が認められないこの山村に長居する理由はほぼ無くなったというのに、ロゼがいつまで経っても戻ってこない。

    「―――――陣を敷くには時間が掛かり過ぎている。ザックス、悪いがもう一度魔晄炉へ向かってくれ。」

    「分かった!」

    言葉に頷いた後、ザックスは持ち前の足の速さであっという間に一行の視界から見えなくなった。残りの兵士を引き続き聞き込み調査に当たらせながら、ツォンの頭にはここ最近拭えないでいたある疑惑が浮上していた。
     前の任務でも似たようなことが起こった。ロゼを軸に編成された小隊の帰還が遅れた案件だ。セフィロスではなくロゼを送ったのは彼の能力を買ってのことだと言うのに、思いの外戦場を治めるのに手こずっていた、と同伴していたタークスは言っていた。ホランダーの研究の成果が日に日に出てきているのはコピーのレベルを見る限り一目瞭然ではある。が、それを計算に入れたとしても尚圧倒出来るだけの実力を持つあの男がいながら、任務は困難を極めた。帰還後提出されたレポートの一端を見たが、彼が得意の魔法を使わずに戦っていたことも引っ掛かる。おまけに任務中そのロゼと連絡が付かなくなった時間が存在するというのも怪しむべき点である。

    「何かあると踏んだ方が良さそうだな。」

     怪しくなる風向き。広大な青を覆う巨大な灰色は、彼の不安の色を映し出すかのように大きく広がっていった。



     ザックスが魔晄炉へと戻った時には空には一面の雨雲が掛かっていた。今にも振り出しそうな様子になど気付かないように、彼はその足を魔晄炉入口の階段へとかけた。

     閑散とする施設内にこだまする足音。初めて来た時と同様に自身の足音以外は機器の作動音以外聞こえない。どうにも静かな空間を、あの研究室へと向かうべくがむしゃらに進んでいく。そうして辿り着いたその場所は、数多くのレポートが散りばめられていた。

    「ロゼ!!」

    異様な光景に探し人の名前を叫んでみる。床に散乱したレポート以外、研究室に変化はない。しかし、そこにいる筈の人物の姿もまた、見当たらなかった。

    「ロゼ!!ロゼっ!?」

    徐々に不安が蝕んでいき、居ても立っても居られなくなったザックスは声を張り上げる。と、突如聞こえた金属音。その男は、研究室へと続く階段の中腹で、きょとんとした様子で自分の名を必死で叫ぶ少年の姿を見詰めていた。

    「・・・何叫んでんの?」

    「ああっ、ロゼっ!!」

    片手には一枚のレポート。こことは違うどこかで作業をしていたのか、ロゼはザックスの様子とはかけ離れいたく平然とした様子で研究室へと戻ってきた。ザックスは、ツォン達と共に調べた結果ジェネシスとの関連は見当たらなかったこと、なかなか戻ってこないので様子を見に来たことなど、事の経緯を説明した。

    「成程ね。やっぱり無関係、か。」

    「ぽいな!で、ロゼは何してたんだ?」

    「直接的な関連はなかったんだけどもね。どうも面白そうな研究をしてた場所みたいだから、それについて調べ物をね。」

    「面白そうな研究?」

    反芻したザックスにロゼは手に持っていたレポートを見せた。そこにはモンスターの細胞に関する研究、と題打たれている。

    「モンスターの細胞移植の結果だと思ってね。そうでもしなきゃ人に翼は生えないから。」

    レポートを見るロゼの目は今までに見たどの表情よりも冷めていた。いや、微かな怒気を含むそれはまるで睨み付けているかのようにも取れる。自分が最近までよく目にしていたかの女ソルジャーのそれと同質のものだ。おそらくアンジールのことを指しているのだろうその言葉は暗にホランダーに対する揶揄を潜ませていた。

    「本当に・・・、どんどんとんでもない方向へと話が進んでいくね・・・。」

    うんざりするほどに―――――とロゼは後から続けたが、あまりの小さい呟きにその声がザックスに聞こえることはなかった。



     ほどなくしてザックスがロゼを連れて戻ってきた。二人の様子は以前と変わりなく至って平静なものだった為、ツォンは敢えてロゼに対し何も聞かなかった。
     帰還する道中ザックスが話してくれた施設内でのロゼの行動に不可解な点はなかった上、細胞移植の研究に彼が注目する理由にも納得がいく。温厚な性格故に思うところもあるのだろう。そう言い聞かせることは出来る。が、ここ最近の彼の様子が普段のそれとは違い異質さを帯びているのもまた事実。
    ツォンはその帰路の中、ロゼと言葉を交わすことはなかった。



     帰還後、ザックスは上への報告書をまとめ、すぐ自室へと戻った。ロゼとの任務は初めてだった故に読めないところもあるが、何度か同行しているツォンの様子は何とはなしに分かるものだ。ポーカーフェイスを貼り付かせてはいたものの、普段の冷静な彼とは少しばかり雰囲気に差が見て取れた。それが重要任務だったからなのか、はたまた別の理由故なのかは分からない。彼の懸念のことなど、この時のザックスはまだ知る由もなかった。





     その後も同行という形でロゼと任務に赴く回数を重ね、はや二週間が経過しようとしていた。この頃はクロウと会う回数もめっきり減り、任務でミッドガルを離れる回数が増えた分エアリスにも会えていない状態が続いていた。任務に赴けるのは有難いことではあったが、何分同行する女王の実力ばかりが光って自分はこれといって活躍出来ていない。これではペアが妹からその兄へと変更になっただけのように思える。活躍への飢えからかセフィロスに連絡を試みるも、以前同様に何故か彼の携帯には一向に繋がらない。仕方なくアドレス帳の「C」の欄を漁ってみるが、お目当ての人物との過去のいざこざを思い出すとどうにも通話ボタンを押すのが躊躇われる。

    「でも仕方ないよなぁ。一応まだペア継続してるわけだし・・・。」

    そう呟いてザックスは思い切って通話ボタンを押した。ディスプレイに表示されている登録名は“Crow Volfied”。鬼神と呼ばれる少女である。



     今日も今日とて訓練兵の指導に溜息を吐かずにはいられないといった面持ちで、金髪の少女は訓練場の柱にもたれかかりながら腕組みをしていた。化物揃いと呼ばれるクラスに在籍している分、自分とその他との身体能力の差など十分に理解しているつもりではいた。が、ソルジャーのそれと比べ何とも情けない姿を惜しげもなく晒す大の男共をこうも毎日見続けていると、アンジールが歳の割に老けていた理由が実はここにあるのではないかと思ってしまう。それ程に情けない状態だった。

    「・・・・・・話にならんな。命を落とす為に入社したのか貴様らは。」

    今日一の溜息が無意識に零れ出た。イライラとした感情が積もりに積もって今にも爆発しそうな状態だった。他人の為に時間を割く行為がどれだけ少女の機嫌を損ねることなのかを兵士達は理解していない。彼女の中では今こうして何もせず、ただただ目の前の男共を怒鳴りつけている時間の浪費に対する苛立ちが静かに、大きく膨らんでいた。

    「実践でも同じように座り込むのか?どうぞ殺してくださいと言っているようなものだな。」

    もういい、埒があかんとクロウは訓練場を後にしようと背を向けて歩き出す。するとズボンのポケットに入れていた携帯が着信音と共に震え出した。ディスプレイを見て舌打ちするとそのまま通話しながらクロウは早足にその場を去っていった。
     叱咤激励とは程遠い、一方的に罵詈雑言を浴びせられた兵士達はぶつくさと文句や小言の類を言い始め、各々立ち上がるとばらばらに散っていってしまう。そんな中よろよろとした状態で自身の剣を握り締め、先程指導された反撃用の素振りの練習を再開する兵士が一名。大の大人の中でその華奢な痩躯は嫌という程目立つが、覇気の感じられない見た目とは相反して彼のみが黙々と訓練を続けていた。短く逆立った金色の髪に、眉目秀麗な顔立ち。額から吹き出す汗を拭おうともせずただひたすらに剣を振り続ける少年の姿を尻目にどんどん訓練場をあとにする兵士達。うち一人が去り際に彼の方を振り返り声をかけた。

    「お前もよくやるよな。あんまり鵜呑みにしない方が良いと思うぜ?クラス1stの連中は俺達と違って性能が良いからよ。あの人の言ってること、理には適ってるけど俺たち一般人には無理だっての。」

    「―――でも、出来なきゃ俺はソルジャーになんてなれないから。」

    視線を合わせるわけでもなく、目の前の鉄の塊にのみ意識を集中させながらそう返した少年に、兵士は肩をすくめる。

    「そうか、お前はそうだったよな。ま、あんま無理すんじゃねーぞ、“クラウド”。」




    17/12/03 02:12 960   

    ■作者メッセージ
     約半年ぶりの更新となりました。皆様お久し振りです。

     今回の補足は特にはありません。次回に色々分かる部分もあると思うので敢えて付け足すことは避けようと思います。
     見どころを挙げるならばクラウドの登場でしょうか。本編ではモデオヘイムまで一切出てこないのですが、ここではちょろちょろと記述の中に彼を見つけることが出来ます。名前と姿を描写するのは初ですが。ようやっと絡んで来たなぁと思うと描いてる側からすれば滾りますね!!

     次回は割とすぐに更新できると思います。質問等ございましたらどんどんどうぞ、メッセージ欄にて回答させていただきます。
     それではここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました!
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