Another chapter7 Terra&Aqua side‐5
夕日が照らす、町の大きな時計台の広場。
普段は列車の音以外は聞こえない静かな場所で、戦いの火花が散らされた。
「待てぇ!!!」
「追って来るか…大した者だ」
時計台を駆け上がりながら、斬りつけるウィドとそれを防御するセヴィル。
だが、時計盤に足を踏み入れると、二人は同時に上空へと蹴って飛び上がる。
その状態で、ウィドは落ちながら剣を握ってセヴィルに怒鳴った。
「教えろぉ!!! 姉さんの事!! 姉さんの居場所をぉ!!」
そうして、剣をセヴィルに向かって振り下ろす。
しかし、その攻撃はキーブレードによって阻まれた。
「だが、甘い」
小さく呟くと、防御したキーブレードで弾き返す。
空中でよろめくウィドに、さらに追い打ちをかけるように回し蹴りを上から放った。
「ぐっ…!?」
半ば踵落としの蹴りを喰らい、地面に落下するスピードが加算される。
結果、受け身が間に合わずそのままウィドは地面に叩きつけられる。
対して、セヴィルは膝を折って着地すると、倒れているウィドにキーブレードを突きつけた。
「武器とは、己自身を表す物だ。何かを奪う為に振るう信念を武器を乗せても、俺に刃は届かない」
静かに諭すと、キーブレードの先端をウィドの持つレイピアに向けた。
「お前の持つ武器はその剣一つ。その剣に命を懸けている事を忘れるな」
まるで戦いを教えるセヴィルの言葉に、ウィドは睨みながらも立ち上がろうとする。
それに小さく笑っていると、突然後ろに黒い影が過った。
「後ろががら空きだ、セヴィル!!」
不意打ちを狙うように、クウが素早く拳を放つ。
だが、攻撃を読んでいたのかセヴィルは身をかわして避ける。
それでも、クウは攻撃の手を止めずに更に蹴りを放ったが、同じように攻撃したウィドの振るった剣に交差するように当たってしまった。
「邪魔するな!!」
「それはこっちのセリフだっ!!」
怒鳴るウィドに、クウも負けじと言葉を返す。
そんな二人を見て、セヴィルは呆れた溜息を洩らしながらキーブレードを構えた。
「何て執念だ…そんな事では―――まともに攻撃が当たらないぞ? 『陰招旋風』」
「ぐっ!?」「つっ!?」
キーブレードを振るって放たれた渦を巻いた黒い暴風が、二人に襲い掛かる。
その二人のうめき声に、少し離れた場所にいたレイアが反応した。
「クウさん!?」
「まずは、お前だ」
レイアが振り返ったのを見て、マリェースが腕を鎌に変えて迫った。
「させない! テラ!!」
「『スタンブレード』!!」
アクアの声と同時に、テラはキーブレードに雷を纏って思いっきり振り下ろした。
「くっ!?」
水の抱える宿命なのか。雷が弱点なようで、表情を強張らせてテラの攻撃を避ける。
そのマリェースの後ろに、アクアが宙に浮かんでキーブレードの先端を向けた。
「『レインボーシャワー』!!」
「なっ…!?」
後ろからのアクアの不意打ちに、マリェースは振り返るが遅い。
アクアから放たれた様々な色の光弾が、次々とマリェースに襲い掛かる。
二人の息の合った攻撃に怯むマリェースに、テラはすぐにレイアに声をかけた。
「レイア、今の内だ!!」
「はい! 『ケアルガ』!」
テラに頷くと、レイアはすぐにクウとウィドに癒しの魔法をかける。
レイアによって回復する様に、セヴィルは軽く二人に笑いかけた。
「助けられたな」
「うるさい!!」
「黙れ!!」
セヴィルの言葉に、二人は怒りを露わに武器を構え直す。
そんな二人…否、クウに視線を向けると何処か挑発的な笑みを浮かべた。
「――どうした、もうバテたか? バカ弟子?」
その言葉に、思わずウィドはクウを見る。
すると、クウはさらに目を細くしてセヴィルを睨みつけていた。
「それは師匠の言葉だろぉ!!! あんたが使う言葉じゃねぇ!!!」
「自分から抜け出しておいて、随分とあいつには執着するんだな?」
「執着なんて、してねぇ…!!」
セヴィルが呆れて言うと、クウは舌打ちして顔を逸らす。
この二人の会話に、ウィドは訝しげな表情を浮かべた。
「あいつ…?」
そうしていると、話は終わったのかセヴィルがキーブレードを両手で握った。
「さて…これはどうだ?」
そう言ってキーブレードを縦に構え、握り込む。
すると、セヴィルの周りに白と黒の球体が幾つも現れて二人に向かって飛んできた。
「『陰陽数珠』か…丁度いい!!」
この攻撃に、クウはニヤリと笑うとそれぞれの手に黒の羽根を四つずつ指に挟んで具現化させた。
「何を…!?」
『フェザーノクターン』を使おうとするクウに、ウィドは目を丸くする。
だが、クウは答えを返すことなく大声で叫んだ。
「テラ、ゼロボロス、こいつをやる!!」
「「え?」」
突然名前を呼ばれ、戦っていた二人は手を止めて振り返る。
同時に、クウは腕を振るった。
「らぁ!!」
そうして羽根を飛ばすと、こちらに向かっている球体の横や下の部分に当てる。
すると、球体は当たった衝撃で軌道を変え、何とマリェースやフェンに向かって飛んで行った。
「くっ!?」
「なぁ!?」
思わぬ敵の反撃に、アクアと鍔迫り合いになっていたマリェースだけでなく、ゼロボロスと戦っていたフェンまでも攻撃を避けるために一旦距離を置かざる負えない状況になった。
「敵の攻撃も使いよう、ってな?」
クウが得意げに笑っていると、いきなり横を衝撃波が通り過ぎる。
思わず目を向けると、何と自分の後ろで黒の球体が爆発している所だった。
再度顔を戻すと、『空衝撃』を出したウィドが呆れた目で睨んでいた。
「弾き返すなら、ちゃんと弾き返しなさい!!」
「悪ぃ、助かった」
どうやら、完全に弾き返してない球体がこちらに向かっていたようで、助けれくれたウィドにお礼を述べる。
少しずつ息が合ってきた二人を、ゼロボロスは苦笑しながら見ていた。
「やれやれ…何て人だ」
「俺を無視するなぁ!! 『霊封衝』!!」
そんなゼロボロスに、フェンはすかさず白い衝撃波をぶつける。
この攻撃に、ゼロボロスは拳にさらに白黒の炎を纏わせた。
「はぁ!!」
目と鼻の先に迫ってきた衝撃波を、手を広げて受け止める。
こうして押し合いが数秒だけ続くが、腕を振るって衝撃波を掻き消した。
「か、片手で相殺した!?」
「こんな攻撃、今の僕には何の意味もありませんよ」
「くそっ…その妙な炎が原因か」
余裕をかますゼロボロスに、フェンは彼の身体に纏った白黒の炎を睨む。
前に戦った時にも炎を使っていたが、あの時よりも力があるのを感じる。
だが、フェンはニヤリと笑って剣に茜色の炎を纏った。
「まあ、いい…だったら、こいつはどうだっ!! 『溶炎弾』!!」
一気に剣を振るうと、何と野球ボール並みの小さな茜色の火球がゼロボロスに飛んできた。
「そんな炎、相殺するまでも――」
そう言いながら、ゼロボロスは横に動いて火球を避ける。
火球はそのまま重力に沿って地面に落ち―――辺りに炎を飛び散らせるほどの大爆発を起こした。
「なっ!? うぐ!?」
予想しなかった攻撃に、ゼロボロスは対処が出来ずに背中や腕に茜色の炎が当たってしまう。
だが、フェンのこの攻撃はゼロボロスだけに留まらなかった。
「きゃあ!?」
「アクア!! ぐぅ!?」
「テラ!?」
マリェースと戦っていた後方にいるレイアにも炎が当たり、近くにいたアクアを庇うようにテラが身体を這って炎を受け止める。
「うあっ!?」
「がっ!?」
さらに、ウィドにも膝の部分に炎が当たり、クウも黒の翼に炎が当たる。
フェンの思いがけない攻撃に全員が怯んでいると、ある事に気が付いた。
「なんだ、これ…!?」
「火傷にしては、痛すぎる…!!」
炎が引き、アクアを除いた彼らに火傷が作られる。
しかし、普通の火傷と違い痛みが尋常ではない。現に今、身体の力が抜けていく。
クウとウィドが火傷の部分を押さえながら呻いていると、唯一無事だったアクアが動いた。
「すぐに治すわ!! 『ケアルガ』!!」
魔法力を高め、アクアは全体に癒しの光を放つ。
こうして、全員の傷が完全に治る――…筈だった。
「助かっ…つぅ!?」
テラがお礼を述べようとするが、すぐに顔を顰める。
見ると、テラの胸や腕の部分に付いた火傷は治っていなかった。もちろん、後の四人も一緒だ。
「そんな、治ってない!?」
「あの技は、一体…!?」
アクアが信じられない目で火傷を見る中、ゼロボロスは腕を押さえてフェンを睨む。
すると、フェンは歪んだ笑みを浮かべてゼロボロスに種明かしをした。
「どうだ? あの炎に少しでも当たれば、じわじわと火傷が広がると共に体力も削られる。そんな回復魔法じゃ治せない代物だぁ!!」
「ぐっ…!?」
説明して一気に駆け込むと、ゼロボロスに斬りかかる。
どうにか、フェンの剣を腕をクロスして防御するゼロボロス。だが、腕の火傷が体力を蝕み、じんわりと額に汗が浮かぶ。
「どうだ? さすがのお前も、俺の炎には敵わないようだなぁ!!!」
このゼロボロスの様子に、フェンは更に剣に力を込める。
そんな中、フェンの説明を聞いたクウは悔しそうに歯を食い縛っていた。
「ったく、妙なマネしやがって…!!」
そう呟くと、軽く手を振って火傷の付いた背中の翼を消す。
そのまま拳を握り込むと、もう一度黒の双翼を具現化させた。
こうして火傷を治したクウに、セヴィルは苦笑を混ぜて笑った。
「良かったな、火傷が翼だけで済んで」
この言葉に、クウは答えずにセヴィルを睨む。
この黒の双翼は、自分の闇を具現化したものだ。だからこそ、こうして傷付けられても再生が出来る。
ちなみに、これは精神で作っているのである程度の神経までリンクしている。と言っても、神経を感じるだけなので身体には異状はない。
だが、翼を攻撃されればその分の痛みは襲い掛かる。さっきの火傷も、翼に付けたままでは体力ではなく精神が痛みで蝕んでしまう。
クウはセヴィルを睨みつつ、あの火傷を負ったウィドに目を向けた。
「おい、大丈夫か?」
「これ、ぐらい…何とも…!!」
クウが声をかけると、ウィドは懐から『ハイポーション』を取り出して一気に飲みこむ。
どうやら、自分が奮闘して勝負を早めに決めないとマズいようだ。クウはそう思いながら、セヴィルに飛びかかった。
セヴィルとの戦いが再開する中、アクア達はピンチに陥っていた。
「『ウォタガ』!!」
「『リフレク』!!」
「『リフレガ』…!!」
マリェースの水の魔法にアクアは自分の周りに、レイアはテラと共に魔法の障壁を張る。
巨大な水柱が三人を包み込むが、収まると同時にマリェースが腕の内側を刃に変えて触手のように長く伸ばす。
そうして、火傷を負ったテラとレイアに振り下ろした。
「二人纏めて、消えろっ!!」
「させない!! 『ウィッシュブレード』!!」
アクアが近づいてキーブレードで斬りつけると、三つ分の斬撃がマリェースを襲った。
「くっ…!?」
攻撃を中断せざる負えなくなり、マリェースはアクアから距離を取る。
アクアも威嚇するように構え直すと、レイアに声をかけた。
「レイア、あなたは火傷を治す方法を見つけて!! それまで、私が引き付けるわ!!」
「アクア、危険だ…俺も…!!」
「いいからっ!!」
戦おうとするテラを止める様に叫ぶと、アクアはマリェースに向かって駆け出した。
普段は列車の音以外は聞こえない静かな場所で、戦いの火花が散らされた。
「待てぇ!!!」
「追って来るか…大した者だ」
時計台を駆け上がりながら、斬りつけるウィドとそれを防御するセヴィル。
だが、時計盤に足を踏み入れると、二人は同時に上空へと蹴って飛び上がる。
その状態で、ウィドは落ちながら剣を握ってセヴィルに怒鳴った。
「教えろぉ!!! 姉さんの事!! 姉さんの居場所をぉ!!」
そうして、剣をセヴィルに向かって振り下ろす。
しかし、その攻撃はキーブレードによって阻まれた。
「だが、甘い」
小さく呟くと、防御したキーブレードで弾き返す。
空中でよろめくウィドに、さらに追い打ちをかけるように回し蹴りを上から放った。
「ぐっ…!?」
半ば踵落としの蹴りを喰らい、地面に落下するスピードが加算される。
結果、受け身が間に合わずそのままウィドは地面に叩きつけられる。
対して、セヴィルは膝を折って着地すると、倒れているウィドにキーブレードを突きつけた。
「武器とは、己自身を表す物だ。何かを奪う為に振るう信念を武器を乗せても、俺に刃は届かない」
静かに諭すと、キーブレードの先端をウィドの持つレイピアに向けた。
「お前の持つ武器はその剣一つ。その剣に命を懸けている事を忘れるな」
まるで戦いを教えるセヴィルの言葉に、ウィドは睨みながらも立ち上がろうとする。
それに小さく笑っていると、突然後ろに黒い影が過った。
「後ろががら空きだ、セヴィル!!」
不意打ちを狙うように、クウが素早く拳を放つ。
だが、攻撃を読んでいたのかセヴィルは身をかわして避ける。
それでも、クウは攻撃の手を止めずに更に蹴りを放ったが、同じように攻撃したウィドの振るった剣に交差するように当たってしまった。
「邪魔するな!!」
「それはこっちのセリフだっ!!」
怒鳴るウィドに、クウも負けじと言葉を返す。
そんな二人を見て、セヴィルは呆れた溜息を洩らしながらキーブレードを構えた。
「何て執念だ…そんな事では―――まともに攻撃が当たらないぞ? 『陰招旋風』」
「ぐっ!?」「つっ!?」
キーブレードを振るって放たれた渦を巻いた黒い暴風が、二人に襲い掛かる。
その二人のうめき声に、少し離れた場所にいたレイアが反応した。
「クウさん!?」
「まずは、お前だ」
レイアが振り返ったのを見て、マリェースが腕を鎌に変えて迫った。
「させない! テラ!!」
「『スタンブレード』!!」
アクアの声と同時に、テラはキーブレードに雷を纏って思いっきり振り下ろした。
「くっ!?」
水の抱える宿命なのか。雷が弱点なようで、表情を強張らせてテラの攻撃を避ける。
そのマリェースの後ろに、アクアが宙に浮かんでキーブレードの先端を向けた。
「『レインボーシャワー』!!」
「なっ…!?」
後ろからのアクアの不意打ちに、マリェースは振り返るが遅い。
アクアから放たれた様々な色の光弾が、次々とマリェースに襲い掛かる。
二人の息の合った攻撃に怯むマリェースに、テラはすぐにレイアに声をかけた。
「レイア、今の内だ!!」
「はい! 『ケアルガ』!」
テラに頷くと、レイアはすぐにクウとウィドに癒しの魔法をかける。
レイアによって回復する様に、セヴィルは軽く二人に笑いかけた。
「助けられたな」
「うるさい!!」
「黙れ!!」
セヴィルの言葉に、二人は怒りを露わに武器を構え直す。
そんな二人…否、クウに視線を向けると何処か挑発的な笑みを浮かべた。
「――どうした、もうバテたか? バカ弟子?」
その言葉に、思わずウィドはクウを見る。
すると、クウはさらに目を細くしてセヴィルを睨みつけていた。
「それは師匠の言葉だろぉ!!! あんたが使う言葉じゃねぇ!!!」
「自分から抜け出しておいて、随分とあいつには執着するんだな?」
「執着なんて、してねぇ…!!」
セヴィルが呆れて言うと、クウは舌打ちして顔を逸らす。
この二人の会話に、ウィドは訝しげな表情を浮かべた。
「あいつ…?」
そうしていると、話は終わったのかセヴィルがキーブレードを両手で握った。
「さて…これはどうだ?」
そう言ってキーブレードを縦に構え、握り込む。
すると、セヴィルの周りに白と黒の球体が幾つも現れて二人に向かって飛んできた。
「『陰陽数珠』か…丁度いい!!」
この攻撃に、クウはニヤリと笑うとそれぞれの手に黒の羽根を四つずつ指に挟んで具現化させた。
「何を…!?」
『フェザーノクターン』を使おうとするクウに、ウィドは目を丸くする。
だが、クウは答えを返すことなく大声で叫んだ。
「テラ、ゼロボロス、こいつをやる!!」
「「え?」」
突然名前を呼ばれ、戦っていた二人は手を止めて振り返る。
同時に、クウは腕を振るった。
「らぁ!!」
そうして羽根を飛ばすと、こちらに向かっている球体の横や下の部分に当てる。
すると、球体は当たった衝撃で軌道を変え、何とマリェースやフェンに向かって飛んで行った。
「くっ!?」
「なぁ!?」
思わぬ敵の反撃に、アクアと鍔迫り合いになっていたマリェースだけでなく、ゼロボロスと戦っていたフェンまでも攻撃を避けるために一旦距離を置かざる負えない状況になった。
「敵の攻撃も使いよう、ってな?」
クウが得意げに笑っていると、いきなり横を衝撃波が通り過ぎる。
思わず目を向けると、何と自分の後ろで黒の球体が爆発している所だった。
再度顔を戻すと、『空衝撃』を出したウィドが呆れた目で睨んでいた。
「弾き返すなら、ちゃんと弾き返しなさい!!」
「悪ぃ、助かった」
どうやら、完全に弾き返してない球体がこちらに向かっていたようで、助けれくれたウィドにお礼を述べる。
少しずつ息が合ってきた二人を、ゼロボロスは苦笑しながら見ていた。
「やれやれ…何て人だ」
「俺を無視するなぁ!! 『霊封衝』!!」
そんなゼロボロスに、フェンはすかさず白い衝撃波をぶつける。
この攻撃に、ゼロボロスは拳にさらに白黒の炎を纏わせた。
「はぁ!!」
目と鼻の先に迫ってきた衝撃波を、手を広げて受け止める。
こうして押し合いが数秒だけ続くが、腕を振るって衝撃波を掻き消した。
「か、片手で相殺した!?」
「こんな攻撃、今の僕には何の意味もありませんよ」
「くそっ…その妙な炎が原因か」
余裕をかますゼロボロスに、フェンは彼の身体に纏った白黒の炎を睨む。
前に戦った時にも炎を使っていたが、あの時よりも力があるのを感じる。
だが、フェンはニヤリと笑って剣に茜色の炎を纏った。
「まあ、いい…だったら、こいつはどうだっ!! 『溶炎弾』!!」
一気に剣を振るうと、何と野球ボール並みの小さな茜色の火球がゼロボロスに飛んできた。
「そんな炎、相殺するまでも――」
そう言いながら、ゼロボロスは横に動いて火球を避ける。
火球はそのまま重力に沿って地面に落ち―――辺りに炎を飛び散らせるほどの大爆発を起こした。
「なっ!? うぐ!?」
予想しなかった攻撃に、ゼロボロスは対処が出来ずに背中や腕に茜色の炎が当たってしまう。
だが、フェンのこの攻撃はゼロボロスだけに留まらなかった。
「きゃあ!?」
「アクア!! ぐぅ!?」
「テラ!?」
マリェースと戦っていた後方にいるレイアにも炎が当たり、近くにいたアクアを庇うようにテラが身体を這って炎を受け止める。
「うあっ!?」
「がっ!?」
さらに、ウィドにも膝の部分に炎が当たり、クウも黒の翼に炎が当たる。
フェンの思いがけない攻撃に全員が怯んでいると、ある事に気が付いた。
「なんだ、これ…!?」
「火傷にしては、痛すぎる…!!」
炎が引き、アクアを除いた彼らに火傷が作られる。
しかし、普通の火傷と違い痛みが尋常ではない。現に今、身体の力が抜けていく。
クウとウィドが火傷の部分を押さえながら呻いていると、唯一無事だったアクアが動いた。
「すぐに治すわ!! 『ケアルガ』!!」
魔法力を高め、アクアは全体に癒しの光を放つ。
こうして、全員の傷が完全に治る――…筈だった。
「助かっ…つぅ!?」
テラがお礼を述べようとするが、すぐに顔を顰める。
見ると、テラの胸や腕の部分に付いた火傷は治っていなかった。もちろん、後の四人も一緒だ。
「そんな、治ってない!?」
「あの技は、一体…!?」
アクアが信じられない目で火傷を見る中、ゼロボロスは腕を押さえてフェンを睨む。
すると、フェンは歪んだ笑みを浮かべてゼロボロスに種明かしをした。
「どうだ? あの炎に少しでも当たれば、じわじわと火傷が広がると共に体力も削られる。そんな回復魔法じゃ治せない代物だぁ!!」
「ぐっ…!?」
説明して一気に駆け込むと、ゼロボロスに斬りかかる。
どうにか、フェンの剣を腕をクロスして防御するゼロボロス。だが、腕の火傷が体力を蝕み、じんわりと額に汗が浮かぶ。
「どうだ? さすがのお前も、俺の炎には敵わないようだなぁ!!!」
このゼロボロスの様子に、フェンは更に剣に力を込める。
そんな中、フェンの説明を聞いたクウは悔しそうに歯を食い縛っていた。
「ったく、妙なマネしやがって…!!」
そう呟くと、軽く手を振って火傷の付いた背中の翼を消す。
そのまま拳を握り込むと、もう一度黒の双翼を具現化させた。
こうして火傷を治したクウに、セヴィルは苦笑を混ぜて笑った。
「良かったな、火傷が翼だけで済んで」
この言葉に、クウは答えずにセヴィルを睨む。
この黒の双翼は、自分の闇を具現化したものだ。だからこそ、こうして傷付けられても再生が出来る。
ちなみに、これは精神で作っているのである程度の神経までリンクしている。と言っても、神経を感じるだけなので身体には異状はない。
だが、翼を攻撃されればその分の痛みは襲い掛かる。さっきの火傷も、翼に付けたままでは体力ではなく精神が痛みで蝕んでしまう。
クウはセヴィルを睨みつつ、あの火傷を負ったウィドに目を向けた。
「おい、大丈夫か?」
「これ、ぐらい…何とも…!!」
クウが声をかけると、ウィドは懐から『ハイポーション』を取り出して一気に飲みこむ。
どうやら、自分が奮闘して勝負を早めに決めないとマズいようだ。クウはそう思いながら、セヴィルに飛びかかった。
セヴィルとの戦いが再開する中、アクア達はピンチに陥っていた。
「『ウォタガ』!!」
「『リフレク』!!」
「『リフレガ』…!!」
マリェースの水の魔法にアクアは自分の周りに、レイアはテラと共に魔法の障壁を張る。
巨大な水柱が三人を包み込むが、収まると同時にマリェースが腕の内側を刃に変えて触手のように長く伸ばす。
そうして、火傷を負ったテラとレイアに振り下ろした。
「二人纏めて、消えろっ!!」
「させない!! 『ウィッシュブレード』!!」
アクアが近づいてキーブレードで斬りつけると、三つ分の斬撃がマリェースを襲った。
「くっ…!?」
攻撃を中断せざる負えなくなり、マリェースはアクアから距離を取る。
アクアも威嚇するように構え直すと、レイアに声をかけた。
「レイア、あなたは火傷を治す方法を見つけて!! それまで、私が引き付けるわ!!」
「アクア、危険だ…俺も…!!」
「いいからっ!!」
戦おうとするテラを止める様に叫ぶと、アクアはマリェースに向かって駆け出した。
■作者メッセージ
ここしばらく残業が続き、なかなか書く時間が取れませんがどうにか戦闘の半分を投稿できました。
さて、今日でDDD発売まであと10日。その10日の内に今回のパートを完成出来ればと思ってますが…断章も合わせると本当に難しいのが現状です。
それでも、出来る限りは目標に向けてパート完成を頑張りたいと思います。
さて、今日でDDD発売まであと10日。その10日の内に今回のパートを完成出来ればと思ってますが…断章も合わせると本当に難しいのが現状です。
それでも、出来る限りは目標に向けてパート完成を頑張りたいと思います。