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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第十八話 「虚実」


     天才と気違いは紙一重と言うように、平和と抗争も紙一重の関係にあるように思う。ウータイとの戦争終結後の平穏、それを崩した1st脱走事件。解決したわけではないが、この大きな事件の後にも幾ばくかの平穏無事な日常があった。それを壊したのは―――――・・・。





    ・・・―――――そう、クロウ・ボルフィード。





    「どういうことか説明してくださいッ!!本人にインタビューを!!」

    「会見は開かれないのか?!情報機関は何をやっている!!」

    「それよりも神羅だ!!本人を出せ!!」

    「ファンクラブの方には?何か説明はないのか?」

    「わぁああああああああああ!!クロウ様ぁあッ!!」

     ―――――今、ミッドガルは荒れに荒れていた。それもこれも、今までそれと信じていた子どもの姿が実は嘘で、本当は15歳の少女だというのだから・・・。
     事が明るみになったのはクロウ失踪から約十日あまりが経過した時分だった。騒ぎはまず神羅本社で起こった。

    「誰?あの子、すっげぇ美人・・・。」

    「セフィロスさんとロゼさんが一緒ってことは新しいソルジャー?」

    「え、女ソルジャー?」

    「クロウの件も片付いてないのに新人導入するってことは、駄目な可能性が高いんじゃねーの?」

    「ああ、成程。いくらトップ2がいるからって、脱走した1stの戦力相当高いもんな。」

    「にしてもどっから補充したんだ?あんな子、神羅兵にいたっけ?」

     英雄と女王に連れられる形で廊下を歩く凛とした姿はこのむさ苦しい組織の中でも一際目立っていた。少女は長い金色の髪を後ろで一つに束ね、その身には黒い革のノースリーブ型のハイネックを着用し、上下ともほぼ黒一色。先導する二人の1stと同様にスタイリッシュ且つ厳格な印象が見る者を彷彿とさせた。
     兵士たちの視線は少女に釘付けになった。無論その卓越した容貌のせいもあるが、一番の理由はソルジャー補充で招集された人間である可能性があったからだ。先程どの兵士かが声を潜めて呟いていたが、1stクラスに補充をかけるということは現状在籍している戦力が脱走した戦力と均衡もしくはそれに劣っていることを暗に示している。ジェネシス、アンジールだけならその他四名の1stの総戦力の方が勝っていたが、この状況を見る限りそこにかの子どもソルジャーが加わった可能性が浮上してきたのだ。故にこの女戦士の加入は神羅に希望をもたらすと同時に拭いきれない不安をももたらしていることになる。

    「ま、こうなるとは思っていたけどねぇ。」

    横目を配らせながら口々に持ち上がる兵士たちの憶測を耳に入れ、ロゼは後ろを歩く少女を見遣った。その視線は何を言われようともまるで意に介していないようにただ真っ直ぐ前だけを見詰めていた為、振り返った際にその双眸と自分の目が合ってしまった時には寧ろ此方が驚かされた。

    「―――どうせ知れる事だ。」

    「そうだね。でもまさかこんな憶測が生まれようとは。ちゃんと社長や皆に謝罪するんだよ、クロウ?」

    「・・・・・・・・・・・・。」

     引き締まっていた表情、社内に漂っていた不安の色が―――――・・・





    ・・・――――― 一変した。





     それからというもの、兎角騒ぎを押さえるのに大変だったことは言うまでもない。元よりいわくつきの存在であったが為に引き起こす騒動の規模もある意味英雄クラスである。性別の件や年齢の件、最年少記録の件等、様々な用件での疑惑浮上に付け加え、帰還前の脱走に関する問題もまだ回答を得てはいない。帰還後直ぐにプレジデント神羅の元へと直行した彼女に、これらの言及が投げかけられたのは容易に想像出来る事である。社長室での彼女の返答がどういったものであったか、それは世間の知り得ないところであるが、この変貌は隠そうとして隠しきれるものでもない。以上の判断から、神羅はその翌日に事を露見、そうして現状に至るわけである。
     偽証への謝罪、真相の告発。彼女に求められる世間からの要求は妥当なものであり、ここ最近に起こした不謹慎な行動のせいでその評価はダダ下がりの傾向にある。無論、これも至極妥当な反応であろう。しかし募る不信感に何を思ったのか、神羅側からは渦中の人物を表に出す動きが皆目見えず、遂には本社のエントランス直前まで市民が押し寄せる事態にまで発展した。
     事に焦燥感を募らせるのは何も一般市民だけではない。日に日に数を増す群衆のせいで市街地へ出ることすら一つの任務であるかのようにハードルが上がる。市民とすれ違う度に胸倉を掴まれ事情の説明だの何だのを要求される。神羅兵やその他ソルジャーも騒動にはほとほと困り果てていた。



     そんな日常が日々経過していく。各々が胸中に何かを抱く中、待望の日は訪れた。
     社内の一室。記者達の出入りを一切禁じた一方的な会見部屋の中央には、どこにでもある長机一つに椅子四脚。会見開始予告の午前十時直前に、そこへ四人の人物が順に腰を下ろしていく。実兄ロゼ、今回の騒ぎの元凶クロウ、ソルジャー統括ラザード、そして神羅副社長であるルーファウス。プレジデントの顔が見えないのが会見としての誠実さを欠いているようにも思えたが、それよりもといった具合に民衆の注意は中央に座る人物へと注がれた。

    「本人からの言葉の前に、先に。今回の本人の変貌に皆様さぞ驚かれたことだと思います。その実、事は肉親である私以外には露呈されてはおらず、私も妹同様に皆様の信頼を裏切ってしまいました。深く、反省しております。そうして私から皆様に―――――身内を擁護する形になるかもしれません、が聞いてください。クロウの行動は確かに信頼を裏切るには十分なものでした。しかしその目的に矛盾はありません。どうか、本人の言葉を受け止めた上で事の判断をお願いしたい。私からは以上です。」

     予定時刻丁度、まず口を開いたのはロゼ・ボルフィードであった。知らなかったで通せば彼の風評被害は免れる。仮にもセフィロスの次に人気実力がある広告塔だ。神羅側は再三彼に関係性の否定をするよう催促を出したが、それでも彼は会見へ同席することを希望した。その事実を知れば、彼の情の深さに多少感化もされようが、一般市民がそんな由知る筈もない。出だしは順調であっても後半は身内擁護の何とも曖昧な内容であった為に、民衆の不信感は募る一方であった。余談になるが、ロゼ擁護派筆頭である彼のファンクラブ『白銀の氷帝』会員らが以上の彼の心中行動を探り、会見に至るまでの言動を街に広めて回ったおかげもあり、彼の情の深さに打たれる市民が思いの外多く出たという。
     さぁ余談はさておき、いよいよ待ちに待った当人からの言葉が紡がれた。ロゼが頭を下げたのと同時に口を開いたクロウは、およそこれが謝罪会見であるとは思えないような生意気な口調で、静かに口火を切り始めた。

    「―――――お前たちが今知りたがっている真実とは、ことこの会見が始まった3〜4分前から既出している。性別も、年齢も、理由も、お前たちが目にしているこの姿こそが真実。それ以外の何ものでもない。」

    「ちょ・・・っ・・・。」

    「クロウ!?」

    「目的から話そう。私の目的はこの組織で力を得る事、その為に入社しここまでやってきた。今までお前たちが見ていた姿はその目的を達成せんが為付いてきた偶像に等しい。如何せん、女が男より身体能力で劣るのは人間の身体の構造上仕方のない事実だからな。いらん足枷など無い方が良い。ならいっそこのまま成長せずに偽れば良いのではないか。そう考えた結果がアレだ。まぁ、そのことが最終的にはあだとなったが為に、今こうしてこの姿を晒しているわけだが・・・。」

    同席していた三人は、ルーファウスを除いて少女の言葉に唖然とした。まがいなりにも神羅の看板の一つだ。民衆からの支持率は他の兵士とは比べようもない。付け加えクロウは頭は切れる方だ。組織の一員としての自覚がないわけではなかろうが、それでも彼女の口から出てきた言葉に謝罪や反省の色は微塵も感じられなかった。

    「姿形という見せかけで、兄以外の全てを欺いてきたこと―――――いや、その兄をも欺こうとしたこと、これは変えようのない事実だ。いくら責められようとも反論することは出来ないし、弁論の余地もない。しかし私はここに来てから・・・・・・、いや来る前からずっと、その信念を曲げたつもりはない。偽るのは力の為。力は目的の為。目的は奪わせない為。大切なものを―――――守る為・・・。



    ―――――これが私の真実。これ以上も以下もない、私の貫き通してきた信念。」





    「―――――よくもまぁ、あんな大嘘並べられたもんだね。俺の世間体なんて気にしなくて良かったのに。」

    「・・・私“個人”の問題だ。信頼の回復は組織でやっていく為の絶対条件だったからな。」

    「全ては守る為、か。まるでどこかのヒールが実はいい奴でしたってネタ晴らしをしている光景のようだったよ。でもまぁ、取り敢えずは結果オーライなのかな。表向きではね。」

    「――――――。」

    クロウの会見での言葉は、謝罪の言葉が一言もなかったにも関わらず民衆からの評価を得た。それは常に危険と隣り合わせで生きている市民にとってはこれ以上ない言葉であり、その非力さをたった一人の少女に背負わせてしまっていたという罪悪感を引き起こさせたからであった。
     『守る為』。この言葉は1stの脱走事件に勝るとも劣らない混乱を起こした少女の風評を綺麗さっぱりどこかへ吹き飛ばしていった。ミッドガルに吹き荒れる、風の如く―――――・・・。
     自分の言葉に何の返答もなしに廊下を歩いて行った少女の背中を見詰めながら、残された英傑は目を細める。その胸中如何に。表向きと言った彼の真意には、少女が未だ救われてはいないという確証にも似た何かが潜んでいる。そう、クロウ自身の問題は未だ何も解決していない。そうしてそれは最早この手で何とか出来る程容易いものではなくなっている。

    「“君”がいて良かったよ・・・。」



    “君”ならきっと、あの子を何とかしてくれる。

    あの子を―――――任せられる―――――・・・。



     そうして運命は交差する。



    16/09/17 16:31 960   

    ■作者メッセージ
     ここまで読んで下さった皆様ありがとうございました!!
     いや、本当に更新していくのには力が要りますね。

     今回は慌ただしい場面がまあ見られたかなという感じです。
     表向きの解決っていうロゼの言葉は書いてて何か意味深だなぁ・・・ってなりました、勿論意味深にはしていくつもりですけどね。
     少しの補足をしておくと、他人からの評価云々なんて気にしない性格のクロウが何故信頼回復という矛盾した行動に出たのか。彼女にとっては復讐の為の力が最優先なわけですね。その為なら自分が好きでないことでもまあ従うって感じを言いたかったんです。
     意識してるかしてないかはさておき兄の為ってのもありますね。ロゼが頭を下げた瞬間に口を開いたのがそれです。多分巻き込んでしまった罪悪感あったんでしょうね、多分。(伝わってれば良いけど文章が何分稚拙なもので・・・笑)

     ロゼは兄妹なだけあってそんなクロウのことを見抜いちゃうんですよね。いろんなところが見えるんだけど虐殺以来そんな妹の軌道修正が出来ないから彼は彼なりに自分を責めてるんだと思います。

     今回はそんな裏がちょっと出た感じになったかな。
     次回からはうるさいのが戻ってきます!またの更新をお待ちください!
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