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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第二十話 「ペアA」

    「戦うってどういうことだよ!?」

    「言葉の通りだ。」

     突如として告げられた宣戦布告―――――もとい死刑宣告。いや、実際のところ、ザックスはクロウが戦っている様を見たことはない為、その実力を正直測りかねている状態ではあった。しかしそれでも尚彼の根底にあるこの何とも言えない敗北感は、以前市街へ繰り出した時に垣間見た彼女の身体能力の高さに原因がある。あれから自身も鍛錬を積んではいるが、ストイックと噂されるクロウのことだ、簡単にはその差を埋めさせてはくれないだろう。

    「・・・で、何でセフィロスにロゼ?」

    「効率を考えた結果だ。トップ2なら色々と足りないものを教えてくれるだろう。」

    「・・・じゃあ何で科学部門?」

    「この体になってからの身体データの計測を頼まれている。ついでにお前の分のデータも取ると言っていた。」

    いつもより饒舌である。凡その見当はつくが、それでもここ最近ああもスルーし続けた相手によくもまあここまで態度を一変させることが出来るもんだ、とザックスは内心感心した。ちなみに彼は気付いていないであろうが、無論良い意味ではない。アドバイスがどうのと言ってはいたが、おそらく自分の為の訓練でもあろう。強くなることに一途なのは周囲の反応を思えば納得出来ることではあったが、こうも純粋になるものか。そういったところは矢張りソルジャー。根本は同じなのだと思わせられる。いつも眉間に深く刻まれている皺が今日に限ってないことも、以上の印象を与えるのに大きな役割を果たしていた。
     対して、どちらかと言えば本日はこちらの方が機嫌が悪い。普段から表情にあまり変化は見られないのだが、何故か今日の彼の眉間にはクロウのそれが転居を決め込んだかのように深い深い皺が刻まれている。ロゼはそんなセフィロスを横目で見て顔を引き攣らせているし、三人が三人とも異様だった。
     そんな異様さを前にたじろぐザックスを置いて、クロウはさっさと科学部門の部屋へと入っていく。靡く彼女の長い金髪―――――そこから意識がその後ろ姿へと移りふと気付いたが、驚くほど軽装である。普通2nd以下のクラスは自分と似たような感じで背に剣を背負っており、1stはそんな型に嵌まらないとはいえ、誰しもが自身の得物を所持している筈なのだが。初対面の時やこれまでの任務の時は自分が動くばかりで気付かなかったが、クロウに至っては武器の一つも所持していないではないか。これで戦えるというのか。

     無言のままにその後に続き、科学部門管轄の演習場へと場所を移す。宝条を含む数人の研究員と銀髪の英傑二人は特殊ガラスで仕切られた演習場の外へ。残る二人はそれらに囲まれる形で演習場内にて向かい合う。

    「・・・セフィロス機嫌悪すぎ。後輩の頼みなんだし、私情は後回しにしてあげたら?」

    中で向き合う双方の姿を見詰めながらそう口を開いたロゼの言葉を頭の片隅に残し、セフィロスもその注意を後輩連中へと向ける。どうにも無表情を貼り付かせている痩躯の男が気になるが、奴が何もしてこない以上、こちらも気を張るだけ疲れる。研究データなどここにいる誰もが取られている。付け加え今この場には最高戦力が四人も揃っているのだ、無理矢理な実験はよもや行われまい。奴も必要以上の接触は避けてくるだろう。

    「お、始まるかな。」

    そんな言葉が意識を眼前へと引き戻す。ちょうどクロウが掌に白い大刀を出現させた瞬間だった。しかし、その直後ザックスが何やら困惑顔でクロウ相手に話しかけている。防弾ガラスの強度を凌ぐ特殊な防壁により室内の音声は完全シャットダウンだ。何の話をしているのか、その行動が何故起こるのか。口の動きに細心の注意を払う他、これらの脈絡をすくう術は無い。少年の言葉をクロウは無言のままに聞いている様子だったが、すぐさま大刀を短剣へと換装させると、ロゼ同様に一つに束ねていたそれを微塵の迷いもなく切ってしまった。彼女の左手に握られた金の川は、同時に発現した炎の中へと消え行ってしまう。光景にザックスは余計に慌てふためくが、クロウは言外に彼の言葉を遮ると先程の大刀を握り締め、構えた。


    「これで文句あるまい。お前が戦いやすいように髪を前みたいにしてやったんだ、不甲斐無い結果は認めない。」





     そこからは呆気ない展開だった。どちらもそれなりの大剣の使い手だというのにも関わらず、斬撃速度に異様なまでの差が認められ、結果ザックスは防戦に回る他なく。クロウの一方的な展開になってしまった。いや、対峙した本人や実力ある英傑共にはスピード以外の決定的な敗因も理解出来たであろう。未だザックスの手に残る痺れのあと。あの華奢な体のどこにそんな力があるのかと疑ってしまう。自身のそれよりも一回りも二回りも大きい剣―――――大きさだけならアンジールのバスターソードに匹敵する大刀を、信じられない速度で振るっているせいか、はたまたそんな巨大な武器を扱う筋力のせいか。兎角一撃一撃の重さが尋常じゃなかった。

    「課題だらけだねー。」

    「本当にアンジールの指導を受けていたのか?」

     対人訓練後は2トップに嫌という程小言を言われる始末。訓練前よりセフィロスの機嫌は幾分かマシになってはいたが、代わりにクロウの機嫌がすこぶる悪くなっていた。転居していた眉間の皺も矢張り古巣の居心地を思い出したのだろう、今は彼女の眉間にしっかりと刻まれている。不甲斐無い結果は認めない。自分でもこんなことになろうとは思っていなかった。が、結果はあのざまだ。彼女の不満も今回は尤も、返す言葉も見つからない。

    「女の子相手じゃ戦う気力が湧かないからって、わざわざ断髪式までさせちゃったのにね。ま、髪が長いと別人意識を抱いちゃうって兵士は何人もいたから、前の髪型に戻したのはある意味良いことなのかもしれないけど。」

    社内上層階にあるロゼの部屋の中、大きなテーブルを四人で囲むように座り、用意されたコーヒーを片手に本日の訓練内容を振り返る。白基調のシンプルな部屋は黒い小物や観覧植物といったこれまたシンプルな家具で統一され、全体的にモノトーンでコーディネートされていた。ザックスは入るのが初めてだった為それなりに縮こまっていたが、残りの二人はまるで自室かのように遠慮なく寛いでいる。
    先程まではクロウの乱雑に切られた髪をロゼが整えていたが、作業を終え二人がテーブルについた後はアドバイス交じりの談笑が繰り広げられていた。

    「一気にふてぶてしさを取り戻したな。ロングの時の方が淑やかで良かった。若干。」

    「うるさい死ね。」

    褒めているのか乏しているのか判別し難い言葉を吐くセフィロスに容赦なく飛んでいく暴言。未成年だということでアルコールは一切出されていない筈なのに、自分以外の三人の様子ときたら酔いに任せて悪絡みする酔っ払いのそれとほぼ同じだった。余計な一言が呟かれては湯水のように溢れ出る暴言。しかも絶対に死ねというワードが入っている。実兄のくせにロゼは馬鹿のように大笑いして止める気配が一切ない。

    「大体女の子相手じゃ気が引けるとか何とか言っておいてあのザマとはな。フェミニズムなんざ“俺”より強くなってから翳しやがれこの駄犬。」

    「こら、“俺”じゃない。」

    「“私”って言いにくい。」

    「慣れなさい。」

    「・・・・・・・・・。」

    「兎に角だ、ペア組まされた以上連帯責任だ。明日からトレーニングルーム使って対人の繰り返しだ。私に一撃入れるまで実地はなしだからな。」

    誰のせいだと思ってんだ、と口にしかけたが止めた。二人の銀にあれやこれやと痛いところを突かれて精神的にきている。反論なんかしてこれ以上の暴言を喰うのは避けたい。反省会しようかと誘われて部屋に来たものの、プライベート全開で自由人オーラを醸し出してくるという訳も分からない状況の中に何故自分はいるのか。平和が欲しい、切実に。

    「―――――あ、そうそう!ザックス、君ね、動作大き過ぎ。脇めちゃくちゃ開いてるし、無駄に大振りするし。動きは最小にした方が良いよ?俺だったら今日君が最初に迎撃用に右から剣振った瞬間に左脇狙うね。即死っ。」

    大と小が小言論争を勃発させる中、ふと思い出したように、右隣りに腰かけていたロゼがにこやかに告げた。そんな柔らかな微笑みを浮かべながら即死なんて言うもんじゃない、とこれも喉の方まで言葉が出かかったが何とか飲み込む。漸くアドバイスらしいアドバイスが貰えたことによる安心感がザックスを襲ったからだ。

    「他には!?なぁっ、他には!?」

    「うーん・・・。明日の訓練の時、クロウに二刀流を使わせるよ。君、頭で考えるより実際に体験する方が覚えそうだし。まぁ、大剣が得物のアンジール相手じゃ経験したことないのも無理ないけど、その隙の多さは俺やセフィロス相手じゃ致命傷だからね。今日以上に剣速上がるけど、取り敢えず全部防いでみるつもりでいきな。今のままじゃとてもじゃないけど防ぎきれないから、次第に動作の大きさをセーブ出来るようになると思うよ。

    あー、あと剣の振り方ね。腕だけで振り回しても斬撃に威力は生まれないからね。腰とか足とか、それこそ全身で攻撃しなきゃ攻撃は単調で軽いものになっちゃうから、そこらへんも意識しとくと良いかもね。」

    いつの間にか空になっていた自らのカップにコーヒーを注ぎに行きながらロゼはそう教えてくれた。基本的なアドバイスしかしてないけど、と苦笑していたが、指摘された内容は思い返せばどれも自分に当て嵌まる。大剣を扱うタイプばかり相手にしているとそういった一挙一動に注意が行きにくくなるのだという。何でも、力技になりがちな分、次第に挙動が大きくなりやすいのだそうだ。

    「ありがとう!!取り敢えず明日から実践してみる!!」

     そうして反省会はお開きになった。言い争いをする二人を引き剥がし各々の自室へと返した後、ザックスも宿舎に、ロゼも見送りを済ませた後自室に戻る。もう月が高く昇っている。今夜は雲一つない明瞭な月夜だった。長身の男は煌々と闇の中に落ちるその光を見て一笑すると、ほどなくして、自室の明かりを消した―――――・・・。

    17/05/05 16:07 960   

    ■作者メッセージ
     割とすぐに更新することが出来ました。ストーリーがオリジナルなので執筆しやすいのかもしれません('ω')

     前回のメッセージ欄にて本サイト用のTwitterを新設しましたという旨を書き記したのですが、肝心のURLを載せておりませんでしたので以下に記載しておきますね。ちなみに本サイトの作者情報のところのURL欄には既にアカウントの方の記載をさせていただいてます。更新情報や設定画など置いてますので興味のある方は是非覗いてみてください。

      Twitter→@crow_volfied
      (960@小説垢)

    です。新設なものでまだクロウ(10歳時)の設定画しか載せておりませんが…随時更新予定です!!



     そして今回の小説の補足。今回、対人訓練中にクロウが髪を切る描写を入れましたが、あれはザックスが女の子相手に剣は振るえないと動揺した為です。薬を止め15歳の姿になってからはロゼのように髪を纏めなければならないくらいのロングヘア―で描写していました。外見的にも余計女の子らしくなってしまったので、ザックスが動揺したわけですね。―――で、クロウは以前書いたように性差されることを激しく嫌っています。現状強くなるためにザックスの協力が必要不可欠な状態ですので、ここでの戦闘拒否は彼女にとってデメリットしかないわけです。なので、彼が生意気だと思っていた以前の髪型にしてしまえば抵抗感が減ると考えたようです。髪の毛はばら撒くとかえって邪魔なのでその場でファイアで燃やしちゃいました。さらばロングヘアー!!

     そしてそして、途中に大と小が論争勃発させた的な文言を入れましたが、大はセフィロス、小はクロウを指しております。身長的にね、2m級のセフィロスと(これまた後程15歳時のデータも載せますが)158pのクロウをセットで表現しようと思うとね。決して下品な表現ではございませんのであしからず…笑


     ではでは、ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます!それでは次回更新まで!!
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