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Re:開闢の宴 合併リレー小説

NANA&夢旅人

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章【動き出す者】
  • 02 第一章 心剣士編第一話「仮面の女」
  • 03 第一章 心剣士編第二話「古戦場/王手詰み」
  • 04 第一章 心剣士編第三話「仮面/難解」
  • 05 第一章 心剣士編第四話「訪問者」
  • 06 第一章 心剣士編断章 「蠢き続ける計画」
  • 07 Another an introduction 【終わりから始まりへ】
  • 08 Another chapter1 Sora side‐1 「新たなる始まり」
  • 09 Another chapter1 Sora side‐2
  • 10 Another chapter1 Sora side‐3
  • 11 Another chapter1 Sora side‐4
  • 12 Fragment1 「旅のチケット」
  • 13 第一章 永遠剣士編第一話「永遠」
  • 14 第一章 永遠剣士編第二話「タルタロス」
  • 15 第一章 永遠剣士編第三話「仮面の遠謀/タルタロス到着」
  • 16 第一章 永遠剣士編第四話「塔/襲撃」
  • 17 第一章 永遠剣士編第五話「戦の始まり」
  • 18 第一章 永遠剣士編第六話「火種/孔」
  • 19 第一章 永遠剣士編第七話「黒龍魔王/猫」
  • 20 第一章 永遠剣士編第八話「イヴ」
  • 21 第一章 永遠剣士編第九話「アガレス・グシフォン」
  • 22 第一章 永遠剣士編第十話「歌姫/流星」
  • 23 第一章 永遠剣士編第十一話「途絶/酷い奴」
  • 24 第一章 永遠剣士編第十二話「仮面の情報」
  • 25 第一章 永遠剣士編断章「仮面/永遠/凛那」
  • 26 Another chapter2 Terra side‐1 「止まり、開かれし物語」
  • 27 Another chapter2 Terra side‐2
  • 28 Another chapter2 Terra side‐3
  • 29 Fragment2「介入」
  • 30 Another chapter3 Aqua side‐1「光の行く先へ」
  • 31 Another chapter3 Aqua side‐2
  • 32 Another chapter3 Aqua side‐3
  • 33 Fragment3「試練」
  • 34 第二章 心剣士編第一話/第二話「嵐の前の静寂/布告」
  • 35 第二章 心剣士編第三話「戦のはじまり」
  • 36 第二章 心剣士編第四話「爻わる刃たち」
  • 37 第二章 心剣士編第五話「鬼人」
  • 38 第二章 心剣士編第六話「贖罪」
  • 39 第二章 心剣士編第七話「Sinの理」
  • 40 第二章 心剣士編第八話「妖刀/天舞剣 」
  • 41 第二章 心剣士編第九話「正体/無轟の家」
  • 42 第二章 心剣士編第十話「斬る覚悟」
  • 43 第二章 心剣士編断章「約定」
  • 44 第二章 反剣士編第一話「黒羽の旅人」
  • 45 第二章 反剣士編第二話「アダム/竜泉郷」
  • 46 第二章 反剣士編第三話「来訪/白竜」
  • 47 第二章 反剣士編第四話「ゼロボロスとシンメイ」
  • 48 第二章 反剣士編第五話「龍神シンメイ/双龍の過去」
  • 49 第二章 反剣士編第六話「新たな関係」
  • 50 第二章 反剣士編第七話「語らい」
  • 51 第二章 反剣士編第八話「顰める真実」
  • 52 Another chapter4 Sora&Terra side‐1「時を超えた再会」
  • 53 Another chapter4 Sora&Terra side‐2
  • 54 Another chapter4 Sora&Terra side‐3
  • 55 Another chapter4 Sora&Terra side‐4
  • 56 Another chapter4 Sora&Terra side‐5
  • 57 Another chapter4 Sora&Terra side‐6
  • 58 Fragment4-1「届かぬ思い」
  • 59 Fragment4‐2「本気の戦い」
  • 60 Fragment4-3
  • 61 Another chapter5 Aqua side‐1「共に守る一つの想い」
  • 62 Another chapter5 Aqua side‐2
  • 63 Another chapter5 Aqua side‐3
  • 64 Another chapter5 Aqua side‐4
  • 65 Fragment5-1「異世界からの来訪者」
  • 66 Fragment5-2
  • 67 NGハプニング集・3D版 前編
  • 68 NGハプニング集・3D版 後編
  • 69 第三章 三剣士編第一話「出立/口論」
  • 70 第三章 三剣士編第二話「追跡/解除」
  • 71 第三章 三剣士編断章壱 「裏切り者アバタール」
  • 72 第三章 三剣士編第三話「会合」
  • 73 第三章 三剣士編第四話「心剣世界」
  • 74 第三章 三剣士編第五話「蒼炎の女神」
  • 75 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 前編
  • 76 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 後編
  • 77 第三章 三剣士編第六話「秩序の騎士アルビノーレ」
  • 78 第三章 三剣士編第七話「大地の半神アレスティア」
  • 79 第三章 三剣士編第八話「襲撃! KR」
  • 80 第三章 三剣士編第九話「ゼロボロス/シンメイ」
  • 81 第三章 三剣士編第十話「揃う切っ先」
  • 82 Another chapter6 Sora&Aqua side‐1「鏡の再会」
  • 83 Another chapter6 Sora&Aqua side‐2
  • 84 Another chapter6 Sora&Aqua side‐3
  • 85 Another chapter6 Sora&Aqua side‐4
  • 86 Another chapter6 Sora&Aqua side‐5
  • 87 Another chapter6 Sora&Aqua side‐6
  • 88 Another chapter6 Sora&Aqua side‐7
  • 89 Another chapter6 Sora&Aqua side‐8
  • 90 Another chapter6 Sora&Aqua side‐9
  • 91 Fragment6‐1「鍵が奏でる戦い」
  • 92 Fragment6-2
  • 93 第四章 三剣士編第一話「僅かな一幕 その1」
  • 94 第四章 三剣士編第二話「焦り」
  • 95 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(前編)
  • 96 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(中編)
  • 97 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(後編)
  • 98 第四章 三剣士編第三話「集い地」
  • 99 第四章 三剣士編第四話「箱舟モノマキア」
  • 100 第四章 三剣士編第五話「協議」
  • 101 第四章 三剣士編断章「黄泉の細道」
  • 102 Another chapter7 Terra&Aqua side‐1「夕日が照らす陰と陽」
  • 103 Another chapter7 Terra&Aqua side‐2
  • 104 Another chapter7 Terra&Aqua side‐3
  • 105 Another chapter7 Terra&Aqua side‐4
  • 106 Another chapter7 Terra&Aqua side‐5
  • 107 Another chapter7 Terra&Aqua side‐6
  • 108 Another chapter7 Terra&Aqua side‐7
  • 109 Another chapter7 Terra&Aqua side‐8
  • 110 Another chapter7 Terra&Aqua side‐9
  • 111 Fragment7‐1「記憶と思いの力」
  • 112 Fragment7‐2
  • 113 Fragment7‐3
  • 114 Fragment7‐4
  • 115 第五章 三剣士編第一話「前夜」
  • 116 第五章 三剣士編第二話「たどり着いた世界の光景」
  • 117 第五章 三剣士編第三話「開戦」
  • 118 第五章 三剣士編第四話「先魁」
  • 119 第五章 三剣士編第五話「光に宿る影」
  • 120 第五章 三剣士編第六話「無浄輪無廻」
  • 121 第五章 三剣士編第七話「二人の最果て」
  • 122 第五章 三剣士編第八話「第四島攻略前編」
  • 123 第五章 三剣士編第九話「第四島攻略後編」
  • 124 第五章 三剣士編第十話「第二島攻略前編」
  • 125 第五章 三剣士編第十一話「第二島攻略後編」
  • 126 第五章 三剣士編第七話「幕間1」
  • 127 第五章 三剣士編第十二話「第五島攻略前編」
  • 128 第五章 三剣士編第十三話「第五島攻略後編」
  • 129 第五章 三剣士編第十四話「第三島攻略序」
  • 130 第五章 三剣士編第十五話「第三島攻略破」
  • 131 第五章 三剣士編第十六話「第三島攻略急の壱」
  • 132 第五章 三剣士編第十七話「第三島攻略急の弐」
  • 133 第五章 三剣士編第十八話「第一島へ」
  • 134 Another chapter8 Sora side‐1「儚き海の哀歌」
  • 135 Another chapter8 Sora side‐2
  • 136 Another chapter8 Sora side‐3
  • 137 Another chapter8 Sora side‐4
  • 138 Another chapter8 Sora side‐5
  • 139 Another chapter8 Sora side‐6
  • 140 Another chapter8 Sora side‐7
  • 141 Another chapter8 Sora side‐8
  • 142 Another chapter8 Sora side‐9
  • 143 Another chapter8 Sora side‐10
  • 144 Another chapter8 Sora side‐11
  • 145 Another chapter8 Sora side‐12
  • 146 Another chapter8 Sora side‐13
  • 147 Another chapter8 Sora side‐14(あとがき追記しました)
  • 148 Fragment8‐1「天使のレクイエム」
  • 149 Fragment8‐2
  • 150 第六章 三剣士編第一話「沸き立つ心」
  • 151 第六章 三剣士編第二話「魂の慟哭」
  • 152 第六章 三剣士編第三話「時と空の防陣」
  • 153 第六章 三剣士編第四話「記憶の再編」
  • 154 第六章 三剣士編第五話「魔K刀リンナ」
  • 155 第六章 三剣士編第六話「煌く炎」
  • 156 第六章 三剣士編第七話「戦闘 アバタール」
  • 157 第六章 三剣士編第八話「戦いの果て」
  • 158 第六章 三剣士編第九話「真実へ」
  • 159 第六章 三剣士編第十話「神理と代行体」
  • 160 第六章 三剣士編第十一話「ユニテ・イリアドゥス」
  • 161 第六章 三剣士編第十二話「共有」
  • 162 第六章 三剣士編第十三話「蒼と茜」
  • 163 第六章 三剣士編第十四話「運命の軌」
  • 164 Another chapter9 Terra side‐1 「交差せし歯車」
  • 165 Another chapter9 Terra side‐2
  • 166 Another chapter9 Terra side‐3
  • 167 Another chapter9 Terra side‐4
  • 168 Another chapter9 Terra side‐5
  • 169 Another chapter9 Terra side‐6
  • 170 Fragment9「始まりを紡ぎし者達」
  • 171 Another chapter10 Aqua side‐1「黄昏に眠りし歪んだ人形」
  • 172 Another chapter10 Aqua side‐2
  • 173 Another chapter10 Aqua side‐3
  • 174 Another chapter10 Aqua side‐4
  • 175 Fragment10-1「真(まこと)に隠された偽り」
  • 176 Fragment10-2
  • 177 Fragment10-3
  • 178 Fragment10-4(あとがき追記しました)
  • 179 第七章 罪業編第一話「深き混沌の過去」
  • 180 第七章 罪業編第二話「χブレード」
  • 181 第七章 罪業編第三話「開闢の英雄」
  • 182 第七章 罪業編第四話「白と黒」
  • 183 第七章 罪業編第五話「いざや進め」
  • 184 第七章 三剣士編第一話「結びつく絆 前編」
  • 185 第七章 三剣士編第二話「結びつく絆 後編/神理とは」
  • 186 第七章 三剣士編第三話「一時の暇」
  • 187 Another the last chapter‐1 「絶望へのカウントダウン」
  • 188 Another the last chapter‐2
  • 189 Another the last chapter‐3
  • 190 Another the last chapter‐4
  • 191 Another the last chapter‐5
  • 192 Another the last chapter‐6
  • 193 Another the last chapter‐7
  • 194 Another the last chapter‐8
  • 195 Another the last chapter‐9
  • 196 Another the last chapter‐10
  • 197 Another the last chapter‐11
  • 198 Another the last chapter‐12
  • 199 Another the last chapter‐13
  • 200 Another the last chapter‐14
  • 201 Another the last chapter‐15
  • 202 Another the last chapter‐16
  • 203 Another the last chapter‐17
  • 204 Another the last chapter‐18
  • 205 Another the last chapter‐19
  • 206 Another the last chapter‐20
  • 207 Another the last chapter‐21
  • 208 Another the last chapter‐22
  • 209 Another the last chapter‐23
  • 210 Another the last chapter‐24
  • 211 Another the last chapter‐25
  • 212 Another the last chapter‐26
  • 213 Another the last chapter‐27 (あとがき追記しました)
  • Another chapter7 Terra&Aqua side‐6

    「『エアリル・アーツ』!!」

     クウは、上空に飛んで一気にセヴィルに急降下して蹴りを放つ。
     だが、攻撃を読んでいたのか後ろに跳んで回避した。

    「まだだぁ!!」

     しかし、クウは動きを止めずに拳を放つ。
     あまりの速さにセヴィルはキーブレードで防御し、押し合いが始まった。

    「『ナックル・フィスト』か…さすが、と言いたいが…」

     ギチギチと拳とキーブレードが鳴る中、セヴィルが笑う。
     クウがそれに気付いた時には、キーブレードに光が纏いだした。

    「焦りで狙いが定まってないぞ? 『陽狼光』」

    「がっ…!?」

     弾き返すと同時に、眩い狼の闘気がクウを襲う。
     それによりダメージを受けて吹っ飛ばされ、更に至近距離で光を直視してしまい視力が奪われる。
     目の部分を押さえてよろよろとするクウに、セヴィルが向かおうとすると衝撃波が飛ぶ。
     足を止めて見ると、ウィドが剣を振るった状態で舌打ちしていた。

    「ちっ…!!」

    「遠くからの遠距離で攻めるか…その傷を負っていたら当然だが、まだ考えが未熟だな」

     そう言うと、セヴィルはウィドを見ながら笑った。

    「教えてやろう…これが俺のやり方だ。『陰招旋風・周』!!」

    「「うぐっ!?」」

     先程の黒い暴風が今度はセヴィルの周りから広範囲に放たれ、二人は怯む。
     さらに、追い打ちをかける様にセヴィルはウィドに狙いを定めた。

    「『陽炎閃』!!」

    「つぁ!?」

    「くそっ、どこだ…!?」

     まるで陽炎のように揺らめくと、一瞬でウィドを切り裂くように背後へと移動する。
     その悲鳴にクウが反応するが、まだ視力が戻らず二人の位置が分からない。
     そんなクウとは別に、ウィドは顔を訝しんでセヴィルを見ていた。

    「どうして…当てようと思えば、当てれたのに…!!」

     そう。実際は攻撃されていなかった。あまりの速さに斬られたと錯覚したのだ。
     ウィドが訝しんでいると、セヴィルは笑いながらキーブレードの切っ先を向けた。

    「言っただろ? あまりにも未熟だから“教えて”やったと」

    「舐めるなぁ!!」

     この言葉に、ウィドがセヴィルに近づいて斬りつける。
     だが、セヴィルはクウのように剣をキーブレードで防御した。

    「舐めてないさ。お前は姉と違って、魔法を使う素質がないからな…戦う力は剣術のみと言った所か」

    「それが何だぁ!!?」

     更に逆鱗に触れたのか、ウィドは怒りを露わにして弾き返す。
     しかし、セヴィルは先に後ろに下がって衝撃を軽減させた。
     それにイラついていると、後ろから何かが投げられると同時に身体が軽くなった。

    「あんまり動くな!! 火傷が広がるぞ!!」

    「うるさい…!!」

     視力が回復して『ポーション』を使ってくれたクウを、ウィドは邪険に足払う。
     そのままセヴィルの元に向かうウィドに、クウは思わず舌打ちした。

    「この意地っ張りが…!! これだけ酷いとあいつを思いだ――」

     口から吐き出した愚痴に、何かを感じて止める。
     それからウィドを見ると、初めて出会った時の彼を見た時の違和感の正体を掴みかける。
     会った事はないのに、会ったような錯覚。よく見れば、ウィドは《彼女》に似てる。

    「まさか…でも…」

    「何を考えてるんだ、クウ?」

    「っ!?」

     セヴィルの言葉と共に、足元から噴き出す闇が襲い掛かる。
     どうにか空中に飛んで避けると、魔法を放ったセヴィルを睨みつけた。

    「とにかく、詮索は後ってか…」

     そう呟くと、クウは翼を羽ばたかせて戦いに集中した。


    「おらおら!! さっきの威勢はどこ行ったぁ!!」

    「ここまで来ると、苛立ちも湧きますね…!」

     火傷の傷もあり、ゼロボロスは翼まで展開させて上空を飛んで逃げていた。
     それに調子に乗ったのか、飛んでいる自分に向けて炎や氷などの魔法を連射するフェンに苛立ちを覚える。

    「鳥野郎が…撃ち落としてやるよ!! 『サンダーブラスター』!!」

    「くっ!?」

     扇状に放たれた雷の魔法に、ゼロボロスはとっさに急降下して避ける。
     どうにか避けつつ、ポケットから『ポーション』を取り出して飲み込んだ。

    (このまま逃げていても、火傷で体力を削られる…だからと言って、無理に責めてもこの状態では押し切られる…)

     アクアの使った回復魔法や『ポーション』である程度体力は回復するが、少しもしない内にその分は火傷によって削られてしまう。
     しかも、元凶の火傷も抑える事は出来ても治る事も無くじわじわと浸食している。そんな状態で攻めても、後が不利になるだけだ。

    (今は『式』の状態でこうして動けるからいいけど…何か、方法はないか…!?)

     そうやって、ゼロボロスが必死に頭を捻らせていた時だった。

    「『グラビティ・ヘヴィ』!!」

    「なっ…!?」

     フェンが魔法を放つと同時に、ゼロボロスに魔法の煌きが包む。
     すると、重力が全身に押しかかり地面に落とされそうになる。

    「こっ…のぉ!!」

     だが、ゼロボロスは歯を食い縛り、翼を羽ばたかせる。
     そして、全身に纏っていた白黒の炎を霧散させると同時に魔法を打ち破った。

    「チッ、失敗したか…」

    「あ、危なかった…! 『式』を全身に纏ってて正解だった…」

     舌打ちするフェンに対し、ゼロボロスは冷や汗を掻きながら息を荒くする。
     その状態で不意に視界を上げると、美しい夕日が目に入る。
     同時に、自分の中にある古い記憶が甦った。

    (そう言えば…『式』の元である『自在法』ってのを教えて貰ったのは、この世界で出会った《あの子》のおかげだっけ…)

     もう何十年も前になる。たまたま訪れたこの世界で、ある異界の化け物に襲われた際に一人の少女によって助けて貰った。
     燃えるような赤い髪と瞳を宿したその少女には名前が無い。しかし、彼女や彼女に力を与える異能の存在との会合は滅多に出来ない体験により、今も鮮明に覚えている。
     その際に手に入れたのが、この『式』だ。己の『力』を消費させる事で、在り得ない事象をこの世に顕現させる一種の魔法。それを自分なりにアレンジし、主にこうして体に炎を纏う事で身体強化として使っている。

    (在り得ない、事象…魔法や薬でも、治せない火傷…)

     『式』について思い出していると、ゼロボロスの脳裏に何かが過る。
     そのまま顔を俯くと、フェンに気づかれないようにニヤリと笑った。

    「…今回はとことん、あの子に感謝だね」

     それだけ言うと、ゼロボロスは再び上空へと飛び上がった。

    「また逃げるか!!」

     それを見て、すぐさまフェンは雷の魔法を放つ。
     ゼロボロスは繰り出す魔法を避けながら、何と火傷の部分に白黒の炎を纏わせた。

    「さーて、ここからは時間との勝負だ…!!」


     二つの戦いが拍車を駆ける中、もう一つの戦いにも動きがあった。

    「『クラッカーファイガ』!!」

     アクアがマリェースに一つの大きな火球を飛ばす。

    「ふっ!」

     マリェースはすぐに手を上げ、何と水の壁を作り出す。
     その壁に当たり火球は大きく爆発するが、壁の向こう側にいるマリェースには届かなかった。
     しかも、マリェースは先程の魔法によって出来たあちこちの水溜りを操るように、細い鞭を作り出した。

    「貰った」

     そう呟くと同時に、アクアの後ろで火傷によって蹲っているテラとレイアに鞭を振り下ろす。

    「『デトネチェイサー』!!」

    「うぐぅ?!」

     しかし、アクアがキーブレードを掲げて周りに地雷を作る。
     すると、地雷はマリェースだけでなく周りの鞭にも向かって爆発した。

    「テラには、指一本触れさせはしないっ!!」

     こうしてマリェースの操った水をも消すと、アクアはチラリと後ろを見る。
     マリェースの攻撃によって中断した回復魔法を再度かけるテラとレイアの姿に、胸が締め付けられた。

    (私の所為で、テラはあんな怪我を負った…――だったら、私がテラを守らないと…!!)

     自分がこうして無傷でいられたのは、テラが身を挺して庇ってくれたからだ。
     旅の途中で思わずテラを疑ってしまい、離れ離れになったのは自分の所為だ。それでも、テラはこうして助けてくれた。
     キーブレードマスターとしてテラを、ヴェンを闇から…ヴァニタスから守る。それなのに、こんな所で守れなくてどうすると言うのだ。

    「やあぁ!!」

     気持ちを切り替え、アクアはマリェースに向かってキーブレードで振りかかる。
     その頃、『ケアル』で回復したテラは、隣で魔法を唱えるレイアを見ていた。

    「…『エスナ』」

     魔法を唱え終わると、浄化の光がテラを包む。
     それを見て、レイアは辛そうな表情でテラを見た。

    「どう、ですか…?」

    「幾分、楽にはなったが…完全には、治せないようだ…」

     テラはそう言うと、身体の火傷を見る。
     先程よりも火傷は小さくなったが、それでも体力を削りながらまた徐々に広がっていく。
     そんなテラに、レイアは再び杖を握りしめた。

    「私…他の魔法も、試してみます…」

    「俺の事は、いい…レイア、援護を頼めるか…?」

     他の魔法を唱えようとするレイアにそう言うと、テラはキーブレードを持って立ち上がる。
     再び戦おうとするテラに、レイアは目を見開いて腕を掴んだ。

    「だ、駄目ですよ…!! まだ、火傷は治ってないんですよ…!?」

    「それでも…アクアを、一人で戦わせる訳にはいかない…!! 大丈夫だ…最初に比べて、楽にはなった」

     レイアに優しく笑いかけると、すぐに戦っているアクアに目を向ける。
     体力を削り、広がる火傷。いや…そんな傷が無くても、マスターに選ばれる実力を持つアクアにとって自分は足手纏いかもしれない。
     それでも、このまま一人で戦わせる訳にはいかない。今では闇に染まってしまったが、アクアとの絆は無くなっていないのだから。

    「でも…その火傷がある限り、体力はこうして削られるんですよ…? それなのに――」

     必死で引き留めようとレイアが話すと、何故か途中で言葉を止める。
     テラが目を向けると、レイアは顔を俯かせてブツブツ呟いていた。

    「体力を…削る…?」

    「レイア?」

     思わずテラが声をかけると、レイアが真剣な目でこちらを見た。

    「――テラさん…もしかしたら、治せるかもしれません…」


     さて…ここで、セヴィルとの戦いに視点を戻そう。

    「『ダークブラスト』!!」

    「『風陣斬刀』!!」

     クウとウィドは遠距離でそれぞれ闇の球体の魔法と無数の鎌鼬をセヴィルに放つ。

    「『守護陽光』」

     しかし、セヴィルはキーブレードを地面に突き刺し、光の衝撃波で爆発する球体と鎌鼬から身を守る。
     さっきから攻撃が一向に与えられない状況に、クウは歯軋りした。

    「くっそ…!! 早くしないと、こいつがヤバいのに…!!」

     横目でウィドを見ると、息が荒く足に付いた火傷もさっきより大きくなっている。
     だが、回復の魔法も効かないし、アイテムも体力を回復させても火傷までは完全に治せない。
     体力も火傷も完全に治す方法など、存在するだろうか。

    「完全、に…? そう言えば…!」

     ここでクウはある事を思い出し、コートの内側に手を入れる。
     それを見たセヴィルは、目を細くして両手でキーブレードを握り出した。

    「さて…そろそろ、手加減も飽きた。俺も本気を出すとしようか」

    「何っ…!?」

    「あれは…!?」

     ウィドが驚く中、セヴィルの構えにクウは顔を青ざめる。
     同時に、セヴィルはキーブレードに光と闇を纏わせて再度地面に突き刺した。

    「『陽陰破邪醒』っ!!!」

     すると、二人の地面の周りから次々と大きな光と闇のレーザーが噴出し出した。

    「マズ…ッ!!」

     クウはすぐさまウィドの手を取るなり、引き寄せる。
     すると、そのまま両手で持ちあげるように抱えて上空に飛び上がって地面からの攻撃を避ける。
     一方、お姫様抱っこの要領で抱えられたウィドは顔を真っ赤にしてクウを睨んだ。

    「ちょ…何を――!?」

    「いいからじっとしてろっ!! これは防御出来ない!!」

    「だからって…どうして、こんな…!?」

    「うっせぇ!! こうしてた方が両手使えるだろ!? それより、俺の内側のポケット調べろ!!」

    「内、側…?」

     こうして口喧嘩していたが、クウの怒鳴った言葉に思わずウィドは口を止める。
     言われた通りにクウのコートに手を入れ、ポケットを調べると何かが指先に触れる。
     それを握りしめて取り出した代物に、ウィドは目を見張った。

    「これは…!」

    「効くかどうかは分からない。だが…試してみる価値はあるぜ?」

     未だに地面から放たれるレーザーを避ける中、クウはニヤリと笑いかけた。

    12/03/30 10:57 NANA&夢旅人   

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